駆逐艦しかいない鎮守府   作:鼠返し

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 学年上がって小説書く時間減ってワロタwwwwワロタ……と、こんな心境の鼠返しです、
お久しぶりです。

 時間がなかったのもありますが、構想を練っていて書けなかったというのもあります。次回辺り
も苦労しそうだなぁ……

 はい、今回は思いっきり(特に女性にとって)不快な表現が入っております。でも一応そこまで
強調しているわけではないので、さらっと流して読んでいただければと……

 それと、今回一部の文がかなり長いです。読みづらい場合はご了承ください。

 ……そろそろ本文いきましょうか。第27話、ご覧ください。


第27話 違うようで似ている者

『やあどうも。 単冠湾泊地鎮守府提督、日野育宏。 階級は元帥だ。 よろしくね』

 

 意外と若い声に驚いたが、階級の元帥というのにも驚いた。

 

 現在は横須賀や佐世保を始めとする数多くの鎮守府があるが、提督の階級はそこまで高くない。

 

 提督をしている元帥は横須賀の教官と今の単冠湾泊地の提督、そしてもう1人しかいないと

聞いた。

 

 まさかこんなところで、通信機越しとはいえ会話できるとは思わなかった。

 

『山城から話は聞いたよ。 とんだ災難だったね』

 

「えぇ、まぁ。 早速ですが、伝えてもらったお願いを聞いてもらってよろしいでしょうか?」

 

『そう急かすことはないだろう。 何があったか、話してもらっていいかな。 時間はたっぷり

 あるからね』

 

「は、はぁ……わかりました、では」

 

 何かはぐらかされているような気がしたが、日野の言うとおりに今までに起こったことを

話した。

 

 自分の輸送中に襲撃を受けたこと、暁らと同じ島に流れ着き助けてもらったこと、妖精さんが

いたこと、哨戒中に響と電が怪我をしたこと、戦艦が二隻来て撃退したこと。

 

 流石に細かいところや自分がタ級を殺したことは話さなかったが、大まかなことはわかった

ようで、話し終えたしばらくしても質問はなかった。

 

『で、暁たちは元気にしている、と。 損害は響の右手のみ。 なかなかよくしてくれたね。

 感謝するよ』

 

「いえ、感謝されるようなことは何も。 暁ら自身の頑張りがあったからです。 見知らぬ私の

 指示もよく聞いてくれ、とても助かりました」

 

『……ふ~ん。 よく聞いた、ねぇ……』

 

 声がくぐもり、先ほどの好印象な声が消えた。

 

 何かを疑問に思うでもなく、関心するでもなく、ただ興味が完全になくなった声。

 

「どうかしましたか?」と聞いても、しばらくは返事がなく長ったらしかった。

 

『ん~……あ、そうだ。 ねえ、その四人引き取らない?』

 

 長い沈黙の後に帰ってきた言葉は、一瞬では理解しづらい内容だった。

 

 心に巨大な違和感を抱きながら、ほぼ反射で聞き返す。

 

「どういう、意味ですか……?」

 

『異動だよ。 別に珍しいことじゃないだろ? 私より君に懐いてしまったようだしね』

 

  異動? 別に? 懐いて?

 

 引っかかる言葉が多すぎて、頭の中でぐるぐる回り始める。

 

 まず、どんな提督であれ、そうおいそれと『異動させる』とは言えない。

 

 艦娘の異動には人件費や機密保持の点から数千万から数億という膨大な輸送費がかかり、移動先

の鎮守府周辺の住民から少なからず白い目を向けられることになる。

 

 また異動の際の理由の内容によっては、大本営やほかの鎮守府からの評価が下がってしまう。

 

 そして、異動が珍しいことではない、というのは半分が嘘だ。

 

 確かに異動がよくあることだが、その大半の理由が重度の精神疾患で、異動先はほぼすべて

大本営だ。

 

 今の暁たちに治療が必要なほどの精神疾患は見られず、このような状態の艦娘の異動は非常に

稀有だ。

 

 極めつけは、最後の『懐いて』という部分。

 

 元帥ともなれば、大本営、他の鎮守府、近隣住民、そしてなにより所属している艦娘からの評価

全てがほぼ最高であることが普通だ。

 

 もちろん、艦娘たちが一番信頼しているのは自身を指示する提督で、そう簡単に他人を受け

入れることは、艦娘の本能的にあり得ない。

 

 引っかかった部分を組み立てて理解しても、おかしなところだらけだ。

 

「理由は……正当な理由はどうするんですか? 異動するに足るものがないように思われます

 が……」

 

『あぁ、それね。 別になんでもいいんだけど……気に食わないから、とか?』

 

「……は!?」

 

  今……何て言った……!?

