今回はあらかじめ告げる注意事項はなく、長くも短くもない、そんな無難なお話です。気軽に
お読みいただければと。
第31話、暇つぶし程度に読んでいただければ嬉しいです。
「運ばんじゃと!? もっかいよう考えてみぃ!」
怒りと驚きが混じった工廠長の声が、だだっ広い工廠に薄れていく。
いつもの状況なら自分が間違っていて工廠長が正しいところだが、今回だけは逆だ。
「よく考えてください。 これが人間用ならともかく艤装ですよ? いったい何tあると思ってる
んですか?」
「ぐ……で、でかい船ならこれぐらい載せれるじゃろ!」
「ならもし小さければ? 下手するともっと重くて船底まで抜けるかもしれませんし、乗せる場所
によっては転覆したり前や後ろに跳ね上がってそのまま沈みますよ。 タイタニックでもしたい
んですかあなたは」
「ぐぬぬぬ……!」
一方的ににらんでくるが、これは自分がどうこうできる問題ではない。
艦娘の存在が認知されてからすぐに、船舶や航空機の艤装化を国が図ったらしい。
だが燃料の継続的な供給が困難な事や単純に重量がありすぎて浮かべない飛べない等様々な問題
があり、現在の移動・物資の輸送手段は昔からほとんど変わっていない。
輸送船となれば、当然人や物資が乗るためのものであり艤装ではない。
仮に運べたとしても、横須賀に収容するスペースも無く、解体されてそのまま資材行きは免れ
ないだろう。
結論として、ここに置いていくしかないのだ。
「どう私に言っても無理なものは無理なんです。 きっぱり諦めて、皆の艤装を見てください」
「覚えとれよ……いつか烈風で貴様を叩き起こしちゃるからな!」
小さい……
「小っさ」
天龍が自分の気持ちを代弁するも、怒りで聞こえなかったのか工廠長は手当たり次第に艤装の
チェックを始めた。
「しっかし、なんだよこのばかでかい何かは」
「工廠長が趣味で作った艦載機らしいですよ」
「……
もっともな質問に返答し驚かれていると、龍田が肩に顎を乗せてくる。
「ひま~」
「分かってますよ。 ほら、工廠長に見てもらったら邪魔になら無いように、自分でわかる場所に
動かしてくださいよ」
「え~。 天龍ちゃんお願い~」
「この怠け者……」
愚痴りつつも言われた通りに、チェックが済んだ二人分の艤装を持ってくる。
その間に龍田は、姉をパシらせておいた挙句、他人の体で当たり前のように暖を取っていた。
「ん~、暖か~い」
「こっちはそろそろ汗をかきそうなんですけれども」
背中に押し付けられる体は、最初は熱を奪っていたが、今はカイロのように体温を上げている。
見慣れている天龍は何も反応せず、少々乱暴にがしゃがしゃと近くに艤装を置いた。
「ガキが見てんぞ。 もう少し抑えたらどうだ」
「私じゃなくて龍田さんに言ってください」
天龍に不満を言いつつも暁らを見てみると、することがないのか気になるのか全員が自分たちを
見ていた。
顔を向けた瞬間にばつが悪そうに暁と雷と電が一斉にわざとらしくそっぽを向く。
横目で見る三人以外の響と島風は、似た様子でじっと見つめてくる。
逆にこっちがばつが悪くなって目をそらしてしまい、体をくっつけてくる龍田の頭に手を
かける。
理由もわからず極度に集中されるのは、少し苦手だ。
「龍田さん、暑いです。 離れてください」
「あら~、思春期?」
「…………」
少々腹が立って、幾分か乱暴にして体を引き離す。
「やぁん! 今度は反抗期? お姉さん困っちゃうなぁ~」
「空気ぐらい読みましょうよ……」
「龍田、あんまりいじるなよ」
連装砲ちゃんがウィンウィンとチェックされている傍らで少し普段とは違う会話をしていると、
ちょうど終わったらしい工廠長が戻ってくる。
「後は主機じゃな。 そこから全員出て調子を確かめてきてくれ」
工廠長の指示に従い、それぞれがそれぞれのペースで準備をし始める。
島風が連装砲ちゃんを二人連れて真っ先に出て行き、続いて響、後に暁ら三人、最後に天龍と
龍田が揃って海へ出ていく。
全員が出て行ったことで工廠長と二人残り、並んで座る。
点検前の怒りをぶつけられるかとも思い身構えるが、怒号は一切飛んでこない。
気まずくなった空気をどう崩そうかと頭を回すが、何か思いつく前に向こうが話しかけて
くれる。
