駆逐艦しかいない鎮守府   作:鼠返し

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 みなさん、お久しぶりです。 やっとニートから脱出できた鼠返しです。

 学校が始まって4日ほどが経過したわけですが、正直だるくて仕方ありません。

 勉強嫌いだああぁぁぁぁ! とか叫んだら母に怒られました。 解せませんね、ほんと。

 ちょっと……いや、かなり間が開いてしまいましたが、なんとか投稿できました。

 文字数も1000文字くらい多めです。 ……あんまり増えてませんね、すみません。

 今回のお話は、書いてみたかった響と電の会話がメインです。 そのため、(一応)主人公の
新米提督は出てきません。 あらかじめご了承いただけたらと思います。

 一通り注意が済みましたので本編へ移りたいと思います。 それでは第13話です!


第13話 響の決意と電との過去

   ……恥ずかしかったな……

 

 誰も見ていないとわかっているのに、帽子を深くかぶって足元を見ながら

電と工廠長の元へ早歩きで近づく。

 

 左手で帽子の鍔を持ち、右手で先ほど司令官に撫でられた所を押さえる。

 

  撫でられるって、こんなに暖かいんだ……

 

 そして、撫でられるという初めてのことに惚けていた。

 

 今まで、自分は撫でられるということはなく、昨日の電の時のように撫でる側だった。

 

 艦娘としてこの世に生を受けた時、不思議と自分が『駆逐艦 響』と『駆逐艦 Верный(ヴェールヌイ)

であった頃の記憶が存在していた。

 

 自分は歴代の艦長に操られるのではなく、自分の意識そのもので動く体があることに

何度も驚かされた。

 

 そして、自分と同じようにしている暁を始めとする、あの第六駆逐隊が全員揃っていることに

互い喜びあい、そして自分は泣きじゃくる姉や妹を撫で続けたものだ。

 

 暁はガダルカナル島沖で集中砲火を受け、雷は人知れず単艦行動中に潜水艦の魚雷で、

電は護衛任務中に自分と持ち場を交代した直後に目の前で、それぞれ沈まされた。

 

 暁と雷は仕方ないと無理矢理に理解したが、目の前で沈んだ電のことは、ソ連へ引き渡された

後ですら、乗り越えられなかった。

 

 大切な妹を沈めた敵を、約6400m、たった三海里半という短い距離にいたのにも関わらず、

みすみす逃してしまったのだ。

 

 後部が二つに折れてゆっくりと沈んで様を、何もできずに見ていただけだった。

 

  だから、だからこそ、私は……!

 

 当時何もできなかった分、艦娘となって生まれ変わった今、電と同じ事を繰り返さないよう

自分自身を奮い立たせた。

 

 もう二度と、目の前で大切な存在が消えていくのを見たくないから。

 

 と、その時――

 

「ぐっ!?」

 

 突然、頭に衝撃が走った。

 

 上下左右に不規則に視界が揺れ、バランスがとれずに後ろへ倒れて尻餅をついてしまう。

 

「痛たた……」

 

 痛む腰と額を同時にさすりながら前を見ると、点々と黒いしみが付いている壁があった。

 

 どうやら、考え事をしながら歩いていたために、壁に気づかず激突してしまったようだ。

 

「だ、大丈夫なのですか!?」

 

 右から声が聞こえたので顔を向けると、ドタドタと足音を立てながら電が走ってきていた。

 

 その顔は今にも泣き出しそうな表情をして焦っているようで、自分の身を案じてくれているのが

誰が見ても良く分かりそうだ。

 

 そんな妹の表情をやわらげたくて、未だぐらぐらと揺れる視界の中、壁に縋るようにして

なんとか立ち上がる。

 

「へ、平気だよ……ちょっと考え事をしてただけ」

 

「で、でも、すごい音がしたのです……」

 

「これくらい、どうってことないさ。 それより、早く工廠に行こう」

 

