神様によって力を与えられた者は転生し白い魔法使いとなる。
そんな白い魔法使いが起こす日々は、日常か、非日常か、それとも――?

注意。
この作品は仮面ライダーウィザードが原作ではありますが、世界観はオリジナルで、登場するのは指輪の魔法のみです。原作キャラは出ません。
作者の書きたいこと(後書きに書いてあります)を書くために勢いで書いた作品ですので、そういうのが苦手、または嫌いな方は注意してください。


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注意。
仮面ライダーウィザードが原作ではありますが、世界観はオリジナルで登場するのは指輪の魔法のみです。原作キャラは出ません。
作者の書きたいこと(後書きに書いてあります)を書くために勢いで書いた作品ですので、そういうのが苦手、または嫌いな方は注意してください。

あと、各種ウィザードリングは〇〇ウィザードリングではなく〇〇リングと、ウィザードの部分を省略してあります。



一発ネタ 白い魔法使いは落ちこぼれ少女を弟子にとるようです。

「願いを言え。どんな願いでもかなえてやろう」

 

 懐かしい夢だ。

 今思えば、あれは神様だったのだろうか。であれば、俺のこの状況は前世でいう神様転生というやつだったのだろうか。まあ、この世に生まれて二十九年。確かめようもないことだし、どうでもいいことでもあるけどな。

 

――……!……う!――

 

 俺が願ったのは、魔法を使いたいってこと。で、俺としては呪文を唱えてバンバンうつような魔法が使いたかったのに……俺が手に入れたのは、指輪の魔法だった。仮面ライダーウィザードに登場する魔法だ。

 確かに!これも魔法だけど!思ってたのとなんか違う!ってツッコんだのが懐かしい。

 

――……ょう!……しょう!――

 

 結局、魔法は魔法と諦めたけどね。しかも、指輪の魔法だというのに、この世界は仮面ライダーの世界じゃなかった。結局、神様転生らしく何かの原作ありきの世界なのか、それともオリジナルの世界なのかはわからなかったけど……。

 まあ、原作ありきの世界でもおそらく元の原作から大分離れてるだろうけどな!主に俺のせいで!

 いや、俺は悪くないよ?ほんとだよ?だってこの世界……科学よりも魔法が主流のくせして、世界的な魔法レベルが低かったんだっ!だから……この世界で俺のみが使えるといっても過言ではなかった指輪の魔法を研究して広めちゃった。

 あ、ちなみに、それ以前まで使われていた魔法は旧魔法と呼ばれている。まあ、旧魔法でも凄い人は本当に凄いんだけどな。……あの人みたいに。

 でも……はは。俺だけの魔法が、量産型魔法になっちゃったよ……自業自得だけどな!

 

――……ししょう!……師匠!――

 

 でも!誰だって、純粋な顔ですごいと囃し立てられて、尊敬のまなざしで教えを乞うて来たら、得意げになって教えちゃうだろ!?

 まあ、その甲斐あって、俺は史上最年少で教授になることができたんだけど……教授って忙しいな。研究に教鞭。防衛。その他諸々。その忙しさは前世のブラック企業以上だ。かれこれ十年経つけど……もう辞めたい……はぁ。

 

――師匠!起きてください!――

 

 っていうか、さっきからうるせぇ!懐かしい夢くらいもっと見させてくれ!

 あ、目が開いて……あー!

 

「師匠!師匠!起きてくださいよ!」

「うるせぇ!……たまの休みくらいもう少し寝かせろよ」

 

 眠い……二度寝したい……せっかくの日曜日なのに……。まあ、この世界には日曜日なんて概念ないんだけど。休日なことに変わりないんだよね。

 なのにこのバカは……。

 

「師匠に休日なんてあるわけないでしょう!」

「ぶっ飛ばすぞ!ったく。目が覚めちまった。それに俺はお前を弟子にとった覚えなんかない」

 

 俺を起こしたこのバカ少女。辰美という名前のこいつは学園始まって以来の落ちこぼれである。

生まれた時からというか、ある事件以降というか、まあ、目をかけてやっているのだが……何を勘違いしたのか、俺の弟子を名乗っている。いい迷惑だ。いろいろとな。

 しかも、こちとら寝起きなのに、辰美はお構いなし。俺の目の前でその自分の指に指輪をはめて、黄色(・・)の枠組みに縁どられた黒い手型が付いたベルトにかざした。

 