「……駄目かのぉ。 どうしても」
少し落ち込んだ、さっきまでとは大分違うトーンに、内心驚きつつ言葉を返す。
「……無理ですね。 仮に運んだとしても、横須賀におけるスペースはありません」
「そうか……はぁ~、ワシの傑作が……」
「特別なものじゃなくても、烈風や流星改ぐらい弄らせてもらえると思いますよ」
「んむぅ~、しかしのぉ~……」
何か月も積み重ねた努力を無い物同然にされる気持ちはわからないでもない。
でもそれより、ここに残るという選択肢を出さなかったことに、工廠長の人肌恋しさを感じた。
少しでも心を通じ合った人と離れずに済むとわかって、勝手に、独りよがりに安堵する自分が
いた。
「他の妖精と上手くやっていければえぇがのう。 気難しい奴らじゃなければいいんじゃが、どう
なんじゃ?」
「大丈夫ですよ。 一緒にご飯食べたりゲームしたりするほど、気さくな人達ばかりです。 他所
から来ただけで邪険に扱ったりはしません」
「なら、ええがの。 長年一人じゃった爺さんには少し不安に感じるの」
初めて見る弱弱しい工廠長と話をしていると、島風が一番に戻ってきた。
「よっこらしょ」と立つ工廠長は、吹っ切れたようでいつもの様子に戻っていた。
乗せてあげようと差し伸べる手より先に、小さな体で島風に近づいていく。
「気になるところはないか?」
「ありません。 連装砲ちゃんも大丈夫です」
「ならよし」
手を振る連装砲ちゃんに手を振り返しながら、工廠長は奥から次々と帰ってくる皆の所へ駆けて
いく。
じっくり見る暇は今までなかったが、こうしてみると島風は不思議な娘だ。
駆逐艦の娘にしては大きく、身長は目測で160cmはあり、主機のフォルムも違って近代寄り
で制御のしやすい舵付きだ。
駆逐艦というよりは、軽巡洋艦に近い体をしている。
服装も非常に軽く肌の露出も多く、史実における最速の駆逐艦であることを体現しているかの
ようだ。
連装砲ちゃんという自律型の主砲を使っているのも、その速度を活かすためか、第二次世界大戦
中に島風にのみ搭載された五連装酸素魚雷の使用に集中できるようにするためなのだろうか。
「……何ですか?」
体を隅々まで眺めていると、島風は冷たく聞いてきた。
冷たいといっても無関心、やる気がないといった意味で、自分を軽蔑しているようでは
なかった。
「気分を害したならすまない。 ただ、容姿から軽巡のように見えてしまってな」
「島風は最速の駆逐艦です。 足の遅い軽巡とは違います」
「最速か。 それは艦娘になった今でも同じなのか?」
「もちろんです。 スピードなら、誰にも負けません」
ガツン、と主機を床に壊れない程度にぶつけて鳴らしながら、迷いを少しも見せず言い切った。
自信に満ち溢れていて、今までの引っ込み思案な印象とは正反対のそれを受けた。
先以上に不思議に思っていると、揃って足を濡らした皆が戻ってくる。
「全員問題ないぜ」
「わかりました。 それじゃあ、後は完全に自由行動ということで」
自分の言葉を皮切りに、がちゃがちゃとそれぞれが艤装を置き始め、龍田がすぐに駆け寄って
きた。
「寒かったわ司令官さ~ん、温めて~」
「足を乾かしたらいいですよ」
案の定濡れた足から擦り付けてこようとするので、条件を付けて踏みとどまらせる。
寒さに慣れてないせいもあるだろうが、それはこちらも同じだ。
不服と語る龍田の視線を浴びていると、脚を微妙にぶるぶるさせている天龍も寄ってくる。
「な、なんかせめてタオルとかねぇか? 流石にこの寒さに水はきついぜ……」
「そんなもんないぞ。 我慢せぇ」
「くそぉ……」
工廠長の横やりを食らい、天龍は艦載機山積みの箱へ背中を預けて座り込む。
そこで、ふと頭に何かが引っ掛かって工廠長を見てみる。
船渠に行った時、古びているといえタオルはあったはずなのだが。
くっくっくと不敵な笑みに、してやったりの文字がありありと書かれているのがわかり、指摘
するのをやめた。
昨日で来た通風孔もあり今の工廠には風が絶え間なく入り込んでいるため、すぐに乾くだろう。
耐えられないのであれば、上の軍服を貸すぐらいはしよう。
「司令官さん、寒い、寒いわ~……」
噂をすれば影が差すというが、まさか頭の中で考えたことまで含まれるとは思わなかった。
