【完結】京‐kyo‐ ~咲の剣~   作:でらべっぴ

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蛇足的なエピローグです。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


エピローグ「繋がり」

一週間ぶりの部活。

 

「それだ、和。ロン」

「あ……」

「ふっふっふっ。和は綺麗な手作りするから読みやすいぜ」

「のどちゃんが犬に振り込むとか、明日は雪だじょ」

「だれが犬だ! これが特訓の成果なんだよタコス!」

 

「京ちゃんアガったの久しぶりに見たね。あ、それポン」

「須賀君、『読み』が鋭くなってます……」

「加カン」

「その嶺上取る必要なし。ロン」

「うえええ!? き、京ちゃんに槍槓されちゃった!?」

「ふへへ、言ってやったぜ! その嶺上取る必要なし。く~、カッケー!」

「ほ、ほんとに強くなってますね……」

「あうぅぅぅ……、私の嶺上開花……」

 

「ほう。少しは『読み』を鍛えてきたみたいだな、京太郎」

「少し? ちっちっちっ。俺の『読み』は全てを読むぜ!」

「ならこれを読んでみろ! リーチ!」

「馬鹿め! そんな見え見えのチートイ! 字牌とドラ以外はオール通しだ優希!」

「ロン一発! 8000だじぇ!」

「ぶふぉ!? なんだその{6}単騎!? なんつー馬鹿な待ちしてやがんだよ!」

「ふはははは! 甘いじょ犬! これぞ全国の強敵達を打ち破る為に編み出した読み殺し、『タコマージャン』だ!」

「く、くそっ、さすがにやりやがる……ッ」

 

「う~、カンカンカン! ツモ!」

「「「ぶふぉ!?」」」

「8000オールだよ!」

「お、お前、暗槓から入るなよ……、それじゃ防げねえだろ……」

「槍槓されたくないもん。しょうがないじゃん」

 

「では私もリーチです」

「くっ、せめて和だけでも防ぐぜ……ッ」

「ツモりました。3000・6000です」

「おおう、五面待ちじゃさすがに阻止できねえ……」

「多面張にしてツモれば読みも鳴きも関係ありません。麻雀は所詮確率です」

 

「ちくしょう、こうなったら……。カンカンカンツモ!」

「「「ぶふぉ!?」」」

「3000・6000だ!」

「コ、コイツ咲ちゃんみたいなアガリしやがったじょ!?」

「これぞ師匠の『反射鏡』と対をなす奥義! 『アタリ牌連続引かされ』だ!」

「「「アタリ牌連続引かされ……?」」」

「アタリ牌を掴んでしまう凡人の特性を利用したミラクル必殺技なんだぜ!」

「なんて情けない必殺技なんだじょ……」

「京ちゃんかわいそう……」

「麻雀に必殺技はありません」

 

「元気じゃなぁ、アイツら。京太郎も意外と強くなっとるし、言う事なしじゃ」

「これで私の『悪待ち』を会得すれば新人戦には間に合うわね」

「それはやめえ言うたじゃろ」

 

 

清澄はやっぱ魔窟編 カン

 

 

 

 

 

 

一ヶ月後。

 

「やったっすね、京さん!」

「おめでとう、須賀君。見事だったよ」

「これで長野一位だなー。ワッハハー」

「フン、キャプテンに勝ったんだからこれくらい出来なきゃおかしいし」

「県予選優勝おめでとう、須賀君」

「ありがとうございます、皆さん。モモと池田さんも全国出場おめでとう」

「華菜ちゃんの実力なら当然だし」

「天江衣が団体戦しか出なかったのはラッキーだったっす。後半『ステルス』で上位陣を狙い撃ちっすよ」

「……お前、咲を狙いすぎだろ。親の仇みたいに直撃しやがって、なんか恨みでもあんのかよ……」

「……幼馴染みの嶺上さんは、ちょっと恵まれすぎっすから」

 

「う~。ギリギリで届かなかったよぉ」

「東横さんの戦略が一枚上手でしたね。団体戦は龍門渕が取りましたし」

「まさか咲ちゃんとのどちゃんが落ちて私が全国とは。京太郎なんて一位通過だし、新人戦は荒れるじぇ」

「鶴賀の東横のせいで火力特化型しか生き残れんかったの。じゃけん、ウチからは二人全国じゃ。優希と京太郎にがんばってもらおう」

「……なんで京太郎の周りにゆみ達集まってんのよ」

 