 

 聞きなれない言葉を聞いて、思わず叫んでいた。

 

 全員が自分に注目するのを避けるように離れつつ、声を無意識に荒げて聞き返す。

 

「気に食わないって、そう言ったんですか?」

 

『うん、それが? だって僕元帥だよ?』

 

「……あなた、それでも元帥ですか……!?」

 

『そうだよ、僕は偉いんだ。 だから多少の無理は通せる』

 

「私が言いたいのは、そういうことじゃ……」

 

 胸が苦しくなり、吐き気がしてくる。

 

 おかしい、この人はあり得ないほどおかしい。

 

 自分だけがおかしくなったのかと錯覚するほど、異常だ。

 

『最初は暁から攻略しようとしたんだけど、なかなかにガードが固くてね。 僕が何言っても拒否

 ばっか。 君ならすぐにモノにできるからあげるよ。 幸せは共有しないとね』

 

「え……あ……」

 

 何も言い返せない。

 

 言うべき言葉が、言いたい言葉が見つからない。

 

『暁はまだいいほうだよ。 問題は響だ、いや~、参るよほんと。 暁以上に面倒だ。 軍事上の

 命令は完璧にこなすんだけど、他はもう聞かないってレベルじゃないんだよ。 あ、雷と電は

 全くの手つかずだから、そこは安心してくれて構わないよ』

 

「……もうそのことはわかりました。 一つお尋ねしてもいいでしょうか」

 

 これ以上聞きたくなくて、体から湧き始めたものを飲み下しながら話を変えた。

 

 あまりの気持ち悪さに、今までにないほどに心臓が暴れまくる。

 

『あぁ、どうぞ』

 

「私たちがいる島に流れ着いたいきさつを暁たちから聞いたのですが、どうも腑に落ちないん

 です。 元帥とあろうあなたが、駆逐艦五隻でどうして出撃させたんですか? 特段に練度が

 高いわけでもないのに、何故ですか?」

 

 これは聞いておかなければならないと思った。

 

 練度が高ければ、電が背後から撃たれたり、響がパニックを起こしたり戦闘中に右手を落とす

こともないはずだ。

 

 元帥にもなれば、艦娘の練度を無視した出撃は絶対に避けるはず。

 

『……聞きたい? さて、どこから話そうか……っ』

 

 妙に余裕のある声が、最後に少しだけ息を飲んだ。

 

 正直気にしていられないほどに答えが気になっていたのだが、小さく聞こえてくる音がそうさせなかった。

 

 グチョグチョ、という濡れた音と、苦しそうな誰かの声。

 

 たまたま気付く、なんてことがなければ、わからない小さな音。

 

 ノイズかとも思ったが、それにしては音が鮮明で機械音もしない。

 

「……すみません、さっきから何かが濡れているような音がしていますが……」

 

『ちょっと待ってくれ、もう少ししたら話す……すぐに飲まないでくれ、新人君に聞かせてやる

 からね』

 

 最後は自分じゃない誰かに言い聞かせるようにして、ガタガタ、とインカムを置く音が

聞こえる。

 

 今のインカムは骨の振動を音にしているため、骨から離されるとほとんどの音が聞こえなく

なる。

 

 少しして小さくがさがさと音が聞こえると、とても強く粘り気のある嚥下する音が伝わって

きた。

 

 その後に『はぁ……はぁ……っ!』と届く声は、苦しそうでひどく艶かしかった。

 

『どうも……初めまして……あ、はぁ……』

 

