3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第28話 3歳児は成長を実感する

 

 

「コッコッコッコ! コキッ!」

「あわわわわ!」

 

 

 コイキングを召喚してどや顔のくりむちゃん。

 

 もう………なんなのこの子。

 リーグの関所を色仕掛けで突破しようとするし、森に入って頑固になって帰れなくなるし、詐欺師に騙されてコイキングを買わされるし!

 

>であった当初からアホの子だな。

 

 そう! 残念なんだよ、かわいいけど残念!

 

「ふっふっふ、あまりの珍しさに声も出ないみたいね」

「いや、そんな………」

「さあ! オレンちゃんがポケモンを出す番だよ!」

 

 

 聞いて! ねえ、聞いて!!

 

「ああ、もう! ミニリュウ!」

「みゅー♪」

 

 

 わたしのバッグからミニリュウが這い出てくる

 

「いいかいミニリュウ。あのコイキングはね、何もできない。言わば的だ」

「みゅ!」

「だからって余裕な顔をしたらダメだ。ミニリュウには教えてあげるけど、あのへっぽこコイキングも最強足りえるポテンシャルを持っている。あの鯉は、進化すると龍に化けるんだ。」

「みゅ?」

 

 わたしの話が理解できないようで首を捻るミニリュウ

 

「あの弱い姿をよく見えておけ。アレは、お前を脅かす化け物に成長すると心得ておくんだ。未だに弱いお前が慢心すると、相手が逆襲して来たら、今度はお前が死ぬぞ」

「………みゅ!」

 

 

 

 ミニリュウは幼いながらに、オレンちゃん、レンジと行動を共にするポケモンだ。

 当然ながら、レンジのポケモン、ピジョットがロケット団に撃たれたことも知っている。

 ピジョットは今のミニリュウに比べたら断然に強い。

 そのピジョットが床に臥せているのだ。

 

 自分の弱さを見つめなおし、弱さを受け入れて、弱いながらに頑張ってきたミニリュウが、何もできない的に対して慢心してしまえば、この子は成長などできない。

 

「相手が弱くても見下すな。お前は弱い。だからこそ強くなれる。全力で行くぞ」

「みゅー!」

 

 

 コイキングを見下すな。奴は化ける。ミニリュウは弱い。だが、お前も化ける。

 現在の地力はお前の方が上だ。だが、油断だけはするなよ。

 

 

「GO! ミニリュウ! あの天狗っ鼻をぽっきんちょにへし折って差し上げなさい!」

「その大口も叩け無くしてあげるんだから!」

 

 デュエルが始まる!!

 

 

「おうさま、“跳ねる”!!」

「ミニリュウ、“たつまき”!」

 

 

 ミニリュウは小さな角に力を溜めて、一気にそれを放出すると、小さなつむじ風が発生する

 

「みゅりーー!!!」

 

 それは徐々に規模を増し、一筋の竜巻となる

 

「コココココ! コキィー!」」

 

 その豪風にぶち当てられたコイキングは空を舞う

 

「追い打ちかけて! “たたきつける”!」

 

 その竜巻の流れに沿うように、龍が空を舞う

 

「そんなのあり!?」

「ポケモンバトルは何でもありだよ! 行けーミニリュウ!!」

 

 

「りゅー、みゅうー!!!」

 

 

 尻尾が白く光を放って力を溜め、バネのような動きでコイキングを真下にたたきつけた

 

 バゴン! といい音を出して弾き飛ばされたコイキングは、勢いよく地面に激突する

 

「ああっ! おうさま!!」

 

 

 もうもうと土煙が視界を遮り、ミニリュウがとぐろを巻きながら地面に着地。

 

 

「よくやった」

「みゅ!」

 

 にっと笑いながらミニリュウの頭に手を乗せる。

 わたしは元が男だからね。今もだけど。

 

 どうしても素に戻るとレンジの性格が反映されちゃうなぁ。

 オレンちゃんの時はもっとしっかりしないと。

 

 

「よし、いったん戻って。ミニリュウ。」

 

 にょろにょろとミニリュウがわたしの首にまきつくと

 土煙の中からコッコッコとコイキングの跳ねる音が聞こえる

 

 

「むー! 何もさせてもらえなかったうえにポケモンも戻された! 今度はどんなポケモンを出してくれるのかな? さっきは油断しちゃったけど、今度はそうはいかないんだから!!」

 

 どこからその不思議な自身が湧いてくるのかヒジョーに気になるところだけど

 その自信を粉々にするために、オレンちゃんは頑張るよ

 

 とはいえ、勝ち格の試合じゃつまらない。負ける気はないけれど、少しだけ経験を積ませるという理由もあるが遊んじゃおう

 

「GO! 刺身!!」

「コッコッコッコ!!」

 

 

 わたしは地下水の下たる場所に刺身を繰り出した!