「師匠!見てください!今日こそ成功させて見せます!」

――ドレスアップ!プリーズ!――

 

 腰の手形ベルトに魔法の指輪をかざす。基本的な指輪の魔法の使い方だな。指輪の魔法は、その指輪に応じた魔法が発動するという汎用性に富んだ魔法形式である。効力の大小こそあれ、使ったなら必ず発動する魔法形式で、流樹が先ほど使ったドレスアップリングは対象の衣服を変更するなのだが……。

 ぶふっ!くくく……わ、笑いが抑えきれん。なまじ本人は目をつぶって、効果を確認してないから余計に道化に見える。アイツ、アホだろ。

 

「どうですか!師匠!って……師匠?何笑ってるんですか!?」

「ぶふっ……お前……はは……自分の体を……くく、見てみろよ」

「え?……」

 

 おっと。耳をふさぐ。あ、出てった。叫ばなかったな。顔は赤くなってたけどな。

 それにしても。ぶふっ……衣服を変更する魔法をつかって自分の衣服を消滅させる(・・・・・・・・・・・)なんて、いったい何があったらこうなるんだかね!ははは……はは……はぁ。これに懲りてくれればいいけど。

 

 

 

 

 

 やれやれ。昨日はえらい目にあったな。あの後、ようやく論文作成が軌道に乗り始めたのに……まさか、全裸で出て行って捕まったあのバカを引き取りに行く羽目になるとは。

 つーか、なんかいつの間にか俺……あいつの担当になってるんだけど!?ほかの教授からも任されるし……一応俺、現代魔法の基礎を築いた、言うなれば時の人だよ?確かに、神様の力だけどさ、扱いひどくね?

 はぁ。今日から新年度の新学期だって言うのに……憂鬱になるわ。意外と教壇に立つのって面倒くさいんだもん。他の先生方はよくこれができるよな。これが年の功ってやつかね?

 

「さて。では、今日の最初の授業を始めます。この戦闘クラスに入った皆さんですから、魔法隊員を目指す方がほとんどだと思われますね。で、一人を除いて皆さんは新入生なので、今日の授業はファントム退治の見学です」

「はい!見学といっても、危険ではないのですか!」

「大丈夫です。私が出るので」

 

 俺が出るといった瞬間、その場の全員が一瞬黙り、次いで、俺の魔法が見ることができると、生徒全員がざわめき始めた。まあ、一応俺は英雄(・・)だからな。そりゃ、喜ぶか。

 魔法隊員は専用防護服で人類の敵たるファントムと戦う、一種の花形職業だ。この世界に生まれたのならば一度は憧れる職だと言われているな。え?俺?いや、俺は教授だから。

 そして、魔法隊員やこういう学校の戦闘クラスでなちゃ、戦闘用の指輪は保有することすら許されてない。危険だし、犯罪に使われでもしたら大変なことになるからだ。まあ、俺は教授と英雄という立場上、特例で許されているけどな!

 

「それでは行きましょうか。全員揃いましたね?」

――テレポート!ナウ!――

 

 全員が揃ったのを確認したところで、腰にある()の枠組みに縁どられた手型がついたベルトに指輪をかざして、魔法を使う。

 テレポートリング。空間を操作し、対象を別の場所へと送る魔法を使うことができる指輪だ。これによって生徒全員を教室から連れ出したのだ。このクラスの生徒全員で約二十人。これだけの人数を一度に移動させることができるのは俺くらいなもんだぜ!すごいだろ!えっへん!……やめよ。虚しくなる。

 生徒を連れてきたのは、街外れにある湖だ。増えすぎている(・・・・・・・)からという理由で、ちょうどよく退治依頼が来てたんだよね。

 

「師匠!質問です!ファントム退治って言ってもファントムなんてそう簡単に見つかるものなんですか?」

「師匠じゃありません。先生です」

 

 ほら、バカが変なこと言うから、みんなひそひそとありもしないこと話してるじゃないか。

 そう、先ほども言ったが、新入生が多いこのクラスにおいて唯一去年から進級せずに居座っている生徒。それが流樹なのだ。まぁ、進級せずというか、進級できずに、留年しているということなのだが……落ちこぼれにもほどがある。

 それから、師匠と呼ぶのやめろ。変な噂が立つから!

