駆逐艦しかいない鎮守府   作:鼠返し

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 どうも、一日ぶりの鼠返しです。今回はちゃんと駆逐艦出していきますよ。

 ちょっと短めということ以外は何も注意点はございません。まったりと暇つぶし程度に読んで
いってください。

 前書きとして書くこともないのでこの辺りで。第29話、ご覧ください。


第29話 島風と連装砲ちゃん

「ここって鎮守府か?」

 

 色あせた廊下を見て、天龍はそう呟いた。

 

 常に未知に対して恐怖より好奇心が勝る天龍の両耳付近の電探が、暗がりの中ぴこぴこと紫色の

糸を描いて動く。

 

「元です。 十年ほど前に全部移転になったそうですよ」

 

「十年か……ちょうどお前が俺に剣の使い方を教えてくれって言ってきた頃だな」

 

「そういえばそうですね。 そうだ、帰ったら勝負しませんか?」

 

「いいぜ、乗った! この前みたいな負け方しねえからな?」

 

「はいはい。 激戦を期待してますよ」

 

 その後は特筆することも無く、数分ほど歩いて部屋に着く。

 

 中から話し声が聞こえず、もう寝ているだろうと思い控えめにノックする。

 

『は~い、どうぞ~』

 

 龍田の返事を聞き、ゆっくり音を立てないように開く。

 

 二人で中に入ってみると、意外なことに全員が起きていた。

 

 四姉妹は島風を、島風は膝を抱えて下を、龍田はにこにことどこかを見ていて、まるで空気が

部屋にこびりついているようだ。

 

 座っている位置も、島風が奥の角のベッド、四人は3×2あるベッドの島風との対角、龍田が

入り口付近にある椅子と、それぞれの立場が良く分かる構図だ。

 

 ウィンウィン。

 

「ん?」

 

 どこからか機械の駆動音が聞こえ辺りを見渡すが、動きそうな金属など何一つない。

 

 後ろにいた天龍だが、最初はわからない風にきょろきょろしていたが、見つけたらしく指差して

見るように促してきた。

 

 促されるまま見てみると、そのままの意味で砲塔が動いていた。

 

 赤白の浮き輪のようなものには、『ぜかまし』――『しまかぜ』と書かれてある。

 

 確か、島風が工廠で抱えていた連装砲ちゃんなるものだったはず。

 

 それが右足の甲に乗ってふくらはぎをくいくい、と――

 

  ――連装砲が足に……!?

 

「うわぁ!?」

 

 驚いて、足を連装砲ちゃんから離すように引く。

 

 ウィンウィンウィンウィン。

 

 だが、かたくなに足にしがみつき、首もとい砲塔を振って離れない。

 

 早く離れないと足が潰れる、と思った瞬間に足でぶら下げられている現実に気付き、荒ぶった心

を落ち着けていく。

 

「排弾は済ませてあるし、司令も切ってあるから大丈夫ですよ」

 

 壁に塗られたコンクリートのようなのっぺりとした説明が、島風から聞こえてきて、昔に学んだ

ことを思い出させる。

 

 艦娘の艤装の中には、艤装自体が意志を持って動く『自律型』がある。

 

 その型の艤装は艦娘と性質が似ており、所有者が送る指令を切れば装甲への燃料の使用を停止

して完全な自律行動を始め、排弾をすれば重量は見た目相応にまでなくなる。

 

 艦娘に関する様々な事柄の中でもメカニズムが九割九分九厘わかっていない、世界のブラック

ボックス的な存在、それが自律型艤装。

 

 そんな不思議な艤装を両手で掴んでゆっくりと離し、床へ降ろす。

 

 ウィンウィンウィン。

 

 心配そうに、主の姿を見ては自分の姿を見てくる。

 

 はぶられている主を助けてほしい、といったところだろうか。

 

 艤装にお願いされるという初めての訳が分からない体験に頭を掻きながら、どうすればいいか

わからず悩む。

 

 島風が暁たちを殺そうとしたのは事実だが、そう指示したのは日野だ。

 

 本人は傷つけたくないと思っていようがいまいが、暁たちにとって自分たちを沈めようとけし

かけてきたのは島風であることに変わりはない。

 

