どれだけの人に拒絶されてきたのだろうか。
いつからこんなチカラに目覚めてしまったのだろうか。
なぜこんなチカラに目覚めてしまったのだろうか。
神様はなぜ僕にこんなチカラを…。
朝、目を覚ますと彼は自宅の一室で目を覚ました。
「……。」
彼の名前は久良零斗。
彼が生まれた久良家は、九州を本拠地とする西日本の中では大きな名家の一つであり、日本中にも分家が存在している。
表面上としてはかなり有名な名家であるが、その一方彼ら一族は裏にも精通している一族である。
本家は表立った活動をするのに対し分家は裏での活動、暗殺・スパイ・影武者等々表に名を出してはいけない仕事を生業とする一族でもあるため少なからず時代が動くときは彼ら一族の動きも関わってきたという。
本家の跡取り息子である零斗も幼き頃から家業を担う一人として少なからずそういった裏でも様々な仕事をしてきたのだ。
その成績は跡取り息子としては恥じないようなものばかりだった…だが、そんな彼にも一点だけ欠点のようなものがあった。
それは彼自身にも周囲の人間にも抑え扱いきれないほどチカラを持っていたのだ。
彼や周囲がそのチカラに気付いたのは彼がまだ1歳を過ぎたころだった。
ある日彼の世話するため久良家の使用人が仕事をしていると急に意識を奪われたのである。
たった数時間とはいえ久良家の使用人も世界に名を轟かせる九鬼家の使用人達にも劣らぬほどのチカラの持ち主ばかり。
皆は仕事をし過ぎての疲労から来るものばかりだと思っていた。
だが、それが連日立て続けに起こった。
どういうわけかそれも彼の身の回りの世話をするものに限って…。
不思議に思った両親や使用人達は病院へ彼を連れて行ったのだった。
しかし、医師に診てもらっても何一つわからなかった。
では連日起こった不可解な出来事は何なのか…。
もしかしたらという気持ちを抱きながら武の聖地として有名な川神にある『川神院』川神鉄心のところへと彼を連れて行った。
すると彼は彼を見るなり驚くべきことを言い放った。
「よいか、ご両親共。今から言うことをしっかり聞きなされ。」
両親は一字一句聞き逃さないよう鉄心の言葉に集中した。
「この子、久良零斗君は…ある意味この国を滅ぼすほど秘めたチカラを持っているのかもしれん…。」
両親は驚いた。
なぜ?
それは両親や周囲から見ても明らかである。
彼ら両親は家業の影響とはいえ多少なりの武の心得がある。
しかしそれは素人と比べたらと言う話で鉄心や川神院の人物から比べるとかなり劣っていたからである。
なぜ、そんな両親から国を滅ぼすほどのチカラを持った子が生まれるのか。
なぜ、そんなチカラが付くのか。
なぜ?なぜ?なぜ?
両親の頭はその言葉で埋め尽くされていた。
そんな両親を見かねた鉄心はこう言った。
「だが、それはあくまでこれから急成長したとしての可能性の一つじゃ。このまま成長したからと言ってそんなチカラは付かんよ。もちろん多大なチカラは付くと思うがの。」
その言葉を聞き両親は安堵した。
だが、この段階で両親は気づくことが出来なかった。
これからこの子がどれだけの苦痛と苦悩に塗れた茨の道を歩くのかということを…。
両親が去った後鉄心は自室で考え込んでいた。
「ふむ…あの子のチカラがどんなチカラなのか…。この段階ではわしにも分からんのぉ。何もなければいいのじゃが。」
それから数年後、彼はすくすくと成長し前のように急に何かが起こることも無くなっていた。皆そのチカラは衰え消えてしまったものだと思っていた。だから彼のチカラのこともあえて本人にも伝えず周囲の人間も伝えることはなかった。
そして彼は小学生に上がった。
そして…
彼は虐められていた。
名家であるが故に…だ。
そして彼自身の両親から引き継いだ心の優しさが仇となったのだ。
体育の時後ろから砂をかけられたり、登校すると机にひどい落書きをされたり、教科書を破られゴミ箱に捨てられていたり…
それでも彼は必死に耐えた。
どれだけのことをされても耐えた。
モノを隠されようが落書きをされようが耐えた。必死に耐えた。
教師も見て見ぬ振りをしていた。
これも名家であるがゆえに表面上は優しく接していたが本当はそうでもないのだ。
裕福だからという理由で。
彼はクラスの飼育係だった。
クラスで飼っていて彼が唯一親族以外で心を許していたウサギがいたのだ。
例え虐められようがこの子の世話をしていると心が落ち着いた。唯一の癒しだったのだ。
どれだけ辛いことがあってもこの子のおかげで過ごすことができた。
この子のおかげで…。
それをクラスのいじめっ子たちは次のいじめの道具にしたのだ。
彼は朝と放課後2回に分けてウサギの世話をしていた。
そして事件が起きた。
朝エサをやりに行くとウサギは元気にエサを食べた。