 

「いやです」

「……はぁ。さて、人類の敵たるファントムですが、これはレベルDからレベルSまで存在します。今回は、レベルDのグールが相手ですね。こいつらは勝手に増えていくゴキブリ的ファントムで、ほかのファントムと比べても弱いです。が、それでも危険なことには変わりないので、気を付けるように」

 

 もう何度目になるかわからない質問を生徒たちに話していく。毎年毎年同じこと……面倒くさいんだよなぁ。

 この世界のファントムは原作ウィザードに出ていたファントムとだいぶ違う。どちらかといえば、RPGゲームの魔物とかがしっくりくる感じだ。どこから生まれるのか、まだわかってない。俺も専門外だからしっかりと調べてないしね。

 まあ、今回のグールみたいに放っとけば湧き出る奴はともかく、強い奴はそれこそ突発的な天災みたいなものだ。俺が指輪の魔法を広める前には、それこそかなりの被害が出ていたらしい。まあ、レベルSクラスだと今でも被害がばかにならないが。

 っと、そんなことを考えてる間に……いたいた。十匹か。鎧怪人のくせして、ネズミみたいな繁殖力を持つんだよなぁ。生命力はそんなでもないから倒しやすいけど。さて、街中に行かれる前に倒しますか。

 

「あ、いましたね。それでは、みなさんここで見ていてくださいね」

――ドライバーオン!シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!――

 

 ドライバーオンリングを使って、腰の手型ベルトをドライバーへと変化させる。それと同時に鳴り響く軽快な歌。毎度思うけど、もっと静粛な感じにならないものかな。俺的にはもっとシリアスなのがいいんだけど。これさえなければ……はぁ。

 まぁ、言ってもどうにもならないし、さっさと終わらせますか。オレンジ色の原石のような指輪を左手にはめて、ドライバーに翳して――っと。

 

「変身」

――チェンジ!ナウ!――

「おぉ~!あれが先生の戦闘形態!」

 

 白いローブ姿という、原作仮面ライダーシリーズから見ても浮いている白の魔法使い。それが俺の今の姿だった。いや、ウィザードでもよかったし。各ウィザードリングもあるんだけどね。なぜか、この白の魔法使いが俺の基本形態になっちゃってて……例えばフレイムウィザードリングを使うと白き魔法使いフレイムスタイルみたいな感じになる。なぜだ……。

 ああ、ちなみに、俺の中にファントムはいない。それも原作とは違うところだ。この世界では、資質があるものだけが変身用リングを使えて、変身後の姿のことを戦闘形態と呼んでいる。どこの怪人だよ。

 まあ、大抵の奴はメイジリングしか使えないけど。時々オリジナルのリングを使ってる奴もいるな。いいなぁ、オリジナルって響き……。

 

「キシャー!」

「あ、気づかれた。まぁ、さっさと終わらせるか」

――ルパッチマジックタッチゴー!ルパッチマジックタッチゴー!――

 

 ドライバーを操作して、魔法発動状態にするけど……うるさい。いろんな意味で。これさえなければ……はぁ。

 んで、今回の敵であるグールは知能が低いから楽だ。パッとやってサッと帰れる。楽な仕事である。さて……あんまり長引かせても面倒だな。でも、一応授業だしなぁ……。

 よし。さっさと終わらせよう。いろいろと考えるのが面倒になったわけじゃないよ?本当だよ?

 この紫の柄のリングを指にはめてっと……。

 

――エクスプロージョン!ナウ!――

 

 よし。終わり。エクスプロージョンリングは文字通りの爆発を起こすリングだ。任意で威力、数、範囲を設定できるから使い勝手がいい。一発撃ってグール全滅っていうお手軽さだ。

 まぁ、何が起こったのかわからない生徒たちは唖然としてるけど……。唖然としてないのは辰美くらいかな。アイツは何度か見ているからなぁ……さて、教室に戻ろうか。授業を終えるには早いけど、初回だし、早めに終わってもいいだろう。

 変身を解いて、テレポートリング……っと。

 

「いっ、今のが先生の魔法ですか!?」

「うおっ!すごいキラキラしてる……、あ、いや、ああ。そうだな……じゃない、そうですね」

 