 コイキング対決だ。思う存分、刺身を繰り出してやるさ

 

「んな!? さすがオレンちゃん! オレンちゃんも幻のポケモン、コイキングを捕まえてたんだね!」

「エリカお姉さまのジムの庭園にいっぱいいるよ」

「ええ!!?」

 

 

 もちろん、くりむちゃんに現実を見つめなおしてもらうために

 感心したようにわたしを見つめていたくりむちゃんだけど、驚愕して目を大きく見開く

 

「くりむちゃん。コイキングは水辺ならどこにでもいるポケモンだよ。」

「ええーーーーーー!!? く、クーリングオフは!?」

「生ものはうけつけていません。諦めよう」

「そ、そんなぁ~………」

 

 

 ガクリと膝をつくくりむちゃん。

 その近くでビタンビタンと跳ね、「コッコッコ」と声を出すコイキングに哀愁が漂うよ………

 

 

 前のめりになり、地面に手をつくくりむちゃん。

 自分がおじさんに騙されたとしって、あまりの悔しさにポロポロと涙を流す。

 強く生きるんだよ

 

「そ、そうだ、戦闘力は強いかもしれ―――」

「コイキングは雑魚だよ」

「うわあああああん!!」

 

 実際の戦闘力はまだミニリュウと戦っただけ。

 何もわからないくりむちゃんは期待を込めて顔を上げた瞬間。

 わたしの一言で絶望に顔を染め、泣きだした

 

 この表情。ゾクゾクする

 

「で、でも! オレンちゃんだってコイキングを持ってるじゃん!!」

「うん。わたしはコイキングを育てるよ」

「な、なんで? 自分で弱いって言ったじゃない」

「コイキングは、ギャラドスに進化するからね。カントー地方に存在する水タイプの中じゃ、最強クラスになる。持ってて損はないどころか、プラスになるから。育てる甲斐はあるよ」

 

 進化したら強くなることを知ってホッと息を吐くくりむちゃん。

 

「そうなんだ………だったら、あのおじさんが言ってたこともあながち嘘じゃないんだね」

「いや、くりむちゃんは普通に騙されているよ。進化していないコイキングはただのクソザコナメクジだよ」

 

「うえええ!!?」

「だって、跳ねることしかできないんだよ? どうやって経験を積ませるのさ」

「そ、それは………えーい! おうさま! がんばって!!」

 

 うわっ! コイキング任せにしやがった!

 わたしは嗜虐的な笑みを浮かべて命じる

 

「だったらこっちの独壇場!! 刺身! たいあたり!!」

 

「コッコッコ!」

「コキーッ!?」

 

 

 コイキングに弾き飛ばされるコイキング

 コイキングは地下水の滴る洞窟を滑りながら体制を立て直し、コイキングを睨みつけた

 コイキングはその視線を受けて「コッコッコ」と嘲り笑うように声を出す

 コイキングはコイキングを睨みつけたままビタビタと跳ねながらコイキングに向かって体当たりを仕掛けた

 ビタビタ、バタンバタンとコイキングのコイキングによるコイキングのための仁義なき戦いは幕を上げ

 

「あ、あれ、どっちがわたしのコイキングだっけ?」

「お、おうさま! どっち!!?」

 

 

 わちゃわちゃと攻撃を繰り返すコイキングたち。はねる、体当たり、たたきつける。技ではなくただの物理攻撃だ。

 暴れているだけだ。

 次第にコイキングたちの体力が切れ、同時にノックアウトした

 

 

「こりゃどうやって鍛えりゃいいのか、わからないね」

 

 ボールから出る光線をコイキングに当て、自分の刺身を回収する。

 

「全然バトルらしいバトルじゃなかったよ………」

 

 くりむちゃんの方もがっくりと肩を落としながらコイキングを回収していた。

 

 

「それじゃ、これがちゃんとしたバトルになるよう、どっちが優秀なギャラドスを育てられるか。競争しよう」

「うん! きっかけはなんであれ、大事なポケモンだもん!」

 

 

 うむ、とても色仕掛けでポケモンリーグの関所を突破しようとしてた女の子とは思えない純粋なセリフだ

 

 まだ地力ではくりむちゃんのコイキングには勝っていないわたしのコイキングだけど、育成力に定評のあるわたしがコイキングを最強の龍にしてみせる

 

