艦隊これくしょん 第八九特別掃討隊任務報告書 作:読図パニキ
さて――と、鈴谷は考える。
提督が鎮守府に着任した。それは喜ばしい事だろう。
煩雑な書類仕事は行わなくて済む。戦闘に集中も出来れば、細かな調整も任せていい。責任の所在も明確だ。
故に皆、歓迎はしていた。
中でも取り分けその事を喜んでいるのは、朝潮であった。
「司令官、終わりました!」
から始まり、
「司令官、次は何をしましょうか!」
と来て、
「司令官、この朝潮、いつでもここに待機しています!」
である。しかも出撃が終わって。短針が頂点を跨いだ後に。
その様は熱意のある新入社員かはたまた委員長か――というか忠犬だ。忠犬朝潮。多分、駅で飼い主を待ち続けるどころかそこから南極でサバイバル。というかもう泳いで帰って来そう。高倉健もびっくり。
対する敷島旭――提督はと言えば、変わらず仏頂面だ。というかより激しい気がする。
本当はサイバーダイン社が作り出した人型決戦兵器なのでは、と真向かいに座る鈴谷も思わなくない。眼鏡を取ったらビームとか撃ちそう。冷凍ビーム。
なお彼女は今、秘書艦を勤めていた。
秘書艦という制度は、実戦闘に出る艦娘の意見を求めるという意味もあれば、単に裏方も裏方で仕事が多いというのもある。
出撃すれば弾薬や燃料、鋼材を消費するし、その補給を申請しなければならない。元は税金であり、当然ながらおいそれとはいかないのだ。
尤も今回に限っては、単に前任者から引き継がれていないローカルルールの引き継ぎだ。特殊な部隊であるが故に、他の部隊で行った事をそのまま活かせそうにない環境。
「で、ここら辺のは一応は装備実験って名目で申請する……と」
「なるほどな」
「覚えが早いじゃん、てーとく」
笑いかけても瞥視で応じられる。仕事が出来るのは結構だが、何とも面白味のない男である。
どうしたらこの鉄面皮を崩せるのかと、思案。鈴谷はその辺り、享楽的な性格であった。
或いは嗜虐心が滲む。開くなと言われた箱を開きたくなるパンドラが如く、好奇心を伴った悪戯心。なお好奇心猫を殺すというのは、原義からは正反対だ。本来は警戒心は猫のしなやかさを殺す――つまりは蛇足という意味である。
「鈴谷」
「何、てーとく」
「例えば戦闘によって損害を受けた場合……ここではどのように治療する?」
本来ならば、通常に修繕されるが――名目が装備の実験だ。まさか、戦闘記録の提出など出来まい。
以前、虚偽の戦闘を申請して鋼材・燃料を不正に利得した提督がいた。その関係か、戦闘記録の提出が義務付けられているのだ。艦娘の装備に登載した記録装置によりそれを行う。殊勲艦などはそうして決められる。
であるからこそ――そんな紐付きだからこそ、彼女達の行動は筒抜けになっていた。
活動領域が外海であり、他国との直接接触も有り得る為の措置だ。迂闊な行動が、対外関係の悪化を招きかねない。
「あー、そこらへんはまあ……でっち上げ?」
「……どういう事だ?」
「例えば発射性能とか実弾耐性試験とかね。艤装がどの程度の攻撃に耐えられるかを研究した――とか」
「……」
「実弾を利用した演習です――って言えば一応のお題目はできるって訳。重要なのは、そこじゃん?」
本来なら保有数として“存在しない筈”の艦隊である。ならば、本来の艦娘ならとても危険で行えないが必要なデータの収集を行っても不思議でない――――そんな言い訳。
ある程度筋は通るし、どちらにしても公には出来ない。そういう意味でも、秘匿性の高い部隊性質と合致しており都合が良かった。
その代わり、
「“
「……緊急性が薄い、と」
「そーそー、いやーこっちも深海棲艦と戦ったりするってのにさー」
「不公平じゃない?」と呟く鈴谷。
