3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第22話 3歳児は成長を促す

 

 気絶したピカチュウをボールの中に収納する。

 

 タケシのイワークを相手にそこまでやってくれた、わたしを最後まで信じてくれたピカチュウに報いるためにも、タケシには勝つしかない。

 

「さあ、オレンちゃん。次のポケモンはどうするんだい?「 そのイーブイかい?」

「ううん。このイーブイはわたしのポケモンじゃないから使わないよ」

「ん? じゃあ、どんなポケモンで来るのかな?」

 

 

 イーブイはオレンちゃんではなく、レンジのポケモンだ。

 

 イーブイもそのことは理解しているし、イーブイが出陣すればオレンちゃんのジム戦の意味がなくなる。

 ちゃんとしたジム戦を経験しないと、レンジにもオレンちゃんにも示しがつかないからね。

 

 ボールホルダーから一つのモンスターボールを取り出す。

 

「GO、バタフリー」

 

 投げたボールから飛び出してきたのは、ちょうちょポケモン。バタフリー。

 

「フリィイイ♪ フギュッ!?」

 

 タケシがイワークでステルスロックを撒いていたいたおかげで、バタフリーに尖った岩が食い込んだ

 ボールから出てそうそうに苦悶の表情のバタフリー。

 

 

「バタフリー? 飛行、虫タイプのポケモンは岩タイプの技は4倍だぞ?」

「知ってるよ。一撃くらったら落ちるってこともね。だけど………バタフリーの真骨頂は鱗粉にあるんだよ。舞え! バタフリー!」

 

 

 バタフリーは4倍ダメージのステロを受けてすでに体力を半分近く失っている状態だ。

 それでも、やる気を見せて薄い羽根を広げて飛び上がる。

 

 バタフリーのエサは花の蜜。花畑に連れて行ってバタフリーを放してあげると、すごく喜ぶよ。

 美しく舞うその姿は、まさしく幻想的な蝶の舞い。

 

 だが、バトルにおいては蝶のように舞い、蜂のように刺す。

 そんなスタイルは求めていない。

 

 ボクシングじゃないんだ。卑怯もくそったれもあるか。

 

「行けるね! “ねむりごな”!」

 

「フリィィイ♪」

 

 

 イワークの上空で眠り粉をまき散らすバタフリー。

 

「イワ………zzz」

 

「ほう………! なかなかやる! 起きろイワーク!」

 

 タイプ相性が悪いなら、からめ手から搾り取るのみ。

 じり貧になってもいい。最終的に勝てばいい。効率を優先して行動を起こせ。

 

 イワークは眠ってしまって動けない!

 

「“ちょうおんぱ”! 決して起きても行動させるな!」

「フリッ! フリィイイイイイイイイイイ!!!」

 

 

 ならばと追い打ちをかける。

 

 眠り粉と毒の粉の併用はできない。

 というか覚えさせていない。

 

 だから、わたしはバタフリーには“ちょうおんぱ”と“ねんりき”を覚えさせている。

 

 相手にまともに行動させないように、卑怯と言われようともわたしはタケシに勝ちたい!

 

 命中率の低いちょうおんぱが眠るイワークへと直撃。

 これで起きても混乱状態。

 タイプ相性がなんだ! ならば搦め手! どっからでも手を伸ばせ!

 視野を広くもて!

 

「いいようにやられてたまるか! イワーク! 起きるんだ! このままじゃお前はやられてしまうぞ!」

 

「………zzz」

 

 いい感じに眠り粉が仕事をしているようだ

 

「………ごくろうさん、もどっていいよ、ミニリュウ!」

「みゅーっ♪」

 

 役目を終えたバタフリーをボールに戻し、カバンの中からミニリュウが這い出てきて色違いであるピンクのボディがフィールドに降り立つ

 

 こんなこと、イワークが眠っているときじゃないと隙だらけでできないもんね。

 

 

