擬伝 〈Turbid Masquerade〉 作:マッハ真紅朗
「つまり訳すと
かがくのちからってすげー!に、なる。」
「・・・身も蓋もないベルトね。」
お待ちかねの戦闘パートで御座います。
張り裂けんばかりの緊張の中
開幕を告げる魔法使いの言霊が響き渡り
戦いの火蓋が切り落とされる。
『・・・テメエッ、邪魔すんじゃねぇえっ!』
怒号と共に肉薄するデュラハン。
少なくとも10メートルは空けられた距離を
たった一つの踏み込みで槍の間合いまで
一気に踏み潰し、機先を制する。
銃剣と槍との仕合。
最大リーチこそ銃剣に分があろうとも
相手に撃たせぬ速度で、尚且つ"突き"という
直線軌道のワンアクションを仕掛けるならば
勝機はたちまち槍に軍配を揚げるだろう。
そして魔物が突き出すのはただの鉄塊ではない。
持つ者の魔力より錬られし、常世在らざる魔具。
所有者が願い念じ、命令し魔力をこめるなり
その総身は影の如く伸縮を自在にして答える。
凄まじい踏み込みに加わる、リーチの変動。
その軌道は、獲物の視界に魔槍の先端のみが映る
真正面からの一点突き。
向けられた獲物からすれば、リーチの変動など
知る由もなく、ただ魔槍が自ら喰らい付いてきた
錯覚の内に頭蓋を打ち抜かれる猟技。
『その首、貰ったァッ!!』
(獲られる・・・ッ!)
手に持つ銃剣でガードしようとも
踏み込みの慣性に加わる武器の質量差の前では
無残に弾かれるのは明白。
踏み込みで爆砕する地面の飛礫の中
魔槍は確実必殺の勝機をもって魔法使いを殺す。
狩る者と狩られる者が、そう思う。
だが、その者達は知らない。
そして次の瞬間には魅せられる。
今、自らの目の前にいるのが
変幻自在の"魔法使い"だという事を!
『・・・ッ?!』
魔力の入り混じった、鉄と鉄とが交差する
独特の風切り音。
怒号の一撃と地面の破砕乱れる爆音から一転。
廃工場の静寂は、正に嵐の前の静けさをもって
デュラハンの必殺の一撃が、空に去なされた事を
如実に語る。
(銃剣が・・・伸びた?)
右手に携えた銃剣。
その峰の腹に左手をあてがい、魔法使いは
左体側面に魔槍を捌いていた。
ほむらが目を見張っているのはその銃剣の姿。
銃身から、少し刃が抜きん出る程度だった筈。
しかし、魔法使いが構えた瞬間を縫って
今その銃剣はロングソードに姿を変えている。
"ウィザーソードガン・ソードモード"
刀身を、弾丸の錬成に回していた魔力と聖銀によって伸長し、元の肉厚そのままに機能を"剣"として変形させた、接近戦用の魔道具。
その横幅は魔槍より厚く、刀身の長さだけでも
ほむらの足先から首もとにまで及ぶ。
加えて防御に徹した魔法使いの膂力が乗れば
魔槍の必殺を凌ぐには十分な一振りとなる。
『フッ、派手にやってくれるじゃないか!』
防御姿勢のままデュラハンを見据えて
軽々とした文句を、魔法使いは吐き捨てる。
まるで、自分の余裕をあえて見せつけるように。
まるで、相手の神経をあえて逆撫でするように。
殺意を抱える手合いに、余計な挑発は手段をより
過激にするだけでしかない。
ほむらが抱いた危惧はそのまま現実となり
初手を去なされたデュラハンは、本能の叫ぶまま
その身から迸る殺気を爆発的に溢れさせる。
直情的に、利己的に。
眼前にある気に食わないモノを、完膚無きまでに
殺し切るためだけに。
『・・・イイぜぇ、テメエがそのつもりってんなら まずはテメエからグチャグチャにしてやる!』
去なされた魔槍を、踏み込んだ足を支点として
横に薙払いながら手元まで引き寄せる。
長剣を圧された魔法使いはその力を利用し
長剣を軸として自らを回転させ体勢の立て直しに
一拍を置く。
次の手が放たれたのは、両者同時のタイミング。
引き戻しから再度の踏み込みで、素早い小手先の刺突を繰り出すデュラハン。
回転からの慣性のまま、フェンシングのような
深い突きを繰り出す魔法使い。
互いの切っ先が衝突し、空を爆裂させると共に引き戻され、その一手は更なる押収の布石となる。
小手先の刺突を再度繰り出すデュラハン。
シフトウェイトを間断なく連鎖させ、引き戻しと
突き出しを絶え間なく繋げれば、まるで剣山の壁のように襲い来る無数の穂先となる。
一撃必殺を是とした初手とは異なる
圧倒的な手数、物量を以てしてデュラハンは
魔法使いを圧殺しに掛かる。
対する魔法使いが選んだのは
群がる穂先への正面突破!
