【完結】京‐kyo‐ ~咲の剣~   作:でらべっぴ

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幕間「始動」

京太郎は逃げていた。

校則なんて知った事じゃないとばかりに、校舎の中を全速力で駆け抜けていく。

 

「ああ、ちくしょう! 絶対部長に殺される!」

 

泣きそうになりながら、荷物がある自身のクラスへと突っ走った。

 

「もう後戻りできねえぞ! ちくしょー!」

 

さて、京太郎に何が起こったのかというと、事は昼休み。

久のクラスへ加治木ゆみの連絡先を聞きに行ったのが始まりだった。

色々条件を付けられるだろうとは思ったが、それでも教えてくれるだろうと軽く考えていたのだ。

しかし、

 

『……駄目に決まってるでしょ。馬鹿な事言ってないでさっさと教室に戻りなさい』

 

酷く冷たい視線で一刀両断にされてしまう。

 

『な、なんでですか!?』

『なんでも何も、あなたはゆみと面識ないでしょう? 全国の激励の時にチラッとすれ違っただけじゃない』

 

まさか久からあんな冷たい目を向けられるとは思いもしなかった。

 

『ぶ、部長が紹介してくれればいいじゃないですか!』

『嫌。絶対に断るわ』

『な、なんでそんな冷たい事言うんです!? 可愛い後輩の頼みっすよ!?』

『別に可愛くないからいいのよ』

『ひどい!』

 

なぜあんなに怒っていたのだろう? もしかしてあの日だったのだろうか?

 

『な、なら部長が電話して俺に代わってください! 用件を伝えられればいいんで!』

『用件ってどんな?』

『そ、それは言えません……』

『へえ?』

『か、加治木さんには直接会ってお話ししますんで』

『ふ~ん?』

『い、いや、だからですね? 部長に仲介役をしていただけないかと……』

『だから、絶対に嫌よ』

『なんで!?』

 

取り付く島もないとはこの事だろう。

 

『あのね、須賀?』

『須賀!? いきなりなぜこのタイミングで呼び捨て!?』

『あら、先輩が後輩を呼び捨てにするのはそんなにおかしな事かしら?』

『い、いえ! 全然おかしくないっす! どうぞ部長の好きなように呼んでください!』

『そう。あのね、須賀?』

『は、はい……』

『ゆみは他校の女子生徒なの、分かる?』

『も、もちろんです。加治木さんは鶴賀学園の生徒っす……』

『つまり、問題が起きたら私の力じゃどうにもならないの。分かった?』

『も、問題っすか?』

『部室で年がら年中発情してるような男子なんて、危なくて紹介できないでしょう?』

『酷すぎっすよ!? なんでそんなデマ言うんすか!?』

『毎日和の胸に釘付けなのは誰?』

『うぐっ……!』

『たまに私のも』

『はうっ……!』

『でもどちらかと言えば、私の場合は足に興奮するのよね?』

『ああっ! さわやか京ちゃんの秘密が全部バレている!』

『男の視線に気付かない女なんてこの世にはいないの』

『ぅああぁぁぁ……』

 

まさかバレてるとは思わなかった。

 

『だから駄目よ。他校の女生徒に訴えられたら麻雀部が潰れちゃうもの』

『信用がまるでない……』

『信用されたかったら女の子の胸とか見ないように』

『そんなの無理です。息するなって言われた方がまだマシです』

『どこまで馬鹿なの!?』

 

だから実力行使に出てしまったのだ。

 

『部長……』

『なにかしら?』

『どうしても駄目ですか?』

『どうしても駄目よ。諦めなさい』

『そうですか……』

『……?』

『スミマセン部長!』

『きゃ!?』

『スンマセンスンマセン!』

『ちょ、なに抱きついて……ッ』

『ほんとスンマセン!』

『こ、こら、どこ触ってんひゃぁ!?』

 