 あぶねー……一瞬素が出た。ほかの先生方と生徒には敬語で話すようにしてるんだね。舐められたくないから。前に一度、言われたんだよな。……くそっ……あのバカめ……チンピラみたいとか言うなよ。一応時の人なんだよ。っていうか、お前はチンピラ以前の落ちこぼれだろうがぁっ……はぁ。

 

「はい!質問で~す!さっきの戦闘形態が、あの災厄の竜を倒した時の姿ですか~?」

「あぁ……あれはまた別です。先生の奥の手ですしね。普段は使いません」

「見たいです!」

「ダメです」

 

 バカなことを言った生徒を速攻で黙らせる。どうやら、今年のクラスには辰美というバカ以外にもバカが何人かいるらしかった。先が思いやられる……。

 教室に戻って、授業は終了してやったというのに、生徒全員が残って俺に質問してくる。やる気があって良いというべきか、鬱陶しいというべきか。そりゃ、俺だってやる気のある生徒を受け持つほうが、やりがいがあって良いけど……いや、やっぱり鬱陶しいな。

 あれ?そういや、あのバカ来なかったな。……まぁ、いいか。

 そんなこんなで――。

 

「やれやれ、やっと解放された……」

 

 ようやく今日の授業が終わった。もうヘトヘトだ……けど、明日の授業の準備をしないと……あぁ、でも……疲れた。寝たい。ベッドにダイブして、そのまま夢の世界へと旅立ちたい。けど、やらないと……くそぅ。

 ほら見ろ。地平線の先に沈もうとしている太陽も、お月様に追いやられて日食を起こしてる。そりゃ、太陽様だって、一刻も早く休みたいよな。

 

「って、あれ?……にっ……しょく?日食!?」

 

 有り得ない!今日は日食なんて起きないし、それにこの感じ……どう見ても自然現象じゃない。くそっ……考えられるのは魔法だけど……一体何がどうなってる!?

 いやいや、落ち着け。見たところ、日食の範囲内にいる対象に何らかの影響を及ぼすタイプの魔法っぽいけど、周りを見ても効果が出ている奴はいない。これだけ広範囲に影響を及ぼす魔法で、それでいて不特定多数を目的としない。だとすると……対象がどこにいるかわからない?だから、広範囲の魔法を使った?それじゃ、誰が狙いだ?誰――っ!アイツか!

 

「やばい!おい、そこの!」

「はい?……なんでしょうか?」

「辰美はどこだ!?」

「辰美さん?ああ、あの留年生の……学校を出たみたいですね」

「っく!遅かったか!」

 

 其処ら辺にいた警備員にあのバカの行方を聞いたが……最悪だ。まさか学校外に行ったとは。くそっ。放課後なのが仇になったか。いや、この魔法を使っている奴もそれくらい計算してたんだろな。急がねぇと。

 っつーか、あんな警備員いたかな……まぁ、いい。今は緊急事態だ。後回し!

 

――ドライバーオン!シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!――

「変身!」

――チェンジ!ナウ!――

 

 白い魔法使いの姿となって、学校を出る。生身の肉体よりもこっちの方がずっと速い。……が、辰美は見つからない。この日食を引き起こす魔法。いなくなった辰美。最悪の事態が俺の頭の中を駆け巡る。

 街の人々が何事かと俺を見るが、悪いが無視。くそっ、どこだ?焦るな。焦るな。焦るな!この魔法の中心はどこだ?街の外?いや、あれはダミーだ。この感じ……なんだと?……学……校?けど……いや、待て。あの警備員は……っ!そういうことか!騙された!

 

「っち!急げ!」

――ルパッチマジックタッチゴー!ルパッチマジックタッチゴー!テレポート!ナウ!――

 

 テレポートリングを使って、学校の屋上へと移動する。やはり、そこにさっきの警備員と体中にヒビが入って息絶え絶えになりながらも気丈に振る舞い続ける辰美がいた。

 

「……師……匠!」

「っち、早かったな。アンタにはもう少し街中を探していて欲しかったんだがな」

「……ああ、すっかり騙されたぜ。でも、お前みたいな警備員見たことなかったからな」

「やれやれ。その考えが間違ってたらどうするつもりだったんだか。野生並みのカンだな」

「……辰美をどうする気だ?」

「おや、わかってるんだろう?コイツの中にいるモノを解き放つのさ」

 

