前回から約1週間……私に何があったかというと、お気に入り数が伸びて調子に乗っただけ
です。ただそれだけです。
さてさて、今回は期間が短い割には分量は5000と多いです(他のと比べれば少ないです
が……)。血が出てくるような表現は今回はありませんが、駆逐艦要素がどこかへ消え失せて
しまいました。駆逐艦メインの小説で出さないとは……まぁ、こんな話があってもいいよね
(現実逃避)……
では26話です。お楽しみください。
よく似た二人が、自分を不思議な目で見ている。
「「「…………」」」
何も話せず時間が過ぎていくと、いきなり自分の膝がかくんと折れ、したたかに床を打った。
「……っ!」
原因は、力が抜けたというわけではない。
手に持っている、拳銃の重量が異常に増したためだ。
支えきれず握ったまま床へ落とした拳銃は、倒れて左手を潰しにかかってくる。
両手を使って全力で持ち上げようとしても、持ち上がらないどころか支えることすらできない。
「っああぁぁぁぁ!」
他人が見ていることも気にせず、無様にへっぴり腰になりながら、左手を拳銃の下から抜こうと
する。
「だ、大丈夫ですか……?」
すると、ひょいと軽く左手の重石が宙に浮かび、圧迫から解放された。
目を追っていくと、さっきの内の一人の艦娘が片手で持ってくれていた。
「すみません、ありがとうございます」
痛む左手をさすりながら立ち、失礼のないように姿勢を正す。
「……姉様?」
後ろにいたもう一人が、不思議そうに姉を呼び掛けた。
その姉は、持った拳銃をじっと見つめていた。
「持ってみて」
「はい……って、何これ、艤装……!?」
持ったと同時に表情が変わり、驚いた顔で自分を見つめてくる。
だが、自分はそれ以上に驚いていた。
艤装の中には非常に小さなものがあり、人間でも持てないことはないものもある。
しかし使うとなると話は変わり、艦娘にしか扱えない。
非力で身体の構造が根本的に違う人間には、使用は絶対に不可能のはずだ。
「……し、失礼ですが、あなた方はどこの所属でしょうか?」
聞かれるとまずい気がしたので、問われる前に問うことにした。
何がどうまずいのかは、自分でもわからないが。
「は、はい。 単冠湾泊地鎮守府第一艦隊所属、扶桑型航空戦艦一番艦扶桑です」
「同じく二番艦、山城です」
話を切り替えられたことにほっとしながら、海軍式敬礼をして自己紹介をする。
「ありがとうございます。 私は……提督見習いです。 貴艦にお願いがありますが、よろしい
でしょうか」
「え、えぇ、いいですけ……あぁ、ごめんなさい、少し待っててください」
「私が代わりに聞きましょう」
扶桑は耳に手を当てて何かをつぶやき始め、山城が前に出て話を聞く姿勢を作る。
恐らく、他の艦と連絡を取っているのだろう。
「それで、お願いとは何ですか?」
「はい。 昨日、単冠湾泊地鎮守府所属の駆逐艦暁、響、雷、電の四隻が作戦中この島に漂着し、
私と共に行動しています。 つきましては、四隻の母港への帰投と私の横須賀鎮守府への輸送を
お願いしたいのですが」
「……その、四隻は無事ですか?」
「生きてはいますが、私の勝手な指示により、響の右手を欠損させてしまいました。 申し訳
ありません」
「頭を上げてください。 ……死んではいないんですよね?」
「はい。 全員生きています」
止まるところなく一気に話し終えると、山城はとても安堵した表情を浮かべた。
「よかった……昨日から連絡がなくて、死んでしまったのかと……」
目に少し涙を浮かべ、山城はそれを拭いながらぽつりとつぶやいた。
その後ろでは工廠に空いた穴の外を見ながら、扶桑が何かに手を振っている。
さほど時間もたたずに、穴から三人が入ってくる。
簡素な顔が描かれ浮き輪をつけている砲塔らしきものを抱えている女の子と、剣を持った女性と
長刀を持った女性が一人ずつ。
その内、後から入ってきた二人の顔に見覚えがあった。
「……え……おいおい、本物か……!?」
「うふふふ……やっと見つけましたよ、生徒さん」
そう二人が交互につぶやくと、剣を持っている方が走り寄ってくる。
軽巡洋艦天龍と龍田。
十何年と見てきた、懐かしい顔。
「天龍、さん……龍田さん……?」
自分の言葉を返す代わりなのか、天龍は正面から飛び込むように抱き着いてきた。
「本物だ……あぁ、まじでよかった……!」
「ちょっと、天龍さん……! 龍田さん、なんとかしてください……」