 余計な心配をかけないように歩き出すと、安心したのか電はほっと息を吐き、

横に並ぶようにしてついてくる。

 

 ほぼそれと同時に、前方から声が聞こえてくる。

 

「小さいお嬢さん! ワシになんてことをするんじゃ!」

 

 真っ直ぐには誰もいなかったので下に視線を移すと、腰に手を当てて頬を膨らませながら

怒っている工廠長の姿があった。

 

 ぷんすかという表現がぴったり合っているような怒り方だったが、右隣にいる電は弱気な

性格のため、大げさではないかというぐらいに身を震わせる。

 

「は、はわわわ……つい、投げちゃったの、です……」

 

「つい、とはなんじゃ、ついとは!」

 

「あの、あの……響ちゃん、怖いよぉ……」

 

 工廠長に再び怒られた電は、今にも泣き出しそうな顔をしながら自分の服の袖を掴んできた。

 

 言葉では少し言い表せない感情を抱きながら、無意識に冷ややかな目で工廠長を見つめる。

 

「な、なんじゃい、白いお嬢さん……」

 

 工廠長は少し言葉に詰まって顔に少し冷や汗を流しながらも、態度そのものはあまり変えずに

話しかけてくる。

 

「とりあえず説明。 なんで投げられたの?」

 

「いや、その……何かぶつかる音が聞こえて、振り向いたと思ったら投げられて、小さい

 お嬢さんはお前さんに向かって走って……と、ともかく、ワシは何も悪くない!……はずじゃ」

 

 最後に言い切ろうとしたようだが、偉そうに話すので視線の冷たさを増してやると、

最後に少しだけ自信なさげな言葉を付け加えた。

 

 自分の頭の中で状況整理をして、二人が自分に注目している中で口を開く。

 

「はぁ……今回は電が悪いよ。 ほら、いつまでも私にしがみついてないで、ちゃんと謝って」

 

 できるだけ優しく声をかけると、電は自分の背中に隠れながら口を開く。

 

「あ、あの……ごめんなさい、なのです……」

 

「……うむ、まぁ、許してやらんこともないかの」

 

「偉そうな態度は嫌いだな。 特に電を泣かせるような態度は」

 

「……すまんかった」

 

 またもや大きな口を叩いてきたので、途中で努めて冷ややかに言葉を放つと、工廠長は

冷や汗の量を増やしながら肩を落とした。

 

「これぐらいにして、そろそろ工廠に行かないといけないな」

 

 二人に言い聞かせるようにして歩き出すと、工廠長が電に近づいて手のひらに乗り、工廠までの

道のりを歩き始めた。

 

 そして、数分もかかることなく工廠へとたどり着き、工廠長の案内で奥まで案内された。

 

「よし、それじゃあ早速艤装の調整からいこうかの。 白いお嬢さん、それを背負ってくれ」

 

 そう言って、工廠長は『黒い何か』を指差して指示してくる。

 

「……あれは何かな?」

 

「ん? 艤装じゃが」

 

「い、色が艤装じゃないのです……」

 

「がっはっはっは! お前さんらの提督にも言われたわい! さあ、早くつけとくれ」

 

 豪快に笑いながら軽く流され、促されるままに艤装だという物を背負い、足にも水上浮遊の為の

艤装を装着する。

 

 通常は様々な装置などを使って半自動的に装着するのだが、こうやって手作業で装着することも

調整などでたまにある。

 

 暁のであろう艤装を背負うと、多少は違和感があるだろうと覚悟していたのだが、さすが同型艦

というべきか違和感はほとんどなく、足の方は自分のものとまったく変わりなかった。

 

「意外とこのままでもいけるかも」

 

「さすが姉妹艦じゃな。 ま、一応微調整はしとくぞ」

 

 レンチを片手に艤装の装着具合を見てもらい、肩のベルトを少し伸ばしたこと以外は、

主砲の位置を少し高くしただけですぐに終わった。

 

