ペルソナ!って言いたいけど、資質ゼロなんです。   作:甲斐太郎

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視点が湊⇒順平⇒湊に変わります。


P3Pin女番長 巌戸台学生分寮⇒『黄泉転生坂』-⑤

玉座の間を模した空間に現れた4体の異形のシャドウ。

 

深紅の鳥の姿をしたシャドウと身体の左半分が機械となったシャドウが宙に佇みながら私たちに対して、炎系のスキルや手に持った光線銃を使って状態異常系のスキルを放ってくる。

 

その攻撃を掻い潜るとそれぞれを肩車で支える女たちを椅子のように扱う黄色のボンテージをまとったシャドウが鞭を撓らせ攻撃してくる。

 

空中にいる2体のシャドウと地面にいる1体のシャドウの攻撃は驚くほど緻密に連携しており、私たちは中々攻勢に移れないでいた。

 

「それもこれも、あの踊り子っぽいシャドウが指示している所為だよね!」

 

『どうやらその場にいる皆さんを逐一解析して、攻撃や回避行動を予測した上で指示しているようです。一筋縄ではいきません』

 

私の言葉に答える形で風花からの意見が返ってきた。3体のシャドウの連携を打ち崩すには、やはり踊り子のシャドウをどうにかする必要があるが、攻撃するには空中から攻撃してくるシャドウ2体と鞭を扱うボンテージのシャドウをどうにかする他に方法が無い。

 

「おい、シンジ。あの黄色い奴の鞭を掴み取った方が勝ちってのはどうだ?」

 

「一体、何を言っていやがる。鞭の先端部分は音速を超える。掴める訳がねーだろ、阿呆」

 

「そうか、ならこの勝負は俺の不戦勝ってことだな?」

 

「なんだと!?」

 

「臆病者はそこで指を咥えて見ていろ!」

 

そう言った真田先輩は両手を顔の高さまで上げると、炎と状態異常系のスキルが雨霰のように降る戦場へと駆け出す。ニット帽を深く被り直した荒垣さんもまた召喚器を片手に真田先輩の後を追った。

 

『キャハハ、ダサ、目がマジじゃん!けど……甘っちょろいわ』

 

真田先輩の行動に合わせ迎撃してくるかと思われたボンテージをまとったシャドウは、彼に対して何もせずに後ろに通し、後から追ってきた荒垣さんを攻撃した。来ると思われた攻撃が来ずに唖然とする真田先輩の前に、踊り子のシャドウが思い切り振りかぶって頂点まで達した拳を勢いよく振り下ろしてきていた。

 

『これで一匹目っ!!』

 

この戦闘が始まって以降、まったく喋っていなかった踊り子のシャドウの喜悦に満ちた笑い声が響き渡った。

 

「っ!?」

 

咄嗟にガードしようとする真田先輩であったが、腕を交差して構える前に踊り子のシャドウの拳が直撃、

 

「ペルソナチェンジ、ヨシツネ!ジオダイン!!」

 

する直前に彼に極大の雷が落ちた。その余波を受けて踊り子のシャドウが座り込む。意識外かつ極大の雷をその身に受けた真田先輩はペルソナの能力で耐性があるにも関らずその場でうつ伏せに倒れピクピクと痙攣している。

 

見れば優ちゃんがウシワカマルから進化したヨシツネと呼ばれるペルソナを召喚させていた。彼女を嗜めようと口を開きかけた直後、大きな衝突音が聞こえ、玉座の間の中央に深紅の鳥のシャドウと身体の左半分が機械化されたシャドウが一緒に落ちてきて、ボンテージ姿のシャドウを押しつぶした。

 

「踊り子のシャドウがダウンして、統制が取れなくなったようだな。各自、狙え!」

 

真田先輩の惨状を見て見ない振りした美鶴先輩の的確な指示が飛ぶ。まるで産まれたての小鹿のように足をプルプルさせつつ立ち上がる真田先輩と悪びれもせずに武器である刀を振り上げた優ちゃんは踊り子のシャドウに襲い掛かった。

 

