魔法科高校の加速者【凍結】   作:稀代の凡人

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第3話

「久しぶりね、和也さん」

 

「お久しぶりです、叔母上」

 

次の日、俺は四葉家現当主である四葉真夜に会いに四葉家本邸に来ていた。

 

「それで、用件は?わざわざ直接会いに来たのだから、それなりの用事があるのでしょう?」

 

俺たちは普段は少し離れた別邸に住んでいる。

電話しても良かったのだが、万が一を考えて直接会うことにしたのだ。

あまり外に漏らしたい情報ではないからな。

 

それに、兄さんや姉さんと違って俺は叔母上に特に思うところはないのだ。

それも大きいかもしれない。

 

葉山さんが入れていったお茶を飲みながら少し歓談した後、俺は本題を切り出す。

 

「本日は、相談に参りました。果たして、四葉家の次期当主候補は戦略級魔法師でも良いのかを」

 

それを聞いて、いつもどこか余裕のある叔母上の顔が真剣になる。

 

「……それは、達也さんのことではないわね?では、貴方が……ああ、まぁ可能でしょうね」

 

「ええ、俺の魔法を使えば。叔母上の[夜]の様に一つ切り札があれば良いなと思ったのですが、考えてみれば戦略級魔法も可能です。ただ、四葉一つがあまり強くなりすぎると、他家からの干渉も強くなるかと思いまして」

 

「そうね。ただでさえ七草や九島が鬱陶しいもの」

 

「はい。ですので、どうしようかと」

 

「そうねぇ……」

 

叔母上は思案顔になる。

そして、何か思いついたのか悪戯っぽく笑う。

何か、凄く嫌な予感がする。

過去の経験から、あの顔をした時は、大抵俺にとってよろしくないことを思いついた時だ。

それでいて合理的で納得してしまい、断れないから悪質なのだ。

 

案の定、その口から出てきたのは驚きの言葉だった。

 

「貴方、七草の長女と婚約なさい」

 

「……は?いや、しかし」

 

ここまで前世から彼女いない歴約30年を貫いてきたこの俺が、婚約?

 

いや、俺の生まれた家は十師族。

貴族のように何事にも多大な責任が伴い、政略結婚ばかりで自由に恋愛も出来ない御身分だということは重々承知している。

 

だが、いきなりすぎやしないか?

 

「構わないでしょう?とても綺麗な子だと言うし。それとも好みじゃないかしら?」

 

「いえ、そういう話ではなくてですね……」

 

それに、七草の長女というと真由美さんだろ?

いや、まあ確かに美人だしそこは異存はないのだが。

実際に会ったことはないのですけれど。

 

「弘一殿が許すでしょうか。いえ、それより第一俺たち兄弟の存在は秘匿されているはずでは?」

 

「どうせいつか公表しなきゃいけないことでしょう?だったら有効に利用しなければね。そうね……今年の秋にしましょうか。最も、七草には他に口外しないよう言うつもりだけれど」

 

「は、はぁ。その辺はお任せしますが」

 

それに関しては、元より俺が口出しする話では無いし。

今秘匿されているのだって叔母上の指示だからな。

問題はもう一方だろう。

 

「それより、相手が受けるかどうか……」

 

俺の懸念に、叔母上は確信を持って頷く。

 

「受けるわよ。秘密主義の四葉に自分の家の者を送れるんだもの。私への対抗心で生きているあの男が受けないはずがないわ」

 

お、思ったより辛辣なお言葉で。

一応元婚約者のはずなんだが。

 

「ただ、今代では恐らく何も変わらないでしょう。大事なのは次の世代。私やあの男が一線から退いた後よ。そこで同盟を結べれば、問題は無いでしょう。手を組んだ四葉と七草に対抗出来るところなんて無いわ」

 

……まぁ、そうか。

 

確かに、七草弘一は四葉より強くなることだけに執着している。

恐らく、過去の出来事から。

これでは同盟も聞く耳を持たないだろう。

 

だが、次の世代ならばどうか。

俺が真由美さんと結婚して、その上で話を持ちかければ。

可能なのではないだろうか。

 

残念ながら、四葉家次期当主として納得せざるを得ない話だった。

それを俺の表情から読み取ったのだろうか、叔母上はふふっ、と笑う。

 

「決まりね。貴方は好きにしなさい。但し、出来上がった魔法の専用CADは私に預けること。ハードは私が用意するわ。ソフトは……」

 

「兄にやってもらいます」

 

兄さんならば外に情報が漏れる恐れもないし、俺自身も信用している。

何より、兄さんの腕は既に一流だ。

 

原作で兄さんを「最悪最凶の魔法兵器」と称して最も警戒し、逐一その力を把握しようとしていた叔母上にもそれは分かっているのだろう、軽く頷く。

 

「そう。では、そういうことで」

 

「はい。ご迷惑をお掛けしました」

 

「いいえ」

 

微笑む叔母上に一礼をして、屋敷を後にした。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

そして、二週間後。

 

俺たちは、沖縄へと飛び立った。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

大亜連合による沖縄侵攻。

俺が始めて関わる原作での大きな出来事だ。

様々なことが起こるこの期間において、俺は何をするか。

 

なんて大層な事を言っといて何だが、基本的に最後以外は関わる気がない。

兄さんと姉さんの仲が大きく変わる出来事だからな。

 

他――例えば姉さんが不良軍人に絡まれるだとか、姉さんの昼寝を邪魔しないように兄さんが喧嘩に割って入って怪我をするだとか、その辺も全く手を出さない。

俺の持つアドバンテージの一つである原作知識を生かすためには、極力介入は避けるべきだろう。

既に俺の存在自体がイレギュラーなのは置いといて。

 

……さて、沖縄では何をしようかな!




お読みいただき、ありがとうございました。

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