ペルソナ!って言いたいけど、資質ゼロなんです。   作:甲斐太郎

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P3Pin女番長 エンプレス&エンペラー戦―②

6月8日(月) 

 

「な?すんなり入れたっしょ?なんつーかオレ天才?」

 

「自慢するほどのこと?」

 

得意げに話す順平に冷ややかな目をむけるゆかり。場所は月光館学園高等科の廊下だが、私たちの他に人影はない。ただし時間が夜遅く、という点を除いてだが。

 

「昼間のうちに鍵を……ブリリアント!!」

 

「ブリリアントっ!」

 

「時間が惜しい。行くぞ」

 

高笑いする桐条先輩と、彼女の真似をする優ちゃん。

 

その意味不明な発言を気にも留めない真田先輩。順平が夜の学校に偲び込む上で準備があると言っていたが、それは校舎の鍵をひとつあけとく、とうことだったらしい。

 

理事長が捕まらず学校に入る方法を悩みかけたが、順平が仕掛けたことによって事なきを得た。得たのだが……

 

「あの人、なんなの?」

 

「えっと、ブリ……なんだっけか?日本人は日本語使って欲しいよなナ」

 

何事もなかったかのように歩いて行く先輩2人と優ちゃんの背中を見ながら、ゆかりと順平はため息をついた。寮にて晩ご飯を食べた後、学校に入る方法を考えている時、すでに仕込みを済ませたという順平に対し

 

「仕込み……爆弾か?」

 

と、ぶっとんだことを聞いていた。この発言に私たちは一瞬だけ頭の中がまっしろになったが例によって、真田先輩もこの発言を気にした様子はなかった。

 

「先輩達ってホントに天然さんなんだね」

 

「はぁ、これからが思いやられるわ」

 

私たちはため息をつきながら、3人の後を追って歩き出した。

 

 

 

「うぅ……電気つけましょうよ」

 

「ゆかりっち、すっかり怖がっちゃって」

 

「怖がってないっつの!!……アホか」

 

「ア、 アホはないっしょ!!」

 

「騒ぐな。この時間だ、暗い方が何かと都合がいい」

 

学校への侵入を成功させた私たちは、とりあえず近くにあった2-Fの教室に入って今後の行動を確認するが、ゆかりと順平が騒いでいる。

 

「とりあえず体育館と体育館倉庫の鍵が必要だな。確か校務員室と職員室にそれぞれあるはず。明彦、私とこい。鳴上もだ……って、鳴上は?」

 

桐条先輩の問いかけに返事をしない優ちゃん。よくよく見回すと教室内に彼女の姿がない。もしかしてはぐれた?と私が思って声を出そうとした瞬間、

 

『あなたはだぁれ?』

 

と、桐条先輩の横に長い黒髪で顔を隠した女の顔が浮かび上がった。

 

「「きゃあああ!?」」

 

「く、くるなぁあああ!?」

 

それを直視してしまった私とゆかりは抱き合って絶叫し、桐条先輩はレイピアを振り回しながら、こちらに後ずさってくる。

 

真田先輩と順平は女が登場した時こそ身体を強張らせたがすぐに緊張を解いた。それを見た女もすぐに舌うちをして、その“変装”を解く。

 

「ちぇー。絶好のタイミングだと思ったのに」

 

「さすがに服を着替える時間はなかったな、優ちゃん。残念侍」

 

女が黒髪のウィッグを外す。すると右手にウィッグ左手に懐中電灯を持ったあどけない顔で舌をちょっと出した優ちゃんがいた。

 

ドッキリ大成功と書かれたプラカードも見える。

 

「……。鳴上―!!」

 

桐条先輩も呆然としていたが現状を理解した後は早かった。優ちゃんに拳骨を落とし、正座させて説教を始める。しかし、優ちゃんにばかり構っている訳にもいかず、すぐに解放する。勿論優ちゃんに反省の色はなく、似たようなことが起きたらまたやりそうな気がする。

 

ゆかりも「獅子身中の虫か……」とがっくりと肩を落としている。

 

「……結城、岳羽と鳴上を連れて職員室を頼む。伊織、君は私たちと一緒に校務員室だ」

 

「断固拒否します!」

 

