駆逐艦しかいない鎮守府   作:鼠返し

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 や、約二か月ぶりの鼠返しです。どうもお久しぶりです。

 行事やら何やらで忙しく、一文字も書けない日があったりしましてこんなに遅くなってしまい
ました。申し訳ないです……。一か月に一回は投稿できるようにするのが来年の目標です。

 ではでは前書きへ。サブタイトルのネーミングセンスの無さは無視していただいて、今回も長く
もなく短くもないと思います。かなりソフトではありますが、残酷描写が混じっておりますので
ご注意を。

 この辺りで本編に入りましょうか。第24話です、どうぞ。


第24話 艦載機製作と入渠終了

「ねえ、これってここでいいの?」

 

「そこ入れて止めといてくれ」

 

 十分割された艦載機のエンジンを、工廠長の指示に従って機体へ収めていく。

 

 作業を始めて何時間経ったかわからないが、明るかった外が夕焼けに変わるほどには続けて

いる。

 

 現在は両翼を繋ぎ合わせ、製作の終わったエンジンを積んでいる所――ではあるが、その

エンジンが大きすぎて四苦八苦していたりする。

 

 工廠長に「10個に分けとるから大丈夫じゃ」と言われて安心していたのを裏切るかのごとく、

一つ一つが自分の体を半分以上隠すほど大きかった。

 

 燃料を浪費しないように本来の身体機能のみを使い、やっと全部を運び終えて分割された

エンジンを繋ぎ合わせていく。

 

 レンチを片手に新品の鉄と綺麗な油の匂いのする機体へ潜り込み、ギリギリと音を立てながら

ボルトを締めていく。

 

 だが、ただ単に繋ぐだけと言っても簡単ではない。

 

  ここが燃料の管で、こっちが油圧とかのだっけ……あ、あれ……?

 

 ごちゃごちゃしていて、どことどこをくっ付ければいいのか、素人に毛が生えたような自分の頭

では判断できない。

 

 一応設計図をもらってはいるが、専門用語に記号、おまけに手書きと、読むだけで目が痛く

なりそうなものを読んでもさっぱりだ。

 

「ほれ雷、何固まっとるんじゃ?」

 

「わからないのよ、複雑すぎて」

 

「ふむ、ちと難しかったかの」

 

 エンジン間から這い上がってきた工廠長と少し話すと、また潜り込んで作業を始めた。

 

「雷、ちょいとエンジンつけてくれんか?」

 

「は~い」

 

 再び顔を見せた工廠長に指示され、つるつると滑る機体の上を通ってコクピットへ移動する。

 

 よじ登ってコクピットを眺め、訳が分からずため息を吐く。

 

 二座や三座といった艦載機は耳にしたことはあるが、この機体は何故か『七座』もあるのだ。

 

 作成者曰く「一艦隊を空中投下できたらかっこええかなぁ~、なんての?」と言っていたが、

一駆逐艦である自分には到底理解できなかった。

 

 一体工廠長は、船を空から落として何がしたいのだろうか。

 

 様々な思いを馳せながら再度深くため息を吐き、工廠長が安全な場所に移動しているのを確認

し、装置を弄って始動させる。

 

 プロペラはまだ付けていないため、一昔前の車のようなエンジン音が工廠中に響き渡る。

 

「ねぇ、どうなの!?」

 

 巨大な音の波にかき消されないよう、大声で工廠長に話しかける。

 

 少し間をあけて「大丈夫じゃ!」と返してこちらへ向かってきた。

 

「両翼も確認しとこうかの。 こいつを適当に弄ってくれ」

 

 工廠長に言われた通り、操縦桿と思われるレバーを上下左右に動かしてみる。

 

「へぇ、こんな風に動くんだ……」

 

 自分が動かせば、それに合わせて翼の一部分がガコガコと動く。

 

 楽しくなり少し続けていると、今度は別の指示が飛んでくる。

 

「次はフラップじゃ。 そこのつまみを」

 

 指さされた所を見てみると、『上昇』『戦闘』『着陸』の三段階に分かれているつまみが

あった。

 

 言われるがまま、つまみを『上昇』から『戦闘』まで動かす。

 

 低く唸るように駆動し、先程動いた部分とは別の所が動いた。

 

 少し感動しながら『着陸』に切り替え、動いたことを確認して元の『上昇』に戻す。

 

「順調じゃな。 さて、日が暮れそうじゃし、今日はここまでにしようかの」

 

 ひょこひょこと動きながらエンジンを切り、工廠長は大きく背伸びをした。

 

 それにつられるように自分も体を伸ばし、座席にドスンと座り込む。

 

 今日一日で、左翼、エンジン、座席の作成、エンジンと両翼の連結、動作確認と、かなりの量の

作業をこなした。

 