敢然と踏み込まれる進撃の一歩。
無数に連なる刺突の連鎖、その合間に存在する
僅かな一呼吸に合わせて長剣が滑り込む。
魔法使いが手首のスナップで長剣を踊らせれば
まるで絡まった糸を解くかのようにアッサリと
物量の壁は砕け、たった一本の穂先が弾けて
デュラハンが一歩後退する。
『さあ、次はどう来る!
ブン回した所で当たるかどうか解らないぜ?』
『ヤロォオオオッ!!』
長剣を突き付け、魔法使いは更に挑発を重ねる。
デュラハンの殺意はもはや止まるところを知らず
暴虐の嵐と化して、目の前の"標的"に振り下ろされる。
轟音を纏い獲物に喰らい付く魔槍。
長剣が迎撃に跳ね、聖銀が奏でる凛とした風切り音が轟音を淀みなく寸断する。
脳天、首、腹、心臓。
急所を的確に狙う刺突と斬撃。
荒れ狂う異形の殺戮劇の中にあって
魔法使いの姿は躍る。
翻す太刀筋に合わせ、体捌きで猛攻を去なす。
風を孕んだ艶黒のローブが死線に追随し
対する者の眼を、距離感を惑わす。
その一挙手は、華麗にして苛烈。
その一投足は、鮮烈にして鮮明。
煤と錆、土煙にまみれたステージにあって
異形の魔法使いは、煌びやかに火花を散らし
艶やかなローブと銀のフレームを
戦闘の鮮花で彩る。
『チッ、ウゼエ!
チャラチャラ踊ってんじゃねーぞ!
この顔面指輪ヤロウ!!』
『悪いな、コレが俺のスタイルなんだ。
せめて一曲ぐらいは付き合えよ!』
至近距離での鍔迫り合い。
互いが互いを見据え、確かな殺意と戦意が
激突する。
『あぁ、そうかい!だったら躍らせてやるよ!』
デュラハンの頭部より吹き出す炎の髪が乱れる。
一本の尾だった髪は、幾本もの触角のように散り
激しく燃え盛ると、辺り一面を陽炎の檻に封じ込める。
『・・・っ!?』
それだけではない。
気配に気付いた魔法使いが目線を配ると
陽炎の中にデュラハンの影が分かれていく。
『テメエがくたばるまでこの檻の中でなぁ!!』
魔法使いが確認しただけでも8人。
実態は定かではない。
逃げ水のように、捉えようとしても離れ
実数値の距離も曖昧な領域。
目測を計りかねるまま、魔法使いは陽炎を舞う
魔槍の円舞に飲み込まれてしまう。
次々と襲い来る穂先が、獣の牙となって
魔法使いの身体に幾重にも突き立てられる。
ローブに通う魔力のヴェールが削られ
火花となって弾けていく。
『ッ・・・!ぐあぁっ?!』
肉にまで届かぬとも、ローブ越しに伝わる衝撃は
確かなダメージとなって魔法使いの身体を蝕み苦悶の呻きを上げさせる。
不意に横から飛ぶ強烈な一撃。
死角からの攻撃に魔法使いは吹き飛ばされ
"デュラハン達"の待ち構える真正面を転がる。
(形勢逆転、ね・・・。)
標的が移ったまま傍観者となったほむら。
魔法使いの魔力に当てられたか、既に身体は
動くのに十分な活力を感じている。
彼は相手を挑発しすぎた。
単なるお調子者なのか。
自分の力量を見誤った愚か者なのか。
それともー
どちらにせよ、彼はこのまま終わる。
そうなれば、標的は必ず自分に向くだろう。
撤退するならば、今の内。
この場を離れ、迎撃の段取りを執るならば
"彼が敵を引きつけている今しかない"
(ーっ!)