敷島は沈黙。静かに中指で眼鏡を引き上げた。
高速修復材とは、深海棲艦の体組織を元に作成された艦娘の自己治癒能力を高める作用を持つ溶液。使用すると飛躍的な回復を見せるが――しかし、貴重品でもある。希少ではないが、数に限りあるのでどうしても実働部隊に優先された。
「必要だった事は多いのか?」
「いや、あんまり必要でもないけど……あると安心感が違うんだよねー」
「……それだけが理由ならば、申請は不可能だろう」
まさかお守り代わりに寄越せなどと、そう都合よく確保できる話でもない。
これが所在部隊ならば鎮守府の提督が一元されている為(各部隊に長はいるが)その中でも調整が可能だが……。
第八九特別掃討隊は指揮系統が異なる。横須賀鎮守府の他の部隊から流されるというのは、非常に難しいものであった。
どちらかといえば、有事の際の連合艦隊や、或いはそれらを形成する戦隊に近い。有事の際の戦隊も、母港を様々とする艦娘を集めて構成される。直接の指揮権は鎮守府を離れて司令部が掌握するのだ。
とにかく、横須賀鎮守府に居ながらにしてその掌握下にない八九特掃隊にはその辺りの融通が利かない。
「あーあ……ま、どーにもならないか」
彼女の呻きを黙殺する敷島。音を立てる眼鏡のフレーム。
その様を眺めつつ、鈴谷の内である感情が鎌首を擡げた。焦燥めいたざわめきを有しながらも、危機感がまるで整わぬそれ。喜色を伴った暗い愉悦。
――この取り澄ました顔を歪めてみたい。
――石を持ち上げて暴き立てたい。
――仮面を剥いで並べ晒したい。
歴史学者が僅かな伝承から遺跡を掘り起こすように――。子供が年老いた猟犬の耳に悪戯するように――。色男が貞淑な女を乱そうとするように――。
仄暗い好奇心が、鈴谷の笑顔から黒色の靄が如き舌を覗かせ舐めずるのだ。
「ねー、てーとく」
「……何だ?」
「なんか熱くない?」
言われて顔を上げ、辺りを見回す提督の動きが止まった。言うまでもない。原因は鈴谷である。
ブレザーを脱して、人差し指でワイシャツの胸元を僅かに下ろす。空いた隙間から覗いた肌色。下着は、ない。合うサイズがないのだ。
戦闘服装は通電させて防御力を発揮する。その電圧に耐える下着が軍から支給されるが、サイズが揃っているとは言い難くデザインもよろしいとはあまり言えない。そして何より迷信だ。肌に密着させている方がより機能を発揮するのではないか――という。
故に特段急所である心臓にほど近い位置に下着を着ける事を、拒否する艦娘も多かった。
そして鈴谷の胸部装甲は、実際豊満であった。
だが、
「空調の風量を変えろ」
溜め息を一つ。そう言い捨てて、再びモニターに目を落とす提督。
キーボードが音を立てる。静かな部屋に取り残されたワイシャツ姿の鈴谷。暑いというかむしろ涼しい。というか寒い。空しい。
本気になられても困り者であるが、さりとてそこらの発情期の犬でも見るように受け流されては堪らない。これではまるで、あたかも鈴谷が提督の事を好んでアプローチをかけ、袖にされたようではないか。
鈴谷の内の女としてのプライドが、音を立てた。目の前の男の仮面を、何としてでも剥ぎ取りたいという欲求が生まれる。
「この部隊の残りが揃わないのも、それが理由か?」
「それ?」
「……高速修復材だ」
長息。眼鏡のフレームが鳴らす音。提督の手元には人員表。現在員数は正規の半分程度。
秘匿性の観点から、通信兵が居ない八九特掃隊。無線機材の整備兵も居ない。現在の余分のない員数では全艦娘が出撃せざるを得ず、戦場に全ての艦娘を動員してしまったら、その辺りの雑務も提督が兼任しなくてはならなくなる。
通信はまだ良いにしろ、整備などは(一部を除いて)艦娘にも提督にも不可能なのだが……。
