ペルソナ!って言いたいけど、資質ゼロなんです。   作:甲斐太郎

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P3Pin女番長 チャリオッツ&ジャスティス戦―②

8月6日(木) 深夜

 

影時間が始まると同時に寮にて控えていたメンバーが続々と集まってくる。私は割と早めに来た方で、最後に作戦室に来たのはウォーミングアップしてきたのか、少し汗ばんだ状態の真田先輩であった。

 

美鶴先輩は全員が揃ったのを確認して風花に目配せした。彼女はすぐに召喚器を用いて自身のペルソナを呼び出すと巨大シャドウの居場所を探す。目を閉じて、自身のペルソナの力を自分の手足のように使って見せる彼女の動向を見ていると、何かを発見したような動きを見せた。

 

「山岸、……どうだ?」

 

「はい、確認できました。場所は巌戸台の北の外れにある、廃屋が並んでいる一帯です。ただ反応は十メートル以上の地下からで……」

 

風花が自身のペルソナであるルキアを用いて発見した大型シャドウの居場所を聞いて私たちは顔を見合わせる。順平は地下と聞いて、「もぐら?」と呟きを漏らし、その発言を聞いた美鶴先輩と優ちゃんが噴き出した。

 

「単に建物に地下があるってことじゃないの?」

 

「港湾部北側には、建築時に地下10メートルを申請している建物はありません。ですが、ずっと以前には陸軍が地下施設を置いていたという記録があります」

 

「陸軍?……そうなの?」

 

ゆかりが風花に難しく考える必要はないのではないかと投げかけると、話を聞く側に回っていたアイギスが言葉を発した。今日の満月に出てくると思われるアルカナを持つシャドウは戦車、正義、隠者である。アイギスの話が本当なら、戦車のアルカナを持つシャドウは相当にゴツイものが出てきそうだ。

 

「で、結局はどうなんだ山岸?」

 

「詳しいことは、実際に行ってみないことには何とも……」

 

風花はそう言ってしゅんぼりとしている。作戦会議にてあれだけ意気込んでいたのに、蓋を開けてみると本人も微妙と思うほどの貢献しか出来ないことに意気消沈している様子だ。美鶴先輩がそんな風花の肩に手を置いて話し始めると、作戦室にいたメンバーの視線が彼女に集まる。

 

「戦争の遺物か……。今回は状況が未透明なことが多い。現場での状況に合わせた戦い方が求められるだろう。皆、気を引き締めて行こう」

 

「「はい!」」

 

「了解だ」

 

「了解であります」

 

「みんな、頑張ろうね!」

 

 

 

 

巌戸台港湾部北、地下施設の入り口まで風花のナビゲートでやって来た。入り口は立ち並ぶ廃屋の影に巧妙に隠されていたが、風花のペルソナであるルキアとここのことをデータとして知っていたアイギスの前にしては無意味だった。

 

中は案の定薄暗かったが、懐中電灯が必要になるほど暗くはなかった。完全に地下施設の上、電灯は意味をなさないのに問題なく進めるほど明るいってどういうことなのだろうと首を傾げていると、地下数十メートルほどの地点に分厚い鋼鉄製の隔壁があった。それは私たちを招き入れる様に開かれていて無気味であったが、この先にシャドウの反応があるということで敷居をまたいで先に進もうとする。その直後だった。

 

「お見事です」

 

「え、誰!?私のルキアには、今の今まで何の反応も……!」

 

私たちが一斉に振り返ると隔壁の外に上半身裸の不気味な瞳を持つ男と、眼鏡をかけ緑色の服を着た男が立っていた。

 

「何者だ!この時間に動けるとは……」

 

美鶴先輩が問い質すが、上半身裸の不気味な男は私たち1人1人を観察するようにして見た後に「ククッ」と笑いをこぼした。その上で、誰にともなく口を開いた。

 

「お目にかかるのは初めてですね……。私の名はタカヤ。こちらはジン。ストレガと呼ぶものもいます」

 

タカヤと自分を称した男は笑みを浮かべている。ジンと呼ばれた男は面倒くさそうにしながらも、私たちの一挙一動を見逃さないと言わんばかりに警戒している。

 

「さて……今日までの皆さんのご活躍、陰ながら見せて頂きました。聞けば人々を守るための“善なる戦い”だとか。ですが、今夜はそれをやめて頂きに来ました」

 

「なんだと!?」

 