逡巡の結論に至り、ほむらは魔法使いの真意に
気付く。
繰り返された挑発。
ほむらの予想通りに殺意を爆発させた異形。
その矛先は、当初の獲物から乱入者の排除へと
ターゲットを変えざるを得なかった。
結果的にほむらは保護され、魔法使いは今正に
異形の猛攻を一身に受けている。
魔法使いの目的は、彼女の身の安全にあった。
『成る程・・・コレがお前の奥の手ってトコか。』
魔法使いは笑う。
お膳立ては整った。
後は観客を驚きと興奮で満たしたまま
このショーを幕引きに持って行くだけ。
『残念だけど、その位なら俺にも出来るさ。』
魔法使いが"右手の指輪"を交換する。
魔道具を顕現させる、"起動の指輪"から
その身を写し取る、"写し身の指輪"へと。
《Le.Patch Magic,Touch-Go!!
Le.patch Magic,Touch-Go!!》
"変身の左手"から"行使の右手"へ。
先程と逆の手順で右に傾倒するハンドオーサー。
駆動音が再び跳ね、魔法陣が宿ると
翳された指輪の機能が発動し
ベルトが詠唱の完結を謳う。
《"COPY",Please!》
『ほざきやがれ!これで終いだッッ!!』
宙を舞い、地を跳ね、8つの影となったデュラハンが魔法使いに殺到する!
8つに重なる剣戟の雨。
あらゆる死角から急所を貫かんと、影の魔槍は
我先にと獲物へ躍り掛かる。
しかし、その何れもが魔法使いに届きはしない。
同時に振るわれた"二筋の剣閃"によって
その全てが弾かれ、本来ならば不可能な筈の
防御を、魔法使いは事も無げにやってのけた。
『・・・ナニッ?!』
驚愕に見開かれるデュラハンの眼光。
その双眸が捉えるのは、"二人の魔法使い"。
全く同じ立ち姿。
全く同じ構え。
鏡写しの様に、左右入り乱れたモノではない。
"完全に複製された魔法使い"が顕れたのだ。
『『まだまだ!』』
《 《"COPY",Please!》 》
"二人の魔法使い"が宣言し、魔法を行使する。
写し身の魔法は正しく、自らの複製を写し取る。
一人で唱えれば、その姿は二人に。
ならば、二人で唱えればどうなるか。
『『『『さぁ、ジャンジャン行こうか!』』』』
無論、唱えた人数だけその数を増していく。
魔法使いが四人。
だが彼に打ち止める気はない。
相手が幻影やトリックを仕掛けてきた以上
それを上回るマジックを披露し、無理難題な状況を必ずや打破しなくてはならない。
魔法使いならではの信念を込めた詠唱が響く。
《 《 《 《"COPY",Please!》 》 》 》
そして、空間に投影された魔法陣から
新たに四人の魔法使いが生み出される。
これで同数。
8人となった魔法使いが
8人の影となったデュラハンと向かい合う。
物量差を物量で埋める力業の形勢逆転。
最早、出鱈目な状況を目の当たりにした
デュラハンに冷静な判断力は望むべくもない。
『しゃらくせぇえッ!!!』
真正面からの突撃という蛮行。
7つの幻影を従えながらも、今やその思考は
目の前の魔法使い全てを叩き潰す事にのみ働く。
そうでなければ気付いていただろう。
"写し身の魔法"は、姿形だけでなく動きまでも
完全に複製されるという特性に。
突撃を読み切っていた魔法使いが構える。
その手首に腕輪として纏う朱の宝石が輝き
