擬伝 〈Turbid Masquerade〉 作:マッハ真紅朗
「言い訳はそれでお終いかしら?カチリ」
「ウワァアアアアァアアア!! ξ(OMO;)ξ」
大変お待たせいたしました。
第二話スタートで御座います。
最初の朝
夜明け。
太陽が産声を上げ、その声を光として命ある者の魂が目覚める。
黒に塗りつぶされた空は、黎明の輝きを以て
紫から赤へ、淡いパステルのグラデーションを
織り交ぜながら西へ西へと、"明日"を"今日"に塗り替えていく。
病院内に併設された休憩所。
操真 晴人はブラックコーヒーのインスタントを
片手に、新たな朝を迎え入れていた。
「…っふぁ~あ…」
朝焼けの眩しさに、香ばしい苦味を加えても
眠気は収まらず欠伸は絶えない。
襲撃者を理性で警戒しながらも
本能はその襲撃の可能性を否定する。
両極の間で揺れる中途半端な緊張感が
徒労の果てに、耐え難い眠気を感じさせる。
結局、何もなかったな。
そんな事だけを考えつつ椅子の背もたれに身を任せる。
晴人が今居るのは、暁美ほむらが通う病院だ。
ゲートである彼女を護衛するという名目で
彼は本来ならば許されない、部外者の付き添いを関係者に納得させていた。
「凛子ちゃんが居れば
もっと簡単に話が纏まったんだよなあ…。」
無論、ファントムという異形の怪人など
荒唐無稽すぎて眉唾なんてレベルじゃない。
関係者の誰も彼もが晴人の言葉に首を傾げ
説得は難航を極めた。
だったら。と、晴人は指輪をベルトに翳す。
白く清廉とした院長室に
黒く艶やかな魔法使いが躍り出る。
その場に居合わせた誰もが息を吞んだ。
およそ一般程度の科学では説明不能な存在。
およそ一般人には空想でしかない魔法の力。
「間違いありません。
操真晴人さん。彼が私を助けてくれました。」
そんな不確かな存在の認知をほむらの一言が後押しした。
訝しむ心を撃ち抜く、真っ直ぐというには鋭い眼差しが周囲を納得させていく。
それが決定打。
院長は晴人の護衛を認可し、護衛を務めた男は今現在に至る。
結局、俺一人じゃ納得させられなかったな。
そんな事に考えをシフトさせつつ
更に椅子の背もたれに身を任せていく。
共に戦ってきたパートナーがいかに現実的か。
共に戦ってきた自分自身がいかに浮き世離れか。
離れて初めて解る相手の苦労がある。
離れて初めて解る相手の大きさがある。
「やっぱスゲーな、凛子ちゃんは…」
晴人は改めて、パートナーの偉大さを痛感していた。
けれども、今は自分一人。
だからこそ、やるしかない。
「…さて、ドコからどう説明するかな…」
今日一日の段取りを考えようとするも
晴人の意識は現実から零れ落ちる。
微睡みの中を転げ落ちるように。
自らの意識の底へ、止まることなく─
「…さて、ドコからどう聞いたものかしら。」
病院内に併設された休憩所。
暁美ほむらは、ブラックコーヒーの缶を片手に
目的地へ続く通路を歩く。
静かな朝焼けに、香ばしい苦味を加えても
考えは纏まらず逡巡は絶えない。
同業者を理性で警戒しながらも、本能は彼が
同類である可能性を否定する。
両極の間で揺れる無軌道な推測論が
協議の果てに、耐え難い煩わしさを感じさせる。
結局、彼は何者だろうか。
そんな事だけを考えつつ目的地へと歩を進める。
ほむらが今向かっているのは、操真晴人が居るであろう休憩所だ。
"ゲート"と呼ばれる自分を護衛するという名目で
彼は本来ならば許されない、部外者の付き添いを
関係者に納得させていた。
「…もっと、穏便に。
簡単に話を纏められなかったのかしら…。」
無論、ファントムなど異形の存在なんて
一般人にとっては荒唐無稽極まりない。
関係者の誰も彼もが、操真晴人の言葉に首を傾げた。
だったら。と、操真晴人は強行に出た。
驚く一般人達の目の前に
黒く、艶やかな魔法使いが躍り出る。
その場に居合わせた誰もが息を吞んだ。
およそ狭義的な常識では秘匿するべき存在。
およそ一般人相手に見せてはならない魔法の力。
「間違いありません。
操真晴人さん。彼が私を助けてくれました。」
そんな不確かな存在の認知を
自らの一言で後押ししてしまった。
尚も訝しむ手合いには、口で説くより
確信の眼差しで以て納得させるだけ。
それで決まり。
操真晴人は院長から護衛の認可を得て
護衛を当てられた自分は今に至る。
結局、彼は何者だろうか。
そんな事をただ考えつつ
更に通路をツカツカと歩いていく。
共に戦ってきた仲間達の姿が如何に痛ましいか。
共に戦い生き延びた自分が如何に浅ましいか。
照らされて初めて解る、陰の暗さがある。
照らされて初めて解る、光の眩しさがある。
「…やはり、何があっても止めないと。」
