駆逐艦しかいない鎮守府   作:鼠返し

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 みなさんどうも、鼠返しです。

 昨日に投稿しようとしましたが、友人から「PCが動かぬ。 ヘルプ!」
って言われて助けに行っていたため、できませんでした。

 もっとも、ほんの30分ほどで直ってそれからずっと遊んでたわけなんですが。

 そういうこともあって、少し遅れてしまいました。

 文字数などは多くなっておりませんので、理解していただけると助かります。

 さて、ここから視点を新米提督に戻してからの始まりとなります。

 第10話です、どうぞ!


第10話 二日目の朝

  ……すごく恥ずかしいことをしたな……

 

 雷に起こされてひとしきり胸元にすがって泣いたあと、自虐的な笑みを浮かべて思った。

 

 もう18になった大人な男が、自分が指揮するはずの艦娘にすがって、それこそ子供のように

泣き喚いてしまったのだ。

 

 恥ずかしいやら何やらで一刻も早く離れたいと思うのだが、何とか落ち着いたあとも雷が自分を

抱きしめていて、離す気配を一向に見せない。

 

「……司令官、落ち着いた?」

 

「……何とか、な。 ありがとう、雷」

 

「また何かあったら、私に頼ってよね」

 

「恥ずかしいから、二度目がないように気を付けるよ」

 

 雷と会話しながら少しずつ離れようとするが、背中と後頭部に回されている腕に力を込められて

胸元へと引き寄せられてしまう。

 

 離れたい、という自分の意思は全く通じていないようだ。

 

「……雷、そろそろ離してくれないか? 暁たちが起きたらどうするんだ?」

 

「あ……」

 

 少し遠まわしに言ってみると、やっと通じたのか雷の両腕から開放されて背中を伸ばすことが

できるようになる。

 

「さてと、これからどうするかな……」

 

 腕を組んで独り言を呟いてみると、腹の辺りが空腹に耐えかねたのか音を鳴らし始めた。

 

「……食料調達、だな」

 

「そうみたいね。 でも、食べ物なんてあるのかしら?」

 

「確かに……こんな寒いところになぁ……」

 

 雷の言葉で自分が今いる場所を思い出して、頭をひねりつつ考え始める。

 

 自分が流れ着いた島は、それこそ水が凍るか凍らないかという寒い気候の島だ。

 

 そんな寒い、しかも人間の手が10年もかかっていない島に食物があるかどうかわからない。

 

 鎮守府内に食べ物は残っていないだろうし、残っていたとしても10年も放置されて

熟成しすぎているようなものは、食べないほうがずっとましだ。

 

 何はともあれ、今日はこれから先のことも予定を立てていこうと考えた。

 

「とりあえず、この話は工廠長も交えて話をしよう。 呼んでくるから少し待っててくれ」

 

「わかったわ」

 

 雷の返事を聞いて立ち上がり、布の下に隠れている上着を取り出し、布をまだ寝ている暁たちに

かけなおして扉まで歩く。

 

 上着もまだ暁たちに使わせてやりたかったのだが、この寒さの中で薄いシャツ一枚のみで

隙間風が入り放題な鎮守府内を闊歩する、という大胆な行動はできないので断念した。

 

 上着をゆっくりと着て、ボタンを上からとめていく。

 

 残っている自分以外の温もりを少し意識して鼓動が速まるが、なるべく気にしないようにして

扉を開けて廊下へと出る。

 

「うぅ……やっぱり寒いな……」

 

 冷気が上着越しにも肌へ伝わってきて、全身に鳥肌を立てながらも工廠のほうへ歩き始めた。

 

 

 

 

  ……行っちゃった……

 

 司令官が後ろ手に閉めた扉の音を聞いた後、なんとなく寂しい気持ちになる。

 

 つい先程まで腕の中にあったぬくもりが、急にいなくなってしまったからだ。

 

 離したくないと思っていたのに、暁たちに見られるかもしれない、と思った瞬間に

恥ずかしくなってしまった自分が分からない。

 

 ただ暁にしてもらったことをしていただけなのに、どうして恥ずかしくなったりしたのか、

気持ちを落ち着かせた今でも分からない。

 

