魔法科高校の加速者【凍結】   作:稀代の凡人

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日刊ランキング7位、UA10000件突破など色々重なってびっくりしました。
ありがとうございます!

特に日刊ランキングに載ってからの伸びが凄いですね。

これからも頑張っていくので、応援よろしくお願いします!


第6話

数日後。

俺たちは、沖縄の日本軍基地に避難していた。

大亜連合による沖縄侵攻だ。

さしもの母上も少し緊張した面持ちを見せる状況だ。

 

そんな中でも、俺は少し余裕がある。

未来を知っているからな。

勿論、不確定でどこまで信憑性があるかは分からない。

本来、というか原作において存在しなかった俺がいることで少しずつ未来が変わっている可能性もあるし。

 

蝶の羽ばたきが地球の反対側で竜巻を起こすのだから、存在しないはずの俺が四葉家次期当主だということで何が起こるかは分からない。

いや、バタフライエフェクトも詳しいことは知らないが。

 

とにかく避難だ。

そして、今日の行動について一通り確認する。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

まず、初めに起こるのは外国人の日本兵による反乱。

この際敵はアンティナイトによるキャスト・ジャミングで魔法の阻害をしてくる。

その為魔法を封じられただの一般人と変わらなくなった俺たちは、銃撃を受けて瀕死の重傷を負うのだ。

 

その後直ぐに駆けつけた兄さんにより傷は「再成」によって治される。

その後兄さんは姉さんが傷付けられた報復に軍の戦闘に参戦、姉さんは兄さんの事情を知ることになる。

 

そして最後に、「マテリアル・バースト」で敵艦を粉砕。

その準備中、自らの命を削ってまで障壁魔法を張り続けた桜井さんは、死亡。

以上が俺の知る、今日の顛末だ。

 

もしここに俺がいなかったならば(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

桜井さんには赤ん坊の頃から世話になったのだ。

こんなところで、死なせてなるものか。

 

ただ、心配なのはイレギュラーたる俺の介入による歴史の変化だ。

別に原作通りに進むのが正しいとはこれっぽっちも思っちゃいないし、今俺はここに生きている以上好きな様に生きる権利があると考えているのだが、あまり変えすぎると原作知識というアドバンテージが失われるのが痛すぎる。

 

極力介入は減らしていきたいところだ。

このまま行けば、ヒロイン候補の一人を婚約者にしてしまうのだがな……。

 

っと、それはいいや。

さて、どうしたのものか……。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

シェルターに避難すると、そこには見るからに立場のありそうな男とその家族らしき人達がいた。

何だったかな、嫌なやつだったことは覚えているんだが。

 

はて誰だったかと記憶を辿っていると、兄さんと桜井さんが突然目をある方向に向ける。

 

「今の……聞こえた?」

 

「銃声ですね。しかも連射……拳銃ではなくアサルトライフルでしょう」

 

「やっぱり。達也君、外の様子は何か分かる?」

 

「いえ、壁に魔法を阻害する術式があるようで。部屋の外は全く視えません」

 

「やっぱりそう。部屋の中で使う分には問題なさそうね」

 

二人のガーディアンは、部屋の様子を調べている。

 

と、ここで偉そうな男が話しかけてきた。

 

「おい、君達。魔法師なのかね」

 

「……ええ、そうですが」

 

桜井さんが答える。

 

「だったら君達、外の様子を見てきたまえ」

 

「は?」

 

ああ、思い出した。

凄く嫌な野郎だ。

 

「私達は貴方の使用人では無いんですが」

 

憮然として答える桜井さん。

既にかなり苛ついているのが分かる。

しかし、男はそれに気付かないのか、こんな事を言う。

 

「君達魔法師は人間に奉仕する為に作られた『もの』だろう。だったら、このぐらい当然ではないかね」

 

