擬伝 〈Turbid Masquerade〉   作:マッハ真紅朗

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序章 ー今までも、これからもー 

 

空が、絶望で濁っていく・・・。

 

 

死に絶えた廃墟に横たわり、少女はこの

”何度目”かの景色を諦観する。

 

街だった廃墟。

恐らく、この一帯の生存者は少女一人。

廃墟の大部分は水没し、乾ききった風が

少女の長く傷んだ黒髪と、傷だらけの身体を

冷たく打ちひしぐ。

 

そして、廃墟の彼方には、絶望が形作る

山のごとき死の存在。

黒に染まった山に、ボウと揺らめく

幾百の輝きがかき集められ、呑まれていく。

 

”ソレ”を少女は、愛しさと哀しみを封じた

紫の瞳で真っ直ぐに見据え、膝を立て始めた。

 

 

「コレは当然の結果だよ、暁美ほむら。」

 

 

突然頭上から放たれた声に、少女・・・

暁美ほむらは、はたと静止する。

 

 

「彼女は、最悪の魔女を倒した。なら、後は

 彼女自身がそれ以上のモノになるしかない。」

 

 

少女のすぐ横に突き刺さる鉄骨。

その上で、ネコかキツネか、形容し難い

真っ白い生物が、ほむらを見下していた。

 

幼く高めの、やや耳につく声色。

その語りに、唯一の生存者を気遣う様子は

全く見受けられない。ただ、嘲笑するような

白い貌が、つぶらなルビーの瞳を妖しく

湛えているだけだ。

 

 

「これで解ったかい?君のしている事はー」

 

 

パァンと、乾いた音が弾けて会話を遮断する。 

その音に遅れて、白い生き物はベシャリと

廃墟に倒れ、生物らしい赤い血をブチマケた。

 

死してなお表情一つ変わらない

”命”を感じさせない亡骸。

ほむらは、いつの間にか抜き放っていた銃口を

違わず定め

 

躊躇なく、残弾の全てを亡骸に撃ち込んだ。

 

火薬の炸裂が、少女の顔を照らす度

少女は、この時間での未練を打ち捨てる。

 

火薬の炸裂が、少女の顔を照らす度

少女は、引き金に後悔の全てを叩きつける。

 

 

 

撃鉄が、空の衝撃音を漏らす。

だが、撃ち尽くしてなお指先の力は緩まない。

 

もういい、もうこの時間で出来ることなど

 

何も、無い。

 

 

ほむらは銃を静かに置き捨て、長い黒髪を

根元から毛先に向けて、一気にかきあげる。

 

次のアクションに向けて気持ちを切り換える時に

行う、彼女のクセのようなもの。

 

諦めない。

例え”ここ”が駄目でも、”次”は必ずー

もし”そこ”が駄目でも、”何度でも”ー

 

暁美ほむらの瞳に、決意が宿る。

彼女の名前のよう、燃え上がりぎらつく

炎の決意が。

 

そして、彼女は左手の円盤状の盾に

右手を添える。

それを合図に、乾いた機械音で盾の一部が開き

古めかしい時計のような内部が解放される。

 

一対の砂時計を内蔵したそれを

ほむらは逆円周に稼働させた。

 

 

瞬間、世界は幾百の幾何学模様に切り刻まれ

ほむらの遥か後方、時の彼方へと流れ去っていく。

 

(必ず、この運命から

   アナタを救ってみせる・・・!)

 

時の彼方に流れていく”未来”を”過去”に変え

ほむらは、逆行の回廊を勇み足で踏みしめる。

 

掛け替えのない友を救うため。

何より、友と交わしたただ一つの

約束を守るため。

 

自分に残された、最後の道標だけを頼りに。

 

 

 

 

ひたすらに、眼前だけを見据えて

回廊の中を進むほむら。

 

 

「・・・?」

 

 

気のせいか、いつもより到達までの

距離を長く感じる。

 

・・・いや、気のせいではない!

回廊の流れが、徐々に、だが確実に淀んでいく!

 

今までに感じたことの無い、強烈な違和感。

沸き上がる不快感が、ほむらを浸食する。

 

一体、ナニが起キている、ノカ!