 自分が手伝ったとはいってもごく簡単な事しかしておらず、ほとんど工廠長が一人でやって

しまった。

 

 作業が少ないにもかかわらず、全身に力を入れにくくなるほど疲れてしまった。

 

 自分がこうなっているのに、手が一時も止まらなかった工廠長はどれほど疲れているの

だろうか。

 

 そんな疑問とは裏腹に、工廠長は元気そうな様子で話しかけてくる。

 

「ほれ、休むにはちと早いぞ。 響らの入渠がそろそろ終わるころじゃ」

 

「それもそうね……っと」

 

 気合いを入れ直して立ち上がり、もう一度体全体の筋肉を伸ばしてほぐす。

 

 先に降りた工廠長に続き、自分も降りて工廠長の手のひらへ乗せて歩く。

 

「後どのくらいで完成しそうなの?」

 

「ん~、しっぽと銃座4つじゃな。 明後日には終わるわい」

 

「ま、まだ人を乗せる気なの……?」

 

「迎撃装備も重要じゃろ?」

 

 にこやかに答える工廠長を見て、「はぁ……」とため息しか出てこない。

 

 工廠長の飽くなき向上心はどこまでいくのだろう、と考えていると、素朴な疑問がわいてきた

ので遠慮なくぶつけてみる。

 

「思ったんだけど、今作ってるあれって艦載機よね?」

 

「もちろんじゃ。 それが?」

 

「あの大きさで船に載せれるの?」

 

「…………あ」

 

 口をポカンと開け、工廠長は冷や汗を流しながら固まってしまった。

 

「……べ、別にそのまま持ってくわけじゃないし、矢か紙っぺらに変えりゃ問題ないはずじゃ、そうじゃろ? そうじゃろ雷!?」

 

「誰に言い訳してるのよ。 空母じゃないんだから分かる訳ないじゃない」

 

「う"……」

 

 身を引きながら濁った声を出した後、あせあせと落ち着きなく手の上で動き始める。

 

 ぶんぶん頭を振ったりのけぞったりして「ぬ、ぬおぉぉ~……」と悶えている工廠長を見ている

と、声以外はまるで愛くるしい小動物を眺めているようで心が落ち着く。

 

 思えば、単冠湾にいる時はほとんど妖精たちと話していた気がする。

 

 皆おもしろくて、気さくで、今の工廠長みたいに子供っぽかったり、と話しているだけで楽しく

思える。

 

 艦娘は沈んだ軍艦の魂であるのに対して、妖精さんは一緒に沈んでいった人たちの思念の塊では

ないかと言われている。

 

 艦娘とは違って本人たちは自覚していないが、自分は事実だと思う。

 

 そうでなければ、話が合い、よく理解してくれ、どことなく懐かしい感じる理由が見当たら

ない。

 

 一時期は人間なんていらないと思っていたが、今は胸の中に留めるだけにしている。

 

 実際に自分たちを指揮して国を『守らせて』いるのは、他でもない人間だ。

 

 どこまで突き詰めても兵器である自分たちは、弱々しく吠えることも許されない。

 

  ははっ、何考えてるんだろ、私……

 

 勝手に頭の中で考えが脱線に脱線を重ねたようにそれていくことに、悪い癖だ、と自虐気味に心

の中で笑う。

 

 手の上では依然としてまだ工廠長は考え込んでいる最中で、暗くなっていたであろう自分の顔を

見られていないことにほっとした。

 

 百八十度違う事を二人で考えているうちにいつの間にか進んでいたらしく、船渠の目の前まで

来ていることに気づき、扉を開けて脱衣所へ入る。

 

 工廠長を降ろして服を脱ぎ始めると、先にてこてこと浴室の方へ歩いていく。

 

 すぐに自分も体にタオルを巻いて続き、二人が入っている浴槽まで歩く。

 

「…………」

 

 電は寝ていたが、響は起きて右手の傷口を見つめていた。

 

 表情も変えず、何かを考え込んでいる顔をして微動だにしない。

 

「響。 調子どう?」

 

 話しかけながら近づくと、響は自分の存在に初めて気づいたように振り向いた。

 

「あぁ、雷。 もうここ以外は全部治ったよ」

 

 手首から先のない腕を上げながら、いくらか血の気が戻ってきた顔で言葉を返してきた。

 

 いつもと近い響に戻ったことにほっとしながら、なんとなく会話を続ける。

 

「いつ治せるの、それ」

 

「さぁね。 司令官か工廠長に聞けばわかるんじゃないかな」

 

「そう……もう、そんなになるまで無茶しないでよ?」

 

「……できるだけ気を付けてみるよ」

 

 静かに話している傍らで、工廠長は寝ている電を起こしにかかる。

 

「おーい、いなづまー」

 

 呼びかけながらぺちぺちと頬を叩き、それに反応した電がゆっくりと目を開けた。

 