桐条先輩の指示にゆかりが難色を示す。

 

当然だろう、桐条先輩が組み分けを告げた瞬間、優ちゃんが目を光らせたのを私たちは見てしまった。

 

「だが、それでは……」

 

言い淀む桐条先輩。あんなドッキリの後で犯人の優ちゃんと一緒にはいたくない。そんな心理が働き、いい案が思い浮かばない。

 

そんな中、順平が話に割り込んできた。

 

「話が進まないんで、オレっちと優ちゃんは先に集合場所の1階ホールに行っとくってのはどうっスか?」

 

「「「それだっ!」」」

 

私たち3人の声が揃う。その手は思いつかなかった。

 

問題児同士を先に集合場所へ行かせる。なんという灯台もと暗し。

 

「ええー。私は岳羽先輩たちと行きたいなー。……え?ふむふむ、分かりました!私、伊織先輩と行きます!」

 

そう言って嬉々として教室から出ていく優ちゃんと鼻歌交じりでその後を追う順平の後ろ姿に判断を間違ったのではないかと今更ながら思い悩む私たちであった。

 

 

 

 

廊下でゆかりの携帯が鳴り響き、取り乱すというちょっとした事件があったものの、鍵はすぐに見つかりホールへ向かう。すると、すでに真田先輩たちが順平たちと会話していた。

 

「鍵はあったか?」

 

「ゲットしています」

 

桐条先輩の問いに答えるゆかり。

 

だが、その視線は鍵になく、真田先輩の横で小さく欠伸をしている優ちゃんに向けられている。

 

「……何もなかったですか、桐条先輩」

 

「ああ。……不気味なほど、何もない」

 

「もしかして、教室出る時の演技で私たちに疑心暗鬼を植え付けただけなのかなぁ。ゆかりはもうびびりまくりだったし、あの2人の計算通りだったのかも」

 

「もうやだぁ……」

 

両手で顔を覆うゆかりの頭を桐条先輩が優しく撫でる。

 

「安心しろ、岳羽。あの2人は救出組で、私たちとは一緒にいない。だから不意打ちを受けることもないはずだ」

 

「それはそうですけど……。けど、大型シャドウが来たら、私たちで戦わないといけないんですよ。私はともかく、桐条先輩はブランクがあって大変なんじゃ?」

 

「ふふふ。ありがとう岳羽。心配してくれるのだな」

 

「なっ!?そんなの当たり前じゃないですか」

 

私はそんな2人のやり取りを見ながら、寮で考えた関係の問題は気優だったかなと思いなおした。きっかけが優ちゃんのドッキリだったことは、残念だったけど結果オーライということで納得することにする。

 

「よし、これで必要なものは揃った。明彦と伊織、結城と鳴上は体育館倉庫に向かってくれ。岳羽と私は一旦外に出る」

 

「分かった。順平、結城、鳴上行くぞ。打ち合わせの内容、忘れるなよ」

 

「了解っす」

 

「行こうか、優ちゃん」

 

「はい!」

 

そして、時刻は0時=影時間を迎える。

 

 

 

 

 

「……っと、やっぱり皆、別々なところに飛ばされちゃったみたいだね」

 

私が身体を起こすと周囲には誰もいなかった。通路も私がいる所で行き止まりになっていることから、私は前に進むしかない。私は装備を確認し、2つの属性攻撃スキルを持っていてなおかつ速さのあるフォルトゥナをセットする。

 

通信機を使い、桐条先輩と連絡を取ろうとしたがノイズがひどくコンタクトがとれない。

 

「仕方ないか、行こう」

 

私は歩み始める。出来るだけシャドウと当たらないように歩を進めていくと、時折桐条先輩とは違う儚げな声が響く。周囲を見渡しても誰もいない。

 

私は首を傾げながらも進む。途中、倒さなければ進めないシャドウもいて戦ったけれど、いつもは集団で戦うために気にしていなかったが、シャドウと戦うのは1人だと結構厳しい。

 

はやく、皆に合流しないといけないと思っていたら、声が聞こえてきた。

 

「あーうー……。なんでライオンさんばっかりが来るのー!!」

 

右の通路に曲がると行き止まりに追い込まれた優ちゃんの姿があった。

 

