カンピオーネ!Also sprach Zarathustra   作:めんどくさがりや

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戦闘シーンが、難しい。
※後半を一部、修正しました。


冥府の女王と永遠の刹那

「ふむ、この地に神殺しが二人いることは気づいていたが、あなたがそうであったか」

 

アテナは彼、蓮を見ながらそう呟く。

 

「この目で見るのは初めてだが、あなたはそこの神殺しとは毛色が異なるようだ」

「知るかよ」

 

アテナの言葉に関係なしとばかりに再び腕を振るう。不可視の斬撃がアテナへと飛んでいくが、それを今度は素手で受け止めた。

 

「なるほど、どうやら血の気も多いようだ」

 

自らの手を開閉しながらアテナはそう呟く。アテナの手には一筋の裂傷が出来ており、そこから血が流れ出ていた。

 

「良いぞ、それでこそ神殺し。我らが仇敵に相応しい」

 

獰猛な笑みを浮かべつつ、アテナは言う。

そこで、後方から祐理が慌てたように言う。

 

「真奈瀬さん‼︎何故あなたがここに⁉︎」

「万里谷、知り合いか?」

 

護堂の質問に祐理は頷きながら言う。

 

「……はい、私の友人です」

「あいつも、魔術師の関係者だったりするのか?」

「いえ、彼はこちら側には関係ない方のはずです」

 

そう言うと、祐理は再び蓮に声をかける。

 

「答えてください‼︎何故ここにいるのですか‼︎」

 

その言葉に蓮は背後を振り向く。

 

「何故もクソもねえよ。友人(ダチ)が自殺みてえな真似してんのを止めに来ただけだ」

「自殺?私はそんな真似はーーー」

 

そこで祐理の言葉に被せるように蓮は言う。

 

「一人でまつろわぬ神の所に行くなんざ自殺でしかねえだろ」

「ーーーッ⁉︎」

 

祐理が目を見開き、ゆっくりと蓮に問う。

 

「な、何故、あなたがそれを……」

「元々、知るつもりなんて無かったんだけどな。知ったとしても関わるつもりなんざ毛頭なかった」

 

憮然とした表情で言う蓮に、祐理は困惑した。ならば、何故ここに来たのかと。

それほど長い付き合いでもないが、彼はこういった異常を好いてはいなかったはずなのだ。

 

「だけど、お前が巻き込まれたんじゃあそうは言ってられねえだろうが。それに俺の力はこういう時にこそ使うんだろ?」

「どういう、意味ですか……?」

 

疑問の声を出す祐理に、蓮は苦笑混じりに言う。

 

「お前も、薄々気づいてたんじゃないか?俺がなんなのか」

 

それに祐理はあの日のことを思い出した。彼の首にある傷を霊視した時に見えたモノを。

この国を覆い尽くすほどの巨大な蛇神像に天を引き裂く断頭の刃、そして憎悪を纏った無間の主を。

それが何を表す事なのか。媛巫女としての力が確信していたが、自らの心はありえないと断じていた。

何よりも日常を好いていたはずの彼が、神殺しであるなどと考えられなかったから。

しかし、彼の言葉はほとんど肯定しているようなものだ。

即ちーーー

 

「まさか、八人目の、王……?」

「誠に遺憾ながら、な」

 

信じられない。まさか、彼が東欧の魔王と同じ神殺しであるなど。

 

「ま、それは後にしてくれ。それより」

 

蓮の視線が護堂に向けられる。

 

「あんたが七人目の神殺しでいいんだな?」

「え、まあ、そうだけど」

 

だったら話は早いと蓮は言葉を紡ぐ。

 

「とりあえず、万里谷を任せてもいいか?この神サマは俺が相手しとくから」

 

蓮がそう言うが、護堂はそれを拒否した。

 

「悪いけど、それは出来ない。そいつを日本に呼んじまったのは俺の責任だ。後始末は俺がつける」

「ふーん……」

 

なるほど、どうやら責任感はあるようだ。だがこちらもはいそうですかと引ける訳もない。

しかし、そうか、こいつが元凶なのか。人の日常に余計な異物を混ぜ込んだのは。

ふつふつと内から湧き上がる怒りを押さえ込みながら、蓮は言葉を紡ぐ。

 

「自信持ってそう言えるくらいだから打つ手はあるんだろうな」

 