 話しにくそうに言葉を詰まらせながらも、喜びを感じさせる扇情的な音。

 

 頭をぐるぐる回して状況を理解しようとしていると、結論に辿り着く前に日野が話し始めた。

 

『僕のお気に入りの音はすごいだろ? 君なら暁たちに簡単にさせれるさ』

 

「あ、あの……言われている意味がよくわからないのですが……」

 

『直接は嫌いだからぼかすけど……口でして貰ってたに決まってるじゃないか』

 

 今の一言で、ようやく全て理解できた。

 

 艦娘を性処理に使っており、その中で使えなかった暁らを自分に渡そうとしている。

 

『人当たりのよさそうな青年』から『立場を利用する屑』に、自分の中での印象が変わった。

 

 ひどく絶望するしかない。

 

 艦娘を性処理に使う、という最低な行為を、目標であり憧れでもある元帥がやっていた。

 

 事実が淡々と、脳に染み渡っていく。

 

『あぁこれ、秘匿通信扱いだから何しゃべっても平気だよ』と軽く言ってくる日野をよそに、

新しく湧いた疑問について考える。

 

 艦娘に人権が与えられたりはしたが、本来は海軍、厳密には大本営が所有している『兵器』だ。

 

 提督はそれを借りて戦っているだけに過ぎず、故に運用にあたっての責任も生じる。

 

 性処理に使うとなれば、艦娘の許可が無ければ強姦罪、あっても無くても大本営の所有物に対

する器物破損等に該当し、特殊な許可があれば可能となる性交と違って少なくとも海軍から

永久追放され艦娘との接触を一切禁じられてしまう。

 

 艦娘の人権を無視している行為が、自分の中で怒りを増やしているのがわかる。

 

「何やってるんですか……艦娘を、あなたは何だと思っているんですか……!」

 

『何って言われても……強いて言うなら駒、かな。 いくら人権が与えられたからっていっても、

 紙では兵器扱いだしね。 そんなに怒らないでくれよ』

 

 言っていることは正しい、でも納得できない。

 

 今まで見てきた感情は、どれも本物で、人間との違いはほとんどない。

 

 自分の経験が全て間違っているといわんばかりの言葉には、絶対に納得できない、したくない。

 

「……なら、あなたが暁たちと一緒にいればいいじゃないですか。 戦力にはなるし、本人たちの

 ストレスもあまりないと思いますが」

 

 腹に据えかねて、ついそんなことを言ってしまった。

 

 自分の苛立ちが如実に表れているが、日野は気にせずに返してくる。

 

『君、僕がなんであいつらに無茶な出撃をさせたかわかるかい?』

 

「知りませんよ、そんなの」

 

『暁を手懐けようと思ったんだよ。 ちょっと強引にしようとしたら、響に殴られてね。 当たり

 前といえばそうなんだが、頭に来て島風に戦艦の所においてくるように指示してやったらさ……

 姉妹共々全員どっかに消えたって聞くじゃないか! 心の底からせいせいしたよ、あっはっはは

 はは……!』

 

 勝手に、聞いてもいないことをべらべらと話してくれた。

 

 そして、自分の中の何かが壊れた。

 

 理性がなくなる、糸が切れる、とはこのことを言うのだろうか。

 

 

「あんたは、艦娘をなんだと思っているんだ!」

 

 

 立場を忘れた。

 

「生きてるんだ! 誰かが好き勝手にできる私物じゃない!」

 

 自分を忘れた。

 

「生まれ変わって精一杯生きてるのに、気に入らないからって勝手に殺すのか!?」

 

 怒り以外、何もかも忘れた。

 

「性処理の道具なんかじゃないだよ! 傷つけるだけのお前に、艦娘を引っ張っていく資格なんか

 ない!」

 

 ――こんなに怒ったのは、人生で初めてだ。

 

 相手を罵るためだけに怒ったのも、初めてだ。

 

 骨が軋むほどインカムを耳に押し当てているのに気が付いたのは、血が頭から少し去った後に

なってだった。

 

『……新人なのにすごいね。 僕にこんな大口が叩けるのは君だけだよ』

 