 

叩きつけるノックみたいに、早まる鼓動。

ノイズが乱入し、思考が錯綜する。

出口を求めて、瞳孔が走る。

 

空間が廻る。グルグル、廻ワル。

私も廻る。何度でも、廻ワル。

 

ほむらの感覚は、もはや彼女を離れ

回廊の異変へと取り込まれていく。

 

ペリペリー

ステンドグラスみたいになった”時間”が

剥がれ落ちていく。

 

ガリガリー

モザイクタイルみたいに敷かれた”時間”が

詰まって削れる。

 

ギュウギュウー

ガラスみたいに砕かれた”時間”の隙間に

私が押し込まれて、

 

小さく、ひしゃげる。

 

 

 

身体も意識も、

回廊は少女を支配したまま

 

ある一点を中心に

完全に時の流れと、色とを失った。

 

 

 

 

ほむらは、ただ浮かんでいた。

目の焦点も合わず、意識も朦朧としたまま。

 

時を遡る回廊も、今はただの空間でしかない。

 

 

ナニモノかが蠢く、異変の中心点を除いて。

 

 

ほむらは、その中心点と向き合うように

浮かされていた。

 

中心点のナニモノかが、来る。

いや、流れ堕ちてくる。

ゆったりと、不気味な空気を唸らせて。

 

次第に、ほむらの感覚が目覚めていく。

ナニモノかが近付く程に、ゆっくりと。

 

そして、彼女が自分を取り戻した時

ナニモノかは眼前、手の届く距離まで

迫っていた。

 

 

「・・・?!」

 

 

目覚めるや否や、彼女はこの異変の正体を

目の当たりにする。

 

 

「コレは・・・一体・・・?」

 

 

ほむらは驚きを隠せなかった。

眼前にある異変の主は

”人”でも、ましてや”生物”ですら無かった。

 

 

”仮面”が、こちらを見ている。

 

 

ハートの形。

鬼のような角が二本。

左右下部に棘が四本ずつ。

 

そして、血のようにギラつく眼が二つ。

民族的な模様を施され、色彩は

呪いよりもおぞましい色。

 

 

まじまじと”仮面”を観察するほむら。

この異変、まず自分に仕掛けてきたと見るべき。

ならば、この物体は敵。

丸腰の今、何か脱出のヒントを得なくてはー

 

 

逡巡するほむらを目の前に

”仮面”は、ただ不気味な空気を唸らせている。

 

 

奇怪。

ここまでして仕掛けておきながら

一向に襲いかかる気配がない。

 

正体不明。

おおよそ、コレは自分の知っている敵ではない。

 

目的は?

未だ攻撃が無い以上、何らかのコンタクトを

望んでいるのだろうか?

 

ほむらが思考を転換させる。

 

今一度、打開策を見出すため

事態を次の行動に進展させるため

再び”仮面”を見据えたほむらは

 

その血のような眼と、視線を交わしてしまった。

 

 

カタカタカター

”仮面”が初めて動いた。

渇いた木が響かせる、嘲り笑う呪いの奏

 

小刻みに揺れ、鳴動する”仮面”。

呪いの波動が邪眼より漏れ出し

 

ほむらの眼球から、彼女の全てを浸食する。

 

 

「・・・ッ!」

 

 

自分の体が言うことを聞かない!

 

無意識に”仮面”へと差し出される左手。

それを止めようともがく全身。

 

右腕で全力で抑えつけようと

彼女の身体が、震えて強張る。

 

それでも惹かれるように

力無く震える左手は、フラフラと”仮面”を

求める。

 

 

「一体、何を・・・ッ!?」

 

 

見えない!

この”仮面”の、力の正体が!

解らない!

この”仮面”は、私に何をさせようというのか!