魔力を大気中のエーテルと共に炎のエレメントに
変換し、チャージしていく。
腕輪から燃え盛る炎が、長剣を包み込む。
刹那。
長剣から振るわれた、八匹の龍炎が斬撃となり
デュラハンをその爪牙でもって弾き飛ばす。
『ーハアッ!!』
振り抜くと同時に写し身を解き
分散していた魔力を残心の一転に収束させる。
凝縮された魔力は、斬撃の威力を後押しする
衝撃波へと昇華され、異形の肢体に更なるダメージを付加しつつ幻影を陽炎もろともに打ち砕く。
『チッ・・・クショウがぁあッ!』
その衝撃は、デュラハンを空中にて後退させ
廃工場の外へと戦いの場を切り替える。
(・・・。)
息を飲んだまま、ほむらは第一局面の終わりを
感じ取っていた。
目まぐるしい攻防の変化。
まるで手品のように虚実入り乱れた戦局。
自らとは余りにもかけ離れた魔法使いの輝きが
ほむらの胸を掻き毟るようにざわめかせる。
『ガルーダ、その子を頼む!』
俯いて足下の自分の影に視線を落としていると
魔法使いが此方に向かって誰かを呼んだ。
『キューイ!』
「ーきゃっ?!」
顔を上げると同時に、今まで付いていたであろう
宝石の朱い小鳥が、ひょっこりと顔を出す。
完全に不意打ちを取られ、ほむらは素っ頓狂な声を出してしまう。
その光景に何を重ねたのか。
魔法使いは一息の微笑を残すと
自らもデュラハンを追って工場の外へ走り出す。
薄暗い廃工場から、光差す日の下へ。
100mを数秒で走りきる健脚でもって
魔法使いの姿はあっという間に遠ざかる。
果たして、追うべきか。
輝きと無明の境界において。
自らを魔法使いと見比べてしまうと
ほむらの足取りは鈍り、影の中にその身を
鎮めようと躊躇う。
だが、それ以上にー
(こんな所で、立ち止まっている場合?)
自らを突き動かす信念を凌駕した執念が
躊躇いを叩き伏せ、輝きを畏れる事無く
戦いの決着へとほむらを駆り立たせる。
見届けなくてはならない気がした。
あの輝きが、自分の中に何を映し出すのかを。
寝間着姿のまま駆け出した少女の後を
ガルーダが従順に護衛しながら付いていくー
もうじき初夏に差し掛かろうかという快晴。
燦々と照りつける太陽の下で
魔法使いとデュラハンの戦闘は
最終局面というピークを迎えていた。
両者健在。
だがその優勢は、圧倒的に魔法使いのモノだ。
歩道橋から続く遊歩道に躍り出たほむらは
その闘いの場が、病院の正面玄関である事を
目視した。
辺りに散らばる痕跡から、民間人が一目散に
逃げ出したことは明らか。
二つの異形がぶつかり合う戦場に目を移すと
長剣を銃剣に戻した魔法使いが
デュラハンの攻撃を跳ねながら去なしている。
その光景は、子供の頃に読んだお伽話のよう。
感情のままにサーベルを振り回すフック船長と
ヒラヒラと踊り続けるピーターパンみたいに。
戦闘の主導権はもう、魔法使いから離れない。
戦いの余裕ぶりからそんな事を予測していると
あろう事か、その魔法使いと目があった。
ハイキックによる押し出しで間合いを取ったとはいえ、いくら何でも余所見とは危険すぎる。
余りにも自然体で戦う魔法使いを目の当たりにし
ヒヤヒヤしながら開いた口の塞がらないほむら。
『ーん?何だ、付いて来ちゃったのか。』
そんなほむらを50m離れた場所から見つけた
魔法使いは、二通りの感情を抱く。
