駆逐艦しかいない鎮守府   作:鼠返し

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 何とか投稿できました、鼠返しです。

 最近、原因がわからないのにも関わらず忙しいです。別にリランカレベリングで皐月を改二に
したとかそういうことではありません。

 さっさと真面目にいきましょうか。注意事項は無し、以上。長さもぼちぼちですし、さくっと
暇つぶし程度に読んでいただければ満足です。

 第32話、気軽にどうぞ。


第32話 旧鎮守府との別れ

 暗闇の中で、誰かに肩を叩かれる。

 

「おい起きろ。 来たぞ」

 

 その声に反応して、閉じていた目を開ける。

 

 下げていた頭を上げると、艤装を全て装備した天龍がいた。

 

 いろいろと考えているうちに、いつのまにか寝てしまっていたようだ。

 

「ありがとうございます。 輸送船ですか」

 

「あぁ。 そろそろボートが来るぞ」

 

 体に掛けられていた服を片手に立ち、身に付けながら天龍に話しかける。

 

「暁たちは?」

 

「先に爺さんと一緒に行った」

 

「ボートはどの辺りに?」

 

「今龍田がすぐそこに誘導してる。 お、あれだ」

 

 ボタンを留めつつ天龍が指さす方を見てみると、小さいがこちらに向かっている龍田の後ろを

ボートが追ってきている。

 

 歩きながら出来る限り身だしなみを整え、ハッチ近くの扉から出てボートが近づきやすい位置の

海岸まで歩く。

 

 少ししてボートが限界まで近づいてきて、乗っている人が話しかけてくる。

 

「迎えの者です。 足元に気を付けてお乗りください」

 

「ありがとうございます」

 

 ちゃんとした港や桟橋が無いために接岸せず、岸から2mほど離れた場所でゆらゆら揺れる

ボートに乗ろうと海へ足を踏み出す。

 

 この気候の中では極力避けたいとはいえ、濡れて冷たくなるのは仕方ない。

 

「よいしょっと」

 

「うおっ」

 

 覚悟を決めて踏み出した足が海水に触れる一歩手前で、横にいた天龍に米俵の如く担がれて宙に

浮く。

 

 そのまま主機を始動させてばしゃばしゃと水をまき散らしながら進み、ボートへ半ば投げられる

ようにして乗せられる。

 

「ありがたいですけど、事前に何か言ってもらえませんか?」

 

「まぁいいだろ別に。 ほら、さっさ行かねえと来ちまうかもしれねぇぞ」

 

 もっともな事を言ってさらっと流し、龍田にハンドサインを出して一緒に先行してくれる。

 

「出します」

 

 ボードのエンジンが回転し始め、少し先を行く二人の速度に合わせて航行し始める。

 

 思いの外険しい、乗っているボートがよく入れたと思うような岩礁を潜り抜けると、ようやく

輸送船が見えてきた。

 

 意外と小柄な船だが、右舷にきちんと艦娘が三人ずつ護衛している。

 

 ある程度近づくと駆動式の橋のように船の一部が開き、自分たちを招く準備をしてくれる。

 

 最終的に水上機母艦のスロープみたいな形となった場所へ入り込み、数日ぶりに揺れる床へ足を

付ける。

 

 戻ってこれたと少し場違いに安堵の息を漏らしていると、船員が近づいてきた。

 

「お待ちしておりました。 こちらへ」

 

「この二人は?」

 

「艤装解除後、同じ部屋へご案内させていただきます」

 

「わかりました。 天竜さん龍田さん、また後で」

 

「おう、すぐ行くからな」

 

 2人に手を振り、船員に連れられて船の奥へ入っていく。

 

 居住性の高そうな船内を見渡しながら、カツカツと無言で歩く。

 

 階段を上り2~3分ほど歩くと、来賓室のプレートがある部屋に着いた。

 

 船員がノックし「失礼します」と言い扉を開くと、暁ら四人がいた。

 

「こちらの部屋でお待ちください。 御用がありましたら、そちらの内戦の0番からお伝え

 ください」

 

「わかりました」

 

「準備が整い次第動き始めるので、揺れにご注意ください。 では失礼します」

 

 ぱたりと扉が閉じられ、余裕をもって10人は入れる部屋に残された。

 

 島風以外の4人は座れそうなソファー2つに2人ずつ座り、机に置かれている燃料やら弾薬やら

軽食をつまんでいた。

 

 独りぽつんと部屋の角に椅子を置き連装砲ちゃんを抱く島風もいる。

 

 しばしどうしていいかわからず揺れる床の上で微動だにせずにしていると、響が手招いて

くれた。

 

