擬伝 〈Turbid Masquerade〉 作:マッハ真紅朗
大変長らく空けてしまい申し訳御座いません。
数ヶ月どころか一年以上放置という有り様ですが
次話投下で御座います。
以降は、一話をAパートBパート2分割でやっていこうかと画策しております。
「ね。ほむらちゃんはさ、
どんな大人になりたい?」
「え・・・?」
屈託の無い笑顔が、私を見つめる。
見滝原の街を一望できる、風の気持ちいい草原。
その中腹に設けられた屋根付きの腰掛けに
私とまどかは座っていた。
「ほむらちゃんは美人だし。
髪も長くて綺麗だから。きっと
素敵な女の人になるんだろうなぁ。」
「・・・そんな事、解らないわ。」
綿のような雲が流れる、澄み渡った青空。
明日の悩みさえ吸い込んでくれそうな
どこまでも歩いていけそうな空。
そんな空を二人で仰いで、他愛のない言葉を
交わす。
「私なんて、臆病で鈍臭いだけだから。
鹿目さんみたいに、周りを気遣ったり
元気にする事も出来ない。」
「ほむらちゃん・・・。」
「結局、私は自分の事で手一杯で、人生を
終わらせるだけだと思う・・・。」
三つ編みに結われた、私の髪。
左右の二本の内、右手側の一本を手に取り
毛先をクルクル弄る。
またやってしまった・・・。
せっかくの平和な休日、楽しいはずの
親友との時間を、弱気な言葉で
台無しにしてしまう。
いつもの事なのにー
何度も繰り返してしまう自分に
何度も嫌気がさしてしまう。
ああ、空はこんなにも青いのに。
風はこんなにも優しいのに。
どうして私はこうなんだろう。
流れていく雲が、眼鏡に映り込む。
私も。
あんな風に流されて、生きていくんだろうなー
「そんな事、無いよ!」
「・・・え!?」
明日を投げ出しそうになる私の思考を
彼女は、いつもその言葉と、ありったけの笑顔で
受け止めてくれる。
私と空との間に広がる、彼女の視界一杯の笑顔。それだけで、空虚な思考はあっという間に
青空の彼方へ飛んでいく。
「ほむらちゃんの未来は、そんな事無いよ!」
「鹿目・・・さん。」
「この間だって、ほむらちゃんのお陰で
私もマミさんも、沢山の人が、魔女から
助かることが出来たんだよ。」
「でもそれは!
鹿目さんと巴さんがいるから・・・!」
「だから、大丈夫なんだよ。」
「・・・え?」
止め処なく漏れ出してしまう弱気な私。
それでも、と。
何度も何度も彼女は言ってくれた。
「ほむらちゃんも私も、マミさんも。
一人じゃないんだよ。一人じゃ不安な明日
だって、二人とか三人ならきっと。
・・・ううん。絶対、大丈夫だよ!」
「・・・そう、なのかな?」
「そうだよ!
友達が困ってる時は、助けてあげればいい。
一人じゃダメでも、一緒なら出来るかも!」
「友達・・・。」
何も出来ないと、殻に閉じこもるしかなかった
無力な自分。
そんな自分にはおよそ縁の無い言葉を、彼女は
投げかけてくれた。
そんな大切な、唯一無二の"友達"の願いー
「ほむらちゃんが困った時は、私、迷わずに
助けに駆けつけるから。
だから、信じても良いかな?