「さて、次は小さいお嬢さんじゃな」

 

「あの……お嬢さん、って言いにくくないですか? 名前で呼んだほうが……」

 

 おずおずとした様子で電が話しかけると、工廠長は少し首を傾げて考えた後口を開く。

 

「うむ、まあそうじゃろうな。 そういやまだ名前を聞いとらんかったの」

 

「私は響で、こっちが電。 司令官と一緒に行ってる、黒髪のほうが暁、電と良く似てるのが雷」

 

「響に電、暁に雷じゃな。 よし、覚えたぞ!」

 

 自信ありげな表情で腰に両手をあてながら大きく頷き、それを何度も繰り返してから顔を上げて

話を続けてくる。

 

「おぉそうじゃ。 電の艤装は外に転がっとったから勝手に回収させてもらったぞ」

 

「はわわ! も、申し訳ないのです……」

 

「ま、壊れとったから直したんじゃが、時間の都合上で黒くはできんかった。 すまんの」

 

「黒くする必要はないと思うのです……」

 

 もっともな意見を電が口にすると、工廠長は落胆するようにため息を一つ吐いた。

 

「まったく、電も提督と同じようなことを……そういえば、提督の名前はなんじゃ?」

 

「名前はないそうだよ。 私達にも理由がわからない」

 

「……ま、名前が分からんでも不自由はせんし、大丈夫じゃろ。 それじゃ、修理したばっかり

 じゃから、調整をしとこうかの」

 

 自分と同じように指示されて電は艤装を装着し、問題がなかったのかどこも調整することなく

点検だけで終了した。

 

「よし、これでいつでも出撃できるぞ。 ハッチは左にずっと進んだら見えてくるはずじゃ」

 

「ありがとう、工廠長。 電、行くよ」

 

「はい、なのです!」

 

「ワシも空から見とる。 何か用があったら、手でも振ってくれたら着水して話を聞いちゃるぞ」

 

「悪いけど頼んだよ」

 

 返事を返し、工廠長が頷いたのを確認してから電と共にハッチへと向かう。

 

 そして言われた通りに進んでいくと、小さいながらもちゃんとしたハッチが見えてきた。

 

「それにしても、無駄に広い工廠だね」

 

「少し疲れたのです……」

 

 工廠長と別れてから1分ほどかかり、歩いた距離は体感で100mぐらいだ。

 

 しかし、今は司令官に言われた通りに哨戒をするのが先決である。

 

「さて、そろそろ……響、出撃する」

 

「行くのです! 出撃です!」

 

 ハッチの坂を滑るように下り、両足同時に海水へと着水させると同時に艤装を起動させ、慣れた

浮遊感が両足から伝わってくる。

 

 そのまま感覚を確かめるようにゆっくりと前進し、工廠から出た辺りで止まる。

 

「お待たせしたのです」

 

 自分に少し遅れて電がやってきて、自分と向き合うように前に回り込み旋回して停止する。

 

「調子はどう?」

 

「ばっちりなのです! 響ちゃんはどうなのです?」

 

「色が黒いのが気になるけど、他はなんともないよ」

 

 視界の右端から伸びている、背中の艤装の12.7cm連装砲の真っ黒な砲身が少し目障り

だが、少しすれば慣れるだろうと考えて我慢する。

 

「それじゃあ、哨戒を始めようか。 この島を周回する感じで行こう」

 

「はい、なのです」

 

 電が頷き、自分と並行して前進し始める。

 

 鎮守府近海では、今いる場所から見渡す限り岩礁すら見当たらず、水平線にはうっすらと島が

見えるか見えないかという、何もない海域だった。

 

 索敵がしやすそうだ、と慣れた考えとともに周りを警戒しながら進んでいると、

電から声がかかってくる。

 

「……なんだか、あの時を思い出すのです。 電が沈んだ、あの時のことを……」

 