何を言うかは分かっていても、これはイラっとくるな。

それに、個人の認識はともあれ魔法師に面と向かってこんなことを言うこいつの気が知れん。

魔法師に牙を向けられたら抵抗する術は無いというのに。

 

と、ここで皆のイケメン達也兄さんが登場する。

 

「確かに我々魔法師はつくられた存在かもしれませんが、その理由は『社会への奉仕』であり、見知らぬ一個人に帰属するものではありません。貴方の指示に従う筋合いはありませんね」

 

見るからに怒り青筋を立てている男を一瞥し、それに、と続ける。

 

「現在存在する魔法師の殆どは、人工的につくられた訳ではありませんので、悪しからず」

 

「くっ、子供の癖に生意気な……」

 

「そうですね。子供の前で恥ずかしいとは思わないんですか?」

 

「何を……っ」

 

家族が軽蔑の視線を向けているのを見て、意気消沈する男。

 

ギスギスする空気を打ち破ったのは、母上だった。

 

「達也。あなた、外を見てきなさい」

 

「は……しかし。どういう状況か把握出来ていない以上、未熟な自分の力では深雪を確実に守ることは出来ないと…」

 

「深雪?……達也。あなた、立場を弁えなさい?」

 

ニコッと笑う表情とは裏腹に背筋が凍るような視線を兄さんに向ける。

 

そうか……。

こっちに来てからあまり姉さんと行動を共にしていなかったからどうかと思っていたが、ちゃんとイベントは消化していたか。

 

「母上、俺も行きます」

 

「和也……?」

 

「何故?」

 

「俺には、四葉の次期当主として国防に尽力する義務があります」

 

余りにも白々しい言葉を吐く。

これ信じてるの、この場では多分姉さんだけだし。

とはいえ、建前は大事だ。

それに、これもあながち嘘では無いし。

 

「……そう。分かったわ。行きなさいな」

 

「行って参ります」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「和也、本当はどうして来たんだ?」

 

シェルターから少し離れたところで、兄さんが尋ねてくる。

 

「どうしてって、さっき言った通り……分かった、言うから」

 

とぼけようと思ったのだが、兄さんの冷たい視線に耐えられなかった……!

 

「大亜連合が日本への野心を捨てない以上、きっと何度でも攻めてくる。別にたとえ同郷だろうと見ず知らずの人がどうなっても知ったことではないんだけれど、もし日本が攻め落とされたら一番被害を受けるのは、優秀な魔法師である我々十師族だよ。保持している特権はまず間違いなく無くなるし、良くて飼い殺し、最悪だと人体実験のモルモットにされる」

 

「……まぁ、確かにそうだな。そこまで考えたこともなかったが」

 

兄さんが頷くのを見て、言葉を続ける。

 

「だったら、自分たちで守るのが一番確実だ。何せ俺たちは、日本で最高の魔法師集団なんだから。そのうち、また今回みたいなことがあるかも知れない。その時の為に、まだ大規模な戦争ではないここで実戦訓練を積んでおきたかったんだ。要は自己保身のためだね」

 

なるほど、と頷く兄さん。

 

まぁ、これは理由の一部なんだけどね。

本当の理由は、桜井さんの命を救うことだ。

 

と、そうこうしているうちに、風間大尉がいるであろう司令室に着いた。

 

「風間大尉、達也です。宜しければ、現状を教えて……!?」

 

風間大尉に話し掛けた兄さんが、途中で弾かれた様に振り向く。

向いた先は、姉さんたちのいるシェルター。

 

「また銃声……しかも今度は……風間大尉、シェルターへの近道はありませんか」

 

「こちらだ。……まさか」

 

基地内で銃声が響いたことに驚きを隠せない様子だが、それでも道を教えてくれる風間大尉。

 

「分かりました」

 

聞くや否や、兄さんは全速力で駆けていく。

 

何が起こったか全てが分かっている俺は、罪悪感に唇を噛み締めつつ後を追った。




お読みいただき、ありがとうございました。

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