他人がいるというのにお構いなしで抱き着いてきた天龍に抵抗しつつ、落ち着いて歩いてくる
龍田に助けを求める。
「ん~……私も失礼しちゃおうかな~」
だが落ち着いていたのは先ほどまでらしく、普段は触れることすらしないのに、天龍とまとめて
腕を回してくる。
「……もう離さないから。 うふふふ……」
「龍田さん、ちょっと怖いです……あといろいろ見られてますから離れてくれませんか」
「あと少しだけ……あ~、やっぱりあの生徒さんだ~、あははっ……」
最後に少しだけ、息を飲むような声が聞こえた。
気になって龍田の顔を見てみると、目尻にごく小さな涙がうっすらと浮かんでいた。
視線に気づかれ、それを避けるように体へ顔を押し付けてくる。
嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちで、胸がいっぱいになる。
「おーおー、少し見ない間にいろいろ増えたの」
二人に心の中で感謝し続けていると、後ろからそんな声と足音が聞こえ、自分の真横に
止まった。
工廠長を手に乗せた雷を先頭にして、工廠長を含む暁たち全員が揃っている。
「全員連れてきたぞ。 もっとも、音を聞きつけて自分らで来とったようじゃが」
「ありがとうございます。 あと、助かりました。 感謝しきれませんね」
「なに、困ったときはなんとやらじゃ。 まぁそんなことより、おぬしにくっ付いとる男女が気に
なるの」
その言葉と同時に、くっ付いている二人がぴくっと反応し、ゆっくりと自分の体から離れる。
そして心なしか、天龍が少し怒っているように思えた。
「紹介します。 横須賀鎮守府所属の天龍さんと龍田さんです」
「天龍、というと軽巡か……うむ? お前さんら艦娘か?」
「そうだが、どうかしたか……!」
握りこんだこぶしをぷるぷると震わせながら、天龍が耐えきれないといった様子で工廠長に
近づく。
「お前は俺が男だと言いたいのか、あぁ!?」
「い、いやそのじゃ、な、ちょいとボーイッシュに見えたというか何というか……」
「俺は女だ! 艦娘だー!」
どうやら男に思われた事が気に食わなかったらしく、相当怒っているようだ。
昔からこうだったな、と思い出しながら、龍田と一緒に「まあまあ」となだめる。
「……ごほん。 司令官、少しいいかな」
四人で騒がしくしていると、響の声が自分たちの落ち着きをくれた。
「あぁ、すまない。 それでどうした?」
天龍を工廠長から引き離しながら問うと、近くで叫ばれたりして涙目になっている雷を同じよう
に下がらせながら話してくる。
「あの三人は?」
「あの……? あぁ、単冠湾所属の扶桑さんたちだ」
「……話してきていいかな?」
「もちろん。 皆で話してくるといい。 工廠長、こちらへ」
工廠長が雷へ伸ばした手に移ると、四人とも全員扶桑たちの方へ小走りで近づいていく。
「……しかし、なんだな」と怒りを抑えた天龍が話を切り出す。
「死んだかと思ってなのに、ちゃんと生きてガキ四人と爺さんのお守りしてるとは思わなかった
な」
「わしはお守りなぞされとらんぞ」
不満に工廠長がうなり、天龍と目線を合わせてお互いに睨み合う。
その間を縫うように龍田が割り込み、意地悪をするかのように話し始める。
「天龍ちゃん、嘘はいけないわよ? ねぇねぇ生徒さん。 天竜ちゃんね、あなたは絶対に
生きてるってわんわん泣いちゃって――」
「――わーわー! な何言ってんだ龍田!? い、いいか、泣いてないからな! というか、
そういうお前が泣いてただろうが!」
「だって~、死んだかもしれないって聞いたら悲しくなるわよ。 私、生徒さん大好きだもん」
「な……な……なぁー!? お前、いきなり何言ってんだよ!?」
さっきから叫んでばかりの天龍を見て苦笑していると、工廠長が自分の手の上で寝転んで余裕の
ある声で天龍へ声をかける。
「ほほぉ、男
「いや、そうじゃなくてな、好きじゃないというか嫌いじゃないというか、でも好きでいやいや
嫌いで……あぁもうわかんねぇよちくしょー!」
なかなかに混沌とした話についていけず、今後の話をするためと自分に言い訳をして輪から
抜けて扶桑たちの方へ足を向ける。
「お主なかなかにもてとるの」
「家族や友人としてですよ。 男としては見られてません」
「嘘っぽいのぉ……」
何かを試すかのような台詞を無視し、話し合っている扶桑たちの元へ近づく。