そして今回はふざけている様子ではなく本当に震えている様子なので、貸さざるを得ない。
このことわざを考えた人に勝手に文句を浮かべつつ、思った通りに上着を抜いて龍田に
かぶせる。
少々寒いが、脚を濡らしている他の皆よりはましなため我慢だ。
「潮と血の匂いが混じってますけど、我慢してくださいよ」
「……ありがと~」
少しきょとんとした後に返事をして、天龍の隣まで移動して二人で使い始める。
「なんだこれ?」
「司令官さんから借りたの」
「そっか。 ありがとな」
「いえいえ。 お気になさらず」
手を振りつつそう返すと、天龍はいっそう背後の積んである艦載機の山にもたれかけて目を
閉じる。
「さっき起きたばかりなのにまた寝るんですか?」
「起きてても何もすることないし、体動かしても食い物も水もない。 寝るしかないだろ」
目を閉じままそう答えられ、「なるほど」としか言い返せない。
てっきり動き回るかと思っていたが、とんだ思い違いだったようだ。
寄り添って寝始める二人から目を離して、皆が出て戻ってきたハッチの外、海を見てみる。
光を反射して揺れる水面は、相変わらず綺麗だ。
ただこの先に人類共通の敵がいるとなれば、怖くも見える。
相対する考えを抱いていると、あの時のヲ級が頭にちらついた。
敵、なのかな……
あの光景を見ると、自分達が彼女達の敵なのではないのかと思えてしまう。
自分や周りに向けた目は、助けを求めるものではなかったのか。
自分達が戦うから、彼女達は自身を守るために戦っているのではないか。
「考えすぎかな……」
すぐに消え入る声で、思考を区切る。
いくら考えても、終わりのない無限ループに迷い込むだけだ。
この長年続く、さながら冷戦のような長い戦いが終わったところで、真実はわからないだろう。
そんなことを思うより、新しく移ったばかりの暁らの訓練メニューでも練る方が有意義だ。
暁たちも話し合っているし、島風も話しかけてくる様子はなく丁度いい。
何から鍛えようかなと、輸送船が来るまでそう考えることにした。
工廠長が可哀想。そんな第31話でした。
別に例のエンジン4つ載せた人員輸送機を捨てる訳ではありません。いつか必ず再登場させ
ます。そして飛びます。
イベントの話に移ります。非常に長いため興味の無い方は最後までスキップ推奨です。
さて提督の皆さん、成果はどうでしたでしょうか。私は……まあ、水無月とWarspiteは手に入れ
ましたよ。ただ、あれですよ。伊26なんて幻想だったんです。あとAquilaも夢だったんです。
掘り100週して出てこない26ちゃんなんて特に。
攻略難易度は甲甲乙丙です。え? 司令部Lvは105ですが。どうして下げたのか? E-3は
ボス前ダブルダイソン……の前のヲ級改にIowaワンパン大破という悪夢を見せられたので乙、
E-4は乙でいこうとしたけど沼に片足を突っ込み『このままじゃ26掘りできない!』と魂が
叫んだので丙。情けないったらありゃしない……
しかしまあ、Warspiteは手に入れたわけですが、どうせ金剛やIowaみたいな発(うわ何をする
やめry)と思っていた矢先のあのぺらっぺらな発音。思わず「おぉ……」と言ってしまいました。
流石にネイティブには聞こえませんが、ここは日本ですので十分でした。
新規ドロップ艦は逃したものの、まあまあな結果になりました。報酬艦を除けば、駆逐艦
『朝雲』『(なぜか持ってなかった)不知火』、重巡洋艦『三隈』、戦艦『日向』。少ないもの
の、初ドロップ艦としてはぼちぼちの数です。これからは航空戦艦の時代だな。
深海棲艦側のセリフを聞いていると、思いっきりバカンス中の所を寄ってたかって襲撃しま
くっていたみたいですね。ビーチパラソル、クーラーボックス、ドリンクはなんのことなのかと。
そしてE-4の敵編成名の『再建中』の文字を見た時には申し訳ない気持ちで一杯になりました。基地航空隊三隊集中爆撃して必ずS勝利していきましたが。
……と、こんなところです。イベント攻略できても掘りが鬼門ですよね。そのせいで私の友人も
バケツが消えたと嘆いていました。
長くなりましたが今回はこのあたりで。次回は今月中に、できれば。それでは皆さんのイベント
が満足のいくものであったことを祈りつつ、失礼します。