最近なんとか、やっと土日に時間が取れるようになりまして、
こうして投稿したわけです。
これからは、土日には1話ずつ投稿できそうです。
平日は…………やはり出来上がり次第ですね。
できるだけ早めに投稿できるよう頑張っていきます、はい。
そんなわけで(?)、第4話です。
3話よりは少し長めです。 それでは本編をどうぞ!
体を完璧に拭き終えて服を着終えた後、船渠前の廊下まで出てきた。
外で待っててもらった三人を探そうとするが、右を見ても左を見ても姿が見当たらない。
どこに行ったのだろうかと周りを見渡していると、どこからか焦げ臭い匂いがしてくる。
どうしたものかと道を覚えながら臭いの元へとたどっていくと、案外すぐ傍だった。
暁たちが、固まって座って何かを見ている。
「みんな、座って何してるんだ?」
そう話しかけた瞬間全員の肩がビクッと震え、一斉にこちらへと怯えた表情を
浮かべた顔を向けてくる。
あぁ~、響に言われたんだった……
先ほど聞いて了承したばかりだというのに早速過ちを犯してしまう自分に情けなく思いながら、
驚かせてしまった皆をなだめる。
「私だよ。 驚かせてしまって悪かった」
両手を頭の横に掲げて何もしないことをアピールし、全員がこちらを認識してから近づく。
「し、司令官……驚かさないでよもう……」
「ごめんごめん。 それで、暁たちは何やってるんだ?
なんか焦げ臭い匂いがするけど……」
「あぁ、それはね……」
言葉を途中で切り、暁が手招きをするので近づいて指を差す場所を覗く。
「これは……壊れた艤装か?」
「そうよ。 さっき響とお風呂に入ってきたならわかると思うけど、
響のところだけお湯があったでしょ?」
「確かに……他は凍ってたのにな……」
「そこで、浴槽の水を壊れた艤装の熱を使って暖めたのよ」
なるほどな、と思わず合点を打つ。
艤装が破損した場合、内部機関がオーバーヒートして熱を持つことがある。
まさかこの熱を風呂の薪代わりに使ってしまうとは、自分が思っていたより
暁たちは賢いようだ。
「……ん? 暖められるってことは、この先には響が浸かってる浴槽があるのか?」
「当然よ。 じゃないと暖められないじゃない」
「なんだこの前時代的な船渠は……」
頭に手を当て、盛大なため息をつく。
今時、こんな方法で入る船渠はこの鎮守府くらいだろう。
機械のボタンひとつで湯の温度を0.1℃単位で設定できる、我が教官がいる横須賀鎮守府とは
確定的な差ではないか。
しかし、元々無人島にこのような設備が揃っていること自体が奇跡に近いため、
今以上の高望みはしてはいけないのだろう。
「……まぁ、とりあえずだ皆、聞いてくれ」
これ以上考えていても仕方ないので、無理矢理口を開いて呼び掛けることにした。
全員が声に反応し、耳を傾けてくれるのを待ってから言葉を続ける。
「響が入渠し終えたら、その艤装の修理もかねて
「わかったわ。 響ならあと少しで治るわね」
そう暁が言うと、ブスブスと黒い煙を出し続けている艤装を取り出し、そのまま装備する。
「え? それつけて工廠まで行くのか?」
「手に持ってたら不便だし、こっちのほうが運びやすいわ」
暁にそう言われて納得し、船渠前の廊下まで三人を連れて戻る。
その後、数分と経たないうちに響が船渠から出てきた。
「待たせたね、司令官」
「いや、全然待ってないよ。 次は工廠に行こうと思ってるんだが、響もいいか?」
「わかった。 異論はない」
響の了承も得ることができ工廠の方へと足を進めようとするが、場所がわからない。
少しキョロキョロと周りを見渡していると、壁にうっすらとだが『←工廠』と書いてあった。
あとで濃く書き直しておこうと思いつつ、矢印に従って歩き始める。
暁の艤装から漂う焦げ臭い匂いを嗅ぎながら歩いていると、電が話しかけてくる。
「司令官さんは、どこの鎮守府にいたのですか?」
「私か? 私は横須賀鎮守府だよ。 そこで今まで立派な提督になるための勉強をな」
自分の話に耳を傾けていたらしい全員から、へぇ~と感嘆の声が聞こえてくる。
「横須賀と言えば、国の中でも最前線の場所なのです……」
「そうだ。 電の言う通り、国の中で最も重要で激しい戦闘が繰り広げられている。
ひどい時は、一日に一回は深海悽艦に母艦が襲撃されることもある」
「一日に、なのです……!?」
ここで、電だけでなく全員が驚いたような声をあげる。
普通の鎮守府では母艦が襲われるという事はあまりなく、単冠湾泊地ともなれば
襲われることはまずほとんどないだろう。
これは、向こうがこちらの戦力が横須賀に集中していると理解しているということになる。
最近は、自分がまだ横須賀にいた頃の話だが、段々と襲撃される頻度も増え、
出撃時の勝率も幾分か下がってきて戦術的な敗北回数が増えてきている。
「確かに、皆にはあまりないことだろうな」
「横須賀鎮守府には、どのくらい艦娘がいるのですか?」
電に質問され、顎に手を当てながら次々に思い出していく。
「……戦艦の金剛さんと比叡さんと榛名さんと霧島さん、正規空母の赤城さんと加賀さん、
軽空母の鳳翔さんに軽巡洋艦の天龍さんと龍田さんと夕張さん、重雷装巡洋艦の木曽さん。
あとは駆逐艦の吹雪さんの……計12人ってところかな」
何とか全員思い出せたことに安堵しながら四人のほうを向くと、