ほむらは改めて
魔法少女が辿る、凄惨な運命を痛感していた。
けれども、今は自分一人。
それでも、やるしかない。
「…ふぁ…っ」
今日一日の段取りを考えようとするも
不意に欠伸が出てしまい、意識が逸れる。
今だけはと、心を安らげるように。
自らの魂の奥底を、波打たせぬように─
病院内に併設された休憩所。
目的の青年は、差し込む朝日の中
静かに寝息を立てていた。
そうだった。
何せ彼は、戦闘を終えたばかりの身でありながら
昨夜一晩を通して自分を守っていたのだ。
例え何者であろうとも。
今のほむらには、それだけが彼の真実だった。
「…。」
ほむらも静かに相席をとる。
今だけは休もう。私も彼のように。
そうして、目を閉じる。
今ここには、疑いも畏れもない。
あるのは、朝日の中に意識を溶かす
二人の魔法使いの姿だけ。
その足元から、二本の影が続いていく。
朝日が昇り光の角度が変わると
光の先、次第に細く狭まる影もまた
お互い傾き寄り添い合う。
光の終わりは影となり、二本の影を纏めて括る。
影は影の中に抱かれ、抱かれた影は影と交わる。
"明日"から"今日"へ。
欲望も、夢も、魂も。
全ては影の中に飲み込まれていく。
黒に渦巻き溶かされていく、白いミルクのように─
仮面ライダーウィザード
×
魔法少女まどか☆マギカ
×
ゼルダの伝説~ムジュラの仮面~
~Tubid Masquerade~
第二話
─魔法なんて、綺麗なモノじゃない─
「もう、佐倉さんったら。
ケーキをこんなに食べ散らかして!」
テーブル付近に散乱したケーキを片付けながら
独り言を零す。
ソファの上で可愛らしく寝息を立てている主犯を
横目に見ながら、独り笑みを浮かべる。
だって仕方ないじゃない。
誰かの世話を焼くのなんて、久し振りだもの。
そう自分に言い聞かせながら
独り勝手に納得する。
そうして巴マミは、佐倉杏子を独り看る。
今着せている寝間着を脱がし、身体を拭く。
同年代にしては華奢な印象を受ける肢体。
今でこそ落ち着いた呼吸に合わせ、柔らかな曲線
を描く胸元は上下しているが、身体の至る所に
巻かれた包帯から負った手傷の数が伺える。
だが包帯を取ってみれば、数の多さとは裏腹に
傷そのものは塞がりつつあった。
ホッと、一息だけ緊張を緩める。
そっと、お湯で暖めたタオルで拭いていく。
優しく、丁寧に、穏やかに。
包帯を新しく巻き直し、寝間着を新しく着せ替える。
一通りの世話を終える頃には、朝日がすっかり顔を出しきっていた。
結局巴マミは、一日を誰かの為に使い切り
また誰かの為に終わる一日を迎える。
「…今日こそは仕留めないと。」
握り締めた、黒いゴシック調のアクセサリーを
見つめながら、独り呟く。
柔らかに見える双眸。
だがその眼孔は、年不相応な緊張感に張り詰め
その眼差しは、人在らざる闇を見据えている。
そしてその魂は、光と闇の狭間で揺れていた。
手の中のアクセサリーを、強く握り締める。
朝日の光は、彼女の足下までは照らさない。
暗がりの部屋でただ独り。
彼女の姿はまるで罪と罰に請い願う、迷い人のよう。
「…行ってきます。」
ただ、その一言だけは、彼女を赦していた。
ただ、その一言だけが、彼女を抱き締める。
例え返事が無くとも、言葉を掛ける相手が居る。
ただ、その暖かさだけが、彼女の求めるもの。
巻き髪にして束ねた金のツインテール。
その流麗な二房を揺らして、巴マミの姿は
真っ白な陽光の中に消えていった─
白い。
ただひたすらに白い空間を歩いていく。
ただひたすらに白いので、もはや進んでいるのか
退がっているのかさえ解らない。
いや、ひょっとしたら。
上がっているのかも知れないし
下がっているのかも知れない。
もはや上下の間隔さえ無いのだから
暗闇を歩いているのと変わりない。
ならばこの空間は、白い闇と言っても良いのでは
無いだろうか?
そう感じたとき、ふと思う。
前進にせよ、後退にせよ
自分の足が動いているのだけは確かなのだ。
なら─
前進にせよ、後退にせよ
自分の足が何処かへ向かっているのも確か。
では、自分は─
"悲しみを繰り返し、ドコへ往くのだろう?"
友が死に、全てが始まった。
友が死に、友が死に、友が死に─
そしてまた、友が死んだ。
友が死に、全てを繰り返す。
友が死に、友が死に、友が死に─
やはりまた、友が死んだ。
友が死に、何度もやり直す。
友が死に、友が死に、友が死に─
どうしても、友が死んだ。
繰り返しの果てに何があるのかも解らず。
繰り返しの果てに希望があるとも限らず。
─もしかしたら自分は
無闇矢鱈に悪戯に、死出の旅路へ
友を道連れにしているだけではないか─?