『おいおい……、ポケットに手ぇ突っ込むとか無茶しすぎだろ、あの一年。確実に死んだぞ?』

『それならまだマシなんじゃないかな。きっと一生ドレイとかにされちゃうよ、ATM的な』

『ムゴすぎんだろそれ……』

『生かさず殺さずが信条だものねぇ、久ってば』

『なんとか逃げ切ってほしいもんだが……』

『『『『『無理無理』』』』』

 

『こ、ここか……? いやこっちか……?』

『あん! バ、バカ! なんてとこ触って――』

『あった!』

『え?』

『ぶ、部長! これあとで返しますから!』

『え、あっ、返しなさい!』

『スミマセン! ほんとゴメンナサイ!』

『こら! 待ちなさい! このっ須賀京太郎!』

『全部終わったら好きにしていいっすからーー!』

『止まりなさい! 許さないわよっ京太郎ーーーーー!』

 

完全に犯罪だった。

 

「これ泥棒……っつーか強盗だよ!」

 

痴漢も追加されるだろう。

京太郎は己の真っ暗な未来に、半泣きで教室へ飛び込む。

 

「あ、京ちゃん、探したよ……ってどうしたの? そんなに息切らして」

「お、おぅ、咲か……」

 

そして近づいてきた幼馴染みから隠すように、素早く久の携帯をポケットへ突っ込み呼吸を整える。

 

「いや別になんでもないぜ? ちょっと危ない橋を渡って俺の人生が終わったかもしれないってだけだから」

「なんでもありすぎるよ!? なにがあったのさ!?」

 

心配掛けさせない為にニッコリと笑顔で言うも、その表情はとても儚かった。

 

「それでなんか用か?」

 

そう尋ねつつ、京太郎は急いでカバンを手に取る。

早くこの場を脱出しなければならないのだ。

久を撒くように迂回してきたが、すぐにでもここへくるのは間違いない。

相手はあの学生議会長にして麻雀部を全国優勝へと導いた部長、『竹井久』。

少々頭に血が上っていようとも、きっとあと5分もあれば完全封殺されてしまう。

そうなる前に、可及的速やかに高速で離脱しなければ。

 

「あ、うん。京ちゃん二日続けて部活休んだし、お昼一緒に……ってどこ行くの!?」

 

そうなのだ。

実は京太郎、月曜と火曜は麻雀部へは顔を出さずに、師との特訓の時間まで自宅で修行していたのだ。

インターハイのDVDや牌譜を見たり、牌効率の勉強をしたり、買ってきた牌を積みまくっていた。

もっとも、部活に出なかったのはそれだけが理由ではないのだが……。

そんなこんなで心配になった咲は、今日一日京太郎と話すチャンスを窺っていた。

 

「体調不良なんで俺帰るわ」

「そ、そうなんだ……」

 

教室に駆けこんできたのにそんなわけないだろうと思いつつも、咲は反論しない。

幼馴染みの態度がおかしいのは分かっている。

けれど、その理由にもなんとなくは想像がついていた。

師匠とやらに出会ってからおかしくなったのだから、きっと麻雀関連に違いあるまい。

だから正面から聞くのを恐れ、切っ掛けとして昼食を一緒にとろうと思ったのだ。

 

「き、京ちゃんさ」

「なんだよ? 今相当切羽詰まってるから手短に頼むぞ」

「その、麻雀好きだよね?」

 

家族麻雀が原因で長い間打つ事のなかった少女にとって、遠回しに聞けただけでも及第点だろう。

大会で仲直りしたが、姉との事は今でもトラウマものだ。

いつでも対局できる環境なのに対局できていない。いきなり部活を休みだした。

『今は打たない』が『お前とは打たない』、もしくは『俺に幼馴染みはいない』なんて事になったらきっと泣く。

そんなのは絶対に嫌だ。

 

「当たり前だろ、お前何言ってんの?」

 

しかし、京太郎はそんな咲の不安など軽く吹き飛ばした。

頭大丈夫? と言わんばかりのムカつく顔が安心を広げていく。

 

「言っとくがな、師匠は帰っちまったけどまだ秘密特訓中なんだよ」

 

しかもニヤリと笑う仕草が憎たらしくて仕方ない。

 

