ペルソナ!って言いたいけど、資質ゼロなんです。   作:甲斐太郎

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P3Pin女番長 8月―④

8月4日(火)

 

昨日は酷い目にあった。

 

起きて朝ごはんを食べに行くと泣き喚く優ちゃんの姿があった。理由を尋ねると総司くんが出て行ったとのこと。確かに台所の机の上に置かれていたメモには『自分探しに行ってきます』という言葉が記されてあり、聞こえによっては家出とも取れなくはなかった。

 

結局、夕方には総司くんは帰って来たので大事にならずには済んだのだけれど。美鶴先輩と優ちゃんと2人を補佐するアイギスによる一日かけての尋問は辛かった。危うくコミュのことまで話しそうになっちゃったし、危ない危ない。

 

コミュといえば総司くんとの間に出来た『審判コミュ』だが、ここ2日でレベル2に達した。私としては彼の悩みを解決させる一助を担えたとはどうしても思えないのだけれど、レベルが上がっている以上、私の言葉が彼の役に立っていることには変わりない訳で。

 

「うーん……。やっぱり納得いかないなぁ……」

 

私は電車の中から流れ行く景色を見つつ、そんなことを口にするのだった。

 

 

 

 

 

「ようこそ……我がベルベットルームへ」

 

ポロニアンモールの辰巳東交番横にある路地裏からいけるベルベットルームに足を踏み入れた私に声を掛けてくるイゴールさん。彼の横に立つテオドアも私に向かって一礼する。

 

「ほう、また新たな絆を育まれた様子。……しかし、まさか『審判』とは」

 

イゴールさんは私の顔をじっと見て、意味深に何度も頷くとタロットカードを取り出し机に広げ並べる。そして、その中からカードを一枚だけ選び、絵柄が見える様にひっくり返すと、件の審判のカードが表向きになった。

 

「そのコミュニティによって育まれる“力”はいずれ貴女さまを“繋ぎとめる”役割を果たすことになるでしょう。……さて、本日のご用件は何ですかな?」

 

イゴールさんは机の上に並べていたタロットカードを全て消し去った。イゴールさんにしては歯切れの悪い話の切り方に違和感を覚えた私は尋ねる。

 

「何か問題でも?」

 

「いえ、この問題は私が助言する訳にはいきません。貴女様が築き、育み、立ちはだかる問題を共に解決する。それは今までも貴女様がやってきたことです。ただ、この審判というコミュニティが他の絆とは一線を画したものですから」

 

イゴールさんは私に告げていいものなのか悩むように目を閉じる。その姿に不安を覚えた私は思いきって尋ねてみる。

 

「具体的に言うとどういうことなんですか?」

 

「ふむ……テオドア」

 

イゴールさんは隣に立っているテオドアに視線を向ける。視線を投げかけられたテオドアは頷き、持っていたペルソナ全書から審判のカードを取り出し、全書を閉じて虚空に消しさると審判のカードを持って話し始めた。

 

「はっ。まことに申し訳にくいのですが、この審判というコミュニティは結城さまが今まで築いてきたコミュニティと違い制限がございます」

 

「あ、もしかしてペルソナのレベルが上がらないこと?」

 

「いえ、夜長月(よながつき)に入るまでに達しなければ、コミュニティが消滅するだけです」

 

「……へ?」

 

私が首を傾げると、テオドアは持っていた審判のカードを破り捨てて、ゆっくりと告げる。

 

「今回の審判のコミュニティは9月に入るまでに達しなければ消滅します」

 

「…………。えぇええ!?」

 

ベルベットルームに私の叫びが木霊する。私はテオドアに向けていた視線をイゴールさんに戻し、説明を要求する。コミュニティの消滅なんてただ事ではない。リバースでも、ブロークンでもなく、消滅なんてありえない。

 

「本来であれば、この審判のコミュニティは貴女様の意識の覚醒が周囲の者たちに伝わることによって築きあげるものなのです。個人との間に築かれるものではありません。しかも、コミュニティを築くことで貴女様の心に直接ペルソナが生まれることなど……」

 

どうやらイゴールさんたちにとって総司くんとの間に出来た審判コミュに関しては異常、イレギュラーであるらしい。彼らが分からない以上、私に出来るのは総司くんとのコミュが無くならない内にマックスにしなければならないということだ。

 

「今回に審判のコミュニティに関しては、私共がお手伝いすることは適いません。しかし、最初に申し上げました通り、このコミュニティを育めば貴女様を繋ぎとめる一助になることは確実にございます。どうか大切にコミュニティを育まれますように……」

 

イゴールさんはそれ以降、この話題に触れようとしなかった。

 

 

 

 

 

8月6日(木)

 