私がとっても困った時は、ほむらちゃんが
助けに来てくれるってー」
「鹿目さー」
突風が草原を吹き抜ける。
いきなりの強風に、思わず顔を背ける。
三つ編みが、風に解かれていく。
風が収まり、顔を上げると
掛けていたメガネが見当たらない。
そして、まどかの姿も
どこにも無かったー
「・・・ッ!!」
視界に入ったのは、良く知る
病院の天井だった。
清潔感漂う純白。
開放的な間取りを意識して盛り込まれたであろう
デザインも、ほむらにとっては少し
窮屈に思えるパターンの一つでしかない。
窓が開放されている。
そこから吹き込む涼やかな風が
病室を満たしている事に、ほむらは気付いた。
・・・この風の仕業ねー
久し振りにみた、束の間の安息の夢。
何度巡ろうと変わらない、あの子の笑顔。
これからまた始まる闘いに向けて
充分すぎる糧を、ほむらは得ていた。
壁に掛けられたカレンダーを見やる。
今月の頭から、花丸で日付が埋まっている。
花丸が通り過ぎた日にちには
×印で潰された”退院”の文字。
ほむら自身忘れがちな事だが
彼女は元々、心臓の病気でしばらくの間
ここに入院していたのである。
晴れて退院する彼女はこの後、鹿目まどかが通う
見滝原中学に転入し、邂逅を果たす。
転入案内のパンフレットが
きちんと畳まれて、机に置かれている。
(・・・どうやら、逆行先の日にちに
ズレは生じていないみたいね。)
今回の逆行は、些か以上に
突拍子もなく異常なモノだった。
”ムジュラの仮面”
そう名乗った存在は、逆行の回廊を崩壊させ
謎だけを投げかけ、奈落へと姿を消した。
それを追わされるように、ほむらもまた
奈落に落ち、この時間軸に辿り着いたのだ。
(この先、何があるか解ったものじゃないわ。)
気は抜けない。
殊更慎重に、どこか異変はないか。
辺りの気配を探りながら、ほむらはベッドから
体を降ろす。
(今まで通りなら、今日このまま
退院の手続きが行われるはずー)
病室を出てほむらは一路、顔を洗うべく
洗面所へと向かう。
こうしてまた、新たな逆行の戦いへ
彼女は足を踏み出した。
主が居なくなった病室。
その窓際で、風車が小気味良い音を奏でる。
ただ一人、赤と黄のツートンカラーを掲げ
誇らしげに記憶の風の中を舞いながら。
仮面ライダーウィザード
×
魔法少女まどか☆マギカ
×
ゼルダの伝説~ムジュラの仮面~
~Turbid Masquerade~
第一話
ー開始点(スタート)は門(ゲート)からー
時間操作能力ー
暁美ほむらが持つ、魔法少女としての力である。
鹿目まどかと出会った最初の時間軸にて
ほむらはまどかに惹かれ、まどかもまた
ほむらを慕っていた。
その友の死が、ほむらを一人
時の連鎖へと駆り立てた。
魔法少女と相対する存在、”魔女”。
その中において、最大最強と語られる
”ワルプルギスの夜”
魔法少女であった鹿目まどかは
この魔女との交戦の結果、命を落としてしまう。
友の死を嘆くほむら。
その時、一匹の白い影がほむらに囁いた。
「さあ、願いを言ってご覧。
どんな願いでも僕が叶えてあげよう。
君には、その資格がありそうだ。」
地球外知性体インキュベーター。
対象者の願望を成就させる対価に
魔法少女として、魔女と戦う使命を与える存在。
鹿目まどかとの出会いをやり直したい。
今度は、自分が彼女を守るー!