「そんなところに立ってないで、座って食べたらどうだい?」

 

「あ、あぁ……じゃあ失礼して」

 

 未経験の状況に少し声を上ずらせながら、座るスペースを作ってくれた響の隣に腰を下ろす。

 

 軽食の内容は、一心不乱に工廠長が齧りついている枝豆やファストフード店のものとは少し違う

フライドポテト、串に刺してあるから揚げと、端的に言い表せばオードブルとなっている。

 

 腹をすかせた体は我慢することなく暴れ始めたので、一番近くに合った枝豆を摘み、口の中へ

飛ばす。

 

 適度な塩加減が胃をさらに刺激し、飲み込む前に手当たり次第に手に掴んで口へ入れてしまう。

 

 丸二日間封じ込めていた分の飢えが一気に来たようで、周りの全員が一瞬手を止めるほどだ。

 

「ほら、皆も食べて。 じゃないと私が食べつくすぞ」

 

 手を止めて言うと、なぜか恐る恐ると言った様子で再び手を付け始める。

 

 変わらず食べ続けているのは響と工廠長だけだ。

 

「……島風、食べないのか?」

 

「いい。 お腹減ってない」

 

「そ、そうか……」

 

 きっぱりとした言い方にたじろぐが空腹の波に飲まれることにして、子供の様にばくばくと食べ

進めていく。

 

 最初は6人分ほどあった量が自分だけで約三分の一を消してしまった頃、扉がノックされ開か

れる。

 

「失礼します。 こちらの部屋でお待ちください。 何か御用の際は内線の0番よりお申し付け

 を。 なお、もう少しで船が動き始めますので揺れにご注意ください。 それでは失礼します」

 

 そう自分たち以外の誰かに言って船員が出ていくと、入れ替わりで天龍と龍田が入ってくる。

 

「お、飯あるじゃん。 食っていいのか?」

 

「駄目だったら私は肉なんて握りしめてませんよ」

 

 そう返事をすると、天龍と龍田は暁と雷のそれぞれの隣に座り、近くの者から食べ始める。

 

「腹減ってたんだよなぁ、助かるぜ」

 

「天龍ちゃん、口に入れたまましゃべらないの」

 

「はいはい。 どうしたお前ら、辛気くせぇなぁ。 もっと食えよ、な!」

 

 暁と一方的に肩を組み、手がほとんど止まりかけている響以外の三人へ威勢よく声を飛ばした。

 

 いきなり組まれた暁は迷惑そうに顔をしかめ、雷と電は少し遅れて苦笑いをする。

 

 素面のはずなのに酔っ払った年配のようなノリに、自分の顔も似たような反応を示す。

 

 可哀想にとも思うが、慣れてもらうためにあえて何も言わないで億。

 

 慣れてしまえば、かなり大きかった声に反応もせず寝転がりながら枝豆を齧る工廠長のような事

もできる。

 

 それまでは話しかけられてもないのに手を止めて顔を上げた響のように驚いてしまうが、仕方の

ないことだ。

 

「天龍ちゃん。 少し静かに」

 

「おう、悪い」

 

 そう天龍が言うのと同時に床が細かく揺れ始め、見えない力に引っ張られる感覚がした。

 

 船が動き始めたのだ。

 

「お、動き出したな」

 

「天龍ちゃん楽しそうね」

 

「今まで俺がこいつ()と同じだったからな。 こんなの滅多にないしわくわくするだろ。 な?」

 

「しないわ~」

 

「お前らはするよな?」

 

「「「……あはは」」」

 

 部屋に入って来てから妙に天龍のテンションが高かったのはそのせいらしい。

 

 急に絡まれ乾いた笑いをする響以外の3人を懐かしい目で見ていると、机の上をごろごろと

工廠長が転がってくる。

 

「船が船に乗るなぞ、奇妙な光景じゃのう」

 

「そんなことはないですよ。 大発動艇や甲標的だって、船に乗った船ですよ」

 

「それは小さい船じゃろう。 響はなんか思わんのか?」

 

 話しかけられたことに反応し、響はしっかり口の中のものを飲み込んでから話し始める。

 

「……特にないかな。 元が船とはいえ、今は人間に近いし」

 

 そう答えてから枝豆を左手でつまんで食べようとする。

 

 だが落としてしまい、右手で取ろうとするもそもそも無い手ではもちろん掴めず、床に落ち

転がっていく。

 

「……はぁ」

 

「不便だな、それ」

 

「……かなり」

 

 溜息を吐いた響へ話しかけ、落ちた枝豆を広い近くのごみ箱に捨て、流れで内線の受話器を

取って0を押す。

 