他のメンバーも折り重なって身動きできない3体のシャドウを攻撃している。私はその攻撃には参加せず、玉座の間の一番高いところでふんぞり返っている男へと肉薄し、武器である方天画戟を振り下ろした。

 

直後、高い金属音が鳴り響く。私が両手かつ全力で振り下ろした一撃を、右手一本だけで握っている刀で受け止めた灰色の髪を持つ学ランの男は嫌悪感が沸き立つような笑みを浮かべた。

 

『ククク……、憐れに弄ばれるだけの姿。まるで玩具だな』

 

「意味解らないんだけどっ!」

 

私はその場から離れると同時に召喚器である銃をこめかみにつけ、即座に引き金を引いた。現れたのは先ほど力を借りたばかりのフレースヴェルグ。

 

「切り裂け、ガルダイン!」

 

『無駄だ。サラスヴァティ!』

 

フレースヴェルグの疾風属性攻撃が発動する間際、学ラン姿の男が声高々に叫ぶと同時に攻撃が無効化される。学ラン姿の男の背後には緑色の衣も身に纏い琵琶に似た弦楽器を持つ女神のような姿のペルソナが浮かんでいた。

 

「ちょっと待って!サラスヴァティって、疾風属性は普通に効くはずでしょ!?」

 

『お前が知る必要はない』

 

そう言うと学ラン姿の男は立ち上がって、左手でクイッと眼鏡を掛けなおす。そして、ペルソナを召喚しなおした。

 

『ククク……貧弱なお前がリーダーだと?笑止千万だなぁ!!来い、マガツイザナギ』

 

現れたのは優ちゃんに見せてもらったペルソナの中にいたイザナギだった。しかし、目の前の男が召喚したイザナギは血に塗れたような色をしていて気味が悪い姿をいている。

 

『そこで這いつくばっていればいい!お前には何も守ることは出来ない。大事な両親も、大切な仲間も、好きな男の命もなぁ!』

 

「好き勝手言うなっ!来て、ネメアー!!」

 

私がフレースヴェルグから召喚しなおしたのは、今夜のハーミット戦で大活躍であった筋肉隆々の雄ライオンの姿をしたネメアーだ。学ラン姿の男の武器が刀で、召喚されたペルソナがイザナギに似た何かということで、ネメアー以外に最適なペルソナが浮かび上がらなかったっていうのもあるけれど、今の私が安心して召喚できるペルソナでもあった。

 

『ははははっ!全部、全部壊してやるよ!!』

 

「お前の好き勝手にさせると思わないでよ!私は総司くんを助けてみせるんだからっ!!」

 

学ラン姿の男が召喚したマガツイザナギが振るった刃と私が召喚したネメアーの爪がぶつかりあったのはその直後であった。

 

□□□

 

湊っちが玉座に座っていた学ランの男に斬りかかる姿を視界に収めつつ、俺はゆかりっちたちと一緒に大型シャドウと対峙している。優ちゃんの攻撃スキルに驚いて尻餅をついていた踊り子のシャドウも体勢を立て直してはいるものの、先ほどまでのように脅威とはもう思えない。

 

何せ、優ちゃんが戦場となっている玉座の間をすばしっこく移動しており、踊り子シャドウもそんな彼女の姿を追わないといけないため、先ほどまでのように完璧な指示を他の大型シャドウたちに出せていない。つまり、緻密な連携をして圧倒的に俺たちを追い込んでいたシャドウたちの姿はもうなく、微妙に隙のある連携攻撃をしてくるようになったのだ。

 

「とは言ってもきっついことには変わりねーけどなっ!」

 

黄色のボンテージを着たシャドウが繰り出してきた鞭の攻撃をリンボーダンスの要領で避ける。隣にいたチドリは武器である斧を前にしてガードしようとしたが、シャドウの攻撃力が彼女の予想を遥かに超えていたのかどこかに弾き飛ばされてしまった。

 

「チドリっ!」

 

俺っちが弾き飛ばされたチドリの姿を追って振り返ると、彼女はアイギスに抱きかかえられていた。壁に叩きつけられる直前で、アイギスが今まで抱えていたものを放り出してチドリを助けてくれたらしい。