 自分で自分を抱きながら、残っている熱を感じ取る。

 

  どうして、あったかいのかしら……

 

 物理的な暖かさとともに、別の意味合いを持つであろう何かも感じた。

 

 そのままの姿勢で目を瞑って考えても、やはり答えは出てこない。

 

「……なに、してるんだい……?」

 

「わひゃ!?」

 

 唐突に声がかかってきたので驚いてしまい、座っているのにもかかわらず数cmほど

後ろへ下がってしまう。

 

「……声が大きいよ、雷」

 

「ご、ごめん響……」

 

 しかめっ面をしながら響が小さく言うと、やはり自分の声が大きかったのか、他の二人も

ゆっくりと体を起こし始める。

 

「もう、朝……?」

 

「おはよう、なのですぅ~……」

 

 二人が目を覚ましたのを見て、響がため息をつきながら話しかけてくる。

 

「やっぱり起きてしまったね。 朝だし、ちょうどいいんだろうけど」

 

「……そういってもらえて助かるわ」

 

 少し苦笑しながら答えると、暁から寝ぼけているような声がかかってくる。

 

「あれ、司令官は……?」

 

「今後の予定をたてるって言って、あのお爺さんを呼びに行ったわ」

 

「……わかったわ」

 

 暁は朝に弱いことを知っているので、分かっているような分かっていないような返事に

響も自分も突っ込まない。

 

 その代わりだろうか、響からつい先程聞いたような質問をしてくる。

 

「そういえば、さっき雷は何をしてたんだい?」

 

「え? さっき、って?」

 

「ほら、腕を掴んで目を閉じて、すごく嬉しそうな顔をしてたじゃないか」

 

「う、嬉しそう……?」

 

 響の言葉を聞いて、先程の自分を思い出してみる。

 

 確かに、あまり自覚はなかったが、頬がつりあがっていたような気がする。

 

 それを思い出した途端に顔が熱くなって、勝手に言葉が口から出てくる。

 

「ち、違うわ! 全然、少しも嬉しそうになんかしてないわ!」

 

「雷ちゃん、何してたのです?」

 

 自分の必死な反論を無視するかのように、完全には目が覚めていない様子の電が問いかける。

 

 響がこちらを見て少し笑った後、なんともわざとらしい口調で答え始める。

 

「こう自分を抱きしめながら、とても嬉しそうにしていたね。 見ているこっちも、

 段々と嬉しくなるようなとびっきりの笑顔で――」

 

「違う、違うわ! そんなこと、私はしてないわよ!」

 

「雷ちゃん、可愛いのです!」

 

「電、違うわよ! 私がそんなことするわけないじゃない!」

 

 自分は顔を真っ赤にして反論していることを自覚しながら叫び、それを見て響と電が笑い、

寝ぼけている暁はぼーっとしている。

 

 単冠湾にいた頃には滅多になかった、誰も気にせずに怒鳴ったり笑ったりするこの時間だけ、

胸の中には幸せで溢れていた。

 

 いつかこういう毎日が送れたらな、と無意識に思うほどに、幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり広いな……」

 

 工厰長を呼びに来た自分は、再び工厰の大きさに感心していた。

 

 どうして、国内でも最大と言われている横須賀鎮守府の工厰の倍以上あるのか、

と不思議に思えてならない。

 

 その事は後々工廠長に聞くことにして、当初の目的を果たすために中に入る。

 

 昨日と変わらずペンギン人形や錆びた艦載機などが散らばっているが、それらを無視して

初めて工厰長とあった場所へ向かう。

 

 そして、途中で少し悩みはしたものの、何とかその場所へついた。

 

 そこでは、工厰長が金槌を振ってカンカンと金属質な音を出しながら、何かを叩いていた。

 

「これで、最後じゃ!」

 

 その一言と共に金槌が大きく降り下ろされ、一際大きな音を響かせた。

 

「ふぅ~、久しぶりで疲れたわい……」

 

 肩を金槌でドスンドスンと叩いている工廠長だったが、こちらに振り向いて空いている

左手を上げて挨拶をしてくる。

 