 ミニリュウがフィールドに入ったことにより、ステロがミニリュウに直撃。

 

「みっ!?」

「いける?」

「みゅー!!」

 

 4倍ダメージのバタフリー程ではない。

 すこし擦りむいた程度のダメージだ。

 行動に支障はない

 

「起きろ、イワーク! 起きるんだ!!」

「zzz………イワァ………!」

 

 ようやくお目覚めのイワーク。

 しかし、目が覚めたといっても混乱状態。

 

 時間を稼いだおかげで、こちらの準備はすべて整った

 

「でかい図体で防御力がいかに高くても、“固定ダメージ”は防ぎようがないよね! ミニリュウ、“りゅうのいかり”!」

 

 固定ダメージを与える最強技。トサキント以下のHPで、ピカチュウが削ってくれた体力で、はたして固定ダメージを堪え切れるだろうか

 

「イワァァアア!?」

 

 答えは、否。

 ピカチュウの活躍により、ただでさえ少ない体力を削り、バタフリーの活躍により行動を制限され、ミニリュウの固定ダメージでそれを粉砕する。

 

「イワーク、戦闘不能!」

 

 トシカズの宣言で、タケシはイワークをボールに収納する。

 

「よく頑張った、イワーク。今度みっちり修行しような」

 

 ねぎらいの言葉をかける。

 やはりタケシもポケモンを大事に思っているんだな。

 ジムトレーナーはそうでなくっちゃ。

 

 ボールをホルダーに仕舞い、ニッとこちらに笑みを向けるタケシ。

 

「見事! よくぞイワークを打ち破った! だけど、まだ俺のポケモンすべてが戦闘不能になったわけではない!」

 

 

 そう、イワークを倒したからと言ってジム戦が終わったわけではない。

 

 むしろここからが本番だ。

 タケシの使用ポケモンは3体。

 

 あと一体が残っているのだから。

 

 

「ラストだ。行け、ゴローン!」

「ゴロォン!!」

 

 

 タケシが繰り出したのはイシツブテの進化系。ゴローンだ。

 

 強敵。

 

「え、ゴローン!? 私の時はイシツブテとイワークの2体だけだったのに!」

 

 くりむちゃんが自分とのバトルの時にはいなかったゴローンの存在に目をまるくした

 

「何も不思議なことはない。俺たちジムリーダーはトレーナーの強さに応じて、使用するポケモンを選んでいるからな。強さの基準は、バッジの所持数。驚くかもしれないけれど、オレンちゃんはすでにゴールドバッジを持っているんだ。だから、小さい子だからって容赦はしない。その実力に応じたポケモンを選出して、俺たちは出しているんだ」

 

「なっ!? オレンちゃん、もうバッジもってたの!?」

「う、うん。黙っててごめんね?」

「いいけど………どうして言ってくれなかったの?」

「だ、だって………これ、ナツメさんからもらったものだけど、本来の実力でとれたものじゃないから………」

 

「なにやら言いたくない事情があるらしいが、ジムリーダーが認めているなら、それは君の実力だ。全力を出し切って俺に挑んで来い!」

 

 

 タケシさんが熱くわたしを歓迎する

 本当に、言いたくないんだよ。とくにくりむちゃんには。

 

 色仕掛けならぬ猫仕掛けで手に入れたなんて知られたら、くりむちゃんが行く先々のジムで色仕掛けをしてしまいそうな気がするのだ。

 

 それは何としても避けたい。

 

「さ、バトルに集中だ。ミニリュウ。いけるね?」

「みゅーっ♪」

 

 

 ゴローンにはレベルで負け、素早さで負け、攻撃力で負けている状況。

 ここでミニリュウを交代することもできるが、それはしない。

 

 ミニリュウはトレーナー戦での勝ち数が極端に少ない。

 

 ドラゴンタイプという大器晩成型。カイリューに進化しなければ足を引っ張ることも多いだろう。

 

 それに、体力逆Vというハンデも抱えている。

 