タカヤの言い分に噛みつく真田先輩。勿論、特別課外活動部のメンバーは最初、タカヤが何を言っているのか理解できなかった。私たちが大型シャドウを倒さなければ、シャドウに精神を食われる人が際限なしに増えることを意味している。そんなの認めるわけにはいかない。

 

「お仲間が随分と急に増えたようですね。きっと、ここが罪深い土地だからでしょう。タルタロスは今宵も美しくそびえたっている」

 

タカヤはまるでオペラでも歌っているかのように両手を大きく広げ、私たちが体験している影時間や、異形の証であるタルタロスを尊いものと言わんばかりにしている。だけど、そんな考え認めるわけにはいかない。

 

「どうして、私たちの邪魔を?」

 

「あんたたち……」

 

「それと、戦いをやめろってのと、何のカンケーがあんだよ?」

 

私やゆかり、順平の問いに答えたのはジンと呼ばれた男の方だった。

 

「簡単なこっちゃ。シャドウや影時間が消えたら、“この力”かて、消えるかも知れん。そんなん、許されへん」

 

「“この力”……?まさか……ペルソナ使いなのか!?」

 

美鶴先輩がジンの語った言葉から気になる部分を声に出し追求する。しかし、その問いに返事はなく代わりにタカヤが問うてきた。

 

「ふっ……貴女がたはもっと気付くべきです。この影時間に、充実を感じている事にね。貴女がたは影時間とタルタロスを消そうとして、満月の戦いに挑まれている。それは構いません。力の使い道は人ぞれぞれです。お好きにされればよろしい。ですが、ご自分の本心くらいは自覚なさるべきですよ」

 

「何だと……?」

 

「影時間はペルソナ使いだけに開かれた特別な時間です。誰にも出来る事ではない。望んで得たその特別な力を、思う存分に振るえる。……法も責任も何もない。この完全なる自由の時間を、楽しんでいませんでしたか?」

 

美鶴先輩は目を見開き、優ちゃんが拳をぎゅっと握りしめるのを見た。

 

「ふざけた事を!」

 

「寝言は寝て言いなさい!この変態!」

 

美鶴先輩は父親のために戦っているということを聞いているし、優ちゃんは影時間の適正を持たない総司くんを守ってきた。そこに楽しむ余地はあるはずがない。だが、私を含めた真田先輩や順平はどうだろうか。

 

「私たちは……!タルタロスと影時間を消すことに、命を賭けてきた!それを楽しむなどあるものか!」

 

「貴方たちには守るべき人がいないから、自分のことだけを考えていけるから、そんな無責任なことが言えるんだ!」

 

美鶴先輩と優ちゃんの言葉が悉く胸に突き刺さる。

 

守るべき人がいないのは私も同じ。いや、私にはコミュを築いた大切な友達や仲間がいる。だけど、それは影時間やタルタロスがあって私がペルソナ使いとして目覚めたから得る事が出来たもの。

 

そもそもシャドウがいなければ、私の家族が事故に合うこともなかった訳で……。あうう、堂々巡りだよ。これじゃあ、『卵が先か鶏が先か』と同じだ。答え何てでるはずがない。この世界には『もし』や『たられば』はないんだから。

 

「もうええでしょう」

 

私が1人で悩んでいる間に話は進んでいたようで、今まで黙っていたジンが口を開いた。

 

「そうですね。今日はこれで失礼しましょう」

 

その台詞を合図とする様に、鋼鉄製の隔壁が音を立てて動き始めた。姿を現わしてから一歩も動いていなかった2人は、敷居の向こう側にいるままなので、ここを閉じられると私たちは閉じ込められることになる。

 

「ほんなら頑張ってや。応援したるさかい」

 

「願わくば、これ以上の暴挙はしないでいただけるとありがたいのですがね」

 

「待て!」

 

「美鶴、落ちつけ!今はシャドウの方が先決だ!」

 

2人を追い掛けようとした美鶴先輩を真田先輩が引きとめる。それから数秒後、隔壁は完全に閉まってしまい、私たちはシャドウと同じ空間に閉じ込められてしまったのだった。

 

 

 

地下へと続く通路を私たちはシャドウを蹴散らしながら進んでいく。風花には念のために隔壁のある部屋に残ってもらい、私たちは逸る気持ちを押さえて先へ先へと向かう。

 

その途中、乾燥しきった白骨死体を見て悲鳴を上げるゆかりと優ちゃん。居た堪れない表情を浮かべ、白骨死体に黙とうをささげる真田先輩と美鶴先輩といった姿を見つつ、奥へと進み、私たちはとうとうお目当ての大型シャドウとはち合わせたのだった。

 

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