それに護堂は力強く頷いた。なるほど、手はあるか。はっきり言って邪魔でしかないがーーー

 

「……勝手にしろよ。正直どうでもいい」

 

苛立ち混じりにそう言うと、蓮はアテナの方を向く。

 

「話は済んだようだな」

「ああ、おかげさまでな」

 

どうやら相手は律儀に待っていてくれたようだ。

 

「なんで手を出さなかった?はっきり言って隙だらけだったと思うんだが」

 

そう言うとアテナはフン、と鼻を鳴らして言う。

 

「あまり妾を見縊るでないぞ神殺しよ。戦神たる妾が背後より利を狙う愚昧な行いをするとでも?」

「そうかよ」

 

どうやら勝てばそれでいいという神ではないようだ。

 

「さて、あなたに問うが、先の不可視の斬撃ーーーあれをこの身で受けて気づいたが、剣の類ではないな?」

「……それじゃあ、なんだって言うんだ?」

「さてな、漠然としか思い浮かばぬが……戦いよりも純粋に殺す事に特化したモノーーー」

 

するとアテナは思い浮かんだのか答えを言う。

 

「そうか、処刑の刃か」

 

その言葉に軽く驚いた。まさかこんなすぐに気づくとは。まあ、気にすることでもないか。

 

「じゃあ、始めるか」

 

さて、ここでやるとなると少し被害が大きくなる。そう思った蓮は跳躍し、アテナの背後に着地すると後ろに指を向ける。

 

「場所を変えるぞ。その頸、断ち切られる覚悟があんならついて来い‼︎」

「善き哉‼︎その処刑の刃を制し、あなたを仕留めて見せようぞ、神殺しよ‼︎」

 

 

人工の光源が消失した夜。護堂の眼前にいるのは三位一体となったまつろわぬアテナと、不可視の斬撃を生み出すカンピオーネであるらしい人物。

アテナは鋭い笑みで暗闇から数十羽フクロウや、これまた数十匹の蛇を生み出した。

フクロウは猛禽さながらの鋭い爪と嘴を持ち、蛇の体調はどれも五、六メートルを軽く超えている。見るからに毒蛇らしい、極彩色の鱗だった。

そして、フクロウが空から凄まじい速さで飛翔して、獲物を貫こうとする、が。

 

「なっ……」

 

護堂は思わず絶句する。何せ彼は数十羽というフクロウを一瞬で全滅させたのだから。さらに稲妻めいた速さで這い寄る蛇も同様に切り裂くと、そのまま人ではありえないほどの速度で駆けて行った。

 

「彼奴め、処刑の刃自体が本質ではないということか?この速度すらも所詮は権能の副産物であり、本質ではないのだろうな。全くもって面白い」

 

アテナは喜悦混じりの声音でそう言うと、そのまま歩き出そうとする。

 

「あ、おい‼︎」

「すまぬな。あのような誘いをかけらて彼奴を追わぬとなると女王たる妾の沽券にかかわるのでな。しばし待っていてもらう」

 

護堂が呼び止めるが、アテナはこちらを振り向かずにそう言う。

どうやら、アテナの中での優先順位が護堂からあの少年に変わったようだ。

 

「無論、あの処刑の刃めを下した後、あなたとも決着をつけさせてもらう。それまでに己が力を研ぎ澄ませるが良い、草薙護堂‼︎」

 

そう言うと、アテナは闇に消えていった。

 

「待っーーーああ、クソッ‼︎」

 

思わず悪態を付いてしまう。どいつもこいつも好き勝手に話を進めるのが頭にくる。だから嫌なのだ、神やカンピオーネに関わるのは。

そこでエリカがなだめてくる。

 

「落ち着きなさい護堂。これはチャンスよ。一切の邪魔無しにあれ(・・)をできるんですもの。それよりーーー」

 

次いでエリカは未だに彼らが去った方向に目を向けている祐理に問う。

 

「あなたは気づいていたの?彼、いや、あの方がカンピオーネであるということに」

「……はい。もしかしたら、という程度ですが」

 

深妙な顔で頷く祐理に、エリカは嘆息しつつ言う。

 

「そう。まあそれはいい。あの方がどの神を殺めたにしても、アテナを相手取る実力者である事に変わりはないわ」

 