 こう邪険に扱われても仕方ないことではあるのだが、それをこの連装砲に言っても納得はして

くれないだろう。

 

 ウィン……ウィン……

 

 悲しげに謎の技術で表情を変え、必死に助けろとアピールしてくる。

 

 いつまで経っても止めなさそうな姿に折れることにして、天龍を手招きして島風に近づく。

 

 艤装を付けたままではただ燃料を浪費するだけだし、意味もなく起きていれば無駄に体力が無く

なっていくだけだ。

 

「島風。 艤装ぐらい外したらどうだ?」

 

「…………」

 

 不機嫌そうに自分を見た後、頷いて主機と背中の魚雷発射管を外して静かにベッドの隅に

置いた。

 

 あまり機嫌がよくないため投げ捨てるのかと思って天龍を呼んだが、杞憂だったようだ。

 

 まとめて置いた後、外す前と同じ態勢を取り、もう一体の連装砲ちゃんを抱きしめる。

 

「寝たらどうだ?」

 

 皆に睨まれるよりましだぞ、という言葉を隠して、島風に提案する。

 

「……命令?」

 

 表情一つ変えず、下から見上げているのにも関わらず上目遣いをせず、淡々と事実確認をする

ように聞いてきた。

 

 軍艦だった頃の記憶をまだ引きずっているのだろうか。

 

「……そうだ」

 

「わかりました」

 

 即答で了承し、連装砲ちゃんを艤装の近くに置き、壁に顔を向けてすぐに横になった。

 

 行動が早いな、と思ったすぐ後、規則的に呼吸が繰り返され始める。

 

 早いという次元ではなく異常だ、と感じた。

 

 自分にしがみついてきた方の連装砲ちゃんももう一方の所まで走ってきて、艤装に二体とも寄り

かかって寝始める。

 

「みんなも寝よう。 起きててもすることもないだろう」

 

 そう暁らに言ってみるが、響が島風の向かいのベッドに行って横になっただけで、他は誰も

動かず島風を見続ける。

 

「気持ちはわかるけど、そう睨みつけることもないんじゃないかな。 逆に島風の立場になって

 考えれば、周りは敵や知らない人達だらけだ。 何も手は出してこないよ」

 

「分かってるわよ。 でも……」

 

 自分の言葉に、暁は口ごもる。

 

 自分を姉妹もろとも裏切った敵、という認識はなかなかぬぐえないのだろう。

 

 むしろ、響のように何かしらで割り切れる方が珍しいはずだ。

 

 どうするかな、と悩んでいると、天龍が三人の前に出て話し始める。

 

「お前らが島風をどう思ってるか知らねぇけどよ、何かして来たら俺がぶちのめしてやるさ。 

 安心しろって」

 

「…………」

 

「なんだ、疑ってんのか? これでも俺は軽巡だ、駆逐の一人や二人何てことねぇよ」

 

 豪快な天龍の言葉に三人は少し身を引いたが、多少なりは安心したようで体の力がわずかに

抜ける。

 

 だが同時に疑問が出てきたようで、電が口を開けたり閉じたりしている。

 

「どうした? 言いてぇことははっきり言えよ?」

 

「あの、その……なん、で……」

 

「あぁ? 聞こえねぇぞ?」

 

「だから、なんで……して……」

 

 勢いのない電の言葉がさらに失速し、完全に口を閉じてしまった。

 

 体をぷるぷるさせながら涙を浮かべてしまった電を、暁と雷が体で天龍から隠す。

 

 初対面の相手にそのような高圧的な態度はいかがなものか、と「何だよお前ら……」と原因が

よくわかっていない天龍の良くも悪くも大雑把な性格にコメントし、電の言いたいであろう言葉を

代弁する。

 

「なんで会って間もないのに味方してくれるんですか? ……こんな感じかな、電?」

 

 姉二人に隠された電の頭が縦に動くのを見て、天龍に手で回答を促す。

 

「そりゃあ、こいつがお前らを信頼してるからだ。 こいつはセメント五個も持てねぇ程弱ぇ

 けど、頭はすげぇ良い。 そいつが心許してたら俺だって同じようにするさ」

 

「艦娘基準で力を比べないでください」

 