 辰美の中のもの。やはりそれが狙いか。指輪の魔法が広まっても、俺を含めてこの世界の魔法使いは体内にファントムを飼うなんてことはしなかった。理論上は出来るし、そちらの方が魔法の力が上がる。だが、しなかった。その理由は単純。危険だからだ。

 だけど、この世界でおそらく唯一、体内にファントムを飼っている者がいる。それが辰美だ。いや、飼っているというよりは、飼わされている(・・・・・・・)というべきだが。

 

「はぁ……ハァ……どういう……こと……?」

「……言ってなかったのか?そりゃいい!そっちの方が“生まれやすい”からな!」

「どういうことだ!?」

「ふん?さすがの指輪の魔法を広めたアンタも、ファントムの生まれ方は知らなかったみたいだな!」

「何?」

「ファントムってのは、心と魔法の化け物さ。人間の心の感情……とりわけて強い負の感情がファントムっていう名の魔法という形をとって生まれる化け物!それがファントムさ!ま、魔法つっても自然の産物だがな」

 

 心と魔法の化け物……原作ウィザードとは微妙に異なるようだが、それでも似た存在であることには違いない。伊達に同じ名前ではないらしかった。

 けど、だとしたら……不味いかもしれない。負の感情ということは、原作のように絶望まで行かなくてもいいということだ。しかも、目の前のコイツが準備しているだろう魔法を含めれば――辰美の中のモノを解き放つくらいならば、それほど大きな感情はいらないかもしれない。

 

「はぁはぁ……どういうことって……聞いてんの!……答えてっ!」

「はいはい、ちゃんと教えてやるよ。かれこれ十四年前か?コイツが――」

――ルパッチマジックタッチゴー!エクスプロージョン!ナウ!――

「無駄口叩いてる暇があるなら、さっさと逃げるべ……っち」

 

 ペラペラと自分の置かれている状況も弁えずに高説垂れているから、思いっきりブッパしたけど……くそっ。やっぱ単独で乗り込んできただけあるな。直撃したのに耐えやがった。

 しかも、戦闘形態になってやがる。黒を基調とした金の魔法使い……くそっ、原作で言うソーサラーか!エクスプロージョンリングの爆発に耐えたところを見ると、相当な魔力を持ってやがるな。厄介だ、が!

 

「即効で潰す!」

「やれやれ。余裕がないな。さて、話の続きだけど――」

「させるかァっ!」

「……邪魔だな。頭冷やしてろ」

――ルパッチマジックタッチゴー!チェイン!ナウ!――

「師匠ッ!」

 

 アイツがチェインリングをドライバーにかざして、無数の鎖を生み出す。くそっ、頭に血が上りすぎたか。突っ込んでいるから、よけられないっ――!

 くそっ!本当に厄日だ!これ、相当硬い。しかも、こっちが魔法を使えないように、手の辺りを重点的に縛ってやがる。口も塞ぎやがって。喋らせない気か!

 

「さて、話の続きをしよう。そこで鎖と遊んでいるコイツが英雄となって、コイツが使っている指輪の魔法が世間に認知されたあの事件だ。まぁ、詳細を知ってる奴は本当に少ないんだが……」

「……」

「知らない感じだな。あれは、ようするに戦争だよ。コイツとSクラスファントムであるドラゴンの!」

「ドラゴン……ッ!?」

「そう!天災であるドラゴンにコイツは勝った!……んだが、そのドラゴンをどうしたかが問題なんだなー」

 

 くそっ、俺が鎖を解くのに手間取っているのがわかってこっちを見てやがる。……仮面で見えないけど、絶対いやらしく笑ってるだろ!