可愛い。どれだけこの時間が続けばいいかと思った。
だがそんな時間もいつまでも続くわけでもなく
授業が始まり例のいじめが起きた。
だが彼は耐えた。
放課後を楽しみにして……。
昼休みになると彼は図書室に行き本を読むのが日課になっていたが昼休みが終わり教室に戻るとクラスの男子たちが騒がしかった。
「おいおいまじでやったのか!」
「当たり前だろ!うはっ笑今度こそあいつの泣き顔が見れるぞ!」
「でもいいのかなぁ、あんなことして」
「ダイジョーブダイジョーブ笑」
何のことだろ。その時彼には一切何の事だかわからなかった。
そして、放課後…。
「今日もみんなエサちゃんと食べてくれたかなぁ」
一歩。
「最近元気ないし大丈夫かなぁ」
一歩。
「もし何かあったらお父さんたちに頼んで見てもらおうかなぁ」
一歩。
「おーい、今日もエサを持って…きた…ょ…」
肉。
醜いほどの肉塊が悪臭とともにそこにはあった。
ウサギの白い毛は元からだったかと思うほど真っ赤に染まっていた。
内臓や骨が剥き出しで放置されていた。
血が至る所に飛び散っていた。
巣は荒らされ手足や頭は分離していた。
「…え?」
彼は目の前の惨事を理解することはできなかった。
さっきまでの明るい気持ちは裏腹に何か暗く意味が分からないものが内側から来ていた。
「な…に…なん…だ…こ…れ。」
彼はそう呟くと一気に吐き気に襲われた。
「うぷっ」
彼は今日の給食のメニューを体内から吐いた。
抑えることのできない吐き気と意味の分からない感情があり彼は泣くことも出来なかった。
すると後ろから声が聞こえてきた。
「うえぇ!きたねぇ!!あいつ吐いたぞ!!」
「きったねぇ!」
「きめぇんだよ笑」
なんだ。なんだ。いったい何なんだ。
僕が何したって言うんだ。
僕が君らに何をしたっていうんだ。
この子が一体何をしたって言うんだ。
なんで…なんでなんだ…。
なんでなんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
その瞬間、彼の意識は途絶えた。
「…ここは…どこ…?」
彼が目を覚ますとそこは自分がいつも見慣れた家の天井が見えた。
横には彼の両親がいた。
使用人の姿も見える。
一体どうしたんだろうみんな。
なんでそんな顔をしているんだろう。
僕はどうしてたんだろう。
彼がそう考えていると両親が彼が目を覚ましたことに気付いた。
「よかった…。零斗気づいたのね。」
「そうか、無事に目を覚ましたか。」
両親はホッとしたように彼に言葉をかけた。
「僕…どうしたの?」
そういうと両親は彼がなぜこうなったのか分かっていないことを理解していなかった。
両親によると彼は丸一日気を失っていたということだった。そして何が起きたのかをゆっくり話してくれた。
まるで棘のある花を触るようにゆっくりと…。
「いいかい零斗、君は昨日のことを覚えているかい?」
「う、うぅん…わかんない…」
「そうか、やはり医者のことは間違いではないようだ。」
「僕どうかしてたの?」
「そうだね、まずそこからゆっくり話そう。まず昨日君は放課後とある場所に向かったんだ。」
「とある場所?」
「そう…。君が大切にしていたウサギの小屋だ。」
「ウサ…ギ…」
「そして君はそこでとある光景を見てしまったんだ。」
「こう…けぃ…。そ、そうだ。僕は放課後ウサギのところにエサをやりに行ったんだ。」
「そこまでは大丈夫だね?」
「う、うん」
そこまで会話をすると彼の父は黙ってしまった。
彼の父も周囲の人間もここから先彼がどうなるか予想できない。
だからなかなか一歩は踏み出せないのだ。
「ねぇ、そのあとどうなったの?光景って?」
「いいかい?これから言うことはしっかり心して聞いておきなさい。そして何があっても呼吸をしてしっかり落ち着くこと。いいね?」
「う、うん。」
「ふぅ…。君の世話をしていたウサギが死んだんだ。」
「し…んだ?」
「そう死んだんだ。」
「そうか…死んだんだ…。」
彼は不思議なぐらい冷静だった。
まさかの反応に彼の両親も戸惑いを隠せなかった。
普通の人間であれば自分の世話のしていた動物が死んだのならば多少は動揺するだろう。
だが、彼らの予想を裏切るように彼は静かに物事を受け入れた。
しかし、彼の父が言うことはまだあったのだ。
「でね、零斗。ここから先もよく聞きなさい。」
この先彼はどういった運命を辿るのだろう。彼は一体どうなるのだろう。
それは彼自身にも分からなかった。
「ウサギを殺したあの子たち、君をからかいに来たあの子たち。
全員、絶命していた。」
書いているうちにどんどん書きたいことが増えていったんですけどどういう風に区切ればいいのかわからなくなってきてしまいました(´・ω・`)
まぁぼちぼち彼の『チカラ』の内容とか書いていきます!