それでも、そういう意味でも秘書艦が必要(もしくは手透きの艦娘がそれにあたる)なのだが、生憎とそんな余裕は今の八九特掃隊にはなかった。
「……よくこんな部隊が成り立っていたな」
「そこらへんは伝統のマンパワーって奴?」
「……それは陸軍の仕事だ」
嘆息を漏らして、タイピングを行う敷島。
対する鈴谷が躙り寄るのに気付いた様子はない。貼り付いた三日月の笑み。快感めいた嗜虐が胸元辺りを這い上がる。
好奇心。自尊心と嗜虐心と――それに鈴谷も己自身判らぬ衝動が綯い混ぜになり、彼への距離を縮めさせた。
「それで、残りの者は?」
「ああ、それは――」
スッと、敷島の両肩に手が置かれた。顔を上げる彼と、交錯する鈴谷の視線。
冴えた月が如き蒼銀色の髪が垂れる。毛先が今にも触れ合わんばかりに、彼と彼女の距離は近い。
上目遣いで睨み上げる敷島を感じながら、鈴谷は昏い快感を覚えていた。
「……何のつもりだ」
言われてから、鈴谷は内心首を傾げた。
理由は――、そういえば改めて言われると特には思い当たらない。強いて言うなら、単なる衝動だった。
それを行えばその後に己にどんな事が起こるか――などという危機感が彼女には欠如していた。いつからか、そうだ。分析や予測はできるが、行おうとはしなくなっている。
何かになったらなったでまた困ったりもするのだろうが……彼女の内では、緊迫や緊張が鈍化していた。
そこで一つ、言葉が口から飛び出た。
しばしば話を意識せずとも言葉が生まれる。というより彼女は、あまり考えてから言葉を発する事がなかった。殆どが、身の内に浮かんだ己でも意識できない僅かな淀みや残響が音を立てて口を吐くだけ。
「何って、ゆーわく?」
「……何故疑問形で話す。私に聞くな」
「いやいや、だってさ――」
――提督、セクハラで左遷されたってゆーじゃん?
「……」
「よくある事って言ってもさー、左遷レベルは中々ないっしょー?」
眉を顰める敷島の様子に、鈴谷は気を良くした。
彼女自身の口を出る言葉が己の本心なのかどうか、彼女としても判らぬし深く考えようとは思わぬのだが……。
それでもこうして、取っ掛かりを見付けた。この、揺らがぬといった風情の完璧主義者のような男に。
えもいわれぬ愉悦と残響――――潮騒と怒号/硝煙と血煙/不適格者だと告げる軍法会議/誰の為の軍規/淡々とした裁判長/後ろめたい表情の陪審員/諦めぎみの弁護人/高圧的な検事役。
「だからさー、鈴谷たちとしてはてーとくが何をやらかしたのか不安……って訳」
言いつつ、真剣みがないなと彼女自身――鈴谷自身そう思った。
「……」
敷島の眉間の皺が深くなる。
張り付いた嘲笑の鈴谷と、睨め上げる冷貌の司令官。
だが途端に、鈴谷は――冷めた。
「……私は」
「――なーんてね♪」
司令官の両肩に安置した手を離して一回転。背を向ける。すっかりと霧散した衝動。既に鈴谷は興味を失っていた。
「ま、てーとくができそうな人間ってのは十分に分かったから……精々がんばろー! っと」
振り向いて笑いかける鈴谷を前に、提督――敷島は渋面。その様がまた、何とも愉快であった。
未だに言葉を続けようとする敷島の気配を、ブレザーを纏う動作で打ち切る。暫し彼が顔を動かせずにいるのが、何とも心底鈴谷の気分を良くする。鼠を甚振る猫も、そんな気分ではあるまいかと言うほど。
それからブレザーを着用して、ふと思い立った風に手を止める鈴谷。
「あ、てーとく」
「……、……何だ?」
「やっぱ見とく?」
これ、と人差し指でシャツを押し下げる鈴谷。再び敷島の蟀谷が音を立てた。忌々しそうに攣り上がる片眉。
そんなとき、
「え゛」
「あら」
ドアが開く。その先に臨んだ黒髪をストレートにおろした朝潮と、ウェーブある茶髪の足柄。本来なら非番で在る筈の二人。