 

「アイちゃん、ナイス!」

 

俺がアイギスに感謝と労いを兼ねて声を掛ける、丁度その横を小さい影が駆け抜けた。急いで振り返ると、この玉座の間に入ってすぐに湊っちの指示を受けたアイギスによって強制的に視界を閉ざされていた天田少年が、彼が慕う少年お手製の銃を構えて引き金に指をかけていた。

 

「コロマル、僕に合わせて!」

 

そう言った天田少年は火属性以外の弾丸を黄色のボンテージを着たシャドウに向かって放った。態となのかどうか分からなかったが、シャドウは天田少年とコロマルの攻撃を避けもしなかった。コロマルのスキルを受けた時に少しその身を仰け反らせたが、天田少年が放った攻撃の脆弱さに高笑いし始める。

 

『ワンちゃんのはそれなりに痛かったけれど、あなたのソレは攻撃のつもりなのぉ~?それなら、わらっちゃうわねぇ!』

 

「当然です、これにそれほどの攻撃力はありません。けど、お前の本当の弱点が風属性だっていうのは分かった!」

 

天田少年の分析を聞き、黄色のボンテージを着たシャドウの挙動がピタッと止まる。天田少年は銃のシリンダーを手で回しながら説明を続ける。

 

「僕の身体は皆さんより小さいのは仕方のないことです。ペルソナ能力である程度は上がるとはいえ、総合的な攻撃力はどうしたって低くなってしまう。なら、僕は相手の体勢を崩させることに特化させればいい。そうアドバイスを受けたんですよ」

 

自信を以って宣言した天田少年の姿を見て、黄色のボンテージを着たシャドウは忌々しそうに俺たちを睨み付ける。中々言うようになったなと俺は天田少年を褒めようと声を掛けようとしたのだが、彼は俯いて小声で何かを漏らす。

 

「……って、あれ?僕は誰からそう言われたんでしたっけ……」

 

天田少年は困惑しながら武器である銃を眺めつつ、そう呟いた。

 

「おいおい、天田少年。冗談、キツイぜ。そんな助言をするのは。……総司だろ」

 

俺は、自分自身を疑う。一瞬だけであったが、俺にとって出来の良すぎる弟分である総司の名前が出てこずに焦ってしまった。天田少年は総司の名前を聞いて、何とか思い出せたような仕草を見せたが、時間を掛ければ掛けるほど状況がやばくなるっていうのを理解しちまった。このままじゃ、いずれ俺も総司のことを忘れてしまう。

 

「ゆかりっち、こいつは弱点が風スキルだ!メンバーチェンジしてくれ!!天田少年、次はあの赤い奴だ」

 

「わ、わかりました!」

 

俺は天田少年を先に行かせる。そして、ゆかりっちがこっちに移動してきたのを見計らって、利き手で刀の柄をぎゅっと握り締め、空いた左手で帽子のつばを弾く。

 

「てめえらみたいな中ボスに時間は掛けられねぇ。さっさとぶっ飛ばして先に行かせてもらうぜ!!」

 

俺は両手で刀を構えるとゆかりっちの制止の声を振り切ってシャドウに向かって駆けるのだった。

 

 

□□□

 

 

剣戟を結ぶ私たちの後方から断末魔が上がった。その声を聞いて、私の前で余裕の表情を崩さなかった学ラン姿の男が初めて顔を顰め、武器に篭められていた力が弱まる。私はそれを見逃さず、武器ごと男のシャドウを弾き飛ばした。

 

「目論見が外れたみたいね」

 

味方のシャドウが倒されて動揺したかと思ったが、それほどでもなかったようで男のシャドウは宙でくるりと一回転し着地した。そして、玉座の間で奮闘を続けるシャドウたちと特別課外活動部の面々を一瞥した後、どうでも良いと言わんばかりに私に向かって獰猛な笑みを向けてくる。

 

『はっ、この“程度”で俺の優位は揺るがん!来い、カグヤ!!』

 

「減らず口を!」

 

学ラン姿の男は再度ペルソナを召喚する。学ラン姿の男の背後に現れたペルソナは昆虫の蝶の触覚のような髪を生やした女性型だった。着ている着物っぽいものは蝶の羽を模していて鮮やかな印象を受けるけれど、私が知らないペルソナであることには変わりない。

 

相手は私のペルソナを周知しているのに、こちらは何も情報がないなんて不利すぎる。けれど、希望はある。総司くんとのコミュによって手に入れた審判のアルカナを持つペルソナたちならば、相手の意表をつけるはず!

