最近ボーキの減りと鋼材の増えすぎに困ってます。鋼材60000とかどう使えっていうん
でしょうか……ボーキは15000なのに……
さて、真面目に前書きにいきましょう。今回も短いです、はい。そして、また新米提督がどこか
に消えました。
題名通りの入渠ですが、妖精さんと響たちだけです。全部シリアスで流血表現も少しあります。
その点に留意してお読みください。
それでは本編です、どうぞ。
ガラガラと扉を開け、布一枚を持って浴室に入る。
左では自分と同じように裸の暁に支えてもらい、右の足元では工廠長が歩いている。
情けないと思いつつ歩いていると、浴槽内で電を支えている雷から声が飛んでくる。
「あ、響? おかえ……」
最初は明るかった声が、自分の姿を見ると同時に暗くなり失速した。
表情も声と同様に暗くなり、少しの間何も音がない時間が過ぎる。
「……その怪我、大丈夫なの?」
「入渠すれば、大丈夫……」
雷にそう返し、暁を頼りながらシャワーの前までいき、またもや手伝ってもらいながら体の汚れ
を落とす。
暁にタオルで優しくこすってもらってはいるが、傷があるところをこすられる度に声が漏れて
しまう。
「大丈夫、響?」
「あぁ……続けて……」
右腕の傷以外を洗い終えて立ち上がり、唯一使える浴槽の所まで歩く。
雷は電と向かい合い、背中を浴室の内側へ向けるように抱えているため、痛々しい火傷の跡が
目に入る。
見たところ血はあまり出ていないようだが、傷の規模としては電の方が大きい。
痛みだけで言えば、自分と同じかそれ以上だろう。
辛かったね、電……
心の中で電をねぎらい、近くにいるであろう工廠長へ声をかける。
「工廠長、入ってもいい、かな……?」
「あ~、もうちょい待ってくれ」
声が後ろから聞こえて首だけで振り返ると、長めの紐を2本ほど持ってきていた。
「雷、電を奥に移動させてくれ」
雷は工廠長の指示に無言でうなずき、電をゆっくりと奥の方へ動かした。
すると一本だけ紐を持っていき、工廠長は素早く壁際のパイプと電を結んで固定した。
「もういいぞ、雷」
「うん、ありがとう」
小さく礼を言いながら雷は浴槽から上がり、腕のストレッチを始める。
大方、交代せずにずっと電を浴槽内で支えていたのだろう。
「お疲れ、雷」
「う、うん。 響もお疲れさま……」
自分の言葉に反応してくれたが、やはり目は右手の傷を見ていた。
「別に、死ぬわけじゃない……大丈夫」
雷に言葉をかけると、少し安心できたのか顔に余裕が出来たのがわかる。
何とか笑顔を作ってもう一押しし、視界の隅で手招きしている工廠長の元へ向かう。
「……ありがとう、響」
「……
脱衣所へ歩く雷と短く言葉を交わし、暁を頼りにしながら浴槽の目の前までたどり着く。
「じゃ、ゆっくりと入れてくれ。 右手は浸けずにな」
「うん。 響、ちょっと我慢してね」
体に腕を回され、足が浴室の床から離れる。
もちろん持ち上げられる時に痛みはあったが、右手に比べれば無いも同然だった。
工廠長の指示通り、暁はゆっくりと自分の体を湯船に沈めていき、やがて肩まで浸る。
すでに慣れた傷にしみる痛みと、寒い浴室内では十分な湯の温かさが右腕以外の全身を包む。
浴槽の壁にもたれかかり、手のない腕をタイル張りの床へ置くと、電と同じ紐を持った工廠長が
近づいてきた。
「じゃ縛るぞ。 きつかったら言ってくれ」
自分が頷くのを確認すると、床にあった不自然な突起に紐を引っ掛け、あっという間に体が固定
された。
試しに全身の力を抜いてみると、やはり紐のおかげで沈まない。
「どうじゃ?」
「いい、感じ」
「そりゃよかった。 それじゃあわしは……おっと、忘れるところじゃった」
独り言を呟き、工廠長は船渠から繋がっている部屋へ入っていく。
何をするのだろうかと考えていると、拳銃のようなものを持って帰ってきた。
「何かあったらこいつを鳴らせ。 引き金引いたら空砲が鳴るようになっとる」
カチャリ、と自分の左手が届く範囲にそれを置き、また独り言をぶつぶつとつぶやいてから話し
かけてくる。
「それじゃ、提督と話をしてくるわい。 暁、行くぞ」
工廠長は暁に呼びかけると、浴室を出て行った。
「……暁? 行かないのかい……?」
工廠長が出て行った扉から視線をずらすと、暁が一点を見つめ続けていることに気づいた。
「その……早く、治るといいわね」
「いつか、治るさ……ほら、工廠長が、待ってるよ……?」
「うん……頑張ってくれて、ありがとう」
それだけ言うと、自分の反応を待たず浴室から出て行ってしまった。
「…………」
浴室に、自分と電だけが残された。
聞こえてくるのは窓の外の小さな波の音と、扉の向こうの衣がすれる音だけ。
何もすることがなく、向かい合っている電の様子を見てみる。
背中は先ほど見た通りだろうが、他は入渠して時間が経っているのか傷一つない綺麗な肌に
なっている。
そして、今は寝ている。
血の気がない顔だが、微かに寝息を立てながら浮かべるとても柔らかい表情が微笑ましい。
……帰りたくないな……
電の寝顔を見ながら、ふとそんなことを思った。
あの場所に帰れば、この顔が消えてなくなる。
司令官がいた横須賀でも、誰もいない何もない無人島でもいい――あの人がいない、どこかへ
行きたい。
軍規違反になろうが構わない、いつか深海棲艦に沈められるとしても構わない。
自分たち四人で幸せに生きていければ、それで――
……いや、何を考えて……!
自分の思考があらぬ方向へ行きそうになり、軽く頭を振って考え直す。
先の事を考えても、今がどうしようもなければ意味がない。
今は、この傷を治すことだけを考えるべきだ。
「早く、治さないとね……電……」
半分自分に言い聞かせながら、寝ている電へ話しかける。
当然返事は帰って来ないが、何故か心が安らいだ。
体から何もかもが抜け落ちていく様な感覚に襲われ、同時に強烈な眠気が襲ってくる。
今は、休もう……
目を閉じ、真っ暗な闇の中へ落ちて行く。
湯の温かさと、自分の思考に包まれながら。
最後の締め方がよく分からぬ……そんな感じで書いた21話でした。
いちゃいちゃが書きたいのに何故かシリアスに走ってしまうんですよね。最近萌えよりかっこ
いいを追及しているのが原因です。かっこいい艦これでググったり某イラスト投稿サイトを延々と
渡り歩くことに快感を覚え始めました。
いちゃいちゃを期待している方には申し訳ないですが、当分の間はシリアスのオンパレード
です。いつか必ず入れますので、その点はご安心してください……ほんとです、本当に入れます。
それではこの辺りで。次回は来月中です。それまで季節を感じながら待っていただければ幸い
です。