視線が交錯する。
顔を引き攣らせる足柄と、眼を見開いて硬直する朝潮。
「あ、あああ、ああああ、ああああああああ」
「あちゃー」
「えっとこれ、どういう状況?」
「……」
壊れた送信機が如く、同じ音を繰り返す朝潮。
傍から見たらこの光景はどんなものだろうか――と鈴谷は考え、打ち切った。正直どうでもいい。
「ししし、しししし、しししししししし」
「あ、し………………足柄?」
「え、私なの?」
「……」
錆びついた鋼鉄の砲塔めいた動きで、二人を照準する人差し指=砲身。
「しししししっししししっしっしししししし――――――――――――し、失礼しました!」
反転した革靴。翻る黒髪。踊るスカート。見事な朝潮ターンを決めた朝潮が駆け出し、
「ふぎゃ」
壁にぶつかった。絶壁だった。壁ドンだ。
「……」
そのまま尻餅を衝いた朝潮が見上げるその先に直立浮動する不知火。赤味かかった銀髪が、窓から漏れ入る日の影に彩られ薄紫色に染まる。
赤くなった鼻を擦る朝潮。視線の先の不知火はまるで動じない。態度も鉄壁だ。実際その胸は平坦だった。
そのまま、朝潮へと手を差し伸べる。いきなり激突されたというのに、眉一つ動かさずまるで揺るがぬその態度は流石と言う他ない。尚、胸部装甲も揺れない。朝潮も似たり寄ったりだった。持たざる二人だ。
「あ、ありがとう……」
差し出されたその手を頼りに助け起こされた朝潮が、躊躇いがちに口を開いた。流石の不知火。正しく不動の姿勢とはこうあるべきという態度に、彼女としても若干の情けなさを覚えぬ訳でもない。
司令官が着任してからというもの、しょうもない事ばかりしてしまって弾薬庫に引火もしてないのに顔から火が吹き出そうだ。
「いえ……」
胸だけでなく平坦な声で告げる不知火は、そのまま朝潮の肩越しに執務室を眺め、呟いた。
「一体何が?」
碌な答えも持たずに赤面する朝潮と、知らん顔で胸元を正す鈴谷。どうしたものかと頭を掻く足柄に、深い息を漏らす司令官。混戦状態であった。
「休日なのにわざわざ集まるな。必要があれば呼ぶ」
そう告げる司令官は、結局皆を追い払った。秘書官である鈴谷も同じ。悪戯っぽい笑みを浮かべた鈴谷に何が起きたか訊き正す事もできずに、朝潮たちは岐路に着く。
食事を済ませて部屋に戻って、朝潮の頭を過るのはやはりその事であった。
ワイシャツを肌蹴た鈴谷。そして司令官。一体何があったというのだろうか。それは素直に気になる。
まだ出会って一日しか経過していない。それでも、少なくとも司令官が噂通りの人間でないとは朝潮は知っている。故に、司令官から鈴谷に迫る事は――ないと思う。彼のあの高圧さが仮面でなければ。
しかし、だとしても鈴谷は何の意図を持って司令官を誘惑したというのだ。よりにもよって執務室で。彼女は確かに、何を考えているのか読み切れないところがある。だが果たして、無意味にそんな事を行うか? いや、意味があっても困るが。
司令官の命令に敬意を表し、その、いきなり恋の炎が燃え上がり、なんというか、所謂居ても立っても居られなくなったというのならば、善い。いや本当に良いのか判らないが。
だがそうでない場合――あまりにも不安だ。不可思議である。何かこの事が、後に影響を及ぼすのではないか――と。
「……過去に」
彼女が何を経て、八九特掃隊に来たのか。その辺りが鍵になるのかも知れない。
それこそともすれば、鈴谷とて男性関係をこじらせてこの部隊に――なんて事もあり得なくはない。
黙っていても、ただ膨らむ疑念。朝潮たちは互いの事を知ら無すぎる。今まではそれで過ごしてきた。そうしようと努めてきた。それだけでいいと思ってきた。
だが――この、司令官が新規に着任したというのを機に変えるべきなのかもしれない。機会とするなら、適性だろう。