宣言通り、とっとと片付けてお姫様の元へ
颯爽と馳せ参じる。という演出が出来なくなった
ガッカリ感。
戦いの決着を、お姫様自らが観客となって見届けてくれるという張り合い。
どちらかというとー
いや、圧倒的に後者の気持ちが大きかった。
観客の声に応える。
観客の希望は裏切らない。
魔法使いであると同時に
彼が"操真 晴人"であるからこそ抱く
護るべき者に対する信念が、彼の闘志に
更なる輝きを宿らせる。
『ふふん、仕方ないな。
ガルーダ、"ショータイム"だ!!』
再び、ほむらの従者となっている
宝石の使い魔を呼び寄せる。
『キューーーイ!!』
"ショータイム"の言葉を聞きつけたガルーダは
一目散に魔法使いの右手に飛び乗った。
『・・・チッ。今度は何の小細工を・・・!』
ダメージの蓄積から、よろめき立つデュラハン。
その眼前にて、ガルーダの腹部に埋められた
指輪を、魔法使いはスルリと引き抜く。
体を形成する礎を抜き取られ
ガルーダはその四肢をパーツ単位で分解される。
《Le.Patch Magic,Touch-Go!!
Le.patch Magic,Touch-Go!!》
右手、左手、右手。
往復で傾倒されたハンドオーサーが再び
魔法行使の詠唱を歌い上げる。
翳されるのは、"朱き鳥神の指輪"。
《"GARUDA"!Show Time!!》
前面に突き出された魔法使いの腕から
またも朱き魔法陣が出現し、その円の内へ
分解されたガルーダが五芒星を描きながら
取り込まれていく。
魔法使いが飛び込む。
魔力をくべられた魔法陣は、豪炎に包まれ燃え盛り、雄々しい猛禽類の雄叫びを発する。
やがて豪炎はマグマの卵殻へと収束され
魔法使いが天に叫ぶようにして突き破り
豪炎の内より再誕した。
その身に纏うは、宝石で錬成された鳥神の装具。
直線的に削り出された翼。
豪壮にて研ぎ澄まされた足爪。
あらゆる眼光よりも煌めく頭角。
シルエットを大きく変えた魔法使いが
迅く、鋭く、しなやかに。
空を蹴り、宙を駆けながら炎を纏い
デュラハンを強襲する!
『ハァッ!』
飛翔からの足爪による飛び蹴り。
一閃の内に放たれた襲撃をデュラハンが辛くもかわすと、背後に着弾した魔法使いが、勢いを地面に着けた両腕で反転させ、両足による背面蹴りで
標的を空高くカチ上げる。
『グォオッ?!』
魔槍をガードごとへし折られ
空中において自由を完全に失うデュラハン。
その視線の先で、魔法使いが唱える。
しかし操作するのは、ベルトではない。
銃剣の"握り手"。
その親指を開くと残りの四指も解放され
握られた拳はその手を開き、握手を求める。
《Come on a "SHOOTING",Shake Hands!!
Come on a "SHOOTING",Shake Hands!!》
力を捧げろ!!
そう叫ばんばかりに、銃剣本体からもスキャット
は唸りを上げる。
答えるように差し出される魔法使いの右手。
指輪は強襲の最中に既に付け替えられている。
ショーの幕引きに相応しい、"必殺の指輪"に。
《FLAME,"SHOOTING-STRIKE"!!》
地と太陽を結ぶ直線上。
魔法使いは燃え盛る火球の剛弾を天高く
デュラハンを標的に打ち上げる。
《HEAT!HEAT!!HEAT!!!