 あれだけの事を、まだ名前も知れ渡っていない新人に言われたにも関わらず、日野は怒るでも

なく、ただ感心したように呟いた。

 

 どのように話せばいいかわからず沈黙を装って困惑していると、日野がゆっくりと落ち着いて

話し始める。

 

『一応言っておくけど、僕は全く怒っていない。 むしろ、元帥の僕に怒鳴った勇気を褒めて

 あげたいくらいだ』

 

 とことん見下しているような口調に再び腹が立つが、割り込む間もなく話は続いていく。

 

『新人だから知らないだろうけど、単冠湾は北海道近海のほぼ全てを担っているんだ。 大湊の方

 もたまに協力してくれるけど、基本的にこの辺りの統括はここ。 太平洋、オホーツク海、日本

 海と大忙しだ。 地位を振りかざしているようであまり好きじゃないが、横須賀の元帥や大本営

 のお偉いさんも口が出せないほど、僕は偉い』

 

「…………」

 

 これは予想外だった。

 

 他の元帥や大本営にも口が出せないとなれば、憲兵の視察も全くの無意味になる。

 

 単冠湾で大人しくして、あまりにも大きな損失を国に与えない限り、受けるべき罰も受けない

だろう。

 

 元帥でもお偉いさんでも憲兵でもない自分なら、なおさら何もできない。

 

『まぁ、そういうことだ。 口で言うだけなら僕は何でも流してあげるけど、実力行使されると

 ちょっと考えるから、そこは覚えておいてほしいな。 ……そういえば、6年前にここが日本中

 で話題になったことがあったな。 覚えているかい?』

 

 突然の問いかけに、幾分か冷えた頭で昔を思い出してみる。

 

 6年前、12歳のころに、何があっただろうか。

 

  日本中……単冠湾……たぶん――

 

「……単冠湾襲撃事故」

 

 記憶から引っ張り上げた出来事は正しかったらしく、『そう、それだよ』と相槌を返された。

 

『あのときに当時の単冠湾の提督が指揮中に戦死してね。 さっきの通り、北海道をほぼまるまる

 守っていたここが崩れかけて、日本が荒れに荒れた。

 

 そこで新しく就任したのが、当時16だった僕。 異例だったけど、十分な知識があったこと

 と、何より前提督の息子だった事が幸いした。

 

 昔話になるけど、父さんは優しかったんだ。 艦娘からの支持はよく、近くにうるさい住民も

 おらず、提督の誰もが羨む地位を確立した。 でも、優しすぎたんだ……そのせいで、島民の

 半分と一緒に父さんは死んだ。

 

 だからこうして厳しくしているのさ。 僕に奉仕させて、絶対服従を誓わせ、思い通りに動か

 せる駒にする。 最初は少佐だった僕が、こうするとすぐに元帥になったんだ。 間違って

 いるとは思わないし、失敗するまで君を含めて誰にも資格がないなんて言われたくない』

 

 長ったらしい言葉の中に、確かに一理あると感じた。

 

 成果を上げている点では、提督としては間違ってなく、むしろ正解に近いのだろう。

 

 だが、人間としてや、艦娘のためにも、正しいとは絶対に思えないし、思いたくない。

 

『理解できない、といった感じかな? 心がまともな人はみんなそう思うだろうさ』

 

「……なら、あなたは心がまともじゃないと?」

 

『こういう事にまったく心が痛まないからね、自覚はしてるさ。 でも、国を守れるのは、少な

 からず常道から外れた、僕のような頭のイカれた奴だ。 そして、守れるなら、僕はもっとイカ

 れた奴になりたいね』

 

「それはあなたの勝手ですが、実際に守る人たちのことも考えてはどうですか」

 

『ん~……』

 

 別に怒るでもなく、自分のきつめに言った言葉を真に受けたように考え始めた。

 

 いろいろ不思議だ、と思い始める。

 

 艦娘にしている性暴力は、自分のためにというよりも、国のためにしているといった意志が感じ

られた。

 

 16歳で提督になるのに十分な知識があったということは、自分のように生まれた時から生徒

だったか、幼いころに生徒になった、させられたぐらいしか思いつかない。

 