 

「コイツはな。そのドラゴンを生まれたばかりの赤ん坊に封じたんだよ!自分ではなくな!わかるか?それがお前さ。お前はコイツの実験体にされたんだよ!」

「……な……そんな――」

「ことありえない?だったら、なんでお前は魔法がうまく使えない?なんでお前のベルトは黄色が混じっている?他の者はみんな赤だというのに」

「そ、れは……」

「それは、お前の中にいる強大な力を持ったドラゴンが邪魔してるからさ!」

 

 辰美が縋るように俺を見るけど、口が塞がれてるから何も言えない。

 ……けど、アイツが言ったことはほぼ事実だ。この世界のSクラスのファントムは、それこそ原作のファントムが可愛く見えるくらいの力を持っていた。俺の全力をもってしても、ドラゴンは倒しきれなかったのだ。いや、倒しきれないというのは語弊があるか。

 倒せない(・・・・)のだ。どれほどの力があっても、この世界のSクラスファントムは倒せない。Sクラスファントムとは、そういう存在だから。あそこまで弱らせることができただけでも奇跡だと、あの時、ほかならぬあのドラゴン自身がそう言っていた。

 けど、それだけだ。いくら弱らせることができても、そこから先へとは進めない。いくら弱らせても、殺せない。Sクラスファントムとは、そういう存在なのだ。

 だから――。

『私の娘をよろしくね?』

 だから――。

 

「本当……なの?」

「くははは!だから言っただろう!」

「……!」

 

 だから、俺はあの人の命と引き換えにあの人の娘の中にドラゴンを封じたのだ。あの時ほど、俺は自分の無力さを呪ったことはなかった。思えば、俺は神様から力をもらって天狗になってたんだろう。けど、俺が神様からもらった力じゃ、ドラゴンは倒しきれなくて。

 結局、あの人が代々受け継ぐ旧魔法――それも、命を代償とした封印魔法でドラゴンを封印した。そして、俺の手元には虚しい無力感とあの人の娘だけが残って――それは、どうしようもない俺の弱さの証で。それを思い出すから、辰美には辛く当たっちゃうし、あの姿(・・・)も使わなくなった。

 

「……ろ」

「ん?ようやく解いたのか。やれやれ本当にお前はドラゴンを倒した英雄なのか?思ったよりも全然――」

「黙ってろ。胸糞悪いこと思い出させやがって――!」

――ルパッチマジックタッチゴー!イエェス!サンダー!アンダスタンド?――

 

 コイツ、許さん。

 焼け死ね!雷がアイツめがけて飛んでいく……けど、防がれた。くそっ、これじゃダメか。

 なら――。

 氷漬けにして、押しつぶして、焼き殺す。

 

――ルパッチマジックタッチゴー!イエェス!ブリザード!アンダスタンド?――

「うぉっ!」

――ルパッチマジックタッチゴー!イエェス!グラビティ!アンダスタンド?――

「ぐっ……」

――ルパッチマジックタッチゴー!イエェス!サンダー!アンダスタンド?――

「……っち」

「危ねぇ……やっぱりさすがだな!けど、いいのかい?」

 

 高威力の魔法三連続でもダメ。くそっコイツ一体何んだ!なら、もう一度……ん?いいのか?何が――ッ!クソッ!またやられた!

 ハッとして見ると、辰美のひび割れが先ほどよりも酷くなっている。くそっ!時間稼ぎ。これが狙いか。やばい。辰美の所に向かおうとも、コイツが邪魔をする。コイツを先に倒そうとしても、コイツの耐久力を前に足止めされる。最悪だ。現に、俺はコイツと戦わざるを得なくなってる……!

 

「やっと気づいたか。まぁ、後十数分もすればドラゴン再誕となるだろうなぁ?」

「……!っく……」

「しっかし、その娘も哀れだね。実験体にされて、それでドラゴンの苗床となって死んでいくなんて」

「ッ!そんな――!」

「そんな……ことは……ないっ!」

 

 聞こえた声に、一瞬だけど、驚いて思わず動きを止めてしまった。

 俺が否定しようとしたことを、辰美が大声で否定した。全身にヒビが入っているのだ。激痛に襲われているのだろうに。先ほどの話で疑心暗鬼になっているのだろうに。

 それでも尚、アイツは否定の声を張り上げた。なんで……――。

 

「師匠と……一緒に……いた時間は……ずっと楽しかった!……それは……嘘なんか……じゃない!」

「だから、それが嘘だとしたら?さっきも言ったが――」

「生まれた……時から……一緒にいる……から……わかる!師……匠は、そんな人じゃない。私の大好きな師匠は――とっても優しくて強い人なんだ!」

「はぁ。つまらんな」

 