しかし、
「……」
では彼女自身、悪戯にそれを掘り起こされたいかというと――答えは否なのだ。だからこそ、同様に他人に踏み込むのにも躊躇してしまう。
変革を望みながら、己の力では踏み出せない。踏み出そうと思いこそすれ、どこかしらに制約が付き纏う。八方ふさがりの檻の中に閉じ込められたかのような錯覚。
それでも、
(変わる、べきなんだ)
このまま危うい均衡を保つ部隊で日々を送れるとは、彼女自身到底思えなかった。
◇ ◆ ◇
「……」
溜め息一つ。海軍の白い制服。左右と後ろが刈り込まれた頭のいくらかには白髪が混じり、壮年の男の威厳を斯く在れかしと保つ短髪。
時刻は夜半。時計の針も当の昔に最底辺を過ぎ、それどころか上端まで歩みを進める。
頭に残ったアルコールを振り払うかのように、男は首を鳴らした。
(何をやってるんだ、俺は)
目尻の皺が、忌々しげに歪む。普段の柔和な笑みを取り払った男の名を、
今日とて男が行ったのは、半ば接待じみた取引。彼の顔が広く気が利くという理由で、その役に抜擢されたのだ。
中央努めとして戻ってからは、連日の書類整理。庁舎に居るのは自分よりも階級が上の佐官ばかり。気が休まる暇などないし、職場に泊まり込むのは当たり前。眺めるのは船の進路ではなく、高級連中のご機嫌取り。
水雷屋として生きた海上が恋しかった。しかしそれももう、あの深海棲艦とやらの出現で叶わぬが。些か人が減り過ぎた。
仲間の多くが海に散った。同期の、同じ釜の飯を食って過ごした連中も少なくはない。人々と、我が国の国民を守ろうと藻屑になって行った。
それから暫くしての、水上機動装甲歩兵の登場によって――人類は辛うじての生存を許された。登場から七年。しばしば深海棲艦による攻勢は起きたが、概ね被害が拡大する事なく終わりを告げた。
そして今、この様だ。
(これが、子供を海に送り出してまでする事か)
街並みを眺める。夜半の静寂に包まれている以上に、明りが少ない。電力消費に対しての政府令があるから。
その闇の中で、一体何が蠢いているというのか。一先ずの自由と安全を取り戻したこの国はしかし、かつての平和な祖国ではなくなってしまった。
深海棲艦の被害による輸出入の減少により生まれた失業者。経済は安全性の観点から大陸に寄り、深海棲艦被害国からは移民が集まり治安が悪化。
自国内でのインフラコントロールの一環として大胆に政府が行った農業保護政策は、企業による大規模な農地の買い上げを許可し、誰も彼もがそれに倣った。すっかり作り変えられた田舎の風景は、宛ら工場やビル群。
コストの削減を図る企業は移民や低賃金労働者を使用し、それが自国民との軋轢を生む。己のいた場所を荒されたと感じた国民は保守に走り、そのガス抜きとしての国軍設立。
社会保障を切り詰めた政府と、社会保障欲しさの国民が、年端も行かぬ小娘たちを戦場に送り込む法律を整備した。
挙句、国際的な戦力保有数制限条約だ。常任理事国の中には、第二次大戦時には存在していなかった国もある。艦娘という、戦前のパワーバランスにもなる資源は、彼らにとっても悩みの種だろう。
加えて、そもそもの艦の絶対的保有数を持つ国もある。そのどちらにも丁度いい落としどころとしての――“正規兵力として同型艦所有は戦前と同じ一隻まで”。一体、誰が得をするというのだ。
その末に、“正規動員数ではない予備役である”というお題目で作成された部隊もある。
(何故、俺は生き残った)
死にたくなどはないが、かつて命を賭して国を守った者たちに顔向けできるかと言われたら――否だ。
今日の今日とて、伏魔殿の魔物とのやり取りで神経を磨り減らす。深海棲艦と戦っている方がまだマシだとすら思えるほどの、人間同士の見えない鎬の削り合い。