 

「クジャタ、ネメアー、フレースヴェルグは一度見せてしまっている。それならば、来て!ゼルエル」

 

召喚器である銃の引き金を引くと、私の背後に新たなペルソナが浮かび上がる。名前はゼルエル。キリストの伝承に出てくる天使の1人。別名でゼルクと呼ばれ、『神の腕』という意味があり、力・戦を司っている。

 

まぁ、私が召喚したゼルエルは間違っても天使には見えないけれど。私はちらりと背後に浮遊する形で顕現することになったゼルエルを見る。ずんぐりとした体躯、折り畳んだ帯状の腕部、身体の中心には赤い核のようなものがある。

 

『なんなんだっ、そのペルソナはぁああ!?』

 

私と対峙して、仲間のシャドウが倒されても獰猛な笑みを絶やさなかった学ラン姿の男が驚愕の声を上げ蹈鞴踏んだ。その気持ちは分からないでもない。

 

なにせ今回、私が召喚したゼルエルはタナトス同様に質量を持ったペルソナである。ゼルエルから放たれるプレッシャーは相当なものなのだろうと狼狽する学ラン姿の男の様子を見ていて思った。

 

『どんなペルソナか知らないが、カグヤ!燃やし尽くせっ!!』

 

学ラン姿の男がペルソナに命令すると、カグヤと呼ばれたペルソナの目が赤く光り、蝶の羽を燃した着物を翻す。すると私の視界が真っ赤に染まった。だが、その赤が私の身を焼くことはなかった。

 

ゼルエルが私と学ラン姿の男の間に出した障壁は、焔をまったく通さない。それどころか、学ラン姿の男が命じてカグヤと呼ばれるペルソナが撃ちだすあらゆる攻撃を無力化してしまった。

 

挙句、学ラン姿の男自身が突っ込んできて、ゼルエルの強さに唖然としていた私に対して攻撃してきたが、それも障壁で受け止めてしまったのだ。

 

『こんな馬鹿なことが、あってたまるかぁああああ!!』

 

学ラン姿の男はゼルエルの出した障壁を破ろうと力を更に篭める。するとゼルエルの出した障壁にピシリと亀裂が入った。それを見て、にやりと口角を吊り上げた学ラン姿の男の両肩に幅広の刃のようなものが突き刺さった。

 

「へ?」

 

『は?』

 

同じタイミングで呆けた声を上げる私と学ラン姿の男。幅広の刃のようなものの正体は、ゼルエルの腕部であった。その腕部も一瞬の内に元の折り畳まれた状態へと戻り、残ったのは両腕を切断され呆然とする学ラン姿の男のみ。

 

その学ラン姿の男の首もまたゼルエルの腕部の攻撃によって、刎ね飛ばされた。

 

頭部と腕部を失った学ラン姿の男だったものは、黒いタールのような泥となり気泡をあげつつ消滅していく。呆然としながら私は、召喚したゼルエルを見上げる。するとゼルエルもまた役目は終わったといわんばかりに消えていったのだが、その直後、強い立ち眩みがしてその場に蹲ることになってしまった。

 

よく分からないけれど、体力をごっそり奪われた気分だ。ゼルエルは技らしい技を使用していなかったけれど、召喚した時点で体力を奪われることは確定していたのかもしれない。

 

体力を奪われすぎて眩暈と吐き気がすごいことになっているけれど、こうやって立ち止まっている時間がもったいない。

 

「今はとりあえず、他のシャドウを倒すことに集中しよう」

 

私がそうやって顔を上げると真田先輩と荒垣さんが残っていた踊り子のシャドウに止めを刺すところであった。

 

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