 強い。自分の今までを根底から覆されるような事実を聞かされて、今にも死ぬかもしれない目にあって相当怖いだろうに。盲信でもなく、ただ信じてる。信じることができている。本当に、強い。弱さを抱えたまま、何でもないふりして内心でウジウジしている俺なんかよりも、ずっと。

 ……。ここでバカやって、また弱さを見つめるのは――嫌だな。はは……本当に俺って奴は……。

 

――シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!――

「まだ何かする気か?そろそろタイムアップだが?」

「見た感じまだ数分ある。それだけあれば、充分だ」

「へぇ?奥の手ってやつか?今更だな……」

「本当に今更だけどな。それでも、“弟子”が信じてくれてるんだ。師匠らしい所を見せないといけないだろ」

 

 コイツはどこか俺を舐めてる節がある。先ほどまでの間でも、俺を殺すことのできるタイミングはあったはずだ。いや、そこまでいかなくても……俺を戦闘不能に追い込むことだって出来ただろうに。

 悔しいけど、コイツは強い。この世界に生まれてからこれほど強いって思ったのは……それこそあのドラゴンやあの人くらいだ。

 舐めているなら舐めていろ。吠え面かかせてやる。

 取り出すのは、ダイアモンドのような装飾の指輪。原作では主人公の最終フォームに変身するために使われていた指輪で、間違っても原作の白い魔法使いが使ったことなど一度もなかった。だけど……俺の手持ちの中では間違いなく最強の指輪なのだ。

 神様から貰ったのだから。俺の持ち物なのだから。なんて思って、かつては何も思わずに使っていた。その驕りが、俺の弱さだったのだろう。今もその驕りがないとは言わない。けど――!

 

「ここで使わなかったら、驕り以前にタダの阿呆だ――!」

――オールマイティー!ナウ!ヒースイフードー!ボーザバビュードゴーン!――

「……それがあのドラゴンを倒したってやつか」

「別にドラゴンは倒せちゃいない。でも……お前は俺が倒す」

 

 別にアイツがこの姿を知っていることに疑問はない。ある意味、この姿は有名だから。外見的には白いローブの上に、さらに白銀に輝く半透明のマントが覆い被さった感じだ。だが、このマントは魔力で出来た幻影のようなもので、戦闘の邪魔にはならない。

 白い魔法使いオールマイティースタイル……とでも言うべきこの姿。これを使うのも久しぶりだ。そして、俺でも数分で使い物にならなくなるほど魔力消費がデカイだけあって、はっきり言って原作のインフィニティースタイルとは別の意味で、規格外の能力を持っている。

 

「さぁ、フィナーレだ」

「なら……やって――」

――チェイン!ナウ!――

「何っ!?」

 

 指輪をドライバーにかざしてすらいないのに、突然出てきた魔法陣と鎖に慌ててアイツは飛びずさった。

 そう、このスタイルの能力は、簡単に言うなら強化と使用だ。どんな魔法も強化され、指輪を介さなくてもどんな魔法も使うことができる。代償として軽くない魔力消費。インフィニティースタイルとは正反対であり、まさにオールマイティー(全能)スタイルというに相応しい能力だ。

 ……久しぶりだからどれくらい持ってかれるのか忘れかけていたけど、マジでこの魔力消費は不味いな。急がねぇと、アイツを倒す前に俺が潰れる……。

 

「はっ、いいナァ!楽しくなってきた!」

――ルパッチマジックタッチゴー!イエェス!キックストライク!アンダスタンド?――

「楽しませてやらない。お前はここで終わりだ」

――イエェス!キックストライク!アンダスタンド?――

 

 使うのは共にキックストライクの魔法。向こうが先に指輪をドライバーにかざしたが、こちらの方が指輪をかざさなくてもいい分発動が早い。

 相手の助走は足りていない。そして、こちらの助走は完璧だ。

 キックストライクの魔法を使った蹴りが互いにぶつかり合う……が、その実押しているのは俺だ。このまま押し切る――!

