妹紅と子供たちのやりとりをお楽しみください。
此処は迷いの竹林 竹が生い茂る幻想郷の竹林である。
深い霧が立ち込め、竹の早い成長により日々変化して目印がなく、方向感覚も狂うため、非常に迷いやすい。
そんな中、いつものように藤原妹紅は迷ってしまった人間を永遠亭に案内する仕事をしていた。
「ありがとうございます。これで薬を貰いに行けます」
「いえいえ、また迷うことがあったらいつでも頼ってください」
そう告げると妹紅は竹林へ戻って行った。
「おかえり~。夕飯出来てるぞ」
戻るとそこには慧音の姿があった。
「ああ、ただいま」
そう言うと慧音の横に座る。
「それじゃいただきまーす」
「…いただきます」
夕飯を食べながら慧音はこんなことを切り出す
「なぁ妹紅」
「ん~?」
「人間の里に来てみないか?」
「ブッ!」
黙々と夕飯を食べていた妹紅が吹き出しかける
「ゴホゴホ…なんで私が?」
「私が寺子屋の先生をやってるのは知ってるだろう?良かったら見学に来てみないか?」
「…嫌だ」
即答で返した妹紅に対して慧音がむっとした表情をする。
「少しぐらい悩んでくれてもいいだろう」
「うーん、とゆうかいきなりどうしたんだ?」
「お前人間の道案内をしてるだろう?もっと人間と親しくなりたくはないか?」
「まぁ親しくはなりたいと思うが…」
そう言うと慧音は目をキラキラさせる。
「そうだろうそうだろう!じゃぁ明日寺子屋に来てくれ!それじゃ私はそろそろ帰るな、おやすみ!
「あ、おいちょっと待て…」
妹紅が言いかける前に慧音は
「約束だぞ~」
と言い残して去って行った。
「毎回急すぎるんだよなぁ…まぁいいか
妹紅は頭をガシガシ掻くとそのまま眠りについてった。
次の日
(人間の里に来たはいいけれど、寺子屋ってどこにあるんだ?)
そう思いながら里を歩いていると、子供たちの陽気な声が聞こえる建物がある。
「ん?もしかしてここか?」
建物の窓を覗いてみる。そこには子供たちに勉強を教えている慧音の姿があった。
(本当に先生みたいだな)
窓をずっと覗いていると、慧音がこちらに気付いたのか近寄ってきた。
「おお妹紅、来てくれたのか」
「まぁ、約束だしな」
「丁度よかった。今子供たちに勉強を教えてるんだが見学していってみないか
「え~子供かぁ…」
「いいからいいから!」
半ば強制的に手を引っ張って教室に連れて行かれる妹紅。
子供達の目線が一気に妹紅に集まる。
「せんせ~、そのひとだれ~?」
「この人は先生の親友だ。ほら自己紹介自己紹介」
妹紅は若干緊張しながら自己紹介をする。
「もこうだ。よろしくな
「もこー?もこもこー?」
その名前を聞いた子供達は一斉に名前を繰り返す。一部間違っているが。
妹紅はどうしたらいいか分からない表情を浮かべていた。それを見た慧音はニヤリとした。
「もこう先生はとっても頭がいいんだ。分からないことがあったらなんでもどんどん聞くんだぞ~!じゃぁ先生はちょっと出てくるからあとは頼んだぞ、もこう先生」
「おい待て聞いてないぞ!」
そんなことはお構いなく慧音は笑顔で出て行った。
(これはまずい…。慧音のやつ、謀ったな…)
そう思ったのもつかの間、子供達が一斉に押し寄せてくる。
「もこ~、ここ解んない!もこ~ここ教えて~!もこ~!もこ~!