「そ、そうなの?」

「おう、だから悪りーけど、打たない期間少し延ばすから」

「えええ? 今日から打つって言ってたじゃん!」

 

憎たらしくて仕方ないから文句を言ってもいいだろう。

 

「今週いっぱいにしてくれ。今最終調整してっからさ」

「もう! ほんとに来週からは対局しなきゃ駄目だよ!」

「分かってるっつーの。というわけで俺は腹が痛いから帰る。先生にはそう言っといてくれ」

「成績落ちても知らないからね」

「はいはい、じゃーなー」

「うん、じゃーねー」

 

弾丸のように去っていく背中を見ながら、咲はホッとして安堵を漏らした。

 

「よかったぁ。なんか考えすぎちゃったよ」

「京太郎ーーーー!」

「わぁ!?」

 

その安堵は一瞬にして吹き飛ばされたが。

 

「咲!」

「は、はい! ど、どうしたんですか、部長?」

 

バンッとドアを全開にし、グルリと部屋を見渡した久に睨まれ、咲はビクビクと怯えてしまう。

 

「あのアホはどこ!」

「ア、アホですか? 誰?」

「アホなら京太郎に決まってるでしょう!」

「き、京ちゃん? お、お腹痛いって帰りましたけど……?」

 

恐る恐る言うも、なぜ京太郎を名前で呼んでいるのか疑問に思った。

 

「逃げたわねぇ……ッ!」

 

さらになぜそんなにブチギレているのかも教えてほしい。

 

「あ、あの、部長?」

「なに!」

「そ、その、なんで京ちゃんの事名前で呼んでるのかなーって、アハハ……」

「ん~? 先輩がアホな後輩を名前で呼んだらいけないのかしら~? 宮永さん~?」

 

眼光がヤバイ。人はここまで怒りをあらわにできるものなのか。

 

「い、いえ! 私も京ちゃんも、名前で呼んでほしいですぅっ!」

「なら問題ないわよね~?」

「ハイ! もちろん! 全然まったくないです!」

「よろしい。それから、咲?」

「な、なんでしょう?」

「明日朝一で私のところにくるよう、京太郎に連絡しときなさい」

「ハ、ハイ……」

「今なら丸坊主で許してあげるともね」

「坊主ですか!?」

「ええ。あのアホは誰を怒らせたのか分かっていないみたいだから」

「わ、分かり、ました……」

「じゃあ頼んだわよ、咲」

「ハイサヨウナラ部長」

 

京太郎に続いてまたも去っていく背中を見ながら咲は、

 

「何をしたのさ、京ちゃん……」

 

と、己の幼馴染みの人生が終わった事を確信するのだった。

 

 

 

    ※

 

 

 

全力で靴を履き替え、全力で校門を飛び出し、全力で走り続けた京太郎。

 

「こ、ここまでくればいいだろ……ッ」

 

全力疾走した時間は五分程度だろうが、元ハンドボール地区予選決勝進出者の走力は、きっと久の魔の手から逃がしてくれたに違いない。

 

「は、早く! 早く電話しねーと!」

 

昼休みが始まってから25分が経過している。

他校の時間割は分からないが、向こうもまだ食事中であってくれと祈りながら戦利品のメモリを開いた。

 

「あった! 加治木ゆみ!」

 

京太郎は迷わず通話ボタンを押す。

そして、待つ事数秒。

 

『どうした久。昼にかけてくるとは珍しいな』

 

どうやら意外と連絡を取り合っているらしい。

口調がフランクだ。

けどそんな事に構っちゃいられないのだ。

 

「あ、あの! すみません! 部ちょ、竹井さんじゃないです!」

『なに? 君は誰だ?』

 

訝しむ声。

女の番号から男が出たのだ、そりゃ当然だろう。

 

「ああああの、お、俺、須賀京太郎っていいます!」

『…………』

「ああっとっ、そのなんて言えばいいかっ、実は加治木さんにお願いがあってですね!」

『…………』

 

