駆逐艦しかいない鎮守府   作:鼠返し

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 やってしまいましたな……と、鼠返しです、お久しぶりです。そして読者の皆様に精一杯の謝罪を。申し訳ありませんでした。

 さて今回、長い間開けていたからといって長いというわけではありません。また、艦娘もほとんど出てきません。艦これの二次創作というのは一体どこへ行ってしまったのやら。もう少しで戻ってくる予定なので期待して……ください。

 今回から、執筆中のプレビュー機能が全く働かなくなったので、文法はそのままに改行等が以前と少々変わっています。ご了承ください。

 注意事項は無し。さらっと読んでいただけるかと思います。どうぞ。


第35話 偶然か必然か

 どうしてこうなったんだ、と気を落としながら、目の前の大きな背中を追う。

 

 ダッシュで逃げるか、自分を知る他の誰かが偶然通りかかるのを待って誤解を解くか。

 

  いや、下手に逃げると絶対迷う……今夜だし……

 

 策を考えては没にしていると、自分の方を向かずに話しかけてくる。

 

「お前、名前は」

 

 一瞬、頭の回転が止まったような気がした。

 

 今まで名前なんていらないと思っていたが、このような場では必要になることを忘れていた。

 

 配属される前に、確かに仮名を交付してもらったはずだ。

 

「おいどうした。名前は」

 

「え、いやあの、すみません。人と話すのが少し苦手で……」

 

 まさか名前がないというのを正直にいうわけにはいかないだろう。

 

 必死に記憶を探って、短い文字列を思い出す。

 

「……小鳥遊。小鳥遊です」

 

「所属は」

 

「あー、えっ……と」

 

 投げかけられた問いに、すぐに答えることができない。

 

 提督業はそこそこやってきているものの、それ以外の仕事、ましてや輸送船の船員などしたことはない。

 

 そもそも乗ったこと自体がほとんどないため適当なことをいうことすらできず、泣く泣く「忘れました……」ということになった。

 

 その直後、目の前の壁が立ち止まり、こちらを振り向いて鋭い視線を向けてくる。

 

「ほう……そんな頭でよくこの船に乗れたな……」

 

 声は小さいが、目でこの大男の感情がよく伝わってくる。

 

 まだ頬をひっぱたかれた方がましだと思える威圧感に、肩を縮ませる他なかった。

 

 時間の感覚を失ったのかとてつもなく長い間固まっていると感じ始めた頃ようやく再び前を向いて歩き始めてくれた。

 

「自分の仕事すら忘れる奴がここに来るな。お前みたいなのが他を殺すことになる仕事だ。単冠に戻ったら辞めて会社員にでもなってろ」

 

 言いたいことは分かるし正論ではあるが、そうじゃないと口出しをしたくなる。

 

 代わりに「はい」と言い換えて送ってみるが、残念ながら気持ちは伝わらなかったようで、ひたすら無言で歩き続けた。

 

 もはや道順など覚えていられないほど船内を歩いていると、『食堂』とプレートがかかった部屋へ男が入っていく。

 

 真っ白な机と椅子がずらっと何列も並んでいる隣を奥に向かって進み、関係者用と思われる扉を開く。

 

「待て。こいつを着ろ」

 

 その直前、顔の前にぬっと白い何かを差し出される。

 

「はい」と返事をして手に取り広げてみると、清潔そうな調理着だった。

 

 言われた通りにそれを来て、今度こそ部屋の中に入る。

 

 大型のコンロ、鍋、大量の皿、食料庫と書かれた重そうな扉が見えるここは厨房のようだ。

 

 ガチャンガチャンと聞こえる音に混じってプラスチックの皿同士がぶつかるのも聞こえる。

 

 その後ろで調理着を忌避とが数人ほど、ひっきりなしに皿を同じ場所に立て掛けている。

 

「よし、全員注目!」

 

 大きく手を鳴らしながら大男がそう言うと、厨房にいる人全員の視線が集まる。

 

 中には不思議そうに自分の姿を見る人もいるが、それは短い間だった。

 

「どこの奴かは知らんが、庫の時間に外をほっつき歩いてたこの馬鹿をしばらく預かることにした。人手が足りないようならこいつを使え。いいな」

 

「「「はい」」」

 

 意外と多くの人がいるようで、見えているよりも多くの声が厨房中から上がる。

 

 それを聞いた男はかつかつと食料庫とは別の奥の部屋へ向かい部屋に入ると、全員が大なり小なり視線を崩したりして場の空気が少しなごむ。

 

 仕事を再開する人もいるが、何人かは物珍しそうに目を輝かせながらこちらへ近づいてくる。

 

 まあ、海軍の船で規律を守らないやつは珍しいだろう。

 

 本来は守る側の立場ではないことで泣きたくなるが、今は近づいてくる人に意識を向ける。

 

「運がなかったなあんた。他の奴ならまだしもうちの料理長に見つかるなんて」

 

 スポーツでもやっているのか、少々体つきの良い、料理長という男よりかは一回り小さい男が話しかけてきた。

 