わらわらと集まってくる子供達の質問攻めに妹紅はたじろぐ。
「あ~わかったから、頼むから一人ずつな…こら、髪を引っ張るな!」
覚悟を決めた妹紅は子供達に囲まれながら一人ずつ勉強を教えた。
その姿を慧音は教室の廊下で壁にもたれながら微笑ましく聞いていた。
(そろそろいいかな…)
必死に勉強を教えている妹紅の背後に近付いてそっと覗く。
(ほうほう、ちゃんと教えられてるみたいだな)
慧音は妹紅の肩をぽんぽんと叩く。それに気付いた妹紅は憤りを通り越して
疲れ果てた表情を見せる。
「みんな~もこう先生の授業はどうだったかな」
すると一人の少年が
「とってもわかりやすかった!今日出た宿題全部教えてもらっちゃった!」
その途端ピシ…と空気が固まる。
「宿題は教えてもらうんじゃなくて自分でするもんだよなぁ…?」
ニコニコとした表情で慧音は近づいて行く。そしてその子供の正面まで行くと頭をガッと押さえる。次の瞬間
「ゴチィン!」
静寂な教室に広まる轟音。子供達はみんな唖然としていた。見ているも紅妹も、小さな子供にここまでするのかと衝撃を受けた。強烈な頭突きを受けた少年は気を失ってしまっていた…。
時も夕暮れ、寺子屋の時間も終わり、慧音は妹紅を竹林まで送るのに里を一緒に歩いていた。
「どうだった、子供たちに勉強を教えてみて」
「あのな、まずそうゆうことをするなら先に行ってくれ」
「まぁいいじゃないか、こうして子供達と触れ合うことも出来たんだから。楽しかっただろう?」
「まぁ悪くはなかったかもな」
妹紅は少し照れる表情を隠せなかった。
「慧音先生こんばんは~」
通りすがりの中年の男性が慧音に挨拶を交わした。
するとまた
「あら、慧音先生こんばんは」
慧音からしたら日常茶飯事らしく笑顔で
「どうもこんばんは~」
と返していた。
「お前、本当に人間の里で好かれているんだな」
そのやりとりを見ていた妹紅が言う。
「そんなことないぞ、挨拶は人として当然のマナーだからな」
(こいつは本当に人間が好きなんだな)
妹紅はしみじみと思った。
「じゃぁこの辺でな」
「ああ、また興味があったら人間の里へ来て見るといい」
「考えておくよ」
そう言い残し妹紅は夜の竹林へ向かっていった。
「ああ~今日は疲れたな。」
慣れてない子供たちに勉強を教える。それがこんなに大変だったことを気付かされた。
でも不思議と悪い気持じゃない。いつもは仕事として軽く人間と関わってきたが、深く人と付き合うということはそれはそれで楽しいのかもしれない。
そんな事を考えながら妹紅は眠りについた。
「誰かぁ、誰かぁ~!」
その叫び声で妹紅は目が覚めた。
どうやら小さな女の子が竹林で迷ってしまっているらしい。
「おいおい、どうしたんだい」
「永遠亭にお母さんの薬を貰いに行こうとしてたんだけど、迷っちゃったの…」
泣きじゃぐりながらその子は言った。
「よしよし、私が連れて行ってあげるから安心しな」
「ほんと?
「ああ、もちろんだ。私はいつもここで永遠亭までの道案内をしてるんだ
少女はパッと笑顔になると
「じゃぁ肩車して案内して!」
その言葉に妹紅は少し躊躇う
「だめ?」
「も、もちろんいいいぞ!ほら、落ちないようにしっかり掴まれ」
「わ~。たか~い」
「そうかそうか、危ないからあんまり暴れるなよ」
ゆっくり、ゆっくりと妹紅と少女は肩車をしながら永遠亭に向かった。
そうしてるうちにだんだんと永遠亭が見えてきた。
「あら?」
「迷い子を連れてきた」
そこには幻想郷の医師、八意永琳の姿があった。
「あらいらっしゃい。今日はどうしたの?」
「お母さんの薬もらいにきたの!」
「そう、それじゃ中へ入りましょうか。それと妹紅、毎度道案内ありがとうね」
「まぁそれが私の仕事だしな」
「貴女らしい返答ね」
フフっと笑うと少女と永琳は永遠亭の中へ入って行こうとした。その時
「おねーちゃん、ありがとう!」
バイバイと手を振る女の子に対して妹紅も手を振った。
竹林へ戻った妹紅は仰向けにゴロリと寝転びながら想いにふけっていた。
(人間と関わるのも楽しいもんだな…)
寺子屋のこと、さっきの少女のこと、色々あったけど楽しかった。その気持ちに迷いはなかった。
それから数カ月後、いつものように変わらず竹林に迷い込んだ人間の道案内をする妹紅。
ただ少し変わったのは、人と接する時に時折見せる笑顔が見れるようになったことだった。