 予想でしかないが、日野も自分と同じく『国は守るべきもの』と教え込まれただろう。

 

 もしそうならば、自分も根本的には日野と同じなのかもしれない。

 

 過程が違うだけで、起きる結果は同じだから。

 

 自分が目指しているものは、日野と同じことなのだろうか。

 

『昔を思い出すよ。僕も君みたいに思ってた時期があったからね。 せめてもの情けで、少し

 考えてみたよ』

 

 考えから引きずり戻され、頭の中を切り替えるのに時間がかかる。

 

 その時間を続きを促すものと捉えられたのか、再びインカムから言葉が漏れる。

 

『島風を連れて行くといい。 山城たちの近くにいる、連装砲を抱えている奴だ。 暁らと仲が

 良く、僕にも不満を抱いているから、ちょうどいいだろう。 合わせて君にあげるよ。 大事に

 使ってほしい』

 

 返答に困る言葉だったが、つい先ほどまでの厳しい声色から優しいそれに変わったことが影響

したのか、自然と言葉を返していた。

 

 自分と似ているという同情が絡んでいるのが、非常に悔しくはあるが。

 

「……わかりました。 丁重に扱わせていただきます」

 

『そうか。 島風、聞いていたな?』

 

『……よろしく、新しい提督。 あと、連装砲ちゃんだから』

 

 島風と思われる女の子の声が、通信に割り込んで聞こえてきた。

 

 通信がクロスしていたことに驚きつつも、挨拶を無意識にする。

 

「よろしくな、島風」

 

『……うん』

 

 不愛想な返事を聞くと、日野は大きく息を吐いた。

 

『さて……一つ目のお願いは突っ撥ねたけど、二つ目は聞こうと思う。 明日辺りに輸送船と護衛

 部隊を送ろう。 それまで大丈夫?』

 

「えぇ。 それでお願いします」

 

『うん、素直だね。 君はきっと、僕とは違った偉い提督になると思う』

 

 何を今さら、と思ったが、言えなかった。

 

 同情が、完全に心に沁みついてしまったようだ。

 

『それと、僕なりのアドバイスを一つだけ。 艦娘に甘くするな。 君自身のため、艦娘のため、

 絶対に忘れないことだ』

 

「あなたの考えは理解しがたいです……が、頭の片隅には入れておきます」

 

『それで十分さ……。 僕なりに楽しかった。 また会える日を楽しみにしてるよ』

 

 その言葉を最後に、自分の返事を待たずに通信を切ってしまった。

 

 言葉に形容できない気持ちになりながら、インカムを耳から外す。

 

「……なんじゃい、あいつ」

 

 忘れていた、肩の上であぐらをかいていた工廠長がふてぶてしく口を開いた。

 

「訳ありなんじゃろうが、感じ悪いの……お主もそう思わんか?」

 

「半々、ですかね……許せませんけど、仕方ないのかも、とは……思ったりしました」

 

「……負けず劣らず、お主も曲者じゃな」

 

「人間なんて、程度の差はあれみんな曲者ですよ」

 

 工廠長と軽口を叩きながらも、インカムを返しに再び工廠の奥に戻る。

 

 不思議と全員が集まっていて、戻ってきた自分に何とも言えない視線を向けていた。

 

 少し戸惑いながらも、山城に近づいてインカムを差し出す。

 

「明日、この島に輸送船と護衛部隊を向けてもらえることになりました。 日野元帥殿に、私が

 感謝していたと伝えてください」

 

「わかりました、伝えておきます。 夜間哨戒に戻らないといけないので、これで失礼します」

 

 受け取ったインカムを耳にはめ、扶桑と共に外に出て行ってしまう。

 

 それをその場にいる全員で見届け、見えなくなったところで全員が自分を向いて発言を待ち

始めた。

 

 頭をぼりぼり掻いて言葉をひねり出そうとするが、何を話せばいいか悩んでしまう。

 

「……それで、どうすればいいの?」

 

 つい先ほど聞いた声が、静かに自分に向けられた。

 

 暁たちの陰に隠れていた島風が、顔だけを出して自分の発言を待っている。

 

