後継者。それは魔術師にとって大きな意味を持つ単語。
魔術師未満の半端者である拙にとってはいまいちピンとこないが魔術師の世界にとって後継者というのは非常に大切な存在らしい。
そして今日エルメロイ教室にはある魔術の後継者の青年がいた。
「…なるほど、オルロック翁は私を君に教育してほしいと」
「はい、先代はあなたの事を信頼できる教育者だと」
彼の名はヴェルナー・シザームンド。かつて拙達があの城で出会ってその最期を看取った―――と言ってもその時の記憶は拙にはないのだが―――オルロック・シザームンド老人の、つまり彼が扱っていた魔術である蝶魔術(パピリオ・マギア)と彼の一族の魔術刻印の後継者だ。
「しかしオムロック翁が遺言をあの城で残していたとはな…最後にもう一度言っておく、私もそれなりに経験を積んだ講師として人にモノを教える能力はある。しかし才能は君の足元に及ばないだろう。自身この歳で第四階梯だから、底が見えてる」
「えぇロードは魔術師としては並以下で現段階の実力も私に劣るやもと先代も遺言状に書いてました。しかしその視点は魔術師とも魔術使いとも異なる物で発展途上中のお前にはいい刺激になると…」
どうやらオムロック氏はあの城で遺言状を書いていたらしい…しかしあの偏屈そうな老人が師匠を後継者の指導者として指名するとはよっぽど師匠の事を気に入ってたのだろう。
ヴェルナー氏の遠慮のない発言に師匠はいつも通りの仏頂面を少し崩し師匠にしては珍しく少し面白そうに話を続けた。
「全く…オルロック翁と同じでずけずけとモノを言うな…まぁいい佐野老体には世話になった。これからは指導者としてお前をこれから指導していくことになる。
エルメロイ教室へようこそ、ただし歓迎はしない」
全く実に偏屈な師匠らしい物言いだ。
「それではこれからよろしくお願いします、先生」
ヴェルナー氏はそんな師匠の発言に苦笑いを浮かべながら頭を下げエルメロイ教室の生徒になったのだった。
「やれやれ全く面倒なことになった、今まで蝶魔術の使い手の指導などしたこともないぞ…また資料を探さねばならないな」
ヴェルナー氏が教室を去った後、不機嫌そうな顔で文句を言い始める師匠だがその実面倒見がいいことで生徒だけではなくほかの講師からも一目置かれる彼の事だ。
ヴェルナー氏を的確に指導する方法を考えてるのだろう。
「師匠、お茶を入れておきました」
「む、すまんな」
拙が入れたお茶を啜りながら新しい弟子への指導を思案する師匠。
私生活は本当にどうしようもなくだらしないが指導者としての師匠は輝いて見えることがある。
そんなところは尊敬できる人物だと拙は思うのだ。
Fakeにシザームンドの後継者が名前だけ登場し等でその過程を捏造しました。
実際どういう過程でエルメロイ教室の生徒になったんでしょうね。