 ミニリュウは少しずつ強くなっていくしかないんだ。

 

 

 しかも、覚えている技は“でんじは”や“たつまき”“まきつく”といったゴローンにはほとんど効果をなさない技しかない。

 

 厳しい戦い以前に、この状況で勝てるとは思えないのだ。

 

 悔しいだろう。

 悲しいだろう。

 弱い自分が嫌になるだろう。

 

 それでも、わたしは根気強くキミに付き合うよ。

 

 いつか大きな翼で大空をはばたくその時まで。

 

 

「ミニリュウ。“りゅうのいかり”」

「りゅー! みゅーっ!」

 

 

 ちいさな角に“りゅうのいかり”のオーラが集中する

 

「ゴローン! “いわおとし”だ!」

「ゴンローン!」

「み゛ゅ………!」

 

 それに対し、タケシのゴローンは上空に出現させた岩をミニリュウにぶつけることで

 技を中断させた

 

「突っ込めミニリュウ! “りゅうのいかり”!」

「みゅー!!」

 

 降り注ぐ岩をよけながら、あるいは体に当たりながら、ゴローンに肉薄する

 今度は角に溜めたオーラを霧散させることなく、ゴローンに向かって“りゅうのいかり”を放出した

 

「ンーゴォ………!」

「みぎゅぅ………」

 

 まともにくらったゴローンはそれでも怯まずに肉薄するミニリュウを鬱陶しそうに弾き飛ばす

 

「ぬぅ………」

 

>やはり厳しいな

 

 うん。将来性は十分なんだけど、現状の戦闘力が不足しているのはいかんともしがたいね

 

>とはいえ、今は我慢の時期だぞ。わかっていてワタルからタマゴをもらったんだからな

 

 その通りだよ。

 

 固定ダメージをくらったといっても、半分程度しかダメージはない。

 

 それよりもミニリュウの受けるダメージのほうが多い。

 

「“りゅうのいかり”!」

「みゅーっ!」

 

 

 だが、ミニリュウにできる攻撃手段といえば、りゅうのいかりしかない。

 愚直にでも、そうするしかないのだ。

 

「させるな! マグニチュード!」

「ンゴォオオオオ!!!」

 

 振動する地面。

 

 もともとミニリュウは地面をはい回るタイプのポケモンだ。

 地面からの振動は直接腹と頭に響くはず。

 

 さらにはミニリュウの真下から突き出す隆起した地面

 

「みゃぁーっ!!」

 

 三度目の“りゅうのいかり”も、再び発動前につぶされてしまった

 

 突き上げられたミニリュウは宙を舞い、そして地面に激突する。

 

「ミニリュウ!!」

 

 砂塵が舞い、わたしの声が木霊する。

 しかし、その声に応えるものはなく、ただただ、沈黙が場を貫いていた

 

 砂煙が晴れたとき、そこにいたのは、力なく横たわるミニリュウの姿。

 

 

「ミニリュウ、戦闘不能!」

 

 そして無情にも突き付けられる現実。

 

 かろうじて気絶は免れているものの、ミニリュウは戦闘を継続できるほどの体力は残されていない。

 

 悔しかろう。

 惨めだろう。

 それでも、現実は受け止めなければならないものだ。

 

 

 今までのバトルは、ほとんどの場合、相手が状態異常に陥っていたり、体力を削ってもらったりしていた。

 お膳たてをしてもらわなければ、ミニリュウはほとんど勝てないのだ。

 

 横たわりながらも、必死で涙をこらえている小さな小さな勇者を、わたしは迎えに行く。

 

 

「お疲れ様」

「………み」

 

 涙をこらえて、まっすぐにわたしをみつめるミニリュウ。

 

「わたしを信じて最後まで戦ってくれてありがとう」

「………み」

 

 まばたきをすると、はらりとしずくが零れ落ちる。

 

「わたしの指示不足にも原因はあるかもしれないけれど………君は、弱い」

「………」

 