 途中の言葉に隠さず文句を言ったが、そう思われるほど信頼してくれていたことは嬉しい。

 

 天龍の説明を聞いて幾分か納得したらしく、三人の表情が少し和らいだ。

 

 その後何も言わず、三人は一緒に横になって目を瞑った。

 

 何とかいけたか、と天龍と目で喜び、寝るようにと手で指示する。

 

 無言でそれに従い響と暁らの間のベッドに向かうのを見て、半ば外れていた龍田の元へ向かう。

 

 案の定髪をいじっていたが、それには触れず囁くように話しかける。

 

「龍田さんもどうぞ」

 

「その前に。 これは?」

 

 龍田が右肩辺りを指差す先には、少々眠そうな工廠長の姿があった。

 

 これ呼ばわりされて怒号が飛ぶかと思ったが、どうやら見た目以上に眠たいらしく何も返事を

返さなかった。

 

 こんな状態の姿は一般的な妖精さんとなんら変わらず、非常に可愛らしい。

 

 本人に言えば、それこそ寝ていても怒号が飛んできそうだ。

 

 工廠長の体をやさしく持って机まで運び、同じく優しく横にする。

 

 寝返りを繰り返して落ちないよう本を机のふちに置いておく。

 

「これで大丈夫です。 さ、早く寝ましょう。 お腹減っても、夜食なんてないですよ」

 

 龍田に振り返りそう言うが、首を傾げられてしまった。

 

「司令官さんは?」

 

「そこらへんで寝ますよ。 何か勘違いされて気まずくなるのは御免ですからね」

 

「一つ空いてるわよ~?」

 

「結構です」

 

 壁際で座って寝ようと動くが、龍田に腕をつかまれて歩みを止められる。

 

「一緒に寝ましょう? 私寒いの苦手なの~」

 

「なら天龍さんと一緒に寝ればどうですか? 私はこれぐらいならまだ大丈夫ですし」

 

「遠慮しなくてもいいのに~」

 

「先ほども言いましたが、勘違いされるのは避けたいんですよ」

 

「もう、頑固なんだから~……」

 

 とても名残惜しそうに言われ、半ば強引に掴んできた手を引き離す。

 

 自分に振り払われた龍田はと言うと、天龍のところに行って一緒に横になった。

 

 すでに寝ていたらしく、起きているなら跳ね起きるであろう天龍に反応はない。

 

 朝が大変だな、と思いつつ、壁伝いに背中をこすらせて座る。

 

 工廠長を寝かせた机の引き出しに頭を預けて目を閉じる。

 

 昼に暁と一緒に寝たはずだが、眠気はしっかりと感じた。

 

 タ級を殺して、ル級の死骸を見て、日野と話して、単冠湾の実態を知って怒って、天龍と龍田と

再会して。

 

 これだけのことが一晩で起こったから、疲れてしまうのは仕方ないのかもしれない。

 

  悪夢を見そうだ……しっかりしないと……

 

 朝に失態をさらさないようにしなければとも思いながら、体の力を抜いていく。

 

 短時間で溜まった疲れは、瞬く間に意識を刈り取っていった。




 一家に一台連装砲ちゃん、なんて世の中が来てほしい……なんて考えながら書いた29話
でした。

 さて、今までは駆逐艦ズが出てこなくなる話が多かったのですが、これからはかなり出番が増え
ます。やっと本題に近づけて嬉しいです。執筆速度が上がるかどうかは別の話ですが。

 入りますよ、後書き。

 艦これアーケードを通算7~8プレイほどしました。一応出ましたよレア艦。比叡ホロ、飛龍
中破ホロ、蒼龍といった感じです。28話の複雑に呻いていた友人とは違う友人が響を私の目の前
で引き当てて めのまえが まっくらに なりました。響欲しい……

 他は時雨とか夕立とか北上とか鳥海とかしょっぱい人たちだらけです。改や改二にすれば強く
なるので辛抱強く使っておりますが、それまでの道のりはまだ遠そうです。星をください何でも
島風。

 そろそろ話題が尽きたのでこの辺りで。次は来月ですね。まったりしながら待っていただければ
作者冥利に尽きます。暑くなっていますので、体調管理に気を付けながら過ごしていきましょう。
それでは……
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