 

 

ほむらは、完全に”仮面”に呑まれていた。

 

何時如何なる場合も

目的を完遂するための、選択と行動を。

 

そう心に徹し、築き上げた人格と思考でさえ

あまりにもイレギュラーなこの状況と”仮面”の

前では、脆くも剥がれ落ちるほか無かった。

 

 

「・・・くっ・・・うぅっ!」

 

 

自らを律し、動かしてきた最後の武器。

それを失った少女に、”仮面”に対して抗う力は

残っていなかった。

 

 

一切の抵抗も叶わず、ほむらの左手は

ついに、”仮面”に触れた。

 

途端、少女の身体はビクンと跳ね

回廊と同様に”仮面”と同化し

全ての動きを停止する。

 

 

 

 

 

視界が弾けるー

他人との間に掛けられた、拒絶のプロテクト。

その障壁が次々と破られて

 

”仮面”が、私の”素顔”に、忍び寄る。

 

 

”仮面”は、垣間見る。

幾度となく時を巡った、私の”かつて”をー

 

”仮面”は、悟った。

幾度となく朽ち果てる、あの子の”これから”をー

 

そして”仮面”は、囁いた。

幾度となく手を伸ばした、私の”希望”にー

 

 

(君の望む結末は、本当に正しいの?)

 

正しいかどうかは問題じゃない。

私はあの子を守りたいだけ。

 

(その子は、本当に君を友達だと思ってるの?)

 

あの子が私をどう思おうと、私にとっては

唯一無二の親友。それだけで充分。

 

(君のその願いは、その子にとって幸せなの?)

 

あの子の幸せは、あの子自身で掴むもの。

それすらも塗り潰す運命を、私は破壊するだけ。

 

(その願いの上に立つ今の君は、仮面?素顔?)

 

仮面であろうと、素顔であろうと、私は私。

今もかつても、どちらも私。

 

 

まるで値踏みするような、あけすけで

不躾な子供じみた問い掛け。

 

だが、晒し出された彼女の根幹は

最早そんな揺さぶりで崩壊するようなモノでは

無かった。

 

その不壊の心根に満足したのか

動かないはずの”仮面”が、ニイッと笑う。

 

(良いだろう。なら、鬼ごっこを始めようか。)

 

先程の問い掛けとはまるで違う

歪み、捻れきった怨嗟の声色。

 

 

鬼ごっこ・・・?

 

(そう。俺が逃げ、お前が追う。

     お前はただ、俺を捕まえるだけ。)

 

ふざけないで・・・!

そんな事に付き合う気はない!

 

 

 

自分を捕らえて、何をするかと思えば。

挑発としか思えない”仮面”の言動に

ほむらは、苛立ちを顕わに返す。

 

 

(お前は俺を、追わずにいられないー

    お前の”希望”。唯一の友のためにもー)

 

 

・・・どういう事?

お前は、何なの!?

 

 

 

”仮面”は真実を語らない。

泥沼のように深まるばかりの事態に

ほむらは、そう問わざる得なかった。

 

 

(人は俺を”仮面”と呼ぶ。

      そして、人は俺に呪いを与えたー)

 

 

”仮面”は訥々と晒し出す。

”仮面”の裏に隠された、己の正体を。

 

 

(俺に与えられた呪いは、”ムジュラ”ー

       俺は、”ムジュラの仮面”ー)

 

 

 

”仮面”が吐き出した言霊を合図に

突如、停止していた空間が蠢動を起こし

轟音と共にヒビ割れていく。

 

回廊全体が鳴動し、時の流れが崩れ始める。

 

その崩壊の中

”仮面”の背後、異変の中心点が一気に砕け散り

奈落の穴が口を開けた。

 

 

”仮面”は、奈落に背を向けたまま

グルリと、回廊の天地を廻す。

 

ほむらは天に、”仮面”は地に。

 

 

奈落を終着点に、止められた時が

崩壊と共に流れ落ちていく。

 

”仮面”もまた、降り注ぐ時の雨の中

奈落の底へと流れ落ち、その姿を消す。

 

 

バラバラと、奈落に吸い込まれる時に紛れ

ほむらは、まるで操り糸の切れた人形みたいに

真っ逆さまに、落ちていく。

 

向かう先には、奈落の闇。

結局、”仮面”は自分に謎を与えたまま

”ムジュラ”という言葉を残し、奈落に消えた。

 