経済団体母体の――つまりは大陸寄りの与党と、国民の支持を静かに集める保守議員。その保守議員の支持母体は軍需産業。
地元への誘致を行えば、少なくともそこで雇用が生まれる。議員としては万々歳。企業としても、深海棲艦との戦いが続く限りは安泰だし、少なくともそれが現在終わりを迎える事はなさそうだ。
戦後から暫くの不遇を味わった国防省は、これを機に自分たちの立場を改善しようと試みる。これは春日としても同じだ。国と国民を守るために己たちの体を使っても、得られる栄誉もなく浴びせられるのは罵声ばかり――自衛官の息子だというだけで差別を受ける子供。肩身が狭く、到底気軽に口に出来ない職業。
職務で死んでも、碌に弔われぬばかりかともすればそれはマスメディアを賑やかせるだけとなり、その後は好奇や避難の目を向けられる。
そんな生活に戻りたいかと言われれば否であり、そのために皆が躍起になるというのも分かる。
故に極秘裏にそちらの議員と、軍需産業と、職員と隊員を交えた秘密会談が行われる。表向きの軍規の為に饗応接待も行わなければ、現政権への背徳も行わないが、だが省は省で先を見越して己達の舵取りを行う。無論、いざ露見したのならば春日や或いは優先度の低い職員が切り捨てられてそれで終わりだ。
文民統制の観点を捨ててまでの越権違法行為は、しかしそれでも冷遇と不遇を持って行われたこれまでの境遇から彼らの心中には一定の許容を持って受け入れられる。春日とて、決してこれが内々の見返りや私利私欲の為でなく、全ての隊員のこれまで/この先を憂いたが故の行為だと理解はしていた。
だが――
(これが、子供を戦場に送り出してまでする事なのか?)
一度だけ目にした、使命感に燃える海上機動装甲歩兵の少女。
この国の為に、この土地の為に、父の為に母の為に、今まで国を守った者たちの為に、平和な海の為に――そうして戦いに赴く少女たち。
あの目を、真っ直ぐに見れるのだろうか。
誰だって、深海棲艦の撃滅は望んではいない。喉元過ぎればなんとやら――あの化け物の出現は既に、取り返しがつかないほどに人類の歴史に組み込まれてしまった。もう、深海棲艦出現は立派な歴史の転換点。
故にどの国家も、どの政治家も、どの経済屋も、それを基盤として考える。
本音を言うなら誰だって――自分が殺されないのなら、今の小康状態が続いてほしい、の一点だ。
戦前有した艦に応じて艦娘という強大な資源を持つ事となった我が国は、それが故に今の国際情勢での中の立場を手に入れた。――与党。
艦娘やその装備が定期的に破損し、定期的に補充されるからこそ資本が回る。――軍需企業。
艦娘の登場と共に新たなる省庁として生まれ変わったが故に、旧来の状態の改善を図る。――国防省。
皆が与えられた条件の中、己の取り分の確保に勤しんでいる。その事自体は悪い事とは思えないが、やはり……。
「……何をやってるんだ、俺は」
再度された春日の呟きに、しかし答えるものはいなかった。
説明の二話。あんまり動かない
それにしても艦これのアニメは面白いですね
特に鎮守府が襲撃されてから、遠征から帰った曙が疲れ果てた体を引きずって周りが止めるのにもかかわらず素手で瓦礫を掘り起し「クソ提督……っ、どこに、どこにいるのよ」って涙声で提督を探す様は感涙ものでしたね。その後、提督が何食わぬ顔で曙の肩を叩いたときの「この、クソ提督……!」の潤んだ声と、「この借りはじゅーぶん返してやるから安心しなさい、このクソ提督」という獰猛な声。いやあ、声優さんって凄まじいですね。やっぱり曙がナンバーワン
はい、大嘘です。そんな事は起きてません。でも画面の外で起きてたんじゃないかなきっと
朝潮型はガチ