「……?」

 

「調子はどうじゃ?」

 

 寝ぼけているのか数秒ほどぼーっとし、その後水中で背中に手を回して頷いた。

 

「そうかそうか。 雷、ちょいと電を支えといてくれ」

 

 工廠長の指示に一つ頭を上下させ、浴槽に入り電の両脇をもって支える。

 

 入渠する前のがさがさの肌ではなく、見た目相応の若々しい弾力を持った肌の感触が伝わって

くる。

 

 何か話そうかと電の顔を見るが、まだ眠たいらしくこくりこくりと頭を揺らしていた。

 

 電も暁同様、寝起きに弱いのだ。

 

 可愛らしい行動を眺めていると、工廠長が縄をほどいて素早く片付ける。

 

「お主はどうじゃ、響」

 

「問題ない。 できればこっちも治したかったかな」

 

「駄目じゃ。 明日以降、様子を見てからな」

 

 右腕を振りつつ響が問うが、工廠長は軽くあしらって縄をほどいた。

 

 自由になって体を伸ばしている響の隣で、ぱんぱんと小さく手を鳴らして工廠長は声を出す。

 

「さて、お主ら上がるぞ。 響、一人で上がれるか?」

 

「まあ、なんとか」

 

 自分の答えに大きく頷き、工廠長は満足げな感じで脱衣所へ向かった。

 

 それに続くように響が片手で起用に浴槽から上がり始め、電と一緒に自分もならう。

 

「ほら電、上がるわよ」

 

「はぃ……ふぁ~……」

 

 寝ぼけている電の体を支えて上がり、響と一緒に脱衣所へ行く。

 

 がらがらと扉を開けると、工廠長が小さい体で浴衣らしきものを用意していた。

 

「どうしたの、それ」

 

「二人とも替えの服がないじゃろ。 しばらくはこいつを着たらええ」

 

 自分の質問に答えながらロッカーの籠の中から浴衣を引っ張り出し、二人分の用意を済ませた。

 

Спасибо(スパスィーバ)

 

「え、んむっ? なんじゃと?」

 

「ありがとう、だって。 響はロシア艦でもあったから、癖で出ちゃうのよ」

 

「は、はぁ……」

 

 響のいきなりのロシア語に困惑する工廠長を横目に、三人で服を着替えていく。

 

「…………?」

 

「あぁ、電は私がやるから待ってて」

 

 未だ眠気から解放されない様子の電が浴衣の帯で遊び始めるのを制し、自分だけ普段の服を身に

まとい、電の着替えをする。

 

 背中の部分が大半無くなって焦げている服を脱がし、浴衣の腕を通させて帯へ手を伸ばす。

 

 ここまでは順調にできたが、肝心の帯をどうまくかわからないことに今更気づいた。

 

「あれ? え~っと……ん~?」

 

 ばっ、ばっ、と慌ただしく帯を巻いてみようとするが、わからないものはわからない。

 

「左襟が上側だ。 それだと死人になる」

 

 頭を悩ませていると、背後で響の声がした。

 

 反射的に振り返ると、帯まで完璧に締め終えた浴衣姿の響が立っていた。

 

「か、片手でよくできるわね……」

 

「掴めなくても押さえることはできるからね。 ほら、帯貸して」

 

 言われた通りに帯を渡すと、襟を入れ替えて片手とは思えない速さで電に帯を巻いていく。

 

「電、きつくないかい?」

 

「はい、なので、す……」

 

 帯の締め具合を聞くとさらにスピードが上がり、30秒とかからず完璧な浴衣姿がその場にもう一つ増えた。

 

「さて、と。 これからどうするんだい、工廠長」

 

「提督と話をする。 寝る。 以上!」

 

「簡潔にありがとう」

 

「……何かつっこんでくれんか?」

 

 苦笑いしながら、工廠長は小さい体で船渠の扉を開けた。




 そうだ、雷にダメ提督にしてもらおう(提案)。そんな感じで書いた24話でした。

 さて、これからやはり本編無関係の後書きが始まります。前回のイベントについて少し述べます
ので、興味の無い方は最後までスクロール推奨です。

 イベントが終わったわけでありますが、提督の皆さんはいかがだったでしょうか? 私は……
今回、晴れてやっと甲提督の仲間入りを果たしました。長かった、非常に長かった……

 甲攻略したからといって、新艦娘が全員集まったわけではないんですよね。E-4を掘り続けて
出てきたのはまるゆに飛龍に蒼龍……目当ての『Graf Zeppelin』とは邂逅できなかった……
まぁ、轟沈艦を出さずにイベント終了を迎えられたので結果オーライです。

 次回のイベントに備えてバケツを蓄えながら、今回はこの辺りで。次回は来月中を予定して
います。皆さん、よいお年を!
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