3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第13話 3歳児は勝利の味を知る

 オーキド研究所を出発してトキワシティに向かいます

 

 結局何の情報もなかったけど、まぁしょうがないかな

 

 

「出てきて、ウインディ! タツベイ!」

 

「………(フンス!)」

「タッベーイ!!」

 

 1番道路に到着して、すぐさま“ウインディ”を召喚。

 俺はその背中に乗せてもらう。

 

 ウインディはガーディの頃の好戦的な頃とは違い、強さを手に入れてからというもの、落ち着きも手に入れた。

 

 召喚時に周囲が静かなことに気付いて、大きな返事はしないものの、呼び出されて嬉しそうに鼻を鳴らしていた

 

 俺はそんなウインディにしゃがんでもらい、よじよじとよじ登り、そのもふもふを精一杯堪能することにする。

 

 タツベイも小さな身体でウインディによじ登る。

 

「タツベイ、ミニリュウ、どうだ?」

 

「みゅー♪」

「ベーイ!」

 

 レンジの頭の上から返事を返すミニリュウ。

 二匹ともウインディの背中の上はどうやら気持ちがいいらしい。それに、高い視点から地面を見下ろして興奮しているようだ。

 

 このままゆっくりとトキワシティに向かい、野生のポケモンと遭遇したらミニリュウとタツベイの二匹で戦わせていくというスタイルだ。

 

 

 体力も少ないから、慎重にね

 

 ミニリュウもなんとかレンジに慣れてくれたので、こうして旅に出ることができるんだ。

 いまでもオレンちゃんが居ないことで少しだけ不安そうだ。

 

 同一人物だってば。ねえイーブイ。

「ブイ。」

 ねー。

 

 

 というわけで、野生のコラッタやポッポと戦って経験値を溜めながら、俺はウインディの背に乗って時々タツベイとミニリュウの戦闘を応援、観戦してトキワシティを目指した

 

 ミニリュウは攻撃技が“まきつく”しかないため、必然的に戦闘の時間が延びる。

 一度はコラッタを捕まえて“レンジのスマホ”に収納したため、ミニリュウの体力が減っただけの結果があったが、それでもミニリュウはバトル自体は楽しそうに繰り広げていた

 

 なんだかんだでイーブイ達の戦闘を元気に応援したりしてるからね。

 見るのも戦うのも好きなんだろう。

 

 でも移動中のミニリュウは体力が少ないからすぐにへばって俺のリュックの中に戻ってきてしまう。

 タツベイは一度戦闘が終わったらしばらくは自分の力で歩いて、数百メートルで疲れてしまい、ウインディの背に飛び乗るという形を取っていた。

 

 自分でも体力を付けようとしているのだ。タツベイはやるのう。

 

 だがミニリュウはさすがに手足がないため、持ち運ぶしかないのだ。これはしょうがない。

 

 はたして何キロ進んだだろうか。

 3歳児の体力ではトキワシティにたどり着く間もなく日が暮れるだろうが、さすがはウインディさん。3時間ほどでトキワシティに到着だ。

 

 ミニリュウのレベルも6に上がり、タツベイのレベルも8になった。

 やはりドラゴンタイプ。育つのに時間がかかる。

 きずぐすりは大量にあるので、手当てはすぐに終わる。

 

 

 パワーレベリングはこの子達の為にならないし、自分と同じくらいの相手とずっと戦っていければそれなりに強くなるはずだ。

 

 

「いい感じにお昼時だね。みんなでお昼にしよっか」

 

 そして、時間はお昼時。朝の6時にマンションを出て、合計6時間。時刻は12時だ。

 

 というわけで、イーブイ以外の子達をボールにしまい、トキワシティに入る。

 さすがにウインディに乗ったまま街に入ったらあかんでしょ。

 

 

 そのままポケモンセンターに直行。

 まずはミニリュウとタツベイの手当てから。

 お昼はそれからでも遅くない。

 

「こんにちはジョーイさん結婚してください」

 

 ポケセンに入って開口一番にプロポーズ。

 別に本気じゃないので、イーブイは足を踏まないで。ダメだってば。グリグリしないで。圧力が! 圧力が!!

 

「あん? なんだこの子供は………?」

 

 しかし、受付には先客が居た! うわっはずかしい!