全力疾走直後、久の恐怖、そしてほぼ初対面の女子と話す事に頭はパニック状態。

未だ呼吸の整っていない京太郎は、荒い息でハアハア言っていた。

どう考えてもヤバイ。

 

『おい、貴様。久をどうした』

「えええ!?」

『いいだろう、貴様の要求は全て飲む。だから久には指一本触れるな』

『オ、オイゆみちん!? それ何の電話なんだー!?』

「ちょっ!?」

『言っておくが、交渉とは人質が無事である事が前提だ』

「ちょちょちょちょっ!?」

『久の身を盾にするという事は、貴様の命を盾にしている事だと理解しろ』

『けけけ警察かー!? まず最初は警察に連絡するべきだよなー!?』

「待ってくださーーーい!」

『興奮するな。そちらの要求は全て飲むと言った筈だ』

「違うんです違うんです違うんです! 俺清澄麻雀部の部員です! 誘拐犯じゃありません!」

 

久に殺される前に国家権力に殺されてしまう。

もう泣きそうだ。

 

「信じてください! 本当なんです! 部長の後輩ですからぁ!」

『…………おい蒲原、ちょっとまて。もう少し話を聞いてからだ』

「駄目です! 警察は絶対無理でず! 本当にぶじょーにはなにもじでまぜんがらぁぁぁ!」

 

いや泣いた。泣いちゃった。

十五歳の高校生にはチビリそうな程恐ろしい出来事だった。

話がこじれるだけなので、痴漢と強盗には今だけ目を瞑ってあげてほしい。

 

「麻雀じだぐでぇ! 加治木ざんど麻雀じだぐでぇ!」

『…………』

「でもぶじょーが駄目で言っでぇ!」

『…………』

「直接だのみまずって言っでも電話じでぐれなぐでぇ!」

『…………』

「おもぢ見るなとか酷い事言っでぇ!」

『…………』

「でもどーじでも加治木ざんど麻雀じだぐでぇ!」

『…………』

「ぶじょーのポッゲがらゲーダイ取っでぇ!」

『…………』

「怒りぐるっだぶじょーに追っがげられでぇ!」

『…………』

「明日ぶじょーに殺ざれるぅぅぅうぇっうぇっ!」

『……その、すまない。とんだ勘違いをして……、だからその、そんなに泣かないでくれ……』

 

どうやら危機は去ったようだ。

泣きやむまで3分ほど要したが、誤解を解く事に成功した京太郎は目を真っ赤に腫らしながらもゆみと対話する。

 

『あーその、須賀君だったか?』

「……はい、須賀京太郎といいます」

『だいぶ無茶をして久の携帯を手に入れたのは分かった。褒められた事ではないが……』

「はい……、明日潔く部長に怒られますので……」

『……そうだな』

「はい……」

『ああ、なんだ……、その点では力になれんが、麻雀くらいなら付き合っても構わんぞ?』

「ほんとですか!?」

『もちろんだ。そんな真似をしてまで私と打ちたいのだろう?』

「はい! 是非あなたと打たせてください!」

『では日時を決めようか』

「できれば今日お願いできませんか?」

『今日? 随分と急だな……、だが私の方に問題はない。放課後の四時以降であれば構わないが?』

「分かりました。あ、それと面子なんですが、俺の方一人なんですけど……」

『ふむ、ならばそれもこちらで用意しよう。大丈夫だとは思うが、用意できない時は君が持ってる久の携帯に連絡する』

「本当にありがとうございます。待ち合わせはどうしましょう? そちらの都合のいい場所へ俺が出向きますが?」

『そうだな……、ならあとで君が校内に入れるのか確認してみよう。一応生徒手帳を持参してくれ。外来許可証と引き換えになる筈だ』

「分かりました。では四時過ぎに鶴賀学園の正門前でいいですか?」

『ああ、それで構わない』

「何から何まで本当にすみません。ありがとうございます」

『いや、まあ……お詫びの面も強いんだ。さっきは本当にすまなかった。その、あんなに泣かせてしまって、申し訳ない……』

「い、いえいえいえいえ! 気にしないでください! こっちこそいきなり泣きだしちゃって……なんか、スンマセン……」

 

