教師生活を始めて早3ヶ月。俺がこの世界に来てからも3ヶ月のそんなある日。
「うふふ、オレンちゃんは本当に物知りですね」
「まぁ、ね。早くおばあちゃんに恩を返して楽をさせてあげたいんだけど、そううまくはいかないか。」
授業が終わり、俺はエリカ様の部屋に呼ばれていた。
なぜって?
着せ替え人形にされるために。
そのために、今は一緒にお風呂に入っているところだ。
浴槽の中でエリカ様の膝の上に座って、エリカ様はそんな俺のことを抱きしめてくれている
背中には柔らかい感触と共に、すこしだけツンととがった感触もある。
最高だ。
「ねえ、10歳にならなくてもトレーナーになる方法ってないの? ひゃう!」
俺が3歳児だからって変なところを触らないでくださいエリカ様。
我慢していたモノが爆発してしまいます。
といっても、精通もしていないからおっきくなっても何も出ないけどね。
あっ、引っ張らないで!
「そうですねぇ………方法はありますよ。」
「どうするの?」
「オレンちゃんなら心配いらないと思いますが、ポケモンリーグに飛び級認定試験があります。かなり難しい試験ですが、それを受けて合格すれば、トレーナーIDがもらえますよ。」
「あー………カードみたいな奴だね」
「そうですわ」
トレーナーカードを見れば、残金とかプレイ時間とかバッジの個数とか捕まえたポケモンの数とかがわかるはずだ。
それが現実になったのなら………個人情報が記載されているのだろう。
住所だとか、郵便番号だとか、そういうの。
「本来なら10歳で自動的に配られるものなので、それまでに基礎知識を固めるのが普通ですわ」
「その辺の知識はバッチリだからね。必要ないかな。」
だってカロス地方までポケモンのことを知ってるんだよ? それも、3歳児である俺が他の子供たち(年上)に教えられるほどに。
「ええ。なので、明日は一緒にポケモンリーグ協会に申請しに行きましょう。」
「いいの? ジムのお仕事は?」
エリカ様に抱かれたまま振り返る。
エリカ様はニッコリと微笑んで俺の頭に自身のほっぺを乗っけた。
上気した頬がぷにぷにと気持ちいい。
「いいんですよ。挑戦者なんてめったに来ませんし、ジムトレーナーだって自分のやるべきトレーニングはわかっているはずです。私にだって都合はあるのですから、その時は挑戦者の方に待ってもらいましょう」
今の私はオレンちゃんに夢中ですしね♪ と俺のへそのあたりを細い指で撫でるエリカ様。
おっふ。ゾクゾクする
☆
というわけで、トレーナーIDを発行してもらえました。
いやあ、簡単だったよ。
エリカ様の持つピジョットでポケモンリーグまでひとっとび。
エリカ様に後ろからしがみついて、ついでにおっぱいも堪能した。
その後、試験官のカンナさん(四天王じゃねえか!)にテストしてもらって、模擬試験としてカンナさんのジュゴンでラプラスと戦い、さすがに勝てなかったけどカンナさんに合格を貰いました。
さすがは四天王。エリカ様のラフレシアよりもより洗練された強さを持つラプラスとジュゴンには脱帽だ。
チャンピオンのワタルにもあったけど、なんだかカンナさんには苦手意識があるみたいだった。
カンナさんは氷タイプの使い手だからね。
エリカ様は俺の付き添いとしてずっと俺の側に居てもらった。
だから手を握っていなくても迷子になんかならないってば。
「これでレンジさんもトレーナーですね♪」
「うん、連れてきてくれてありがとう! エリカ様!」
イーブイとピッピのモンスターボールに俺のトレーナーIDを書き込み、晴れてイーブイとピッピ。さらにはピジョンとカビゴンも俺のポケモンとして認められることになった。
「それでは、今度は“オレンちゃん”の登録も済ませましょうか♪」
「は?」
☆
というわけで、トレーナーIDを発行してもらえました。
いやあ、難しかったよ。
まさかエリカ様があんなことを言いだすなんて。
ワタルがそれに難色を示すのも当然だって。
だって、誰も2つのIDを持つなんてしたことがないんだよ?
世界初だよ世界初。エリカ様がうるうるした目で「ダメですか?」と俺に女装させた時と同じ眼をしてワタルを落とし、無事テストを受けることになった。
試験官のワタル(チャンピオンじゃねえか!)にテストしてもらって、模擬試験としてワタルのカイリューでボーマンダと戦い、なんとか互角の勝負をしてワタルに合格を貰いました。
さすがはチャンピオン。エリカ様のフシギバナよりもより洗練された強さを持つカイリューとボーマンダには脱帽だ。
四天王のキクコにもあったけど、なんだかずっとオーキド博士の愚痴を言ってたみたいだった。
キクコさんはゴーストタイプの使い手だからね。オーキド博士が呪われないか心配。
エリカ様は俺の姉としてずっと
だから手を握っていなくても女装なんか脱がないってば。
「これでオレンちゃんもトレーナーですね♪」
「そうですね、なんでこうなったのでしょう、エリカお姉さま。」
オレンちゃんの手持ちには、何のポケモンもいません。どうしてこんなことに?
