色々なIF集   作:超人類DX

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しょうがねーので突貫工事みたいに後一話だけ。

概ね平和路線だね


師匠離れができないままのなっちゃん

 転生者である神崎烈火は、本音を言わせて貰うならばIS世界に転生してしまったとしても一夏に成り代わるだとか、ハーレム王になりたいだとか、そんな大それた考えは持たないタイプの者だった。

 

 この女の園と化して久しいIS学園に入学する事になってしまったのも、幼少期からの友で五反田弾以外に意外と男友達に恵まれてなかった一夏と共に動かせる訳ないと願ってたISを動かせてしまったからであり、女だらけの学校にぶちこまれる事自体が順応性の高い一夏よりも極度のストレスになってしまっているくらいで、出来ることなら世界で二番目の起動者だなんて肩書きも無かった事にしたいくらいだった。

 

 故に……故にだ。

 

 

「俺はホモなんかじゃないです」

 

「いきなりだなオイ……」

 

 

 まさかの別アニメ主人公がIS世界に生きていて、しかも原作キャラの一人の更識楯無の師匠的ポジションとして学園の用務員をしてると知った時から、彼はある意味の心の拠り所として一誠に懐いてしまった。

 具体的には蓄積されたストレスを解消する話し相手になって欲しいと彼の根城たる用務員室に毎度訪れるくらいには。

 

 

「一夏とは小さい時からよく遊んてたりしたんですけど、アイツは男友達が結構少ないんです」

 

「ふーん?」

 

「その理由が性格が悪いからとかじゃないんですけど、何故かそうなんです。

で、アイツは凄いモテます」

 

「あぁ、それは聞いたなぁ。羨ましい話だぜ」

 

 

 別世界のアニメ主人公。しかもスーパーパワーインフレ上等世界のとくれば、その力はこの世界において支配者にすら簡単になれてしまう程のもの。

 ………てのは彼は勿論知っているが、このイッセーの性格は彼の記憶通りに近いものがあるのと、精神的な歳を重ねたせいか、言葉に表せない大きさを感じる。

 

 だからこそこの神崎烈火はイッセーに対して色々な相談をするようになったのだ。

 

 

「俺は一夏が女子にモテモテなのは良いと思ってますし、ましてや邪魔なんてするつもりだってありません。

でも、その……その一夏を好いてる女子達が俺を邪魔に思ってるみたいで……」

 

「同性で気安いからその女の子達が嫉妬してるってか。

キミも中々損な位置に居るもんだな」

 

「一夏もそれに全く気付いてないから何時もの調子で接してくるから、視線が怖いんですよ……」

 

 

 一夏と恋愛したいのならどうぞ好きにして頂きたい。

 けどこの誤解だけはどうにかして解いておきたい。

 ホモ認定されている烈火の疲れたため息に、イッセーはかつて己が死力を尽くして粉々に消してやった転生者とは真逆な少年に対して何時も作業の際に被る帽子を指でクルクルと回しながら、割りと同情していた。

 

 

「まー一番はその織斑君にさっさと誰とゴールインするかを決めて貰ったら良いんだが、そもそも彼はその女の子からの好意自体に気付いてないんだろ? それも中々悲劇的な話だよな。

いや、彼が悪い子じゃないのは見ててわかるんだけど……」

 

「はい……」

 

「で、その女の子達も皆我が強いから、そんな彼にイライラしてしまって手が出てしまうと……」

 

「はい……」

 

「こればっかりはなぁ? 今すぐ織斑君にこっそり『キミの女友達皆がキミが大好きなんだってよ?』って言っても通じるかどうかだよな」

 

 

 ちなみに直後までこの部屋には更識楯無こと刀奈が居たのだが、イッセーに『男の話だ』と言われて追い出されてしまっている。

 

 

「てか、キミはどうなんだよ?」

 

「へ?」

 

「だからキミは居ないの? 好きな子?」

 

「……いや、真面目に考えたことが無いですよ」

 

「えぇ? 昨今の事情のせいか知らんけど、草食系(メトロセクシャル)なんてもんが多くて駄目だなオイ……」

 

「だって俺はそもそも……」

 

「他所からの外様だってか? 俺の知ってる外様は快楽主義者で肉食通り越してゲス野郎だったんだぜ?」

 

「俺にそんな度胸なんてありませんよ……」

 

「……。キミみたいな謙虚な奴が転生者っつー者の中にも多く居れば俺もあんな人生じゃなかったかもなぁ……」

 

 

 全く儘ならない人生だ。

 刀奈という後継者に巡り会えたのがその転生者への復讐の果てだとしても、それはそれで皮肉だとイッセーは、転生している事自体に後ろめたさを感じてる転生者を眺めながら独り思うのだった。

 

 