相手にしているシャドウは【リングフォート】という車輪にライオンの頭がついたシャドウで、斬属性と貫属性に耐性を持つ、云わば優ちゃんの天敵のシャドウであった。

 

私は召喚器をこめかみに当て、ペルソナを召喚する。

 

「フォルトゥナ!マハガル!!」

 

優ちゃんを取り囲んでいたシャドウの群れ全体に風が襲いかかる。風が吹き去った後に残ったシャドウたちは1匹残らず、ダウンしている。

 

「優ちゃん!」

 

「結城先輩!」

 

私たちは武器を持ち直し、体勢を崩したシャドウの群れに総攻撃を仕掛ける。なんとかシャドウを倒しきれた私たちは周囲を警戒しつつ、傷薬を飲んだりして回復した後、探索を進める。

 

「助かりました、結城先輩」

 

「どういたしまして。攻撃系の道具は全部使っちゃったんだね」

 

「何故か、ライオンさんばっかり来るので、ジオジェムとガルジェムはすぐになくなっちゃったんです」

 

「間に合ってよかった。ところで優ちゃんも聞いた?不思議な声は」

 

優ちゃんは私の顔を見ながらこくりと頷いた。桐条先輩との通信は相変わらず繋がらないのに、謎の女の子の声はしっかりと聞こえる。これってもしかすると。

 

「結城先輩、階段がありますよ」

 

「この階層には誰もいなかったし、上がろう。きっと順平たちもいるはず」

 

「はい!」

 

階段をのぼりきり、通路の向こうを見やると真田先輩と順平の2人の他に1人の少女がいた。水色のショートヘアーに、どこか儚げな雰囲気を携えている。

 

「先輩、もしかして」

 

「ああ、山岸風花だ。しかも、美鶴以上の力の持ち主かもしれん」

 

「この10日間、タルタロスにいたっていうのにシャドウと一回も遭遇していないんだってよ」

 

真田先輩と順平は興奮した感じで告げるが、山岸さん幾分か消耗しているように見える。それに気付いた優ちゃんは彼女の前に膝をついて労わる様に声をかけている。

 

「もうここにいる必要はない、戻るぞ」

 

そう真田先輩が話をたたんだ時、ノイズがひどくで繋がらなかった通信機から声が発せられた。

 

『明ひ……拙い、岳……ぐぅっ……』

 

「美鶴!?おい!返事をしろ!!」

 

「どうしたんスか!?」

 

「わからんが、急ぐぞ!!」

 

急いでターミナルを探した私たちは、見つけたターミナルをすぐに起動させエントランスに戻る。そこで見たのは、

 

「み、美鶴っ!?」

 

真田先輩の顔が青ざめる。巨大なシャドウ2体の姿、その片方の腕に囚われた桐条先輩は額から血を流し、気を失っているのかぐったりとしている。

 

ゆかりもまた弓を杖代わりにして立とうとしているが気を失っているのか眼の焦点が定まっていない。

 

私たちがどう動けばいいか迷ったその数瞬という短い時間だが、動いた者がいた。

 

「ウシワカマル!電光石火!」

 

優ちゃんは自分が召喚したペルソナとほぼ同時に攻撃を叩き込む。バランスを崩した大型シャドウの腕から桐条先輩が放りだされる。

 

床に直撃するというぎりぎりのタイミングで滑り込んだ真田先輩が桐条先輩を抱きとめる。

 

その前に2人を守る様にして武器を構える優ちゃん。

 

「無茶をしやがって。だが、助かったぞ、鳴上。美鶴は無事だ」

 

「よかった。けど、戦いはこれからですよ、真田先輩」

 

「心配するな、こっちには複数のペルソナを扱うリーダーと、攻撃力の高い順平がいるんだ。そうそうには負けないさ。そうだろう?」

 

「そうっスよ」

 

「準備オッケーです!」

 

私たちは桐条先輩とゆかりを守る様に布陣する。

 

その直後に、戦いの火ぶたが切って落とされるのだった。

 

 

 

 

 

「……気をつけ……ろ。そい……つらは……」

 

後ろで意識を朦朧とさせながらも桐条先輩が何かを伝えようとした言葉に気付く者はいなかった。

 

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