魔法科高校の加速者【凍結】   作:稀代の凡人

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第26話

その日の放課後。

俺は真由美さんに校内を案内してもらっていた。

 

いや、さっき散策したんですけどね?

あのめっちゃキラキラした目で見つめながら言われたら断れるわけがないでしょう。

学内デートでもしたかったのだろうか。

 

さっきは警備面のみに注意を払って軽く見て回っただけだし、軽く部活動とかの紹介もしてくれるらしいから良いのだが。

 

それに、まあ俺もやってみたい気持ちもあるし、な。

 

「……やくん?和也くん!」

 

「は、はい!何ですか?」

 

っと、どうやらぼーっとしていたらしい。

真由美さんに名前を呼ばれて初めて気づいたが。

 

「ちゃんと聞いてた?」

 

「もちろんですよ」

 

「じゃあ今なんて言った?」

 

「……ちゃんと聞いてた?」

 

「ほら、聞いてないじゃない」

 

呆れたのかジト目で見てくる真由美さん。

本当に申し訳ない。

 

「すいません、もう一度お願いします」

 

「……もう、ちゃんと聞いててよね」

 

一つ溜息を吐いて再び説明を始める真由美さん。

 

俺は今度こそ聞き逃して機嫌を損ねまいと、しっかりと耳を傾けるのだった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

そして俺たちの足が校門の近くに差し掛かった時だった。

何やら人垣が出来ており、その中で騒ぎが起きているみたいだ。

 

「何かあったんでしょうか」

 

「うーん、怪我人がいるみたいな感じはしないけど……ちょっと見てみるわ」

 

そう言って[マルチ・スコープ]を使って騒ぎの中心を見る真由美さん。

 

「……なんだ?この騒ぎは」

 

と、そこに渡辺先輩も通り掛かる。

 

「さぁ。今真由美さんが見ていますけど……」

 

「そうか。ったく、初日から騒ぎを起こすとは一体どういう教育を受けてきたんだか」

 

「あはは……」

 

歯に衣着せぬその物言いに思わず乾いた笑いが出る。

 

と、真由美さんが状況を把握したらしい。

 

「……どうやら、一科生と二科生で対立が起きているみたいね。今はまだ口論で済んでるから大丈夫だと思うけど……」

 

「そうか。だがまあ、暴力沙汰になるようだったら出ていかなきゃならんだろうな……」

 

こうした小競り合い、というか争いは一年生の初期には良くあるらしい。

 

だが、部活動時や授業中はともかくそれ以外では学校内でCADを所持しているのは生徒会と風紀委員だけだ。

CAD無しでは大した騒ぎにもならないため安心しているようだった。

 

しかし、二人とも一つ大事なことを忘れている。

俺もついさっき何があったか思い出したばかりなのだが。

 

「その生徒たちは、恐らくこれから帰るところですよね?」

 

「ん?そうだろうが、それが何か……そうか!」

 

「ええ。帰る前には預けていたCADを返却されます。ということは今彼らはCADを持っている、という訳ですね」

 

「ちっ、初日から面倒なことを……!」

 

手遅れになる前に慌てて人混みをかき分け前に進む渡辺先輩。

 

「わたしも行ってくるわ。和也くんは……」

 

「先に戻ってますから、行ってください。俺が口を突っ込んでも場が荒れるだけです」

 

「……分かったわ」

 

入学式の時のスピーチであんなことを言った俺が一科生と二科生が対立している場に口を挟んでも、余計にややこしくなって騒ぎが収まらなくなるだけだ。

 

別に行って森崎とお話をしてもいいのだが、それではこの騒ぎを穏便に済まそうとする兄さんの思惑に反する。

ならばここは黙っていよう。

 

俺は一足先に生徒会室に戻った。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

その後、真由美さんも渡辺先輩も生徒会室に戻ってきていた。

 

「やれやれ、何事も無くて良かったが……危なかったな。ありがとう、和也くん。君が言ってくれなければ手遅れになるところだったよ」

 