 

「おいおい、ポケモンセンターは子供が来る場所じゃねーぞ。俺様はいまイラついてんだ。ガキは早くおうちに帰った方が身のためだぜ」

 

 ん? 誰だ、こんな冒険者ギルドのテンプレ的なことを言う奴は!

 

「あん?」

 

 ギロリと三歳児睨みを聞かせてそちらを見ると、そこに居たのは―――

 

「ああ………」

 

 なんだ、グリーンか。

 つい出そうになった言葉を飲み込んで納得した。

 

 グリーンがポケモンセンターに居る。

 理由はまぁ想像つくよ。

 おおかた、ポケモンリーグに挑戦しようとして、バッジがないから門前払いされ、22番道路でレッドに負けたのだろう。

 

 やられ役のアンタのことだ。負けたに違いない。

 レッドは強い。何せ奴は主人公だから。

 グリーンも強いが、レッドの方がポケモンのことをわかっている。そう! きっとレッドはポケモンのことを家族だと思っているような奴だからな!

 

「なんでここに居ちゃいけないの?」

 

 そんな踏み台ポジのグリーンさんに格下呼ばわりされてもイラッと来るだけなので、もちろん反論します。

 というか、俺はトレーナーだし、正当な理由があるのだから、この場合は俺にまったくの否がないのだ

 

「はん、ここはトレーナーが来るところだ。ガキはお呼びじゃねーんだよ」

 

「僕はトレーナーだよ。傷ついたポケモンを治療しに来たんだ。つまりあんたは僕にポケモンを治療させることなく死なせろと言うんだね。あんたは血も涙もないのか。よくそんなんでトレーナーだなんて言えるね。あっははは、ヘドが出ちゃうよ。ポケモンを大事にしないあんたはトレーナーですらない。言葉をそっくり返すけど、トレーナーじゃないならどいて。治療ができない」

 

 しっしっと手を払ってグリーンを払いのける

 自分でもびっくりするほど相手がイラッとする言葉をピンポイントで選んで口から零れ落ちる。

 コレでイラッとしない人が居たら教えてくれ。そのコツを聞きたいから。

 しかし、先にケンカを売ったのはグリーンだ。こちらはそれを買ってあげたまでである。

 

「あらいらっしゃい。小さなお客様ね。どうしたの?」

 

 ジョーイさんのスルースキルがすごい。

 さっきのやり取りを見ていたでしょうに。

 

 俺の隣でグリーンが顔を真っ赤にして拳を握り、プルプルしている。

 怒った? 上等。俺に口げんかで勝とうなんざ10年早ぇ。

 

 そんくらいになりゃあ精神年齢も同じくらいになって舌も達者になるだろうに。

 

「治療をしに来ました。この子とこの子です。どちらも珍しいポケモンだから人目に付かないようにしてもらえるとたすかるよ」

「この子達は?」

「こっちがタツベイで、こっちがミニリュウ…‥…の色違い(小声)」

「わかったわ。身分証はもってる?」

 

 しっかりとジョーイさんに治療を受ける子たちの特徴を伝え、“レンジ”のトレーナーカードを差し出す。すると、驚いたような表情でこちらを見る。

 

 きっと、ポケモンリーグ協会から最年少トレーナーの話は聞いているはずだ。

 トレーナーカードとモンスターボールを預かって、ジョーイさんは奥へと消えた

 

 そしてグリーンに向かってドヤ顔を向ける

 

「で、僕はトレーナーだからここに居てもいいでしょ? まずはいきなり消えるように言ったことで、僕に言うべきことがあるんじゃないの? ねえ、どうなの?」

 

「くっ………」

 

 

 自分が悪いと認めていても、ここまで口の悪い子供に頭を下げるのはプライドが許さないらしい。

 気持ちは痛いほどにわかる。

 こんな3歳児が目の前に居たら、殴りたくなって当然だ。

 

 しかしながら、ここはポケモンセンター。

 人目もある故、自制が効いているみたいだ

 

 

「…………だ」

「ん? なに? ごめん、全然聞こえないです」

 

 いや本当に。冗談や挑発抜きで敬語になっちゃった。

 

「勝負だ! おまえもポケモントレーナーなら断ったりしないだろ! まあ、万が一にも俺様が負ける事なんてないと思うけどな! その弱そうなポケモンを見てたらわかるぜ! おまえ、ポケモン持ったばっかりで調子に乗ってるんだろ。俺様が矯正してやるぜ!」

 

 なんとグリーンさん。まさかの勝負を仕掛けてあやふやにする作戦を決行しやがった!