 先ほどのバトルでさんざんに意識させられた現実を、再認識させる。

 悔しそうにうつむいた。

 

「強くなりたい?」

「………」

 

 うつむいた首で、さらにこくりとうなずくミニリュウ。

 

「そっか。でも、今は辛いけれど、今は悔しいけれど、それを力に変えて、いつかまた、ここにいる人たちをあっと驚かせてやろうよ」

「………みぃ」

 

「ミニリュウ。キミは、最強のドラゴンタイプだ。大空を翔る猛々しい竜だ。今は弱くて辛い時期かもしれない。でも、君は何よりも強くなれる素質を持っている」

「………」

 

「レンジのポケモンたちはみんなすっごく強いでしょ?」

「………みぅ」

 

 レンジのポケモンたちは、育てた年季が違う。

 ミニリュウはレンジのポケモンたちを見て育っている。

 

 雄々しく凛々しい“ウインディ”を。

 それと互角に戦う“イーブイ”を。

 自分を支えてくれる“ピクシー”を。

 大空をはばたく“ピジョット”を。

 ミニリュウの頼れる幼馴染である“タツベイ”を。

 

 

 ミニリュウはそんな彼らを思うと、自分との“格”の違いを思い知らされる。

 

「君も、そうなれる」

「………み?」

 

 わたしに懐疑的な視線を向けられる。

 ゴローンを相手に、何もできなかった自分が、どうやってそこにたどり着けるのか。

 背中を追うことさえできないような差を、どうやって埋めるというのか。

 

 完全に打ちのめされた今。そのビジョンを思い浮かべることができないのだ。

 

「ドラゴンタイプは、辛い時間が長いポケモンだ。最初から強いポケモンなんていない。だけど、弱さを忘れるポケモンは愚かしい。弱者の心を知れる、心優しい竜に育ってほしい。どうか忘れないで。弱くて悔しい、その気持ちを。弱者の誇りを」

「………みぃ」

 

「そして、今度は強くなって、もう一回ここに来よう。もう一回戦って、今度は勝てばいい。そしたら、今度は一緒に祝勝会だよ。」

「………みっ!」

 

 ミニリュウは、カイリューに進化するまで、時間が必要だ。

 弱者でいる期間を受け入れ、忍耐強くそれに付き合い、やがてはだれにも負けない心優しき竜になる。

 気合を新たにした桃色の小さな勇者は、その悔しさをばねに、もっともっと強さにどん欲になれるだろう。

 

「ただし、負けを受け入れたらダメだよ。『次は絶対に勝つ』この気持ちを切らさないようにね」

「みゅーっ!!」

 

「よし、おいで」

 

 ミニリュウを抱き上げ、首に巻く。

 

 3歳児ボディだと、ミニリュウ一人でかなり重い。

 イーブイとわたしの身長差は30㎝程度しかないし、ミニリュウは全長1m

 

 へたすればわたしよりも体長が長い。

 

 ミニリュウは大きくなったら2mを超えるみたいだし、そうなると首に巻くことはできなくなっちゃうだろうな。

 

 

「なかなかいいミニリュウじゃないか」

「当然だよ。わたしのミニリュウなめんな! 強くなってからそのゴローンをぶっ倒しにもう一回このジムに挑戦しに来るんだから!」

「みゅー!」

 

 タケシがミニリュウの根性をほめてくれる。ミニリュウを『かくごしろよ! ぜったいにたおすんだからぁ!』とでも言いたげにわたしの肩から叫び声をあげた。その意気だ

 

「さあ、次はどのポケモンで来るんだい?」

 

 タケシがゴローンを傍らで待機させ、次のポケモンの召喚を促す。

 

 バタフリーはステロのダメージでまた傷つけさせてしまうことは避けたい。

 ピカチュウは行動不能。ミニリュウもしかり。

 

 手持ちに残るは………キミだよ

 

 ボールホルダーに手をかけ、モンスターボールを放る。

 