(──────ッ!!)
止まらない。
押し留めていた思考が、予感が、本能が。
止まらない。
欺き続けてきた後悔が、恐怖が、懺悔が。
押し寄せる絶望の波濤と化して
まるでこの身を引き裂く紫電のように
身体中を蹂躙していくー
─いや。実際に"この身体"は今、裂けている─
何者かが己の内に巣くい、新たな自己として
見ているかのような客観的な視覚。
尚も身体を引き裂く、淡くおぞましい紫の燐光。
絶望の淵から何者かに食い破られ
自分の全てが否定され、砕け散り、霧散する。
膝を屈し、自分の身体を抱き締め
残り僅かとなった"人間"の部分に縋り付く。
その中で思うのは、かつての仲間達の末路。
希望を抱きながらも、絶望の淵へと沈んでいった
数多の儚き魂達の姿。
(そう…。きっと、彼女達もこうして─)
天を仰ぐ。
すると、先程まで白に支配されていた空間が
闇の帳に吞まれ始めていた。
暮れ泥む一刻を切り出したかのような
薄ぼんやりとした魔の刻。
それは、遥か頭上に発生した黒点によるもの。
黒点が徐々に中天へ登り詰めると
空間の夜は深まっていく。
そこで初めて、白の闇を生み出していたのが
たった一つの極光であることに気付いた。
まるで総てを司るかのような天の輝き。
そして今正にそれは
新たな闇に塗り替えられようとしていた。
無意識から、右手を突き出す。
行かないで─!
消えないで───!!
希望が呑み込まれてしまう気がした。
絶望に呑み込まれてしまう気がした。
───だから、手を伸ばした。
縋るべき最後の希望。
自分という人間で居られる、僅かな余白。
過ぎ去ってしまった日々も
確かに感じていた暖かさも
それら全ての意味が瓦解してしまうから。
───だから、手を伸ばし続ける。
彼女の、まどかの
笑顔を…守りたいから!!
突き出した右腕が、何かを掴む。
天の輝きでも無い。闇の帳でも無い。
では何か?
きっとそれは、"炎"だろう。
有史以前、人が初めて手に入れた"光"
自然の力の一端を行使する、人の"力"
ともすればそれは、闇夜を照らす人の力であり
道なき道を往く、人の意志の力とも言われる。
絶望の淵にあって暁美ほむらは
自らの意志と欲望で以てして、踏み止まったのだ。
身体をのたうつ紫の燐光が、ピタリと止まる。
そしてまるで、溶剤を浴びせられた落書きのように
スンナリと消滅していく。
それと入れ替わるように、天の極光が再び
輝きと、空間の支配権を取り戻す。
纏わり付いた闇の帳を振り払い
頭上高く、燦燦と輝き続ける光の中には何時しか
優しくも暖かな、淡い薄桃色が指していた。
─成る程。珍客と思い試してみれば
これはまた、中々面白いヤツが来たな!─
重く、鋭い声が響く。
新たな光に包まれたほむらは、ハッとして
光に不釣り合いな声の主を警戒する。
─ッハッハッハッハッ!そう怯えるな!─
辺りを見回すほむらを滑稽と嗤うか
天の極光、その光の向こう側から、彼は顕れた。
何故だろう。
逆光の中にあって、そのシルエットは余りにも
理解しやすかった。
蛇よりも流麗で、獅子よりも逞しい身体。
羽ばたく翼は、あらゆる鳥類を失墜させ
その爪牙は、どんな刀剣よりも豪壮。
そしてその肉体のあらゆる部位はくまなく
自らの蓄えた金銀財宝が融け込んだように絢爛豪華。
万物を睥睨するルビーの眼が、こちらを向く。
─ほう。俺を前に退くどころか、睨むか─
頭頂部から突き出た頭角には大振りの玉石が
填め込まれ、さながら王冠のようだ。
─観察、しているな?この俺を─
その姿は正に、お伽話の伝説のまま。
ありとあらゆる勇者達と、血湧き肉躍る円舞を刻む
幻想の中にあって、誰もが思い馳せる存在。
「…ドラゴン。」
口から零れたその名を
さも愉快げに、誇らしげに、忌々しげに
彼の歪んだ笑顔が肯定する。
─そうだ、俺はドラゴン。ドラゴンファントム!
珍客、これは持て成しだ。知りたいのだろう?─
まるで獲物を品定めするかのように
彼の言葉が私を誘う。
勿論拒む理由など見当たらないし、拒否する
選択肢など有り得ない。
だから、頷く。
─俺の宿主の事を。操真晴人という人間を!─
その問いには
覚悟の眼差しで以て、答えるのみ。
という事で、漸く第二話スタートです。
前回で接触、今回から二人の心情摺り合わせを行いつつ
────。
更新、空きすぎじゃないですかね?(白目)
済みません人理修復にかまけたらこのザマです。
まさか有言実行する事になるとは露とも思わず
なんです?バレンタインのチョコですか?
いやもう、勿論両方ともゲッ
血塗れの会話テープは此処で終了している─
次回もどうぞ宜しく。