 

「ブイッ! フカーッ!」

 

 しかもイーブイさんも自分が馬鹿にされていることに腹を立て、その挑発に乗って毛を逆立ててグリーンを威嚇している!

 しかしながらイーブイの特性は“てきおうりょく”であるために!

 

“ 威嚇 は かわいい だけ で あった! ▼ ”

 

 イーブイがやる気ならばしかたあるまい

 

「いいよ。ルールは? 僕はあなたにイラッとしているし僕が勝ったら、さっきのことをちゃんと頭を下げて謝ってもらいたい。あんたが勝ったら、僕はさっきのことを不問にしよう。それだけじゃ面白くないから、このバトルには賞金を設定しようか。勝者に500円でどう?」

「ご、500円もだと? ふん、いいだろう。せいぜい吠えずらをかきやがれ! 俺様が勝つって決まってんだ。手持ちのすべてのポケモンで勝負だ!」

 

 

 出来レースです。ありがとうございました。

 

 

 

                   ☆

 

 

「さっきは、バカなことを言ってすまなかった………」

 

 というわけで、勝ちました。

 当然だ。

 

 ジョーイさんからから受け取った治療を終えたミニリュウとタツベイのモンスターボールをベルトに付け、グリーンと共にポケセンを出て、バトルスタートだ。

 

 こちらの手札は相棒の“イーブイ”さんLv.43

 

 グリーンの初手は“ポッポ”さんLv.9

 

 先手必勝の“スピードスター”でポッポを沈めた

 イーブイさんは得意げな表情で俺の胸に飛び込んできたため、抱き留めて撫でまわしてあげた。

 

 そして次。

 

 グリーンは“ゼニガメ”さんLv.9を繰り出しイーブイさんは体当たりを躱す躱す躱す躱す。

 

 時には尻尾を使ってゼニガメを()かした

 

 そして、追撃はせずにお座りして待機。

 

 そこからはもはやお遊びである。転がした後、何となく甲羅の上に乗ってみたり、ポンポンとゼニガメの頭を撫でてみたり。

 イーブイさんは“弱そうなポケモン”と言われたことがよっぽどご立腹らしい。

 

 しまいには倒れて涙目になるゼニガメを尻目にグリーンの方をチラ見して―――

 

イーブイ「ブイ………(チラ)。」

グリーン「………?」

イーブイ「………(へっ)」

グリーン「(^ω^#)ピキピキ」

 

 こんな感じになった

 なかなか悪い感じに俺の性格を遺伝しているようでなによりだよ。

 

 結果、ゼニガメを全く傷つけることなく、グリーンが実力差を痛感して「まいった」と言わせた。

 ゼニガメも涙目だった。

 

 アホな主人を持ってしまって災難だね、ゼニガメ。

 

 とはいえ、なんだかんだでトレーナーと戦って勝ったのは初めてなので、それでもうれしいものだ。

 

「うん。その一言がきけたら満足。もう子供だからって見くびらないようにしてね。あーお腹すいた。グリーンさんも一緒にお昼食べる?」

 

 一度誤ってもらえたならよっぽどのことじゃない限り、それは水に流すべきである。

 喧嘩をすれば仲直り。仲直りのしるしに、一緒に昼食。すばらしいだろ。

 

「………ああ、わかった」

 

 というわけで、グリーンさんも誘って昼食タイム。

 

 みんな、出ておいで!!