たしかにそうだ。あの八人目のカンピオーネは、アテナの配下達を一瞬で全滅させる程の力を持っている。言霊の剣を使えば自分にも出来ないわけではないが、それでも高速で飛来するフクロウを一瞬で切り捨てるなど出来そうもない。

 

「それで、あなたはどうするの?護堂」

 

エリカの問いに護堂は愚問とばかりに言う。

 

「俺はあいつらを追う。エリカ、お前は万里谷を守っていてくれ」

「仰せのままに、我が君。ーーーようやくエセ平和主義を返上する気になった?」

「まさか、俺は今も昔も正真正銘の平和主義者だ。ただ、仲間を殴られて黙ってるほど大人しい人間じゃない」

 

彼の言葉を借りるわけではないが、人の知り合いに手ェ出してタダで済ませるつもりはない。

 

「それでこそ、私の護堂だわ。なら、これは勝利の前祝いよ」

 

そう言ってエリカは身を寄せると、両手で抱え込むようにして口付けを行ってくる。

ーーー流れ込むアテナの知識。

今までつぎはぎだった智慧と戦いの女神、蛇とフクロウの地母神についての知識が完全になる。その瞬間、護堂の中に眠る《剣》も完全な威力を備えた。

 

「あなたの勝利を祈るわ。叩きのめしてきなさい、まつろわぬアテナを‼︎」

「ーーーああ‼︎」

 

何て真似を、などと無粋な事は言わない。その代わりに獰猛な微笑を浮かべると護堂は駆けて行った。

 

 

疾走ーーー彼は凄まじい速度で駆けていた。

その速度はおよそ人間が発揮できる限界を遥かに超えている。

いや、そもそも高速道路を走る車を超えるスピードで走る者を人と呼んでいいものか。

しかし、それを追跡するのも人ではなかった。

百を超える鳥獣の群れが、彼を仕留めようと空を飛翔して高速で向かってくる。

それらを疾走しながら斬撃を飛ばして切り裂いていく。

 

「チッ、キリがねえな」

 

舌打ちをしながらそう言う。しかし、もう少しで目的の場所にたどり着く。

汐留川を越えると、背の高い木々が鬱蒼と生い茂る森が見えてきた。

ーーー浜離宮恩賜庭園。

開園時間はとっくに終わってるから無人の上に、かなり広い。ここでなら、ある程度被害を抑えて戦える。

それにしても、蛇か。なんというか、神話でもなんでも、蛇と名のつくものは総じてタチが悪い。

 

「まあ、あの女神も水銀よりは可愛らしいんだろうけど」

 

まあ傍迷惑なのに変わりはない。

 

「ーーーここが、あなたの選んだ戦場か。ずいぶんと貧相な森よな」

 

どうやら、アテナも追いついてきたらしい。

 

「人間共はよくこんな小賢しい真似をするが、この島の民は別してそうだ。妾もさまざまな国を渡り歩いてきたが、これほど大地を石で蔽い、闇を拒む民も珍しいぞ」

「仕方ないだろ、人間は闇を恐れる。一寸先も暗闇だなんて、不安で不安で仕方ない。だから安寧を求め、安心して暮らせる世を欲するんだ」

「それが人間共の傲慢さなのだよ。朝が来れば起き、夜が来れば眠ればよい。大地の恵む糧だけで満足し、奢侈を望まねばよい。糧が尽きれば死の連環を受け容れ、我が冥府の門をくぐればよい。それだけの話ではないか?」

「……さすが神サマ。言うことが違う」

 

最初から強大な力を持つ者は欲すらも薄まるということか。

 

「人間は、弱いから欲するんだよ。神々(あんたら)には一生かかっても理解出来ないだろうさ」

「ふむ、たしかにそうだ。さて、話はここまでだ。出会えば戦い、互いを討滅し合うのが我らの逆縁。あなたと妾、どちらの武が上か、はっきりさせようではないか」

 

そう言うとアテナは黒い鎌を手に持つ。

 

「そんなの、どうでもいいんだけどな。やってやるよ」

 

そう言いながら、蓮も低く構えるが、しかし、そこでアテナは言う。

 

「戦の前に一つ問おう、二人目の神殺しよ、あなたは力を完全な状態で使用しておらぬな?」

 

その言葉に蓮はピクリと反応する。

 

「不可視の斬撃……妾を傷つけるほどの力はあろうと、所詮は権能の一端であろう?薄皮を切り裂く程度で妾は屠れぬよ」

 

