※これは、Fate/Grand Orderを見て衝動的に書いた短編です。
君たちは、聖杯戦争という言葉を知っているか?
ありとあらゆる願いをかなえるという万能の願望器『聖杯』。その聖杯を巡り、選ばれた七人のマスターと彼らと契約した七騎のサーヴァントが勝利を賭けて殺し合う。それが、聖杯戦争だ。そして、最後に残った者のみが聖杯を手にし、願いを叶える権利を得るという。
しかし、聖杯の大本である大聖杯は魔術師達の手により解体された。今後、聖杯戦争が行われることはなくなった。
だが、聖杯戦争はいまだ終わらず。人に欲望と、それを叶えようとする願望がある限り、聖杯は何度でも私たちの前に、降臨する。
私たちは聖杯を、聖杯戦争を求めた。そのためにもっとも重要なものは、もうすでに私たちの手のなかにある。
聖杯。いや、もっと詳しく言うのであれば、大聖杯解体時に我らの手により簒奪した大聖杯の欠片。その欠片をもとに我々は長い時を費やして、遂に聖杯の模造を作り上げることに成功した。
しかし、所詮は模造。聖杯の贋作。根源への到達など、まずありえない出来損ないだ。この贋作にそれほどの力など、出せるはずがない。だが、サーヴァントを座より呼び出し、一人分の願いぐらいなら叶えることは可能だ。ならば、それで十分。それ以上は、何も望まない。
重要なのは、願いを叶えるというただ一点にのみ。最初から、根源への到達などに興味はない。
聖杯が願いを叶える限り、人々はその権利を賭けて争い、殺し合う。私は、ただそれだけでいい。私以外のものが、何を考え、どのように行動しようが、私にとってはどうでもいい。
さあ、今宵再び聖杯戦争を始めよう。あの欲望と死の饗宴を。だが、此度の聖杯戦争は今までのものとは違う。
舞台は世界。大聖杯の欠片より模造された聖杯は、私が持つものを含めて七つ。もうすでに、それぞれの聖杯の担い手によって世界中に運び出された。
第一の聖杯はイタリア。聖地ローマに。担い手は、真の幸福を追求する求道者。
第二の聖杯はアメリカ。世界の中心ニューヨークに。担い手は、愛国主義の狂人。
第三の聖杯はイギリス。霧の都ロンドンに。担い手は、破滅願望の死徒。
第四の聖杯はドイツ。化学の都市ベルリンに。担い手は、歴史の敗北者第三帝国の残党。
第五の聖杯はスウェーデン。水の都ストックホルムに。担い手は、ドヴェルグの末裔。
第六の聖杯は中国。魔都上海に。担い手は、犯罪シンジゲートの女王。
第七の聖杯は日本。大聖杯が生まれ、解体された冬木市に。担い手は、私。
かくして、世界を舞台にした饗宴の幕が上がる。この聖杯戦争が、あっけなく終息したとしても、世界を混乱の中に突き落としたとしても。きっと、人類の進歩に繋がると私は信じている。
なぜならば、人類を進歩させ続けるのは欲望なのだから。
この聖杯戦争に祝福を。人類の旅路に嘆きあれ。