ほむらのその願いは聞き届けられ
彼女は魔法少女として再誕した。
魔法少女の能力は、インキュベーターとの
"契約"の際、叶えられた望みに依る所が大きい。
そして、やり直しを望んだほむらが
手に入れた力。
それこそが、時間操作能力。
"1ヶ月"という制約の下
彼女は、時の中を駆け巡る。
鹿目まどかが、死という結末を迎えるその度に
何度も、何度もー
その繰り返しの開始点として辿り着くのが
退院を目の前にした、今日この日。
だというのにー
(・・・静かすぎる。)
洗面所に掛けられた時計は
午前11時を指している。
本来であれば、正午を前にした面会人や
昼食などの準備に奔走する、病院スタッフで
往来は慌ただしくなるはず。
それなのにー
(面会人どころか、病院スタッフとも
患者ともすれ違わないなんて・・・。)
既に異変は、自分を捉えている。
(恐らく、今この建物に居るのは、私だけー)
で、あるなら。
標的は自分一人。
他の人達は、何らかの手段でもって
いずれかの状況へと、排除されたと見るべき。
ほむらの思考が回り出す。
情報の一つ一つが、小さな歯車として連なり
結論を導き出すべく、回転を伝達していく。
だがほむらは、言い知れぬ違和感に
見舞われていた。
状況のパターンも、およそ考えうる敵の目的も
度重なる時間遡行から来る、どの経験値にも
該当しない。
まるで、周りの全てが靄に包まれているような
纏わりつく、不透明な違和感。
ほむら自身にとっては、つい先ほど
逆行の回廊の中で味わった感覚。
(ー少なくとも、あの"仮面"絡みと見るべきね。)
開け放たれている蛇口から、止め処なく
水が流れ出る。
洗顔の目的も投げ出し、ほむらは
流水を見つめ、思考の海に潜り込む。
ゴボゴボと、水は流れをねじ曲げられながら
斑の口を開けた排水口へと、落ちていく。
ほむらは、思考の出口を見いだせず
ただ、流水の結末を見るしかなかった。
そして
思考の渦が、混濁の最高潮を迎えた時ー
「なぁんだ。せっかく誘い出せたってのに。
気付きもせずに、ダンマリかよ。」
突然の背後からの声に、飛び跳ねるように
顔を上げる。
備え付けの鏡には、驚く自分の顔と
その背後の壁に寄りかかる
一人の"少女"の姿。
「ー!?」
ほむらは思わず、振り向いてしまった。
まさかという疑念。
有り得ないという驚愕。
結果、その衝動的な行為はほむらの思考を
更なる渦中へと引きずり込んでいく。
「ーどうして、アナタが此処に・・・。」
フード付きの緑の上着に、ホットパンツ。
ブーツを履いた、活動性重視の出で立ち。
深紅の髪が黒のリボンで無造作に束ねられ
一本の、炎のような尾を引いている。
特徴的な八重歯を湛えた口がニヤリと笑い
矢のような紅蓮の瞳が、真っ直ぐに
こちらを射抜く。
ほむらは知っている。
少女のその不敵な笑みを。
ほむらは覚えている。
少女のその挑戦的な眼差しを。
間違い無い。
彼女はかつての時間軸で、共に戦った
"四人の魔法少女"の一人
「佐倉、杏子・・・!」
思考の届かない混濁の暗中。
有り得ない筈の邂逅を果たしたこの状況において
ほむらはただ、少女の名を呼ぶしかなかった。
しかし
「・・・へぇ。”暁美ほむら”・・・だっけ?
アンタ、この"顔"の事、知ってんだ。」
自信と野性に彩られた幼げな声が
ほむらの心中に、疑念の火を灯す。
「・・・! アナタ、どうして私の名前を?」
そう問わざるを得なかった。
時を越えられるのは自分ただ一人。
それが、時間遡行に課せられたルール。
共に戦った仲間との日々も、その絆も
全ては"過去"に消えた、遠い"未来"。
故に、今目の前に佇む少女が
"暁美ほむら"を知る理由は、何処にもない。
そうー
「どうして。ってー
"教えてもらった"に決まってんじゃん。」
ただ一つのイレギュラーを除いて。
「・・・!」
疑念の灯火が、ほむらの思考に突き刺さる。
その火種を篝火として、思考の暗中に
一つの影が浮かび上がる。
幽鬼の如く胡乱で
狂気の如く歪んだ造詣。
まるで、この瞬間でさえ嘲笑うかのように
血の眼を見開き、此方を見透かすモノ。
「・・・佐倉杏子、アナタ。
あの"仮面"の差し金ね?」
「・・・。」
ムジュラの仮面。
やはりと言うべきか。
ほむらには、それ以外は考えられなかった。
一つ。
この邂逅を導き出すには
"魔法少女である暁美ほむら"の存在を
彼女、佐倉杏子に伝える必要がある。
"病弱な子供"の存在を教えたところで
彼女の中の食指は、歯牙にも掛けないだろう。
二つ。
その前提条件を満たせるのは
"魔法少女である暁美ほむら"を知り
その情報を、次の周回に持ち越せる存在ー
全ての事実が白紙へと消える遡行の中
誰一人触れ得ざる、逆回しの歯車を識る者。
即ちそれは、同じ逆行の回廊を渡り歩いた者
という事に他ならない。
自身の知る限り
それを成し得た存在は、その仮面ただ一つのみ。
この二点こそが、解答への足掛かり。
それを辿れば、道筋は自ずと呪いの仮面へ
帰結する。
そう。
要素さえ噛み砕けば解けてしまう。
これは一つの、簡単な謎解き。
邂逅の切欠に、大凡の見当はついた。
残る疑問は、一つ。
「答えなさい・・・!