ゆえに武器を出せと、力を見せろと言う。

 

「…………」

 

たしかに、"活動"の位階では神を殺すなど不可能だ。わかってはいるが、それでも未だに躊躇ってしまう。コレ(・・)を使えば、もう自分は完全にこちら側に入ってしまう。

 

「できれば、使いたくなかったんだけどな……」

 

しかし、もうそうは言ってられない。俺は刹那を守らなければいけない。それが自身の覚悟であるのだから。

時間が止まればいいと思っていた。いつもそんなことを考えていた。

この日常を終わらせたくない。ずっと、留めていたい。

永劫繰り返し、飽き果てようとも。この掛け替えのない一瞬を、永遠に繰り返したいと願ったから。

だから愛しい陽だまりを、失うわけにはいかない。絶対に奪わせない。

ーーーああ、ならば望み通りに見せてやる。

そして、こんな馬鹿げた非日常なんて、すぐに終わらせてみせる。

 

形成ーー(Yetzirah )

 

もう迷いはない。さあ、恐怖劇(グランギニョル)を始めよう。

 

時よ止まれ(Verweile doch,)ーーーおまえは美しい (du bist so schon)

 

そうしてーーー腕にギロチンが落下した。

 

さあ、血を注ごう。再び日常に帰るため。首に走る斬首痕こそが、その証だ。

落下したギロチンは形を変える。蓮が扱うに相応しい形へと変化する。黒く、鋭く、強靭な抜き身の刃へと。

 

「……………」

 

アテナはそれに驚愕する。刃の内に渦巻く殺意の奔流に。死を体現したかのようなその有り様に。

 

「……それが、あなたが簒奪した力か」

 

アテナはその本質を理解した。

これはギロチンだ。人を殺すためだけに存在し、ゆえに殺すことに異常なまでに特化している。

そう、たとえ相手が神であっても問答無用でその首を刎ねる異形の刃。

 

「ハハハ、ハハハハハ‼︎」

 

アテナは心底可笑しそうに哄笑する。

 

「面白い‼︎面白いぞ神殺しよ‼︎何処の神から簒奪したのかはわからぬが、その殺意の波動、見事と言うほかない‼︎」

「そうかよ」

 

こっちは現状が面白くないんだが。

 

「さて、名乗るがいい、神殺しよ。妾はアテナ、三位一体を取り戻した冥府の女王だ」

「……真奈瀬 蓮だ」

 

名乗るかどうか、一瞬迷ったが、とりあえずは名乗っておく。

 

「真奈瀬 蓮か。やはり妾の耳には聞き慣れぬ響きだ。しかし覚えたぞ、あなたの名を。ではーーー」

 

そう言うと、アテナは構えを取る。

 

「行くぞ」

 

その言葉と共に、アテナは一瞬で迫るとその鎌を振り下ろしてくる。それを後方に下がる事で避けるが、続けざまに刃を返しての振り上げ、横薙ぎ、石突きでの刺突を繰り出してくる。

それらを避け、あるいは刃で弾きいていく。

 

「ふむ、やはりこの程度は防ぐか」

 

その言葉と共に鎌を振るう速度が上がっていく。人の動体視力で捉えられぬスピードで振るわれる鎌を、同じくギロチンの刃で弾いていく。

 

「見事。それでこそよ」

「ッ‼︎」

 

瞬間、合間を縫うようにして放たれた刃が頬を掠める。

頬に触れると、指先に血が付いていた。あの鎌は、間違いなく蓮の体を、霊的装甲を切り裂いている。

やはりあれは神の武器。常識の範疇にない存在。

いや、違う。存在してはいけないものだ。

 

「妾との闘争の際に余所見とは、余裕だな」

 

その言葉と共に鎌が横薙ぎに振るわれる。再び続く斬撃の嵐。それらをなんとか捌いていく。

 

「さあ、どうしたーーーその程度か神殺しよ‼︎魔王の名が泣くぞ‼︎」

 

続く一振りを、刃で受け止め、そのまま鍔迫り合いの状態になる。

 

「……戦いが強くて誇らしいか?」

「何?」

 

鎌を押しながら言う。

 

「殺し合いに長けているのが自慢か?こんなもん、何が楽しいんだ、お前らは」

 