「シブツ海峡に差し掛かった時のことだね……мне жаль(ムニェジェン)。 

 あの時、私と交代してなかったら、電は……」

 

 電は、沈む直前に自分と位置を交代したばかりだった。

 

 交代した直後に米の潜水艦『ボーンフィッシュ』の魚雷が命中し、見る見るうちに後部が

二つに折れて沈んでいった。

 

 もしあの時に交代していなかったら、代わりに自分が沈み、電は助かっていたかもしれない。

 

 ソ連に引き渡された後でも、一日に何回も後悔の念でいっぱいになったのだ。

 

「……仕方ないのです。 いくら気に入らない結果でも、そうして沈んだのが運命だったのです。

 響ちゃんは、何も悪くないのです」

 

「でも、私は仇を取れなかった!」

 

 いつの間にか感情が荒ぶっていて、言い訳をするように叫んだ。

 

 いきなりの自分の変化に驚いた電の次の反応を待たず、口から言葉が溢れ出てくる。

 

「たった、たった三海里先にいたんだ! それなのに、反撃も何もできずに電が沈んでいくのを

 ただ見てるだけで、何もできなくて……!」

 

「ひ、響ちゃん、落ち着くのです! だから、何も悪くないのです!」

 

「目の前にいたのに助けられなくて何がお姉ちゃんなんだろう、って今でも思ってる……

 ほんと、お姉ちゃん失格だよ……」

 

 自分自身に嫌気がさして吐き捨てるように言うと、電は両手で左手を握ってきた。

 

「そんなに後悔してるなら……今度は、ちゃんと守ってほしいのです。 それで十分なのです」

 

「あ…………」

 

 弱々しいと思っていた妹が、自分の死を乗り越えてこんなにも強くなっていることに、感慨と

ともに息を飲まざるを得なかった。

 

 本人が乗り越えているのに、他人がそれを引きずっていては笑い話にもならない。

 

 そう思い、握られた手を握り返しながら返事を返す。

 

「……わかった。 もう、電を沈ませない」

 

「頼りにしてるのです、お姉ちゃん!」

 

「……うん」

 

 お姉ちゃんと言われた瞬間、妙に照れくさくなって声が小さくなってしまった。

 

 少しの間手を握り合ったまま沈黙が訪れるが、それを不意に破る音が響いてきた。

 

 その音は鎮守府から飛び立つ艦載機のエンジン音で、すぐ自分たちの真上を通って大きく旋回を

始め、姿が段々と小さくなっていく。

 

「……そろそろ、哨戒に戻ろうか」

 

「……さぼったらだめなのです」

 

 お互いの手を握りあったまま苦笑いを交換し合い、どちらともなく手を離す。

 

「……今度は、必ず守ってみせる」

 

「何か言ったのですか?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

 艦娘として生まれ変わった今、二度と大切な姉や妹を沈めさせない。

 

 そう改めて決意しながら、電と哨戒を再開し始めた。




 というわけで、わかるとは思いますが忠実を重視してみた13話でした。

 いや~、知識不足とは怖いものですね。 この話を書くだけで履歴がWikipediaだらけになってしまいました。 「何やってるんだ」と母に怒るを通り越して呆れられました。 いい勉強に
なったので後悔も反省も全くしてませんが。

 そういえば、今更気づいたのですが、『どこまでも響くハラショー』という響のキャラソンが
出ているようですね。

 聴いてみたら、唐突のハラショーで腹筋が崩壊寸前までいったかと思ったら、歌詞を読んで
涙腺が大崩壊してハンカチがびしょ濡れになってしまいました。

 あれですね、響じゃなくてヴェールヌイのキャラソンって感じですね。 どちらも響には
変わりないので私としては別にいいんですが。 むしろどんと来いって感じです。

 では、今回はこの辺で失礼させていただきます。 次回は、もちろん未定です。

 なるべく早く投稿できるように努力するので、楽しみに待っていただけたらと思います!
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