"仮面は何のためにアナタを寄越したの"!」
鋭く。
さながら銃口を突き付けるように。
ほむらは少女に躊躇いなく、視線をぶつける。
沈黙が、空間を塗りつぶしていく。
耳鳴りさえ無音と錯覚するような閉塞感の中
排水口に飲まれる水音だけが、醜く響く。
閉塞感は、張り詰めた空気へと変わり
瞬きも呼吸さえも許さず、今この空間にある
"動"たる全てを、圧殺しようとしている。
ほむらから流れ出る"圧"がそうさせるのか。
空間が、一触即発の臨界点に彩られる。
だがー
「中々、頭の回転が良いみたいじゃん。
良いぜ。今の"2つ"の問題
答え合わせしてやるよ!」
少女の楽しげな一声が、耳障りな静寂を
突き破る。
その身体は壁を離れ、ほむらの体正面へ対峙。
突き付けられた視線と、真っ向から向かい合う。
「・・・え?」
あまりにも潔い。
相手が自ら解答を切り出すという
予想外の反応に、ほむらは完全に虚を突かれる
形となってしまった。
「ちょっ・・・」
「まず一つ目だな。確か、アタシが
"あの仮面"の差し金かどうか、だったか?」
少女はお構いなしとばかりに、話を進める。
声色は依然楽しげなまま、少々の愉悦と
第三者独特の余裕を、その表情に含ませて。
「ちょっと待ちなさい、佐倉杏子!」
これ以上、相手のペースに躍らされる
ワケにはいかない。
ほむらは思わず、声を上げてしまった。
「あん、どうしたのさ?
回答の順番でも、間違えてたか?」
「・・・随分あっさりと、情報を割るのね。」
バカげている。
恐らく、魔法少女たらんとして努めて以来
これほどまでに無様な醜態は彼女自身にも
覚えが無いだろう。
目の前の不確定要素に対し
この問答、その本懐の是非を問い直している
時点で、其れは即ち本末転倒というものだ。
それでも・・・
「あぁ、そんな大したことでもねーからな。」
それでも、今は少しでも多く。
解答への歯車を新たに構築し直し
この不透明極まりない状況を脱するのみ。
「そう。大したことのない押し掛け問答の
ためだけに、わざわざアナタを寄越したのね。
あの"仮面"は。」
「ん~。その答えじゃあ50点ってトコだな。」
「・・・どういう意味かしら?」
威嚇から疑念へ、視線と言霊を切り替える。
牽制に対するリアクション。
その全てを歯車として拾い上げるべく
感覚が受け取る情報のあるがままを
咀嚼して飲み込む。
「言ったろ?"答え合わせ"してやるって。
要するに、アンタをテストしに来たのさ。」
「テスト・・・ね。それで、この問題の正解は
一体何なのかしら。"佐倉杏子"?」
アッケラカンと微笑み返す少女に、焦点を絞る。
その顔に顕れる、微細な変化でさえ逃さぬよう。
より注意深く。
より用心深く。
少女の瞳孔の奥底。
その先にある真意と事実を撃ち抜くためにー
「・・・プフッ。アハッ、ハハハハハハハハッ!
ひぃ。あーダメだ、もー耐えらんね。」
「?!」
突然の嘲笑に不意を突かれ
歯車を組み立てるロジックが停止する。
少女は、一頻り笑い上げると
くの字になった姿勢をようやく正し
まだ走り気味の呼吸で、口を開いた。
「アンタ、いくら何でも引っ掛かりすぎ!
っつーか、知識が偏りすぎて穴だらけだぜ?」
「・・・??」
状況が飲み込めない。
まるで支離滅裂だ。
何が可笑しいのか?
何が滑稽だろうか?