「……で、いろいろとしてくれてね。 と、本人が来たみたいだ」
仲良さげに話していた響に声を投げかけられ、首を傾げながら答える。
「本人?」
「いろいろ手助けしてくれた恩人だ、って話してたんだ。 扶桑さんがあまりにも気に掛ける
から」
「……失礼ですが、私はあなたを信用しきれていません。 ご理解願います」
扶桑が何かを探るような目をしながら口を開いた。
初対面ならこんなものか、と内心で苦笑しつつ返事を返す。
ただでさえ艤装を使う人間ときているため、口を利いてもらえるだけでも好待遇なのかも
しれない。
「わかっています。 山城さんにお伝えした事、お聞きになりましたか?」
「はい。 山城が提督に問い合わせていますので、少々お待ちください」
扶桑の言葉に頷くと、意識するでもなく扶桑と目を合わせ続けてしまう。
目線が、顔、体、足と全身をくまなく舐めまわしていく。
「……人間、ですよね?」
「私自身はそう思っています」
「直接見たわけではないので断言できませんが、私にはこれを使ってタ級を殺したように思え
ます。 納得のいく説明をしてもらえませんか」
声色が段々厳しくなり、暁たちを自分から庇うように移動する。
とことん嫌われてるな、と思いつつ、納得のいく説明とやらを考える。
完全に嘘をでっちあげるとぼろが出そうで怖いが、そうでもしないと自分のしたことを隠し通せ
ない。
あまり時間を置くとさらに怪しまれそうなので、自分の心もとないアドリブ力を信じて嘘を
告げる。
「……まず艤装を持っていたというところですが、あれは火事場の馬鹿力というやつです。
死にたくなかったので、脳が勝手に枷を外してしまったようです」
「…………」
「次に、私は艤装を使っていません。 使おうとはしましたが、私は人間なので使えません
でした。 タ級に止めを刺したのはこの妖精さん、私たちは工廠長と呼んでいるこの方です。
そうですよね、工廠長?」
「……お、おう! 何とか、あいつに弾が残っとったんでな」
手の上で呑気にぐだぐだしていた所に急に話を振られたようで、工廠長はびくりと反応して口を
開いた。
同時に指を刺した物を見てみると、何かしらの器具で固定された戦艦用の主砲があるのが
わかる。
扶桑は頬に手を当てて、何にも目を合わせずに考え始めた。
そういう仕草がやっぱり艦娘も女の子なんだな、とどうでもいいことを思ってしまう。
関係のないことを思ってしまうのは、なぜか局面に立たされた時だ。
「……そうですか。 私の思い違いだったようですね。 失礼しました」
「いえいえ。 理解していただけたようで何よりです」
全身に伝わるほどの心臓の拍動を感じながら、何とか乗り切ったことを安堵する。
直に見られていないこともあり追及されないとは思っていたが、やはり緊張するものは緊張する
ものだ。
「それはそうと、話を聞く限りこの子たちにかなり尽くしていただいたようですね。 再び無礼の
お詫びと感謝を致します」
「感謝されるようなことは一つもしてません。 それよりも、響さんの右手について申し訳なく
思っています。 すみませんでした」
「……いや、自分の力量が測れて良かった。 別に気にしていない」
響に頭を下げると、少し驚いたような様子を見せた後、普段と変わらない調子に戻り返事を
した。
大方立場上の理由とはいえ敬語で話されたからだろうが、すぐに切り替えられる辺りが響らしい。
こんなことが思えるのも、今のうちだけか……
ふとそんなことを思い、名残惜しさから鼻を静かに鳴らした。
「提督が話がしたいそうです。 どうぞ」
山城が近づいてきて、超小型インカムを渡してきた。
耳にはまる程度の大きさしかないそれを受け取り、骨に押し付けるようにしっかりと装着する。
「はい。 変わりました」
『やあどうも。 単冠湾泊地鎮守府提督、
なかなかに凄みのある人と思っていたのとは裏腹に、爽やかな声をした青年の声が頭に響き
渡った。
わーい天龍田が書けたー(無邪気)! そんな26話でしたがいかがだったでしょうか。
駆逐艦スキー、とは申しておりますが、他の艦種の娘も書きたいわけでして。駆逐艦目当てに
やってこられた読者は申し訳ありません。重ねていうと、次回は今回以上に駆逐艦がどこかへ消え
ます。申し訳ないです……
書くことがないので今回はこのあたりで。次回は来月辺りになるでしょうか。のほほんと
待っていただければ幸いです。