 

「はぁアあアアあ!」

「おらぁああああ!」

 

 これで終わりだ。

 俺のキックがアイツのキックを押し込み、吹き飛ばす。

 地面に俺が着地した直後、アイツは頭から落ちてきた。受身も取れていない辺り、もう限界だろう。

 俺の勝ち――。

 

「っぐ……!はっ……はっ……」

「ぜっ……はっ……!しぶとい!」

 

 そう思ったが、アイツは思った以上にしぶといみたいだな。まだ生きている。

 だが、日食は晴れた。辰美のひび割れも収まったみたいだ。これは、アイツ自身があのドラゴン復活の魔法を保ち続けられなくなったんだろう。なら、どうあがいてもこれで終わり――。

 直後、凄まじい魔力がアイツの元に収束される。馬鹿な!指輪を使う気配は……旧魔法か!

 

「ハハハハハハハハ!」

「辰美!」

――バリア!ナウ!――

 

 凄まじい爆発。オールマイティースタイルに傷つけることができるような威力じゃなかったから、辰美を守るために魔法を使ったが……くそっ!逃げられた!

 アイツの姿も気配もどこにもない。けど、狂ったような笑い声と声だけが辺りに響いている。

 

『ハハハ!いいナァ!いいナァ!今度は本気でやれそうだァ!ドラゴン復活なんてメンドくさいかと思ったら……!思ったよりも上物がいたぜ!お前……今度会ったらオボエトケヨ?』

 

 言いたいこと言って消えやがった。くそっ……何なんだ。アイツ。仮にも神様から力を貰った俺並か、俺以上の魔力。戦闘技能。しかも、ソーサラーに変身する指輪を持っている奴なんて聞いたことないぞ!一体……!

 

「師匠!」

「……無事か?」

「えっと……はい」

 

 ……はぁ。まぁ、今、辰美が無事ならいいか。

 辰美の無事を確認して、変身を解く。どっと疲れた……さすがに久しぶりのオールマイティースタイルは堪えるな。っていうか、立っているのがキツい。くそ……昔はもうちょっとマシだったのに。

 っていうか、なんか辰美の奴……遠慮して、る……そりゃそうか。あんな話を聞かされたもんな。普通通りに話しかけてくる方が――。

 

「師匠、あの……」

「いや、みなまで言うな。わかってるよ」

「っ!はい!」

 

 ……おい、なんでそこで嬉しそうな顔をする。そこは普通辛そうなとか、辛気臭そうな感じだろうが。なんでだ?

 

「ありがとうございます!本当に!ありがとうございます!」

「え?あ、あぁ」

 

 なんか声が上ずっているというか、ウキウキとした感じというか……アレ?俺が違うのか?俺がダメなのか?最近の子はこれが普通なのか?え?心は若いつもりだったけど、さすがの三十路突入間際のオッサンにはついていけないとか、そういうことなのか?

 あ、それとも助かったから喜んでいるのか?そうだよなー……はは。そう、だよな?

 けど、現実は無情で、そんな風に困惑している俺の前で、コイツは止めの一撃を口に出すのだった。

 

「なんでそんなに嬉しそう……?あ、やっぱり助かったか――」

「だって“弟子として認めてくれた”んですよ!嬉しいに決まってます!」

「へ……?何の……あ」

 

 しまった。そうだ。さっき言った。つい、言った。弟子って言った。

 ……。……しまったぁああああああ!やっちまったぁああああああああああ!

 辰美は本当に嬉しそうで、どう見ても撤回できる感じじゃない。っていうか、これで撤回したら、鬼畜どころの話じゃない。仮にファントムが原作の誕生方法だったら、撤回した瞬間にきっと中のドラゴンも出てくるだろう。

 

「私、今まで以上に頑張りますね!」

 

 ……まぁ、いいか。

 あの嬉しそうな笑顔を見てたら、弟子に取ってもいいかなって思えるかな。……どうでも良くなったとも言うけどな。

 ま、あの人の娘だ。魔法の面でも今まで以上にしっかりと……それこそ“最後の希望”になれるくらいの大魔法使いに育ててあげましょうかね。

 




この作品を書いた経緯。

へー……白い魔法使いドライバーって音声がウィザードライバーとは一部違うのかー
→インフィニティーは……えっオールマイティー?全能ってことだよな。格好良い!
→活躍させてみたいな。でも、原作の白い魔法使いに使わせると主人公勢が無理ゲーになるよな。
→よし、じゃあオリジナルで書こう!

こんな感じですね。はい。
勢いとノリだけで書いたので、所々設定が甘かったりします。
まあ、所詮は続かない一発ネタなので深く突っ込まないでくださると助かります。


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