「ええ……ほんと、運がなかったとしか」

 

 実際、運がなかっただけだろう。

 

 必然だなんて言われたら、心が折れてしまいそうだ。

 

「そうでもない。運はあった。不幸中の幸いというやつだ」

 

 こちらへ来ていた人の内の一人、大きさは料理長と並び、やたら筋肉質な体をした少し色が黒い男が話しかけてきた。

 

 先ほどのはスポーツ系だったが、こちらはボディービル系といった感じだろうか。

 

 南米やブラジル出身かと思われるその男は、無表情でこちらを見つめている。

 

「運があった、とは?」

 

「普段、部外者はここに入れない。お前は運が良い」

 

「……なるほど、理解しました」

 

「よし」

 

 ぽん、と肩に大きな手を乗せてくる。

 

 どう反応すればいいかわからずおろおろしかけるが、すぐに手を引っ込め笑顔を浮かべるため自分も習ってみる。

 

「運が良いとはいったが、決まりを破ることはよくない。この意味がわかるか」

 

「えぇ、ちゃんと」

 

「よし。話が早い。お前は良いやつだ」

 

 先ほどと同じ動作を繰り返しながら、笑顔を浮かべる男はそう言ってくれた。

 

 言動が独特だが、悪い人ではなさそうだ。

 

「めずらしいなゼン。お前があっさり気に入るなんて」

 

「……今回の件を抜きにして、芯がしっかりしている。体も鍛えてある。見込みのある男だ」

 

 鍛えてある、ということバに少し疑問を抱いた。

 

 確かに武道っぽいなにかを毎日してはいたが、筋力は普通の成人男性と変わらないくらいだ。

 

 貧弱でも強靭でもない自分の腕を見ていると、ゼンという男がそれに答えるように話し始める。

 

「姿勢だ。常に構えを解かないのは、相当鍛えている証だ。筋力を高めることだけが鍛えることではない」

 

「……ゼンさんは何か格闘技でも?」

 

「……少し。だが、実戦向けだ」

 

 少し茶を濁されてしまった。

 

 実戦向けということは、どこかで戦いを経験しているのだろう。

 

 失礼なことをしたなと自分を戒めつつ頭を下げる。

 

「気にしないでいい。ゼンだ」

 

「小田切優。いずれは提督になってハーレムを築くのが夢だ!」

 

 一人かなり不純な心を持っているようだったが、二人が握手を求めるのでそれに応える。

 

「小鳥遊です。よろしく」

 

 もうすでに自分達だけの空気が出来上がってしまっているのか、見に来ていた人たちはそれぞれの場所に戻りつつあった。

 

 単に仕事が残っているからかもしれないが。

 

「……で、お前は何で捕まったんだ?」

 

「夜風に当たりたくて、つい外に……」

 

「あの人、料理長のくせに見回りまでするからな。ま、今度からは気を付けろよ」

 

「はい」

 

「仕事はどうする」

 

「俺たちと同じで良いんじゃね? 他は十分回るだろうし。じゃ限定新人よ、床掃除だ。こっち来な」

 

 手招きされるままに小田切についていく。

 

 ビシバシしごくというのは言葉の綾だったのだろう。

 

 そのことにほっとしつつ、渡されたモップで床を掃除していくことにした。

 

 あの人にしごかれるより、こちらの方が精神的にも体力的にも楽だ。

 

 

 

「…………」

 

 うるさかった天龍のいびきが消えて一時間。

 

 同時に司令官がいなくなってからと同じ時間も流れているわけだ。

 

 あまりにも長過ぎやしないだろうか。

 

 夜風に当たりたいのが本音だったとしても、こんなにも長く当たるものでは無さそうだが。

 

 少し探してみよう。

 

「ちょっとごめんね……」

 

 体に寄りかかっている連装砲ちゃんをおこさないようにゆっくりと横にし、音をたてないようそろりそろりと部屋を抜け出す。

 

 船が揺れる音以外耳には届かず、窓の外は真っ暗で本当にそうなのかはわからない海と奥に光る人工的な灯りがぽうtぽつと見えるだけの空間。

 

 こういう孤独を感じられる場所は嫌いではないが、目的を果たす方を優先させる。

 

  ……どっちに行ったんだろう。

 

 右か左か。

 

 一応どちらも見渡すが、同じ景色が左右対称になっているだけで、求めるものではないが代わり映えしない。

 

 勘で右を選び、道順を覚えながら外へ繋がる道を探す。

 

 歩きづらいスリッパをペタペタ鳴らしながら進んでいく。

 

 似たような光景ばかりで頭がくらくらしそうだ。

 

 もしかして、前の自分もこんな感じだったのだろうか。

 

 そうこうしている内に、近くの窓の外に通路のようなものが見えた。

 

 仮に自分が通っている道が司令官と同じであればあそこに行くだろう。

 

 少したか今戸に背伸びしながら窓に顔をつけ、おおよその位置を把握してその場所へ向かう。

 