神も、神殺しも、誇りだなんだと大義名分を掲げて殺し合いを楽しむ。

それで何を求めているのかなど知らないし、知りたくもない。

 

「さっき、人間は傲慢だとか言ってたけどよ。俺から言わせれば、てめえらの方がよっぽど傲慢だ」

 

人が平和に暮らしているところをまつろわぬ神は災いを巻き起こす。そしてそれに何も感じず、むしろ当然だと振る舞うありさま。度し難いにも程がある。

先ほどの神殺しもそうだ。あいつがここにこの神を呼ぶような余計な事をしなければ、こんなザマにならずに済んだ。

 

「神だろうが何だろうが、今の世にてめえらは場違いなんだよ。人の日常を身勝手に掻き乱しやがってーーーいつまでもジャンル違いがのさばってんじゃねえぞォ‼︎」

「ぐうぅ‼︎」

 

そのままアテナを吹き飛ばす。

 

「ふ、はは、良い、良いぞ神殺しよ‼︎あなたから濃密な殺意が湧き出ておるわ‼︎」

 

アテナは心底嬉しそうに哄笑すると、突如地が揺れる。

アテナの足元が大きく隆起し、女神を乗せたまま鎌首をもたげた。

 

「なっ……」

 

ほんの数十秒で、岩と土と樹木で構成された大蛇が完成した。

 

「……随分と多芸だな」

 

呆れを滲ませた声音で言う。おそらく全長ニ、三十メートルはあるだろう。

蛇の頭上に銀髪をたなびかせてアテナが直立していた。

 

「さあ、我が牙よ。神殺しを押し潰せ‼︎」

 

それと同時に大蛇は周囲を巻き込みながら迫ってくる。

 

「面倒な……‼︎」

 

蛇より後退してある程度距離を取る。

あの蛇を壊すには遠距離からの攻撃が良い。そう思った蓮は、ギロチンを構えると、詠唱を始める。

 

Je veux le sang, sang, sang, et sang(血 血 血 血が欲しい)

 

Donnons le sang de guillotine(ギロチンに注ごう飲み物を)

 

Pour guerir la secheresse de la guillotine(ギロチンの乾きを癒す為)

 

Je veux le sang, sang, sang, et sang(欲しいのは 血 血 血)

 

詠唱と共に、ギロチンが紅く輝いていく。それと同時に溢れ出る殺意の奔流。

瞬間、アテナは何かを感じ取り、即座に大蛇の上から跳躍する。

 

罪姫・正義の柱(マルグリット・ボワ・ジュスティス)‼︎」

 

瞬間、蓮の振るうギロチンから無数の斬撃が死の嵐となって放たれた。

嵐は大蛇の頭部を切り刻み、蹂躙する。大蛇はそのまま轟音と共に崩れ落ちた。

 

「……このような手を隠し持っていたとは、抜け目ないことこの上ない」

 

忌々しげに嘯くアテナの左腕は深い傷を負っていた。

 

「さらにこれは……不死殺しの呪詛か。相手が何者であれど首を刎ねれば殺しきる絶対死。ギロチンの刃……そうか」

 

そう言うとアテナはこちらに鎌を向けて言う。

 

「知っている、知っているぞ、その刃……かつて妾が流離いの身でありし頃に出会った神と同じものだ。蛇と鋼の神性を兼ねた異質の神格。異世界より現れし無間地獄の邪神……」

「ーーーー」

 

その言葉に驚愕した。この女神は彼と面識があるようだ。

 

「蛇であり蛇に非ず、鋼であり鋼に非ず、この世界のどの神話にも存在せず、されどその力は強大である。無間地獄の主ーーー天魔・夜刀、それがあなたの殺めた神格か」

 

どうやら、人の間では知られていなくとも、神の中には知っている存在がいるようだ。

 

「なるほど、彼奴はあなたに殺められたか。まあ良い」

 

そう言うと、アテナは鎌の石突きで地面を突く。すると複数の土で構成された大蛇が現れた。

 

「さあ、見せるがいい。彼奴の力のその先を‼︎」

 

蓮も再び構える。今はこちらが優勢だが、油断はできない。アテナを仕留めるために、感覚を研ぎ澄ます。

 

「消えろよ、この異物がァ‼︎」

「ほざけよ、神殺しィ‼︎」

 

そして、再び両者は激突した。


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