「ま、何かあったら何時でも来いや? ナンパの手法や茶くらいしか出せねーけど」

 

「あざっす」

 

 

 奇跡的なまでの転生者との緩やかなやり取り。

 兵藤一誠はそれなりに大人になっているのかもしれない。

 

 

「ところでこの学園の先生達にはナンパしないんですね?」

 

「刀奈がうっさいのと、あんま好みのタイプが居ないからな。

もっとこう、旦那に相手されてなくてムラムラしてそうな人妻系がたまんねぇぜ!」

 

「……………乳龍帝とか呼ばれてるだけはありますね」

 

「もう赤龍帝じゃねーよ」

 

 

 

 月とすっぽん並みの違いがある転生者なりの悩みを知ったイッセーは、取り敢えず神崎烈火を元気付けて送り出すと、こそこそと追い出されてた筈なのに部屋の窓から覗いていた刀奈に声を掛ける。

 

 

「覗きの趣味は教えたつもりはないぞ?」

 

「げ、バレてたの? やっぱりお師匠様の目は誤魔化せないかぁ」

 

「たりめーだ、気配の消し方がプロ過ぎて逆に私はここに居ますよって教えてるようなもんだからな」

 

 

 かくれんぼのつもりだったのか、見付かった理由を教えられた刀奈は決して他の者の前では見せないような

子供っぽい仕種を見せている。

 

 

「ちぇ、もしバレてなかったら後ろから飛び付いてやったのに」

 

 

 と、拗ねた様に言いながらそそくさと座ってる一誠の隣に腰掛ける刀奈。

 師と仰いで十年と少し。初めて見た時から変わらぬ姿を保ち続ける師の背中はまだまだ大きくて遠いけど、それと同時に心と身体が成長していくにつれて師への想いが尊敬から変わっていく。

 

 

「倍率の高い織斑君に簪ちゃまが惚れちまった訳だが、姉としての意見はどうなんよ?」

 

「んー、別に良いんじゃないかしら? あの子には人並みの生活や人並みの恋愛をして欲しいし」

 

 

 妹に苦労は掛けまいと強くなりたいと願い、文字通り何度も死にかける地獄を見た。

 けれど師である一誠は厳しくも優しかった。

 今はこんなグータラでニート思考になっちゃってるけど、切れ味鋭いナイフみたいな頃の一誠を知ってるからこそ、刀奈はグータラになってしまっても師への尊敬は忘れない。

 

 

「あー、らしくもない相談事を聞いてたら怠くなっちまった。

もう仕事したくねー……」

 

「あぁ、また始まっちゃったわ。お師匠様のグータラモードが……」

 

『とことんダメ男になってしまったな一誠は……』

 

 

 どんなにダメ男になろうとも、やる時はやると刀奈は知ってる。

 だからどんなにダラダラしてもその想いは変わらないのだ。

 

 

「ほらちゃんと立って! シャキッとする!」

 

「シャキーン……」

 

「声だけじゃダメ!」

 

 

 一誠の弟子は唯一無二で自分だけ。

 その自負がある限り、刀奈の想いは決して揺れないのだ。

 

 

「あー、織斑くんみたいに超モテてぇ。

思春期の大半が真っ赤だったから余計に羨ましいー……だから仕事したくねーよぉ……」

 

「こうなったらこのままお師匠様を抱き枕にして寝ちゃうわよ!? それでも良いの!?」

 

「えぁ~? いいんじゃねーのー? 勝手にすればー……」

 

「え……ほ、本当にしちゃうわよ? 抱き付いてクンカクンカもしちゃうのよ? おっぱいも当てちゃうわよ? 密着24時しちゃうわよ?」

 

「どーぞご自由にー」

 

「ぅ………」

 

『自分で言っておきながら、恥ずかしがるなよカタナ……。お前、イッセーに出来ないと見抜かれてるぞ?』

 

「だ、だって……。やろうとするとドキドキするんだもん……」

 

『虚の事なんて言えない初っぷりだな……』

 

 

 ちょっとヘタレなのも師匠譲りなのだ。

 

 

 

 そんな後継者の刀奈は確かに揺れぬ想いを持っているのだけど、ここ最近ちょっとした危機感を持ってなくはなかった。

 

 それは一応最低限の用務員作業をしてる姿を結構な頻度で他の女子生徒に見られていて、結構な噂をされてる――――事についてはイッセーが年下過ぎて生徒達は対象外なので特に思うところはない。

 問題なのは、一部というかとある教師との妙なやり取りが多い事だ。

 

 

「兵藤さん、うちのクラスの愚弟と神崎が度々世話になってる様で……」

 