皆が唖然としてこちらを見ていた。
「戦艦が四人もいるのです……!」
「重巡洋艦がいない……意外だ」
「駆逐艦がいるっていうのも意外よね」
「司令官、たった12人で横須賀なんて守れるの?」
全員が全員驚いた顔をして感想を述べ、暁は当然の質問をしてきた。
「確かに、暁の言うとおり12人ではなかなか守りづらいと思う。 だが、それは他の
鎮守府での場合だ。 横須賀鎮守府では一人一人が私の教官の下で凄まじい実力をつけ、
たとえ駆逐艦の吹雪さんでも、何度か主砲で一撃で戦艦クラスを沈めている」
「「「しゅ、主砲で一撃(なのです)!?」」」
こちらがさも当然のように放った内容に、響は目を見開き、他の三人は口を揃えて感嘆の
言葉を漏らした。
基本的に駆逐艦というのは、潜水艦の撃破、昼夜戦の魚雷による壊滅的打撃を与えること
などが主な役割とされている。
自分たちも同じ駆逐艦であるがゆえに、その凄さがよくわかるのだろう。
「司令官、あとでいいからさっきの駆逐艦の話を詳しく教えて欲しい」
一方の響は、今まで見た中で一番真剣な顔をしてお願いしてきた。
興味がある、の一言では片付けられないと思わされるような真剣さ。
それに対し、言葉では言い表せない気持ちを抱きながら答える。
「あ、あぁ。 時間ができたらゆっくり話そう。
みんな、そろそろ工廠に着くぞ」
響と話しているうちに、『この先工廠』と書かれたところまでやってきた。
重々しい扉をしているが、やはりこの扉も船渠と同じく凍っている。
取っ手を握り、思いっきり左右に開けてみる。
「ぐっ!……ぐ、ぐおおぉ!……」
だが、まるで溶接された鉄のような硬さで1mmたりとも動かない。
これでも教官の下で毎日毎日激しい筋力トレーニングを続けてきた身として、
扉一枚ごときに負けてしまうわけにはいかない。
「ふんっ!……こんの、く、そっ……!」
取っ手が壊れてしまうのでは、と思うほどにさらに力を込めるが動かない。
それを見かねたであろう響が、静かに口を開く。
「司令官、私がやる」
「はぁ、はぁ、はぁ……頼む、響……」
取っ手から手を離し、響を場所を変わる。
そして取っ手を握り、バキバキ!と氷を無理矢理割るような音を出しながらも、
片手で何事もなかったかのように開いた。
「…………え?」
軍服の右袖で両目をごしごし擦ってもう一度見るが、やはり開いている。
やはり響が、片手で、普通の扉と同じように開いたのだ。
その事実が受け入れられず、返答の中身が分かっている質問をする。
「な、なぁ響……扉、重くなかったか?」
「いや、普通の扉だった。 司令官、何に力をいれてたんだい?」
「ウグッ!」
グサッ、と音がするほど心が痛んだ。
確かに、艦娘は人間とは違って何十倍も何百倍も力を出せる。
その尋常ならざる力があるからこそ、何百kgもある艤装を軽々と片手で扱えたりするのだ。
だからといって、見た目が少女の娘に単純な力で負けるというのは、男として
死にたいほど恥ずかしくなってくる。
「……行こう、工廠へ」
これ以上考えても、地面に倒れ込んで何もする気がおこらなくなる気がするので、
さっさと要件を済ませることにした。
「司令官、艦娘と人間の力は違う」
「グフッ!」
響のフォローしてくれたであろう言葉に、さらに心が傷つく。
「わかってる、わかってるよ響……工廠は目の前だ、早く行こう」
「だから、気に留める必要はない」
「ゴハッ!」
執拗なまでに、響は言葉でこちらの心を痛めつけてくる。
本人はフォローのつもりだろうが、こちらとしては全くそんなことはない。
「司令官、こればかりは仕方がない」
「グッ……! ……響」
心の中でひどく落ち込みながらも、顔を無理矢理笑顔にして響に歩み寄り、
黒い帽子の上に手を当てて撫でながら口を開く。
「……ありがとうな、気を遣ってくれて。 私は嬉しいよ」
「……司令官、どうして泣いてるんだい?」
いつの間にか、両目からはとめどなく涙が溢れてきていた。
「気にしないでくれ。 決して響の言葉に心が折れたとか、そういうのではないから」
後半に少し本音を混ぜて返答すると、響が撫でている右手を両手で押さえながら口を開く。
「……フォローの、つもりだったんだ……
「いいんだ、響。 こういうのは、仕方ないことだからな……」
途中にロシア語が入ってきたが、自然と理解して涙をこぼしながら響の頭から手を離した。
そのまま右袖で頬を流れている涙を拭き取り、工廠の方へ向いて歩き出す。
後ろの響を除く三人が、「司令官泣いてたわよね」とか「司令官、可哀想なのです……」とか
「やっぱり力が違うのね……レディーとしてどうしたら……」とかが聞こえてきたが、
極力無視して前を向き続ける。
ほどなくして、工廠らしき建物へたどり着いた。
だがしかし、この工廠は――
「……なんだ、この『馬鹿でかい』工廠は……」
天井が霞むほどに高く奥行は横須賀鎮守府の三倍はあろうかという、とてつもなく
大きすぎる工廠だった。
とまあ、第4話でした。
PCが諸事情で使えないときはvitaで執筆しているのですが、
工厰という字が先程みたいに上の点がないやつしか打てないんですよね。
自分だけのPCが欲しい、そう切実に願う毎日を送っています。
前書きの通り、翌日の同時刻に第5話を投稿予定です。
楽しみに待って頂けたら幸いです!