「おぉ、お前さんか」

 

「あぁ、すみません。 お邪魔だったでしょうか」

 

「いやなに、ついさっき終わったところじゃ。 ほれ、新品同様にしてやったわい」

 

 そう言って工厰長が体をずらし、直したばかりだと言う艤装を見せてくる。

 

 だが、その艤装はどう見ても普通ではなかった。

 

「あの……これ、昨日修理を頼んだ艤装ですよね?」

 

「もちろんじゃ。 見てわからんかの?」

 

「あ、いえ、わかるんですが……」

 

 どうしても目の前のものに対して納得できず、頭をポリポリと掻いてから話を続ける。

 

「……どうしてこんなに『真っ黒』なんですか? 色がもう艤装じゃありませんよ」

 

 今自分が見ている艤装は、どこから見ても『黒』以外の色が見当たらないのだ。

 

 普通の艤装というのは多くが灰色で、あったとしても暗い藍色ぐらいだ。

 

 なのに、どれだけ目を凝らしてもその藍色以上、いっそのこと闇といってもいいぐらいに黒い。

 

「何言っとるんじゃ。 一緒に直した小さい主砲を見るに、あのお嬢さんらは駆逐艦。

 駆逐艦は、夜戦で活躍してなんぼの艦種じゃ。 そうじゃろ?」

 

「え、えぇ、そうですが……」

 

「夜の闇にまぎれて奇襲をかける。 そのためには、見つからないように行動するのはもちろん、

 身に着けている物の色も重要になる。 艤装の色だって含まれておる。 こういう色のほうが

 実際分かりにくいのは見ての通りじゃ」

 

 何年も前に習ったことのなかにはなかった情報に対し、工廠長が納得できるような説明を

してくれるので、案外素直に理解できた。

 

「……なるほど。 確かにそうですね」

 

「そうじゃろそうじゃろ。 それで、ワシに何の用じゃ?」

 

「あ……」

 

 工廠長に言われて忘れていた本題を思い出し、少々間抜けな声を聞いて呆れたような声色で

話しかけてくる。

 

「なんじゃ、忘れておったのか」

 

「……お恥ずかしながら……」

 

 雷に抱きしめられた時とはまた違う恥ずかしさを感じ、右手で頭を掻きながら答えた。

 

 それを聞いて、工廠長は肩を落としながら話し始める。

 

「はぁ……もう一度聞くが、何の用じゃ?」

 

「これからのことについて少し話し合いたいと思いまして。 司令室まで来てもらえませんか?」

 

「よし、わかった。 それじゃ、いこうかの」

 

 金槌を腰に吊られているポケットの中に入れ、賛同の意を示してくる。

 

 それを確認したところでしゃがみ、右手のひらを上にして工廠長の目の前へ差し出す。

 

 背が人間より極端に低く、司令室までは遠いだろうと考えたからだ。

 

「乗りますか、工廠長?」

 

「気が利くの。 それじゃ、失礼して」

 

 そう言って工廠長は中指の先からよじ登り、登ったのを確認してからゆっくり立ち上がる。

 

「では、行きましょうか」

 

「おぉ。 よろしく頼む」

 

 工廠長が返事をしたのを聞いて、右手をなるべく動かさないようにしながら歩き始めた。




 あぁ~、三人称視点が書きたいな~。

 そんなことを思いながら書いた第10話でした。

 三人称視点、便利だとは思うんですが、私ではまだ力不足で全然書けません。

 というより、書き方が分かりません。

 他の方の作品でも、一人称視点を用いていることが多いですし。

 こんなことを書いていてあれなのですが、三人称視点に変えることはまずありません。

 やむを得ず書くことがあったら、前書きで厳重注意させてもらう予定です。

『今回、三人称視点で読解不可能な文がでてくるかもしれません』といった具合に。

 いつか修行して書けるようにしたいです。

 それでは、いつものことながら長々とした後書きでしたがこの辺で。

 今回は展開が遅かったですが、次回はもう少し進めようと思っています。

 第11話、明後日には投稿できるように頑張ります!
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