「ん? あぁ、織斑先生。

別に構いませんし、愚弟ってのは言い過ぎやしません? あの子昨今希に見ぬ聖人君じゃないすか。

普通いくら女子だからって、あんなひっぱたかれてたら、キレますよ? それを全然怒らないなんて、短気である自分からしたら神かなんかだと思いますからねぇ」

 

「………確かに愚弟は言い過ぎでしたね、訂正します、言葉が汚くて申し訳ない」

 

「いえいえ、それで何か自分に用でも?」

 

「あぁそうでした。何時も二人が世話になってるという事で、二人の担任としては是非礼がしたいと思いまして……」

 

「そんな礼なんてされる程の事なんてしてませんよ?」

 

 

 特にこの世界最強が、真面目に用務作業をしてる面しか見てないのか、一夏と烈火関連で絡む機会が多くなっている。

 今も金槌片手に根城に戻ろうとしていた一誠に声を掛けて、何やら礼がしたいと話をしてる様子を物陰からこそこそと刀奈は眺めてちょっとぐぬぬとしてる。

 

 

「いえ、これは私なりのケジメですので是非。

つきましては今度の休日――」

 

 

 そしてその言葉が出た瞬間、刀奈は我慢できずに飛び出していた。

 

 

「お・師・匠・さ・ま♪ 今度のお休みの時の約束覚えてるよね?」

 

「は?」

 

「……?」

 

 

 凄いニコニコしながら、自分余裕こいてますよ? 的な雰囲気を醸し出しながら一誠と千冬の間に割り込んできた刀奈は、一誠には見えない所で猫が威嚇するような表情で千冬を睨み、これは私のだと云わんばかりに一誠の腕に絡み付く。

 

 

「約束ってなんだよ?」

 

「やだもーお師匠様ったらぁ♪ 今度のお休みはデートするって約束したじゃなーい!」

 

「お師匠様? ……失礼ですが、更識とはどんなご関係で? アナタが更識家から派遣されたのは存じてますが……それにデートって……」

 

「いや、俺も今聞いたのでなにがなにやら……」

 

「うー! デートするの! するったらするの!!!」

 

「……………みたいっす」

 

「は、はぁ……その様で」

 

 

 更識がこんな顔するとは……と少し驚きを隠せない千冬は、さっきからずっと自分を威嚇してくる刀奈に解せないと首を傾げる。

 

 

「ではごめんあそばせ織斑先生?」

 

「う、うむ……」

 

「ちょ、おい、引っ張るなよ……何なんだよ」

 

 

 弟と弟の親友二人の悩みを聞いてくれるという事で千冬の中ではそれなりにいい人認定していた一誠が刀奈に引っ張られていくのをただただ眺める千冬。

 

 

「あ、しまった。礼の話をする途中だったが、また今度で良いか。

噂では結構飲めるタイプらしいし、是非とも酒を酌み交わしたかったのだが……」

 

 

 それが弟とそれを取り巻く女子達のやり取りみたいなものだとは千冬は知らず、ただただ飲み友になれそうな一誠を誘えなかったのを残念に思うのだった。

 

 

「良い!? 織斑先生に誘われてもホイホイついてったら駄目だからねっ!」

 

「え? 俺あの先生に誘われてたのか?」

 

「そうよ、だから今度から誘われても受けたら駄目だからね? もし受けたら私本気で泣くから」

 

「単に飯かなんか奢ってくれる話だったんじゃねーのか? んだよ、ちょっと惜しいことした―――」

 

「ぐすっ……! う、うわぁぁぁぁん!! おししょうしゃまがわたしをすてたぁぁっ!!!」

 

「ファッ!? 何故そこで決壊するんだ!?」

 

『俺は知らんからな。昔から本気で泣くカタナの厄介さを知らんとは言わせんぞ?』

 

「そ、そりゃ知ってるが……えぇ? 何で泣くんだよ?」

 

「ひどい……ひどいよぉ……! おししょうしゃまの事でだいすきなのにぃ……!」

 

「お、おう……よしよし、なんかすまん?」

 

「くすんくすん……」

 

 

 終わる




補足

真面目にこの転生者は余計な真似をして壊さないようにと神経すり減らして生きてるタイプで、それゆえにストレスが凄いし、一夏との間にホモ疑惑まで持たれて一部ヒロインに敵意まで向けられる始末。

故にちょっと違うけど似た状況のイッセーはまさに心の拠り所になってしまってる模様。

ちなみにヒロインを口説く事もせず、ただただ一夏が持つべき繋がりを壊さないようにと彼なりに頑張ってるらしい。


その2
そんな二人の男子の相談相手になってると知った先生は単にお礼をしようとしたのだが、変な誤解をされてしまったらしい。

とはいえ、飲み友が欲しいのは事実。


その3
師の前だと10は精神年齢が低くなる刀奈ちゃま。

限界が来るとびーびーと泣きます。
そして呂律も幼女みたいになります。

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