「うぎぃぃぃ! このわたくしが個人七位! 原村和は六位! おのれ東横桃子ーー!」

「……最終戦ラスに落とされたのが痛い」

「ま、まあまあ、透華。全国には団体戦で行けるんだから」

「まさかタコスチビが二位とはなあ……。そういや須賀のやつ予選一位らしいぜ?」

「然もあらん。地区予選程度では京太郎を阻める者などおるまい」

 

 

もいっこ カン

 

 

 

 

 

 

二ヶ月後。

 

「ロン。三色ドラ1は5200」

 

『決まったーーー! トップ目の暗刻の{西}が吸い込まれたーーー! 北家のリーチ棒込みで、これでキッチリ逆転だーーー!』

『素晴らしいアガリですね。対局者の手牌はもちろん、全員の心理も流れも完全に読み切っていました』

『そうなの、すこやん?』

『それやめてよ……。ええ、今のオーラス、須賀選手は間違いなく卓全体を掌握していました。男子高校生の中では図抜けた実力です』

『ではこの新人戦優勝はまぐれではないと?』

『そう思います。春の選抜、来年のインターハイでも頭角を現してくるでしょう』

『それは凄い! 今年度の夏の女子インハイ優勝校、清澄は男子も魔物だったーーー!』

 

「……まずは一つ。必ず辿り着いてみせますよ、師匠」

 

「京ちゃんやった!」

「マジか、あの犬……。ほんとに全国一位獲りやがったじぇ……」

「見事な『読み』でした。さすが京太郎君ですね」

「「……………………」」

「…………いえ、優勝したら名前呼びにしてくれと言われまして。他意はまったくありませんよ?」

「「……………………」」

 

「強ぅなったとは思うちょったが、まさかここまでとは……。のう、久」

「……………………」

「……久?」

「え? え、ええ、そうね。ドキドキしたわ。たしかに少しカッコ良かったかもね」

「誰もそんな事聞いちょらん」

 

「京太郎のヤツやりおったで!」

「凄いで、凄いで……、ようやったで、須賀君……」

「絹ちゃんが泣いてるのよー」

「まさに我が事のようですね」

「それに比べて私はまた不発です……。団体戦は準決で足引っ張って敗退、個人では荒川憩と大星淡にボコられる始末ですし……」

「よっしゃ! お祝いにウチが京太郎のカノジョになったるか!」

「無理ですよ、洋榎には」

「須賀君はオッパイ星人らしいのよー」

「一度完膚無きまでにフラれたやないですか」

「……………………」ズーン

「だ、大丈夫やお姉ちゃん! 私の貸したる! 私の胸もついてくるて言えば勝負できるで!」

「うぅぅ……。なんてできた妹や。おおきに、おおきにやで、絹」

「……それでええんですか」

「絹ちゃんもちょっと頭おかしいのよー」

「さすが姉妹ですね……」

 

「あーもお! 神代には勝ったのに荒川に負けちゃったー!」

「個人全国二位なら立派だよ。私なんか部長なのに団体戦でも振るわなかったし……」

「……龍門渕と臨海が強すぎたね」

「それでも全国団体戦三位、個人準優勝なら立派な成績だ」

「……うん、みんなよくがんばった。おめでとう」

「違うよテルー。キョータローが優勝したのに私が優勝できなかったのが悔しいんだってば」

「……どういう事?」

「だって私のお婿さん候補は優勝したんだよ? これじゃカッコつかないじゃん」

「「「……………………」」」

「ちょっと待て、淡。須賀君は私の結婚相手らしいんだが……」

「なにそれ!? いつのまにそんな事になってたのさ!」

「私が言ったんじゃないぞ!? 龍門渕がそう言ったんだ! しかもネットで一部始終拡散されて……私だって責任とってほしいんだ!」

 

 

さらに カン

 

 

 

 

 

 

 

七年後。

 

「久しぶりだな、坊主」

 

女子プロリーグ、そしてシニアプロリーグとの交流戦。

男子プロリーグでは、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた者がその卓に着く事ができる。

 

「いや、『The Kaiser(皇帝)』だったか? 仰々しすぎる称号だ」

 

目の前の階段を登れば、そここそが夢見た場所。

 

「だが、インターハイ二年連続優勝。インターカレッジ無敗。なみいる実業団相手にも不敗とくれば、そんな二つ名もアリかもしれん」

 