HEAT!HEAT!!HEAT!!!》
引かれるトリガー。威力を倍増させる詠唱が
発砲音にけたたましく上乗せされると
剛弾は真っ直ぐに、上空のデュラハン目掛け
空を裂いていく。
『・・・チィイッ!!』
だがデュラハンもただでは喰らわない。
炎の髪の噴射により制動を掛け間一髪
躯を捻り、掠める剛弾を横目に回避を遂げた。
しかしー!
《Le.Patch Magic,Touch-Go!!
Choose Earned, "KICK-STRIKE"!!!》
剛弾と共に飛翔していた魔法使いが眼前に迫る。
その詠唱はベルトの操作に戻り、高められた
エレメントが右足に瞬時に収束していく!
『狙いはソッチかぁッ!』
右足による蹴撃。
デュラハンが理解するのと同時に
魔法使いが繰り出す。
回避は不可能!
本能からの即決の判断でもって、デュラハンは
繰り出された右足に自らの右拳を撃ち出す。
『・・・ッたかが一本、持ってきやがれッ!!』
砕け散るデュラハンの右腕。
激痛に歪む双眸が、蹴りを天に突き出し固まる
魔法使いの姿を補足する。
大技の後に必ず生まれる隙。
その一息を以て、魔槍の錬成から攻撃に移る。
今度こそ貰ったッ・・・!
怒りを倍増させる激痛の中、右腕を犠牲に
瞬時に形成を立て直したデュラハンの目の前で
"撃ち出された火球が魔法使いの右足に重なる"
《S C I - C O O O O O O L !!!!》
『ハアァ・・・ダァアアアアアアアアッ!!』
詠唱の完結詞と裂帛の気合い。
天に突きだした右足を振り抜き
必殺の剛弾を、必殺の蹴撃で再度撃ち出す!
オーバーヘッドキックから放たれた一撃は
魔力とエレメントが二重に掛けられ
正に必殺シュートとなって、遂にデュラハンの
ド真ん中を直撃する。
『グ、ガ・・・ガ、アァアアアアッ!?!』
壊れた機械のような断末魔。
デュラハンが地面に激突する。
異形を叩き伏せた火球がエレメントを解放し
爆発と豪炎の渦中へ、魔の塊を飲み込む。
豪炎と共に消えていく、デュラハンだったもの。
爆発の残り火の傍へ魔法使いが降り立つ。
すると纏っていたローブや仮面が宝石となって
散り、元素に戻ると大気へ還っていくー
「ーふぅい。」
変身を解除した青年が一息。
状況が終了したと見て駆け寄ってきたほむらを
見つけて微笑む。
「ークハハ!いやいや全く強ぇ強え!!」
だがその微笑みは、背後からの声で強張る。
ほむらを手で制しながら青年が振り向くと
「話に聞いてた百倍は手応えがあったぜ?
お陰で頭ン中が沸騰するトコだったよ。」
爆発の残り火の中から、倒した筈の異形が・・・
"佐倉杏子"が、立ち上がる。
「・・・成る程、全部お得意の幻ってワケか。」
その姿は、残り火が輪郭を持ったもの。
その姿が、陽炎のように揺らめく。
「そ、アタシの分身さ。
今日はひとまず挨拶までってね。」
それだけ言うと、"佐倉杏子"は踵を返し
逃げ水のように遠ざかり、潔く姿を消した。
--次はお互い、本気でやろーじゃん。--
声だけが響く。
手の内を計っていたのはお互い様。
そう言わんばかりに。
「ー終わったかしら?」
「ー今日の所はね。」
確かめるほむらに、答える青年が向き合う。
まだ互いの胸中すら量り得ぬ二人の邂逅。
太陽に照らされ生み出される、光と影。
その二つが重なり合う先で、街頭に設置された
時計の長針がカチリと時を刻む。
PM15:00
ティータイムには、丁度良い時間。
くすぐったい紅茶の匂いで目を覚ますと
そこは、ちょっと前までは良く知る天井だった。
身体のあちこちが軋むように痛むが
その痛みがかえって、身体を突き動かす。
屈辱感、敗北感。
そこから来る怒りと無力感。
その全てがごっちゃになって、舌打ちする。
ブカブカのパジャマのままソファーから起きる。
ガラス張りの部屋の中に、およそ多人数向き
ではない、三角のテーブル。
その上に、冷めた紅茶とケーキがあった。
まるで自分が起きた時に食べれるように。
紅茶をほったらかしなんてアイツらしくない。
大方、慌てて買い物にでも出掛けたんだろうが。
そこはやっぱり
ちょっと前までは良く知る部屋だった。
腹いせに、ケーキを素手で食い散らかす。
荒波のようにざわめく心臓を満たすように。
だが収まらない。
屈辱も敗北も、消せはしない。
ガラスから差し込む、赤く金に輝く夕焼けが
あの一幕を思い出させる。
いつもの狩りに現れた乱入者たち。
胸糞が悪い。
自分がもう一人いた。
吐き気がする。
まるで、昔の自分に蔑まされる気分だった。
頭が痛い。
そしてもう一人・・・いや、一匹か?