鬼ごっこ。

この言葉に一体、何の意図が含まれているのか。

 

これだけの事を仕掛ける”仮面”だ。

 

(私は、ヤツを追わざるを得ない・・・)

 

そう言い放ったヤツの一言にも

何かあると見て間違いない。

 

(また今回も、厄介なコトになりそうね・・・)

 

 

目の前を落ちていく、時の破片たち。

その1つずつに、ほむらの辿ってきた

時間が映り込む。

 

掛け替えのない友たちとの、思い出。

もはや触れ得る事も許されず、流れ去る日々。

 

その一つ一つを瞳に焼き付け、ほむらは

眼前に迫る奈落を見据える。

 

逆行の回廊に空いた大穴。

この先に待つのが、今までみたいな時間軸とは

限らない。

 

だが、それでもー!

 

(何があっても必ず、辿り着いてみせる・・・!)

 

 

視界と思考が、まばたきする。

逆行が、終わろうとしている。

 

(まどか・・・!)

 

ほむらが友の名を念じる。

同時に、彼女の身体は奈落の中に消え

彼女の感覚も、完全にブラックアウトした。

 

 

 

 

 

ー魔法少女、暁美ほむらは、時間遡行者である。

親友、鹿目まどかを破滅の運命から救うため

地球外知性体インキュベーターと契約した

彼女は、まどかとの出会いから破滅までの

1ヶ月間を、幾度となく闘い続けるのだ。 

 

 

そして

 

 

時を巡る魔法少女は

”仮面”と”指輪”に導かれ

塗りたくられた絶望の運命を、希望に変えるー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃぁ、ちょっと行ってくるよ。

          輪島のおっちゃん。」

 

 

目の前の青年が、私に言葉を掛ける。

両手にはヘルメットが抱えられ

愛車で、少し遠い場所に行くのだと知らされる。

 

まるで、ほんの少しの散歩に出掛けるような

そんな気軽さだ。

 

 

 

「あぁ、こっちの事は任せておけ。

  だが、気を付けて行ってこいよ、晴人?」

 

 

正直、心配で仕方がないのが本音だ。

 

いつもそうなのだ。

何でもないような目をして

何でもないような顔で

何でもないような口振りで

 

そういう時に限って、命の危険さえ厭わずに

絶望の嵐の中に飛び込んでしまう。

 

彼は、"操真 晴人"は、そんな青年なのだ。

 

 

「解ってるって。まあアイツだったら

 "皆まで言うな!"って、トコロかな。」

 

 

私の心境を察したのか、晴人は

今ここに居合わせるはずの声を代弁する。

 

たまらずに、自分が構える店の中を見回す。

アンティークが陳列された店内は、いつもの

騒々しさが嘘のように、酷く寂しげだ。

 

一人が欠けただけで

それ以上の穴が、空いてしまった。

 

いつもアイツが、どれだけのスペースと空気を

掻き回していたのか、よく解ってしまう。

 

 

「大丈夫だよ、おっちゃん。」

 

 

続けざまに、晴人が言う。

視線を晴人に向けなおすと彼は、左手甲を

こちらに向け、微かながら笑ってみせた。

 

左手中指に填められた、極大振りの紅い指輪が

潤沢な光を放つ。

 

 

「俺は"魔法使い"だから。

 ちゃんと仁藤も連れて、皆で帰ってくるさ。」

 

「・・・そうか。そうだったな。」

 

 

その言葉の妙な説得力に、こちらも思わず

頬がゆるむ。

 

 

「晴人さぁ~んっ!

 そろそろ時間ですよぉ~っ!」

 

 

窓から、騒音もかくやという

脳天気な声が飛び込んでくる。

 

その声に2人して、ガクリと

調子を踏み外した。

 

 

「あー!もう今行くよ!俊平ェー!!」

 

「・・・やれやれ。本当に大丈夫かぁ?」

 

 

折角良い空気で締めたのに!