「行かないのか?」

 

「ここに残れって言われたから」

 

「そうか。 改めてよろしくな」

 

 島風に手を伸ばすと、何故か近くにいた電が身を引いてしまう。

 

 手を伸ばした相手も顔をしかめながら渋々といった感じに、連装砲ちゃんなるものから右手を

離して何とか握ってくれた。

 

「電、どうした?」

 

 手を解きつつ電に問うと、両手を慌ただしくして顔の周りを示し始める。

 

 何を言いたいのかわからず首を傾げていると、肩をとんとんと叩かれ耳打ちされる。

 

『顔に血が付いてんだよ。 洗ってきた方がいいぜ』

 

 天龍にそう言われて顔の周りを手でなぞると、少し厚い皮が被っているような感じがした。

 

 なぞった手のひらには、固まりかけた赤黒い血がこびりついていた。

 

 タ級の返り血を浴びた時に付いたのだろう。

 

「悪いな、島風、電……今日はもう寝よう。 船渠の前のあの部屋を使うといい」

 

 あまり見られたくないのもあり、話を早く切り上げ、暁たちにまとめて指示を出した。

 

 何か言いたそうにしていたが、響が気を利かせたようにため息を吐きながら歩き始めるのを

見て、天龍と龍田以外が工廠から出ていく。

 

「……全部聞いたよ。 やっぱりお人よしだなお前」

 

「生徒さん……司令官さんだもの、どこまでいってもお人よしよね~」

 

 二人して勝手に言ってくれるが、長い付き合いから褒め言葉だとすぐにわかる。

 

 微笑を浮かべながら動こうとしたが、天龍の言葉に引っかかって聞き直してしまう。

 

「……全部?」

 

「あのでっかいやつが、オープンモードで会話を全部聞かせてくれたんだ。 まぁ、一理あるっ

 ちゃあるような気もするが、何とも言えねぇよな……」

 

「まぁ、それは置いておいて。 怒ってる時の司令官さん、とってもかっこよかったわ~。 惚れ

 直しちゃった」

 

「あ、あはは、そうですか……」

 

 何を考えているかわからない笑みを浮かべる龍田を見て、苦笑いが勝手に出る。

 

 まだ話したいことはあるが、咳払いを一つして二人に話しかける。

 

「タ級とル級の死体の処理をお願いします。 このまま放っておくわけにもいかないので」

 

「そうじゃそうじゃ。 はよう片づけてくれ」

 

「は~い。 もっとお話ししたかったのにな~」

 

 龍田は軽く返事をしながら近くのタ級の方へ歩いていくが、天龍は工廠長を見つめたまま動か

ない。

 

「さっきから気になってたが、なんだこの爺さん」

 

「元ここの工廠長じゃ。 なんか文句あるか?」

 

「あっそ……お前も手伝えよ、話したいこともあるし」

 

 そっけなく工廠長から顔を背けると、手で誘いながら龍田と同じくタ級へ向かい始める。

 

 それに逆らわず、歩くごとにふわふわ揺れる紫苑色の髪を追う。

 

「……疲れてないか?」

 

「それはまあ。 工廠を綺麗にしたら寝ますよ」

 

「無理して倒れんように。 何も食ってないんじゃからな」

 

「心遣いありがとうございます」

 

 工廠長の優しい言葉に疲れを少し癒し、あまり気の進まない死体処理にかかった。




 日野提督が少し(かなり?)屑な27話でした。いや、これでも書き始める前はもっとゲス
かったんですよ……?

 いつもの後書き入ります。

 もうすぐイベントですが、提督の皆様方、資材は貯めましたか? 私はバケツは1100個と
順調ですが、ボーキが27000と限界状態です。現在、いつでも限界提督です、はい。

 あ、そうだ。私、大和の建造に成功したんですよ。大飯食らいですが、火力139を見ると黙る
しかありません。レベルはまだ69……始まるまでに80は欲しいなぁ(切実

 次回は多分イベント終了後(五月下旬頃 or 六月上旬頃)になると思います。提督も社会人も
学生も、頑張っていきましょう。それではまた次回に……
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