 

 ボールを放り投げ、全てのポケモンを場に出す。

 

「ブイ!」

「ピックシー!」

「ジョットー!」

「オン!」

「シー………」←ユンゲラー

「ベーイ!」

「みゅ~♪」

 

 ミニリュウとタツベイに関しては珍しすぎるし手持ち7匹目のポケモンに該当してしまうため、体の大きなピジョットとウインディにさりげなく隠してもらいながら、ジョーイさんから買い取ったポケモンフーズを食べてもらった。

 

「これが、レンジのポケモン達か………大きいし、強そうだな」

「ゼーニゼーニ」

「つよいよ。でも、みんな進化前から一緒に過ごしているからなんだかんだで僕のことが大好きだからね。仲の悪い子も居るけど、それはそう言う個性ってことで喧嘩が大きくなり過ぎないように注意しつつ傍観してるかな。」

 

 誰って? イーブイとウインディだよ。

 

 あの子たちは仲が悪い。

 険悪なわけじゃないよ。互いにライバル視していて、互いを挑発し合ってる感じ。

 

 俺の手持ちたちがご飯を食べている間に、俺もグリーンと一緒にお昼ご飯を食べる。

 ポケモンセンターの喫茶スペースで注文したサンドイッチである。

 

「うまうま。」

「それにしても、レンジはなんでそんなに強くなったんだ?」

「んゆ? (ごくん)んー、年季?」

「年下じゃねーか」

 

 グリーンに突っ込まれつつ、サンドイッチを口に詰め込んで返答を探す。

 ゼニガメもこれ食べてみる? おいしいよ。

 

「でも、当たり前ながら僕よりもジムリーダー達の方が強いよ。僕はタマムシジムのジムリーダーの本気を見たことがあるけど、さすがポケモンリーグ公認のジムリーダーだ。全然勝てるイメージが湧かないもん」

 

「そんなにか? もっと勝てるもんだと思ってた………」

 

「そりゃあ勝てるでしょうよ。ジムリーダーだって、制限でそのタイプのポケモンしか使えないんだ。対策されれば、どうしてもやられちゃうって言ってたからね。それに、相手が持っているバッジの数に合わせて出すポケモンを決めているみたいだから、挑戦者が勝つのは確かに難しいかもしれないけど、ある程度の実力があれば勝てるようになっているんだ。勝たなければポケモンリーグに挑戦することすら敵わないんだから」

 

「確かに………」

 

「リーグの公認ジムリーダーの本気は四天王やチャンピオンに匹敵する。バッジを取った程度では冗長できないよね。各地方のジムリーダーやチャンピオンが集まって戦う“PWT”っていうのも、激熱だよ。みんなバケモノだ。」

 

 最後のサンドイッチを近くに寄ってきたイーブイに一口あげる。

 あ、全部なくなった。でもイーブイが幸せそうな顔なので全てよし。

 

「でも、グリーンさんが最初のジムバッジを手に入れるとしたらニビジムでしょう? そこのタケシさんは岩タイプをおもに使って来るから、バッジ0個で水タイプのゼニガメがいるなら撃破は簡単かもね。出してくるのはおそらく、“イシツブテ”と“イワーク(攻撃力ポッポ)”かな。どっちも水草4倍だし。」

 

 そう考えると、最初にヒトカゲを選んだレッドはタケシ、カスミと苦手タイプが続いて苦戦を強いられるだろうね

 

「なるほど………参考になったよ。あれ? でもトキワシティにもジムがあるけど、そこは?」

「あそこは今、休業中。しばらく待たないとね。バッジを7つ集めたらここに来るといいかもね。トキワジムは主に地面タイプを使うし、カントー地方のジムでは最強の実力を持っているところだから、今行っても確実にやられるよ。チャンピオンになりたいなら、最強のジムリーダーの本気ってのを相手にしたほうが燃えるってもんでしょ」

「お前、わかってんじゃねーか」

 

 簡単に発破を掛けてみたら背中をバンバンと叩かれた

 どうやら気に入られてしまったらしい

 

 つっても、あんた3年後にはトキワシティのジムリーダーだけどな。

 

「ごちそうさま。それじゃ、僕はそろそろ行くね。ご飯御馳走様でした」

「おう、またな………って会計俺か!? ちょっと待て―――!!」

 

 

 スタコラサッサ。

 

 

 




 その頃の22番道路

レッド「よっし、グリーンにも勝ったし、このままポケモンをどんどん捕まえて野生のポケモンとじゃんじゃん戦って強くなろう! お、マンキーだ! いけ! カゲどん!」

カゲどん「カゲー!」

レッド「ひのこ!」

カゲどん「カーゲァー!」


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