「行けるね、フーディン!」

「ディン!」

 

 

 二本のスプーンを持ったキツネの悪魔。

 フーディンである。

 

 レベルは17で覚えている技はテレポートとねんりきのみ

 

 

 防御力とHPには不安が残るものの、素早さと特殊攻撃力はどちらもカイリューをも上回る。

 

 カイリューは物理特化の攻撃力が種族値134族であるのに対し、フーディンの特攻は135族とそれすら上回るのだ。

 

 ゴローンとはレベル差があっても、素早さでは確実に勝り、攻撃力も勝る。フーディンに負けはない、と思う。

 

 

 頼りになるよ、本当に。

 

 レベル差があっても、向こうはゴローニャに進化前。

 こちらはフーディンに進化した後だ。

 

 実力の能力値でさえ上回っている可能性がある。

 

 

「ディッ!?」

 

 まずはステロのダメージを受けるフーディン。

 防御力が紙でできているだけあって、かなり効くようだ。

 

 だが、それで行動不能になるような腑抜けではない。

 

「先制行け! “ねんりき”!」

 

「フー………!」

 

 フーディンが目をつむってスプーンに念を送ると、ゴローンが紫色のオーラに包まれる。

 

 そのまま、ゴローンを持ち上げる

 

「ンゴォ! ンゴォオ!!」

 

 苦しそうにもがくゴローン。

 空中にいちゃ行動もできないだろう。

 

「振り払うのはむりか………なら、“がんせきふうじ”!」

 

 空中でもがきながらも、ゴローンはタケシの指示に従って岩石封じを発動する。

 フーディンの真上に岩石が出現。このままではフーディンが押しつぶされてしまう

 

「ねんりき解除。“テレポート”で背後をとれ!」

「ディ!」

 

「なに!?」

 

 岩石封じは空を切る。

 

 フーディンがいた場所に岩石が突き刺さった。

 同時にゴローンも地面にたたきつけられる。

 ガバッと顔を上げたゴローンだが、目の前には当然誰もいない。

 

「ゴローン! 後ろだ! “ころがる”攻撃!」

 

「超能力の前では回転など無意味としれ! “ねんりき”!!」

 

 

 転がるが発動する前にフーディンはゴローンの体を浮かせ………やはり念力じゃきつそうだな。せめて“サイコキネシス”あたりだったらもっと強くゴローンを拘束できたんだろうけど、しょうがない。

 

「ゴロォ! ンゴォ! ゴロァアア!!!」

 

「たたきつけて黙らせて!!」

「フーッ!」

 

 念力で思い切り地面にたたきつける

 

「“がんせきふう―――”」

「“テレポート”」

「またか! うしろだゴローン!」

 

 何度でも繰り返してやるよ。

 対応なんかさせない。

 

「ゴロァ!?」

 

 うしろにコロンと転がろうとするゴローンに対し、そのごつごつとした背中にコツンとスプーンを添えるフーディン。

 

 さながら死刑宣告のように。ニッと笑ったフーディンの髭が揺れる。

 硬直するゴローン。

 

「そのままねんりきで沈めちゃえ!!」

 

 敵に行動をさせない。

 ターン制のバトルではないのだ。なんだってするさ。

 ゴローンをスプーンで掬い上げるような動作をして、念力でジムの天井近くまでゴローンの巨体を持ち上げ、ねんりきを解除する。

 

「ゴロ!? ンゴァアアアアアアア!!!?」

 

 ゴッガァアアアアアン!!!

 

 

 と爆音を響かせながらバトルフィールドに墜落するゴローン

 

 何度も何度もねんりきをくらい、地面にたたきつけられ、果たしてゴローンは………?

 

「ゴローン戦闘不能。よって勝者、チャレンジャー“オレン”っ!!!」

 

 目を回して気絶していた。

 

「ッッッシャ!」

「みゅーっ♪」

「ブーイ!」

 

 拳を突き上げて飛び上がるわたし。

 イーブイとミニリュウも喜びをジャンプとくねくねで表現している。

 

 ミニリュウがくねくねするたびにわたしの重心がズレておっとっとってなっちゃう!