 ほんの2回ほどのコールで船員が対応し始めた。

 

『どうかしましたか?』

 

「艦娘が右手を欠損していまして。 バケツ一杯の水と燃料鋼材、あと造血剤をお願いできます

 か」

 

『艦種は』

 

「駆逐艦です」

 

『わかりました。 すぐに手配しますので、数分お待ちください』

 

 受話器を置き、響の隣に戻って残り少ない食事を再開する。

 

「悪いね司令官。 色々としてもらって」

 

「発端は私だからな。 気にしないでくれ」

 

「こいつはすげぇから任せとけよ。 自分で勝手に治すより早く治るぜ」

 

「たまの軽い怪我くらい自分で治してください」

 

「怪我したら見せろっつったのは誰だよ……」

 

「これからは自分でお願いします」

 

 天龍にそういったのは、治し方が効率的ではあったが資材的に非効率だったからだ。

 

 活発な性格故に怪我をするのはわかるが、日常的な怪我にまで高速修復材を使って傷を再生

しようとするのは、日ごろは寛容な教官も看過できなかった。

 

 この方が早いとか知ったことではない。

 

 燃料も鋼材も高速修復材も、数多く蓄えているとはいえ無数にあるわけではない。

 

 それに本来、これら資材に関連するものは国の所有物となっている。

 

 大した理由もなく私的に使えば、提督側も艦娘側も減給や謹慎の対象にもなるため、何とかして

避けなければならなかった。

 

「そういえば暁の足も見ていたね。 医術に長けてはいるようだ」

 

「医術は大げさだ。 私にできるのは応急処置の範囲内だけだ」

 

「それでも治るんだから、やっぱり司令官さんはすごいわよね~」

 

「お褒めにあずかり光栄です、龍田さん」

 

 演技として胸に手を当てつつ返すと、天龍がツボにはまったのか軽く噴き出した。

 

 つられたかのように雷も小さく笑ったが、はっとした顔をして口元を隠す。

 

 体を強張らせて自分を見るが、横目で見るだけで気付いていないふりをしておく。

 

 単冠湾にいた時に何があったかは何となく想像でき怖がる理由もわかるが、今はもう横須賀所属

の艦娘で、笑ったからと言って何かをするようなことはない。

 

 これを言葉ではなく心で直接感じてもらうための、敢えてのふりだ。

 

「いきなりどうしたんですか天龍さん」

 

「い、いや……なんか堂に入っているのがな……!」

 

 腹を抱えて、小さくくつくつと声を漏らす。

 

「おかしなツボじゃのう」

 

「天龍ちゃんは変わり者なのよ。 そっとしてあげて」

 

 龍田がそう工廠長に言うと、雷が少しショックを受けたような顔になってしまう。

 

 まぁまぁと電が慰めるのを見て、今度は自分が「ふふっ……」と変わり者になった。

 

「もう、司令官さんもどうしたの?」

 

「いえ。 私も変わり者なんだな、と」

 

「何それ、あはは!」

 

 天龍から始まった笑いが伝染し、仏頂面だった暁や、傍観者の電や表情の堅い響も、程度の差は

あれ笑い出し、部屋の雰囲気が明るくなる。

 

 そんな中、ちらりと無反応の島風の姿が見える。

 

 気が弱いだけなら入りたそうなそぶりが少しは見えるのだが、島風のそれは拒否しているよう

にも見える。

 

 何があって島風がこうなったのか、皆目見当もつかない。

 

 一人笑いを小さくしながら見つめていると、気付いたのか島風は顔を上げた。

 

 そして何かを話そうと小さな口が開きかけ――艦内に警報が鳴り始めた。




 雷は絶対に個性的なツボを持ってるはず。根拠もなくそう思いながら書いた32話でした。

 最近、ちょっと文体を変えようかなと思っております。区切りのいいところまで書いたら告知
して、それから変えようと。

 ちょこっとだけ余計なお話を。

 秋刀魚イベ、始まりますよ。リランカレベリングで資材もあまりないというのにどうしろって
いうのでしょう。秋刀魚イベが秋イベだったら苦労しないんですが、どうなんでしょうね……。
まあ、それでも全力で行くことに変わりはないんですが。

 全力で行く理由としては、前回の秋刀魚イベで満足な結果を残せなかったからです。艦隊大漁旗
と四式水中聴音機欲しかった……。悔いを残したくないが故の全力です。もし秋イベが後ろに
控えていたらなんて考えは捨てます。捨てると言ったら捨てます。多分。

 書くこともないのでこのあたりにしておきましょう。次回は来月になりそうですかね。季節の
変わり目、体調を崩さないように頑張っていきましょう。
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