満月を明日に控えたこの日、私たち特別課外活動部はタルタロスに籠もって戦力の底上げをしていた。よくよく考えてみれば、屋久島から帰ってきて仲間関係がギスギスしていたのもあって、タルタロスの番人を倒せずに帰って以降、タルタロスに来ていなかった。

 

先月よりも強くなっていると思われる大型シャドウ相手に戦力に不安を抱え込んだままだと拙いと思い、強行策に至った訳なのだが今日はゆかりがすこぶる調子が良い。

 

「やった!またクリティカル♪」

 

彼女が放つ弓矢が敵シャドウの態勢を簡単に崩す。態勢の崩れたシャドウに優ちゃんとアイギスの物理特化型ペルソナ使いが襲いかかれば、消滅するのは当たり前の話。

 

美鶴先輩と真田先輩は背中合わせになって死角をなくし戦っている。順平も活躍はするけれど、なんというかキレがない。戦闘後、小休止することになったので私は順平に近づいて話しかける。

 

「順平、何か悩み事でもあるの?」

 

「ん、湊っちか。……いやさ、総司に偉そうにアドバイスしたけど、オレっちって将来何をすればいいんだろうって、柄にもなく悩んじまっている訳よ」

 

恐らく総司くんが書き置きを残して外出した日のことなんだろう。

 

順平も今はペルソナ使いとしてこうやって戦うことで気を紛らわせることが出来るのかもしれないけれど、もし全ての大型シャドウを倒し、シャドウや影時間を無くした後は……。っていうことなのかな。

 

「総司は努力して今の自分を作り上げたっていうのは知っているけれど、正直うらやましいんだよ。勉強もスポーツも家事も出来るって、すげーじゃん。それで性格までいいとか、神さまは不公平だよなー」

 

順平はそんなことを口にしながら、立ち上がると伝説風ソードを肩に担ぎ、真田先輩たちの近くへ歩いて行く。どうやら小休止をやめて先に進むようだ。私も春秋大刀を構えると皆がいるところに足を進める。

 

「湊、順平と何を話していたの?」

 

近くに行くとゆかりが話しかけて来た。私は順平の悩みは話さずに、将来は何になりたいのかをゆかりにも尋ねる。私は『お嫁さんだけど』って言ったら、呆れた様子で苦笑いされた。

 

解せぬ……。

 

 

 

 

特別課外活動部の仲間関係問題もゆかりと美鶴先輩のものだけを残しているだけになっていたこともあって、行き止まりがある所まで進める事が出来た。アイギスのオルギアモードは完全に切り札になり得る力で頼りになる。

 

「という訳で、作戦会議をしようと思います」

 

私たちはエントランスに戻り風花を交えて、明日の満月戦の打ち合わせをすることにした。

 

これまでの満月の大型シャドウの強さを考えると、今回も全員で挑んだ方が良いという判断に反対意見は出ず、配置と役割分担の話になる。

 

「優ちゃんとアイギス、順平は前衛というか攻撃役よね」

 

「明彦は相手を弱体化させつつ、遊撃といったところだろうな」

 

「湊さんは状況を見て行動する方がいいと思うであります」

 

特別課外活動部の面々で円を作る様に座り意見を言い合う。前回私たちが倒した大型シャドウのアルカナは『法王』と『恋愛』であった。後者は精神攻撃で私たちを操り、全員の心に深い傷を負わせた。ゆかりなんかは時折思い返しては地団駄することがあるくらいだ。

 

ただ順平と真田先輩は総司くん発案、風花作成、アイギス実行犯によるロシアン大福によって振り返りたくない掘って掘られての記憶を強制的に削除されている。

 

「今回の大型シャドウのアルカナは順番的に言うと『正義』『戦車』の2つが濃厚です。もしかしたら『隠者』も含めた3体になることも考えられますが、その可能性は低いでしょう」

 

風花の分析を聞き、私は自身が持っている正義と戦車のペルソナ能力を見てみる。どちらも物理攻撃が主体となりそうだ。となると回復系のアイテムの他に耐久性や相手の攻撃を跳ね返したりするアイテムがあると楽が出来るかもしれない。

 

「あれ、そういえば……」

 

私は総司くんとの間に出来たコミュニティによって得られたペルソナ。クジャタの能力を見てみる。

 

レベルは40でステータスは耐が群を抜いて一番高く、『斬・打・貫に耐性』があって、『光属性を無効化』、覚えているスキルは物理攻撃スキルと『恐怖無効』と『混乱無効』。

 

まるで、今回の大型シャドウとの戦いに使えと言わんばかりの能力だ。それに一番気になるのは『ボディバリア』というスキル。これは味方全員の攻撃を肩代わりできるというスキルだ。何かに役立てることが出来るかもしれない。覚えておこう。

 

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