頭を掻きながら、玄関に向かう晴人の背中は

そう言いたげだった。

 

 

「ったく・・・。じゃあ改めて、行ってきます。」

 

「あぁ、行ってらっしゃい。」

 

 

そう言い直すと晴人は、玄関のドアを開ける。

開け放たれた向こう側から、真っ白い陽の光が

差し込み、足を進める晴人を次第に包み込む。

 

 

ドアが閉まり、晴人は向こう側に消えた。

間もなく、軽快なエンジン音が響き渡り

もう一台分の車両音と共に、遠ざかっていく。

 

 

行ってしまった。

恐らく晴人達を待つのは

また戦いの日々だろう。

 

信じて待つしかない。

彼らに守るモノがあるように、自分にも

守らなければならない場所がある。

 

彼らをまた笑顔で迎え入れるためにも

私は、私の日常を守らなければ。

 

 

「さて、と。開店の準備でもするか。」

 

 

 

そう呟いて、"おもかげ堂"の店主は

店の奥へと入っていった。

 

 

 

 

 

グリップを握り込む。

調子を確かめながら、次第にマシンに送り込む

魔力量を高めていく。

 

木々が立ち並ぶ、開けっぴろげな街道。

併走する乗用車に向かって、右手で合図を送る。

 

 

『先に行ってるよ』

 

 

この先に待っているのは

何だかタダ事じゃなさそうだ。

俺が行って、確かめてからの方が安全だろう。

 

"魔法使い"としての経験が、そう告げる。

 

乗用車に乗り込んだ仲間達も

その意図を汲んでくれたらしく、頷いてくれた。

 

 

準備はOK。

魔力の循環も滞りなし。

柄にもなく、気合いを込めてアクセルを回す。

 

 

「待ってろよ仁藤。

 ぶん殴ってでも連れ戻して

 マヨネーズたらふく食わせてやる・・・!」

 

 

高鳴るマシン。

爆発的な加速に乗って、そんな事を呟く。

 

操真晴人を乗せた、マシンウィンガーが

一陣の風となって駆け抜けていく。

 

 

目指すは、"見滝原"と呼ばれる街。

恐らくソコに、行方知れずになった

アイツがいるだろう。

 

だがそれ以上に、言い知れぬ予感を

操真晴人は感じていた。

 

 

"これまでに無い、何かが待っている。"

 

 

晴人が眼前を見据える。

何が来ても、負けない。

何があっても、諦めない。

 

涼しげだった彼の目に、決意が顕れる。

"魔法使い"として、"希望を託された者"としての

闇を切り開く決意が。

 

 

銀の車体が街道を抜け、その加速のまま

人知れぬ森へと続く道に、突入する。

 

アスファルトが湿った土に埋もれ

立ち並ぶ街灯は、鬱蒼と繁る樹木に隠れる。

 

そして、陽の光さえ遮られた領域に至り

 

操真晴人は、霧深い森へとその姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

『ここに、新たな物語の役者は揃った。』

 

漆黒のローブをビル風に靡かせ

闇色の宝石を湛えた存在が呟く。

 

 

『抗う者、導かれた者、翻弄される者。』

 

 

眼下に広がる、文明の煌々たる焔たちが

宝石を彩る銀色のフレームを鈍く光らせる。

 

 

『全ての業が絡まり合い、捻れ

 螺旋となりて、根元たる因果を紡ぎ出す。』

 

 

その脇には、仮面を宿した生物が控える。

その仮面には血のような眼があり

色彩は、呪いよりもおぞましい色をしている。

 

生物は、満天の星が舞う夜空を見上げた。

長く柔らかな尾と両耳が、夜風に弄ばれる。

 

 

『全ては、その時のためにー』

 

 

両手を広げ、全てを飲み込もうとするように

闇の存在は、輝く文明の大地を見下ろした。

 

 

『さぁ。鬼ごっこを、始めようか。』

 

 

二つの存在が立ち並ぶその頭上、遥か上空で

 

 

月が、全ての命を睨下していた。

 

 

 

 

 仮面ライダーウィザード

         ×

    魔法少女まどか☆マギカ

          × 

      ゼルダの伝説~ムジュラの仮面~

 

          擬伝

 

     ~Turbid Masquerade~

 

          序章

     ー今までも、これからもー

 

 

                end

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