 多少の曲がり道があり、覚えられるか不安になりながらも、いかにも外に繋がっていそうな、重そうな扉が視界に入る。

 

 ドアノブの役目をしているであろう鉄の棒に手を伸ばし、ためしに回してみる。

 

 しかし、若干ぐらぐらするだけで回る気配はない。

 

 ググ、と軋む音が自分を嘲笑っているようだ。

 

 こんなに固くする必要はあるのかと思いつつも、今度は両手で回してみる。

 

 やっとゆっくり回り始め、限界まで回しきったところで内側へ引いてみるが開かない。

 

 外に開くのかと押してみると、わずかに開く手応えがあった。

 

 隙間から風を受けながら徐々に開いていくと、約半日ぶりの潮風を全身に受けることになった。

 

 部屋の辛気くさい空気より、やはり自分にはこちらの方が性に合っている気がする。

 

  ……少しくらいならいいかな。

 

 少し背伸びをしないと、板のような手すりの向こうの海が見えないため、近くにある外階段を数段昇って座る。

 

 こうやって落ち着いて夜の海を見るのはいつぶりだろうか。

 

 特定の考えにとらわれずに、風邪に吹かれながら何かを眺めるのは予想以上に良いものだったらしい。

 

 ただ、こんな気持ちに浸るのはここまで。

 

 ここにいないとなると、司令官はどこに行ったのか。

 

 自分とは反対の方に行ったのか、船内で迷子になったのか。

 

  あの人は迷子になるような人じゃないと思うけどな……

 

 いろいろ可能性を模索していると、後ろ、回段ノ上から誰かが降りてくる。

 

「貴様誰だ!」

 

 ドスの効いた声で話しかけられ、若干驚きつつも振り替える。

 

 自分の二倍はあるんじゃないかというような男が、階段の上で仁王立ちをしていた。

 

 正直にいって、威圧感の塊だ。

 

「……響」

 

「聞こえんぞ!」

 

 面倒くさいなあ、と思いながらも、男に近づいて少し大きめの声で言い返す。

 

「響。艦娘だって言ったんだ」

 

「艦娘……」

 

 脳内が点になって固まっていそうな顔をしたあと、男は強張らせていた顔を緩めた。

 

「……あぁ、申し訳ない。くらがりだったもので、よくわからなかった」

 

「誤解が解けたようで何よりだよ」

 

 この浴衣が見えないかなあと少し不思議に思ったが、無理矢理絡まれることは回避できたので良しとしよう。

 

 丁度良い、質問をしてみよう。

 

「あなたはよくこの辺りを見回ってるのかい?」

 

「夜だけですけど、まぁ」

 

「どこかで若い男を見なかったかい? 上がシャツで下が軍服、なんて変な格好をした。夜風に当たってくるって言ったきり帰ってこないんだ」

 

「…………」

 

 少し驚いたような顔をして、顎に手を添えて考え込むような仕草をする。

 

 早く返事が来ないか、案外様になっている格好をした大男を見続けること10秒くらい。

 

「……たぶん、食堂の厨房で掃除をしているかと」

 

「……は?」

 

 予想外のことすぎて、つい真顔のまま聞き返してしまった。

 

  夜風に当たりに行ったら厨房で掃除……? 船員でもないのに……

 

「名前は小鳥遊、ですよね?」

 

 更には訳のわからない名前まででてきた。

 

 なるほど、司令官の名前は小鳥遊というらしい。

 

 隠すほどでもないのに、なぜ黙っていたのか。

 

 たぶん同一人物だと思うので、ここは一つ嘘をついておく。

 

「そうだよ」

 

「……申し訳ありません。実は私の責任でして」

 

 挙げ句の果てにはこんな訳のわからないことを良い始めた。

 

 司令官はいったい何をしでかしたというのか。

 

「……詳しく聞かせてくれないかな」

 

 そう口に出した声は、自分でもあきれるほど間抜けな声だったと思う。




 時間をかなり空けてしまいましたが、楽しんでいただけたでしょうか。 

 この4か月間あったんです、いろいろと。そりゃあもう。

 ちまちま2~3か月ほどかけてこの35話を完成させました。2か月ほど前に。ところが、アナログで書いていた罰が当たったのか、なんと全て紛失してしまいまして。モチベーションなんてあったもんじゃなく、いろいろ逃避行してました。友人と麻雀始めたり、ガンスリンガーストラトスΣ始めたり、PS4買ってNieR:Automataをエンジョイしたり。

 そんななかふと書きたくなってきました。ほんとに衝動的に。元々書いていたものとは全く違う感じに変えながら1週間ほどで書き上げました。小鳥遊(仮)と第六駆逐隊の先の話を想像していたら居ても立っても居られなくなったんですね、これが。一度想像した物語を文字に起こす快感を知ってしまうと止められませんね。一種の麻薬ですよもう。

 ……なんて、久々なんで長くなってしまいました。毎度のことながら次回の更新はいつになるかわかりません。そんな私ですが、待っていただければこれ以上嬉しいことはないです。
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