眼前の少女が嘲笑う理由も解せぬまま
ほむらはただ、思考の淵で立ち尽くす。
「"佐倉杏子、佐倉杏子"って
そんなんじゃあ、何をどう答えても
最高で50点が良いトコだぜ?」
空っぽの両掌に、呆れた感情を載せるように
少女は、挑発じみたジェスチャーを送る。
目の前の相手は何を言っているのか。
その姿形を私は良く知っている。
その身体に、命と魂と共に与えられた
"佐倉杏子"という名前を。
幾度、時を廻そうとも揺らぐ事は無かった
強者たらんと立ち振る舞う少女の名を。
ただその名を、呼んでいるだけだというのに。
ー何故か、酷く歪なノイズが横たわるー
相対する時、何時も不敵な笑みを浮かべ
奔放なまでにその力を行使する少女。
ー未来を思い出せー
魔女を、それに付随する戦果を獲物とし
餓えた獣か、はたまた気高き狩人か。
その牙は、煌々と戦意を撒き散らし輝く。
ー過去を刮目しろー
その心理の在処は、生と裕を重んじるが故に。
それが、"佐倉杏子"。
ー何処か、おかしくないか?ー
その手元には
常にー
「・・・ッ!!」
常に、何かしらの食料が握られていたハズだ。
ーそうー
それを、どのような場面においても
惜しげもなく口内へと頬張るのが彼女の癖。
この程度の緊迫状態だろうと。
まるで素知らぬ顔で。
どこ吹く風と言わんばかりに。
ーたったそれだけの事ー
この時間軸では、違うのかもしれない。
ーだが、初めから誂えたようにー
目の前の彼女を注意深く観察すれば解る。
ーその解答はそこに置かれていた気がするー
この"佐倉杏子"は
そんな素振りを欠片も見せていない。
「ようやく、理解したかい?」
ほんの些細な、しかし決定的な違和感。
視覚から侵入したソレは、不確かな衝撃を伴い
あらゆる感覚を翻弄する。
ガチャガチャと、思考の歯車が
独りでに回り始める。
回転が自動伝達され
次の、そのまた次の歯車まで
力学の作用が奔流となって駆け巡る。
感情と真実とは、時に相反する。
その真逆の指向性は、心理的に摩擦を生み
やがて思考と許容の間に亀裂を走らせる。
そしてその亀裂は、大きな断崖となって
神経シナプスの接続面、脳の大海に横たわる。
「アタシは、"佐倉杏子"とかいう
"人間"じゃあないのさ。」
即ち其れは、思考の放棄。
左中指に収まる、魂の変容器から伝わる答え。
事此処に至り、ほむらは気付く。
目の前にいるのは、"佐倉杏子"であって
"佐倉杏子"ではない者。
たった今、自身の中を駆け巡った不確かな衝撃。
思考さえ支配しかねないその"権能"こそが答え。
自らの持ち得る知識や経験では足りない。
埒外に存在する、全く未知の解答。
だというのならー
「・・・アナタは、誰なの?」
呆然と放たれたその言葉を待っていたかのように
少女がニヤリと口角を歪める。
口元だけではない。
少女の全てが紫煙に炙られ
歪み、変貌していく。
まるで蝋が溶けていくようにー
まるで鉄が融けていくようにー
憎悪と忘却が溶鉄となり、その肢体に張り付く。
捻れ、ひしゃげ、潰れた装飾は
何処か、かつての少女の思い出のよう。
まるで、"失った肢体が膿み痛む"ようにー
顔面に穿たれた、十字のキズ。
その奥から痛撃の双眸が覗く。
矢尻のような頭頂部から
炎の尾が後方へ噴出し、揺らめく。
まるで、"手当たり次第に呪い祟る"ようにー
その姿は、魔の異形。
異質と混沌を掲げ、暴虐と外法を以て
希望を絶望に染め上げる者達。
心理の煉獄より這い出でし、魔境の写し身。
『アタシは、デュラハン。"ファントム"さ。』
異形へと変わり果てた"佐倉杏子"ー
いや、自らを"ファントム"と名乗る存在が
そう告げた。
Bパートはなるべく近日中に・・・。
最後の希望マンさんには存分にシャバドゥビして頂く予定です。