 

 

 何はともあれ! これで、ニビジムクリアだよ!

 

>おめでとう、オレンちゃん

 

 ありがとう、レンジ。レンジも今度はタケシに挑戦したらいいよ

 

>気が向いたらな。エリカ様と戦うまではお預けだ。

 

 そか

 

 

 

「すごい! すごいよオレンちゃん!」

 

 くりむちゃんがわたしの勝利を喜んで駆けつけてくれた

 

 そのまま抱き上げてわたしを抱きしめてくれた。

 おっふ。膨らみかけの胸とコツコツした肋骨の感触がわたしの肋骨を駆け巡るぜ!

 

「えへへ、勝ったよ! ちゃんと見てた?」

「見てた見てた! みんなすごく強いよ!」

 

「みゅー!」

 

「うんうん、今回は負けちゃったけど、キミもいっぱい頑張ったね、ミニリュウ」

「みゅりー!」

 

 やさしくミニリュウの頭をなでるくりむちゃん。

 

 ミニリュウは悔しそうだけど、チームとしての勝利はうれしいようだ。

 それならよかった。ふてくされなくてよかったよ、ほんと。

 

 

「すごいなぁオレンちゃん。とっても参考になったよ」

「そっか。それならよかったよ。今度はレッドさんがタケシさんに挑戦する番だよ。今度こそ勝たないとね!」

「ああ。だが、今はまだまだ修行が足りないからな。もう少しだけトキワの森でヒトカゲを育てたら、もう一度ここに来よと思う」

「それがいいよ。あー………つかれた」

 

 

 わたしもレンジも、バトルで叫んで熱くなっちゃったから、のどが渇いてきた。

 

 水筒からおばあちゃん特製のアツアツのお茶を取り出してぐいっと飲む。

 すると、タケシがパチパチと手をたたきながらこちらに歩いてきた

 

「見事だったよ、オレンちゃん。まさかここまでやるなんて思ってもみなかった。キミのポケモンみんながキミのことが大好きで、キミに応えようとしてくれていた。いいトレーナーの素質を持っているよ」

 

「ありがとう」

 

「正直、俺は君のことを見くびっていたらしい。3歳児だと思って………決して油断していたわけではないんだがな………正直、やられたよ。完敗だ」

 

 握手を求められたので、素直に応じる。

 

「これがグレーバッジ。受け取ってくれ」

「はい!」

 

 ごつごつしたバッジを手に入れた!

 

>テッテレー!

>テレテッテレー!

>デンデ――ン!!

 

 たしかにそんなBGMが流れそうだけどさ。脳内ファンファーレはやめてよレンジ。

 

 

 

               ☆

 

 

 

 

 ジム戦も終わり、ポケセンでチンチンチロリン♪してもらったから、ニビシティからタマムシに戻ろうと思う。

 

「えー! もう行っちゃうの?」

「うん。でも、また会えるよ。何かと縁がありそうだしね」

 

 

 なにせ、わたしとレンジがちょっかいを掛けに行くからね。

 メインヒロインと主人公の行動は把握していたほうが、より面白おかしくポケモンの世界を堪能できるってもんだ。

 

「じゃあね、クリムちゃん! レッドさん!」

「ああ、また会おう!」

「今度会ったら私とバトルしてね!」

「うん! 約束だよ!! フーディン、お願い」

 

 

 こうして、ちゃんとしたジム戦でバッジをゲットすることができました。

 

 さて、これでトレーナーズスクールでも自慢できるぞ

 

 

……………

………

 

 

「おばーちゃんただいま。バッジゲットしたよ!」

「おやまあお帰りなさいオレン。よくがんばったね」

 

 

 ああ、我が家は落ち着く。

 

 

 


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