「間に合って何よりです」

 

その後、しばらく談笑をしていると。

 

――ピーッ。

 

ドアが開き、入ってきたのは服部先輩だった。

 

「遅くなりました、会長……四葉和也。なぜこんなところにいる。貴様は生徒会とは無関係の部外者だろう」

 

少し殺気のこもった視線で睨み付けてくる。

 

が、

 

「わたしが良いって言ったのよ」

 

「それに、その理由ならば私も生徒会とは無関係ということになるな。それともなんだ、私も追い出してみるか?」

 

「そ、それは……」

 

真由美さんの擁護と、俺と同じように人の苦労を見ながらゆっくりしていた渡辺先輩の言葉にたじろいでしまう。

 

結局、一瞬俺に人を殺せそうな視線を向けて自分の仕事を始めた。

 

それを見た真由美さんと渡辺先輩が困ったものだと視線を交わす。

 

「……お前、新入生に限らず2年や3年の一科生の奴らにも憎まれるぞ?」

 

「元より承知の上です。それに、憎んだからって俺をどうこうできるような人がいたらこちらから雇い入れますよ」

 

たとえ転んだとしても決してただでは起きてやらない。

 

そんな言葉にふと疑問が浮かんだのか、渡辺先輩があることを尋ねる。

 

「お前、そういえばどれぐらい強いんだ?3年の一科生には私や真由美に匹敵する実力者も何人かいるぞ?そして、お前の意見を気に入らないというやつもな」

 

暗に襲われたらどうするんだという渡辺先輩の言葉に反応したのは真由美さんだった。

 

「大丈夫よ。和也くんはわたしよりも強いから」

 

「お前より、だと!?」

 

その言葉に絶句する渡辺先輩。

周りの面々も思わず手を止めている。

 

俺だって十師族なのだから、それぐらい不思議ではないだろうに。

 

「……それは、近距離の時の話だろう?それでこいつが近接に強いとか」

 

「多分どの距離でも勝てないわよ。勝てるなら知覚範囲外からの不意打ちかしら。正面からなら絶対無理ね」

 

第一高校で三巨頭と謳われる、3人。

 

その一角である七草真由美をして絶対に勝てないと言わしめるその強さに、同じくその一角であり生徒を取り締まる風紀委員会の長である渡辺摩利は興味を持った、らしい。

 

「ならば私も一度手合わせ願いたいな。だが、私がやる訳にもいかんか……」

 

仮に渡辺先輩が俺に負けるとする。

そして、この学校で生徒会長と部活連会頭以外に敵のいなかった風紀委員長が誰かに負けたと噂が流れるとする。

 

そうなると、今まで抑止力となっていた渡辺先輩の名が役に立たなくなる。

結果として、この学校の風紀が荒れることとなるのだ。

 

情報が外に漏れる確率はかなり低いが、それでも一組織の長として避けられるリスクは犯さないほうが良いのだろう。

 

しかし、風紀委員長として俺の力は少しでも把握しておきたい。

いざ俺が暴れたという時に、どの程度の戦力をもってすれば俺を止められるのか。

そんなお門違いなことを考えているのだろう。

 

俺なんぞ、真由美さんが一言声を掛けるだけで止まるというのに。

 

とはいえ渡辺先輩の考えも理解出来ないわけではない。

 

こちらとしては受けてもいいのだが、相手がな……と考えていると、意外な人が名乗り出た。

 

「渡辺先輩。その役目、俺に任せてもらえませんか」

 

「む、服部か。私は別に構わんが……」

 

服部先輩も対人戦闘のスペシャリストである渡辺先輩にこそ一歩劣るが、校内ではトップクラスの一人である。

 

実力を試すという意味ではその役目を十全に果たせる、そう思ったのだろう。

 

渡辺先輩に視線を向けられた真由美さんも頷いて了承し、ここに俺VS服部先輩という対決が生まれることになった。

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