「GO!ミニリュウ。行って!」

「みゅう!」

 

 次は、桃ミニリュウの出番だ

 

「おねがい、フッシー!!」

「ソーウ!」

 

 

 くりむちゃんが繰り出したのは、フシギソウ

 

「進化したんだ」

「もちろん。そっちだって、そのミニリュウちゃん、だいぶ大きくなったみたいだね」

「うん。そろそろ、首に巻くのがつらくなってきたところだよ」

「み!?」

 

 

 驚愕の瞳でわたしをみつめるミニリュウ

 え、当然じゃん。2m以上あるミニリュウの体重なんて10kgは余裕で超えているよ

 3歳児ボディにはきついってばよ

 

 

「甘えたい盛りなんだねー。そんなにポケモンに好かれるオレンちゃんがうらやましいよ」

「愛情はたっぷり注いでいるからね。さて、それじゃあ始めようか。並の鍛え方じゃわたしのポケモンたちには敵わないってことを思い知らせてあげるんだから!」

 

 羨ましそうにわたしのポケモンを見てもあげないからね

 

「フッシー! つるのむち!」

「もう愚鈍なミニリュウじゃないよ! たつまき!」

 

 

 ミニリュウは竜巻を呼び、つるのムチを遮る。

 最初にくりむちゃんと戦ったのは、攻撃手段がまきつくしかなかったあの時だけだ。

 

 今は違う

 

 

「しびれごな!!」

「させるな! でんじは!!」

 

 バヂッ!!

 と互いの身体にはじける電気のようなみのが見える

 

 チッ、指示のタイミングが遅かったか………

 

 ミニリュウとフシギソウは、同時にマヒしてしまったようだ

 

 だが、まったく問題にならん

 少々動きが鈍ったところで、ミニリュウには関係ない。

 

 

「りゅうのいかり!」

 

 ミニリュウの角が輝き、光線が飛び出す。

 

 りゅうのいかりは固定ダメだ。

 体調に問題があろうとなかろうと、技が繰り出せれば問題ない。

 

 

「フッシー!」

 

 鈍足なうえに体がしびれて上手く動けないフシギソウには、直撃だった。

 

 

「くっそー! はっぱカッター!」

 

 それに、フシギソウは物理、特殊で言えば物理型だ。

 補助技でじわじわ削る草タイプならではのいやらしさが持ち味ではあるが、メインウエポンであるつるのむちも、葉っぱカッターも。

 物理技なのだ。

 

 

「みぎゅ………!」

 

 そしてミニリュウの特性は夢特性である『ふしぎなうろこ』

 これは状態異常時に防御力が1.5倍になるというふしぎなうろこなのだ。

 

 

 いくら体力逆Vのミニリュウでも簡単に耐えられる

 

 

「ミニリュウ、りゅうのいかり!!」

 

「また!? ワンパターンなんじゃないの!?」

「ワンパターンと言われても、一番有効な攻撃手段がりゅうのいかりなんだよね!」

 

 角に光を溜めるミニリュウを見て青ざめるくりむちゃん

 さすがに2発目は耐えられるかどうかわからないだろう。

 

「やどりぎの………」

「おそい!!」

 

 くりむちゃんの言葉に反応して背中からポポンと種子を飛ばすフシギソウ

 

 それらを無視してミニリュウのりゅうのいかりが炸裂した

 

「やったか!?」

 

 なんてフラグを自ら立てていく。

 

 フシギダネから進化しているんだ。

 油断なんかしないために、むしろ自分からフラグを建てに行った

 

「ゆだんしないでねミニリュウ! 追撃に竜巻!!」

 

 砂塵で様子が見えない中、ミニリュウの竜巻がフシギソウに飛んでいく。

 

 

と、同時に

 

「みゅ!!?」

 

「お!」

「ま、まにあった!!」

 

 

 

 くりむちゃんが飛ばしていた“やどりぎのたね”がミニリュウに絡みついていた

 

 移動阻害に1/8ダメージ、そして相手の回復。

 

「やっぱり一筋縄ではいかないか。ミニリュウ! たたきつける!!」

 

「みゅー!!!」

 

 だが、フシギソウの健闘もそこまで。

 とぐろをスプリングのようにして飛び上がり、全身を使った尻尾によるたたきつけるで、脳天を撃ち抜かれ、フシギソウは意識を失った

 

 

「フシギソウ戦闘不能! よって勝者、オレンちゃんです!」

 

 

 ミニリュウは、初の敗北を喫した相手との再戦に、勝利したのであった。

 

 


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