あ、トレーナーカードの性別の欄にシールが貼ってある!
一見では男だとばれないようになっている! なんて手の込んだトレーナーカードなんだ!
「エリカお姉さま。2度も筆記試験と実技試験をして疲れました。」
「ええ。でも、これでオレンちゃんもトレーナーです♪ 草トレーナーとして、いっしょにがんばりましょう?」
オレンちゃんは草トレーナーになる運命らしいです。
エリカ様は自腹でわたしの試験代を二人分も払ってくれた。だから文句なんて、時間を返せというくらいしかないよ。
わたしが疲れただけで、特に損はないからね。
オレンちゃんの分はともかくとして、レンジの分の受験料くらいはいつかお金を稼いでエリカ様に倍にして返すよ。
あれ? それってつまり二人分?
ワタルもカンナも、久々の飛び級試験が珍しくてリーグから出てきたキクコもシバも、女装したわたしがあまりにも女々しくてびっくりしていたよ。
「お前、本当に男なのか?」
「これでもついてるんだよね、おちんちん。」
七五三の着物スタイルで両手を肩の上で掌も上に向けて首をすくめる。
着物が擦れる。そしてブーラブラ。
「もういいよ。エリカ様のお人形やってて“オレンちゃん”にも慣れたから。もうどうにでもなれー♪ ってかんじ」
「た、達観してんなぁ………」
「そうだ、ワタルさん。この“オレンちゃん”にパートナーになるポケモンは居ないんだけど、選別でなんかちょーだい」
もちろんレンジのパートナーはイーブイだよ。ねー♪
でも、チャンピオンにこんな不躾なお願いしてもいいモノだろうか。
「うん? そうだなぁ。せっかく最年少トレーナーが二人もできたんだ。俺が厳選中だったタマゴを2つやろう。おそらく、隠れ特性だ。」
厳選中って………個体値とかいうあれですか。
とりあえずまだイーブイはレベル上げの最中だから努力値は適当に振っているだけだし、個体値は良個体値だったけど6Vって程ではなかったけど、厳選中のタマゴを貰えるのはいいことだ。
ちなみにスマホでイーブイを撮影して確認できたイーブイの個体値はこうだ。
H・28
A・12
B・30
C・31
D・25
S・ 4
こんな感じだね。
平均的なイーブイよりも鈍足であるが、特殊攻撃はマックスである。
この世界は現実だ。鈍足ならば走って鍛えるさ。いっしょにフリスビーすれば楽しいしね。
しかし、ポケモン勝負はまだまだ分からない事ばかり。何が起きるのかわからないから数字ばかり気にしていたらダメだ。
数字に出ないところも鍛えなければならないのだから。
ワタルはいったんリーグに戻り、パソコンから2つのタマゴを取り寄せた。
ワタルから頂いたタマゴは“レンジ”と“オレンちゃん”の分だろう。
「どちらかがミニリュウで、どちらかがタツベイだ。大切に育ててくれよ」
つまり、どちらも夢特性となると、カイリューは“マルチスケイル”ボーマンダは“じしんかじょう”
やべえ、どっちも強力だ。
とりあえず、産まれたらその時に考えよう、
「ドラゴンタイプは育つのは遅いけど、進化すればどんなポケモンよりも強力なポケモンになる。ロマンがあるだろう?」
ニヤリと笑うワタルに
フェアリータイプだぞ。ドラゴンタイプの技なんか効きません。
ん? カントーじゃノーマル? どっちなんだ? あれれ?
カロスのピクシーは突然変異でもしたのか!?
あっれえ?
「ありがとう、ありがたくもらうよ!」
「いつか俺に挑戦しに来ることを祈ってるぞ」
「うん、いつかこの子達でワタルさんを超えて見せる。その時にはすでに僕が大人になってて、ワタルさんがチャンピオンの座から降ろされていたりしてね」
「ははっ、年は取りたくないね。あ、筆記の成績表は後で返してやるから、もう少し待っててくれ」
ワタルさんはまだ24歳。まだまだ若いよ
☆
「ふぃ~、おばーちゃん、ただいまー。」
「あら、おかえりレンジ。試験はどうだったの?」
タマムシマンションに帰ってきたよ。
ハラハラしながら待っていたおばあちゃん。
いくら俺が3歳児離れしているとはいえ、心配なものは心配なのだろう。
「よゆーのよっちゃんで合格だよ。トレーナーの資格を手に入れたから、講師の授業で時給がほんの少しだけ上がるよ!」
「へぇ、それはよかったねぇ。」
まるで自分のことのように喜んでくれるおばあちゃん。
こんなおばあちゃんだからこそ、俺はおばあちゃんが大好きなんだ。
「ええ、すごかったんですよ、レンジさん。筆記の科目は全部満点! 大人だって間違えることもある問題もスラスラ解けちゃうんです!」
興奮したようにエリカ様がぐっと拳を握って俺を褒めてくる。
そんなたいしたことはしていないんだけどね。
因数分解とかグラフの問題とかもあったけど、あんなもん前世の知識があったら誰だって余裕だよ。
ほら、y=ax+b とか、むしろなつかしー♪とか思いながら解いてて面白かったし。
国語っつっても日本語だし。それ以外の強化はポケモンの知識とか。
このポケモンは何タイプ?