膝が笑ってる。
全く知らない魔法を使いやがるケダモノ。
眩暈がする。
金色の獣人。
獅子の顔した人間か。人の形の獅子か。
その目は、血のように赤く光り、獲物を襲う。
自分同士の取っ組み合いに横槍入れられて。
突っかかったは良いが、このザマだ。
姿見に映る自分が、情けなさすぎる。
的確に手当されて包帯まで巻かれて・・・
オマケに何だこの寝間着?
こういうのはガラじゃねーってのに。
「・・・また、助けられちまったじゃんかよ・・・」
歯痒いばかりの思いをようやく吐き出すと
途端に力が抜けて、またソファーに倒れ込む。
「巴・・・マミ・・・」
その名を呟いて
朱き魔法少女、佐倉杏子の意識は再び
深い微睡みの中へと転がり落ちていった。
孤独に冷え切った悔し涙が、枕を濡らす。
第一話
ー開始点(スタート)は門(ゲート)からー
end...
後書き解説という名の"擬伝の端っこ"
◆デュラハンファントム
"告死の騎士"を象った魔人。
手に持つ十字の魔槍の名は"トラゴイディア"
影のように伸び、相対した者に悲劇を齎す。
陽炎の幻影を操る能力を持ち
物理干渉が可能な分身体を産み出せる。
◆ガルーダ・ショータイム
プラモンスター・ガルーダと融合する能力で
S.I.Cのオリジナルギミックから拝借。
元々晴人が他者や外部に頼る事に躊躇いを感じており、ガルーダ他プラモンスターとの外部融合よりも、内在的なドラゴンの力を欲したためTV本編では未使用だった。
ハリケーンスタイルとは違い、翼から熱風放出を行いジェット飛行で空を翔ぶ。
直線的な軌道で、高空からの足爪による強襲及びジェット飛行を行いながらのドッグファイトを
得意とする"攻撃飛行形態"。
融合時、ガルーダへ注いだ活動用魔力も
ウィザード本体に還元されるため
発動する際のコストパフォーマンスは良好。
恐らく、晴人がドラゴンの力を顕現させるまでの
"繋ぎ"として、白い魔法使いが用意した形態と
思われる。
という、作者の脳内設定垂れ流しフォーム。
◆S.I.C 仮面ライダーウィザードシリーズ
あらすじにも書かせていただきましたが
本小説に登場する仮面ライダーはS.I.Cを基準に
能力・設定・演出を描写しております。
今回ではウィザーソードガンが該当。
TVデザインでは折り畳み式の変形武器。
一方S.I.Cでは、刀身がそのまま肥大化した
ソードモードが付属パーツとして同梱。
そこから、刀身・銃弾の生成両方に銀を使い
魔力で補強するという方向に。
合わせて、ベルトの詠唱も海外字幕を参考に
それっぽい英単語の羅列を当て字。
S.I.Cってナニよ?と思われた方は是非ケンサコ・・・
さあ、今すぐ残りのスタイルも商品化を!
早くッ!!