その日は一年でも大事な一日。
私はその日に彼にチョコを渡せなかった。
悲しかった。
でも、いいんだ。
だって・・・・・・。
どうしよう。
私は考え込んでいた。
明日は2月14日。
バレンタイン!!
と興奮したいのだが、できない理由がある。
実は今テスト期間中なのだ。
もっとも、テスト直前に詰め込むような馬鹿なことはしない。
毎回、上位十位には入っているから勉強の心配はそんなにない。
では、どうして私は焦っているのか。
親にテスト期間中は遊ぶのは禁止といわれているのだ。
それは台所を使用することも含まれている。
だからチョコが作れないのだ。
どうしても諦められないから、彼にあげるチョコを作りたい、と親に言ったのだけど。
勉強の方が大事でしょ、それに今はテスト期間よ、と言われた。
私にとってはチョコの方が大事なことなのに・・・・・・。
何とか親の目を盗んで、と思ったのだけれど敢え無く撃沈。
そして、2月14日。
登校してみると、テスト期間ではあるけど女子は小包を手に持って走り回っている。
私の彼、の周りにも女子で群がりができていた。
本当なら堂々とあの中を突っ切っていって、「はい!!」って渡したいのに・・・・・・。
そんなことを思いながら、しょんぼりと席に座るとその群がりの中心から彼、の声が聞こえてきた。
「・・・・・・から俺の彼女のしかいらないんだわ。気持ちだけ受け取っとくな」
私は思わず涙が出そうになった。
そんなに、そんなにチョコを、私のチョコを期待してくれていたのかと。
でも、私は。
作れなかった。
どうして?
運が悪すぎる。
そんなことを思っていると、もう、涙が出てきてしまった。
ヤダ、こんな所、みんなには見られたくない。
でも動くこともできなくて。
すると、私の手をやさしく引っ張られる。
彼、だった。
私は彼に導かれ、空き教室に来ていた。
「大丈夫か?」
彼はやさしく声をかけてくれる。
そんな声で慰められたら、私、私。
もう涙は堪えられなかった。
そんな私を彼はやさしく抱擁してくれる。
頭を撫でてくれる。
「わかってる。お前のせいじゃない。」
彼は私の親が厳しいのを知っている。
「でも、やっぱりチョコは欲しかったんだよなー」
彼は残念そうに呟く。
私は申し訳なくて、悲しくて。
「だから」
と言って、彼は抱擁を解いて私の顎をクィッと指で持ち上げる。
次の瞬間、私の唇は彼の唇と重なっていた。
ファーストキスだった。
長い、長い、永遠に思えた。
彼の唇が離れたとき、銀の糸が繋がっていた。
「これで許してやる」
彼はそう言って私に笑いかける。
私もまだ目に涙があったけど笑った。
「行こう」
彼は私の手をとって歩き出す。
「あ、でも来年はキスでも許さないからな」
彼は笑いながら言った。
ふん、来年はキスよりすごいチョコを作るんだからね!!
大事なのは物じゃない。
気持ち。