この技はどんなわざ?
このポケモンの弱点のタイプは?
ってね。
ちなみにピッピやピクシーはフェアリータイプだった。満点だったんだもの。それで正解なのは間違いない。
いくらスマホのステータスでフェアリータイプと表示されていても、FRRG時代のピッピはノーマルタイプなのだから、固定概念があるのだ。
しかしながら、俺が居るこの世界ではきちんと適用されていて、そういう補正もかかっているようで安心した。
「よくがんばったねぇ」
おばあちゃんは俺の頭を撫でる。
頑張った気はしないけど、うれしいものはうれしい。
「うん。でもせっかくトレーナーの資格を手に入れたんだ。講師の仕事をしながら、少しずつ旅に出てみようと思う。日帰りで。」
「危険じゃないかい?」
俺は旅に出なければならないのだ。まだ見ぬ世界を見てみたい。
この世界は広いのだ。行きたいと思った場所に行けるなら、自由に生きることが可能ならば、生きている内に行けるところを見てみたいのだ。
「大丈夫。僕には心強い仲間がいるからね」
「ブイ!」
俺の足元で相棒のイーブイが一鳴き。
頼りにしてるよ、相棒。
実はもう進化の石は自分の給料で4種類とも買っている。
月の石だってピッピがいつのまにかどこかから見つけてきた。
太陽の石は土地のせいか見つからなかったけど、それでもいい感じに石は揃っている。
しかしながら、イーブイは進化させていない。
なぜならイーブイが進化を拒んだからだ。
なぜかと聞いても、俺にはイーブイの言葉はわからない。ぴょんと俺の膝の上に飛び乗ってくるばっかりだ。
もしかしたら、進化したら俺よりも身体が大きくなって俺の膝の上に乗れなくなってしまうのが嫌なのかもしれない。
かわいい奴め。
ピッピはどちらかというと進化には積極的で、でも進化させるタイミングは俺に任せているようだ。
なので、教師として働く傍ら、レベル上げをしつつ、いい感じにピッピもバトルに慣れてきていたので、ピクシーに進化させたよ。
「ピックシー!」
ピクシーは強くなりたいという気持ちが強いらしく、本人の希望に沿って技構成を練っているところである。
ピクシーは普通ならばアシスト担当なのだろうが、このピクシーはフルアタックで行こうかと思う。
スロットの景品でわざマシンはしっかりと買ったからね
タマムシデパートにも買いに行った。
店員さんも初めは俺にわざマシンを売るのに難色を示していたけど、俺のトレーナーカードを見たらしぶしぶ売ってくれた。
さすがタマムシデパート。技マシンの品ぞろえもいい感じだね
いまのピクシーの技構成はこうだ。
“サイコキネシス”“10まんボルト”“かえんほうしゃ”“れいとうビーム”
まさかのフルアタックのピクシーで度胆を抜かしたるわ
しかもレベルは3ヶ月の間に36まで上がっている。
すでにお給料とおばあちゃんからのおこづかいで、必要な技マシンは揃っているんだ。
ピクシーの為にこのくらいはしてあげないとね。
イーブイに至ってはレベルが39である。
ピジョンもピジョットに進化したので、これで“そらをとぶ”が使えるはずだ。
シルフスコープだって買えた。ネット注文で最近届いたんだ。
コレでシオンタウンにゴースを捕まえに行くことができる。
「オン!」
さらには、こいつだ。
ガーディ。例の7番道路のボス。
この子もゲットしている。
お給料で買った10個のモンスターボールについてきたプレミアボールでゲット。
ついでに7番道路に生息するポケモンも全種類捕まえて『レンジのスマホ』の中に収納したよ。
ガーディはイーブイとは良きライバル関係である。
イーブイはかけっこ勝負でガーディにはいつも負けているようで、悔しそうだが、バトル方面ではまだイーブイが勝っている。
そろそろ進化しないとキツイかもしれないね、イーブイ。鈍足でも大丈夫なブイズは居ただろうか。氷タイプのグレイシアか?
でもマッハパンチで落ちちゃうんだよな。
しかもガーディに対してめっちゃ苦手タイプだし。
それはそのうちイーブイが自分で決めることか。俺が口出しすることじゃない。
ちなみにガーディのレベルは37である。
根性あるよ、こいつ。
「僕にはこの子達が居る。ちゃんとお夕飯までには帰ってくるし、仕事もちゃんと続けるよ。だから、ね、いいでしょ?」
「そこまで言うのなら、少しくらい遠くに行っても構わないわ。でも、気をつけるのよ。怪我だけはしないでね?」
「………ありがとう、おばーちゃん」
「うふふ、よかったですね、レンジさん♪」
俺の後ろで、エリカ様も嬉しそうに微笑んでくれた。
ところで、わたしはいつまで女の子の恰好をしなければいけないのでしょうか?
ねえエリカ様。僕の眼を見て? ねえってば。