なんとなく最後はしんみりしてしまったが、京太郎はゆみと対局する約束を取り付ける事に成功した。

通話時間は10分少々とかなりスムーズだった事を考えると、どうやら『災い転じて福となす』が起こったらしい。

一歩間違えれば逮捕という危険な橋を渡ったのだから、これくらいのリターンはあってもいいだろう。

京太郎は無事通話を終えた。

 

「あやうく警察沙汰だったな……、加治木さんがいい人で助かった……」

 

携帯をポケットに仕舞った京太郎は、最初の関門を突破した事にホッと息を吐く。

 

「けど初っ端からこんなんで大丈夫か……?」

 

しかし、幸先がいいんだか悪いんだか分からなさすぎて弱気にもなった。

 

「……まあ、突っ走るって決めたんだけれども!」

 

それでも顔を上げ、京太郎は走り出す。

 

「俺は『The Gunpowder』の弟子だ! きっとやりきってみせるぜ!」

 

旅はまだ始まったばかりなのだから。

 

「まず家帰って鶴賀の場所調べて金下ろさねーと……ってか他も調べとくか? やべえ! 時間全然足んねー!」

 

これはタイミングの問題。そして心の問題。

師が動き出したタイミングで、心のモヤモヤを晴らしにいこう。

ウダウダ考えるのはもう飽きた。

全てを周る事はできないけれど、一人旅ならちょうどいい。

頼れるのは己だけ。ならば師がくれた力を鍛えるのみだ。

清澄高校麻雀部員『須賀京太郎』、発進。

 

 

ケータイ事件編 カン

 

 

 

 

 

「なあ、ゆみちん。今の大丈夫だったのか?」

「ああ、まあな……」

「それで? どうして頭抱えてるんだ?」

「……勘違いで男子を泣かせてしまった」

「あー、それはゆみちん駄目だー……」

「分かっている、分かっているとも。だが、向こうにも多少の非は……」

「ワハハ。それも駄目だなー。自分が悪いと思ったなら、相手が悪くても反省しないとー」

「……ああ、そうだな。その通りだ……」

「結局通話相手は誰だったんだ?」

「清澄の男子部員らしいな」

「清澄? ああ、あの荷物担いでた一年の子か」

「知ってるのか?」

「激励行った時、女子の後ろにいた子だろー?」

「……まったく記憶にない」

「ワッハハー。……酷いなゆみちん」

「うっ……、ど、どんな男子だ?」

「ん~、背が高くてイケメンに見えるかもしれない金髪君だったかなー?」

「イケメンに見えるかもしれない……?」

「顔にしまりがなかったよ。ワハハー」

「お前も十分酷いぞ……」

「泣かしたゆみちんには負けるぞー?」

「い、言わないでくれ……、彼の泣き声を思い出して胸が痛む……」

「そんなに泣いたのかー?」

「ワンワン泣いた。それはもう、慈悲にすがる罪人の様というか、親に捨てられた子どもの様に泣きわめいてしまった」

「…………ワハハ」

「だ、だが、久の番号で全く知らない男が出たんだぞ!? しかもハアハア荒い息でだ! 普通勘違いしてしまうだろう!?」

「…………そうかもなー」

「おい待て引くな蒲原! 分かっている! もちろん私が悪い!」

「…………そうだなー。年下の少年を泣かすゆみちんが悪いなー」

「そ、その通りだ。だからお詫びに向こうの要望をだな……」

「ワッハハ。麻雀とか言ってたやつ?」

「ああ……。それで蒲原、今日の放課後は空いているか?」

「いいよー」

「わるいな。昨日睦月が辛そうだったから、無理はさせたくない」

「あー……、そういう日もあるなー」

「おそらく練習試合的なものを望んでいるんだろう。なら、まだまだ初心者の妹尾よりモモと私達の三人で相手をしてやりたい」

「罪滅ぼしも大変だな、ゆみちん」

「……………………」

 

 

もいっこ カン

 


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