階上から降ってくる声は、七年ぶりに会った師のもの。

 

「実は迷惑してんすよね、その『The Kaiser』っての。そんなチャチなもん、俺一回も名乗った事ないです」

 

歓喜と興奮と緊張で、魂が震えてしまう。

 

「くくく……。あの時ピーピー泣いてた小僧が、でかい口を叩くようになったな」

「俺は凡人です。師匠が判断したんですから、間違いなく凡人。だから驕る事なく、一つ一つ、丁寧に積み上げてきただけです」

 

故にこそ、ここまで辿り着く事ができた。

 

「それでも大したもんだ。あの『アタリ牌連続引かされ』なんぞという馬鹿馬鹿しい技。まさか弱さすら武器にするとは思わなかった」

「あいかわらず辛辣っすね……。死に物狂いで手に入れた力なんですけど……」

「貶しているわけではない。言ったはずだ、大したものだと。プロにはなれんという俺の予想が外れた時、あまりの事に言葉を失った」

「『The Gunpowder』の弟子だって胸張って言い続ける為に必死だったんですよ。それに、師匠との約束が俺を支えてくれました」

 

”そーだ! 俺もプロになりますからいつか対局しましょう!”

 

あの時の口約束を守る事、それが師へできる最高の恩返しだと信じて。

 

「……俺は、あまりうれしくはない。わざわざ鬼の道を選ぶ事はなかった。やはり坊主は馬鹿弟子だったな」

 

それは後悔か。失望か。

しかし、そんな自責の念など見当違いも甚だしい。

 

「まあいい。早く上がって卓につけ『The Kaiser』。馬鹿弟子を叩きのめすのは師の役目だと、昔からのならわしだ」

 

こちらは引導を渡しに来たのだから。

 

「俺、どうしても欲しいものがあるんです」

「ん?」

 

攻撃態勢に入る為、腰を落とす。

師に叩き込まれた絶対不動の構え。

 

「今日から名乗ります。俺の二つ名は、Second(二代目)――」

 

両目に浮かぶ勾玉。

体の周りを衛星の様に回る四枚の鏡。

 

「『The Second Gunpowder』、須賀京太郎。あなたの全てを継ぐものです」

 

たなびく神御衣の後ろ腰に右手を回し、剣の柄を握り込む。

 

「……フハッ! 笑い死にさせるつもりか、坊主? だがまあ、俺が死んだらくれてやるさ。すきにしろ」

「いいえ、師匠には長生きしてもらいます。だから今日もらうんです。あなたをぶち倒して」

 

師を越える事。

技を伝える事。

そして、労わる事。

 

「あとは俺に任せてください」

 

それこそが弟子の使命だ。

 

「十年早い。いいからとっととかかってこい」

 

全身に纏う碧の炎を足に集中。

 

「いくぜ、師匠――」

 

そして一気に爆発させた。

 

「これが俺の全てだ!」

 

これは弟子と師匠の物語。

 

”チッ……、随分とおせっかいな坊主だ”

 

偶然の出会いと別れを経由して、必然の出会いへと繋がった物語。

 

”マジで!? お爺さんプロ雀士なの!?”

 

力のない少年は、力しかない老人と出会い、そしてたくさんの絆を育んだ。

 

”そういえば、師匠の名前なんて言うんですか? 俺は須賀京太郎です”

 

全てはあの日の出会いから。

 

”ああ、まだ名乗っていなかったな、大沼だ。大沼秋一郎”

 

すれ違う筈の運命が交差した時から。

 

”もちろん師匠っすよ! けど、おもちに目を奪われるのは許してください。これは俺が背負う業みたいなもんですから”

”坊主が馬鹿なのは分かった。だからもう妄想を垂れ流すのはやめろ。耳が腐る”

 

二人はきっと仲良しだ。

 

 

スーカンツ

 




これで全~部終~了~。
ジャッキー見たら最終決戦の闘牌シーンが浮かんで、後は整合性の為に後付け後付け。
大沼秋一郎が便利すぎてご都合能力の説明がスムーズに行く事行く事。
即興で走りきれたのは大沼秋一郎のおかげでした。
あと、感想や評価をくれたたくさんの方達のおかげでもあります。
優しい感想ばかりで、みんなホントありがとうねー。
それじゃ。

次は京太郎のドロッドロの仲良し(笑)清澄とか書いてみたいなぁ……。

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