「絶命していた。」
彼は一体何の事だか理解できなかった。
ウサギのことは自分でも不思議に思うぐらい冷静に受け止められた。
だが、なぜ彼らは絶命していたのか。
それだけはどれだけ考えてもわからない。
なぜ?あれだけ僕を笑いものにして除け者にしていた彼らが。
一体誰が?
そういった疑問が彼の頭の中を埋め尽くした。
ゆっくりゆっくり彼はあの時の出来事を思い出そうとした。
ウサギの残酷な部分はできるだけ思い出さないようにしたがそれでもやはり吐き気は出てきてしまう。
既に空であるはずの胃が強制的に無いはずの何かを押し出そうとする。
ゆっくり自分を落ち着かせ彼はその時に起きたことをゆっくりゆっくり思い出す。
あの時彼はウサギの死体を見てしまい、そのあと強烈な吐き気に襲われた。
そして我慢できずに嘔吐したところをいつも虐めてきたあの子たちに見られてしまい笑われてしまった。
そしてそのあと…
そのあと…
ダメだ、どうやっても思い出せない。
彼は必死に思い出そうとしたが気を失うところの記憶が曖昧でどうしてもそのまま倒れてしまったということしか思い出せなかった。
それを両親は察してか察してなかったのかは分からないが彼にこう言った。
「実は零斗、このタイミングで悪いんだが君に一つ言っておかなければいけないことがあるんだ。」
「な、なんだい?父さん…。」
その時周りの人間も緊張した面持ちだった。
「良くか悪くか君には私たち久良家でもわからない特別なチカラがあるんだ。」
「特別な…チカラ?」
彼には自分がどこか秀でた部分があるとは思わなかった。
どこかの超人のように筋力が秀でているわけでもなく、どこかの天才科学者のように秀でた頭脳を持っているわけでもない。
もちろん彼は幼き頃から鍛錬や勉学に励んでいたため周りの子たちも出来るわけだがそれが特別なチカラとはとても言い難い。
では一体何なのだろうか。
彼は自分が過ごした日々の中でどこか秀でた部分があっただろうかと考え直した。
だがそれでもやはり見つけることはできない。
気になって彼は両親に問いただしてみた。
「僕が持っている特別なチカラとは一体何なのですか?」
彼がそういうと両親は困った顔をしてしまった。
「それがな、零斗。私たちにもはっきり分からないんだよ。」
またしても彼には両親の言っていることが分からなかった。
ではなぜ両親は彼に自分が特別なチカラを持っているとこのタイミングで告げてきたのだろうか。
ますます彼の中でモヤモヤは増えた。
「ただ、はっきり言えることが三つある。よく聞くんだ零斗、これは君にも私たちにも関わる大切なことだ。まず一つ目だ。」
父はそう言い大事なことをゆっくり話し出した。
「一つ目はそのチカラは君が1歳の頃目覚めたものらしい。あの時は君の周りを世話しているメイド達が数人気を失った程度で済んでいたし、とある方の助言もありそれから今まで一切何もなかった。それで私たちももう君のチカラは失ったものだと思っていた。」
父の言う通りどうやら昔にも似たことが起きていたようだ。
でも1歳の頃なんて勿論彼には一切記憶のないことだ。
それで今まで何も起きていなかったのだからそれは両親も彼に話すことが無くてもおかしくはない。ではなぜ今なのだろうか。
そういった疑問を晴らせぬまま父は二つ目に移った。
「二つ目はこのチカラで彼ら、つまり君を虐めていた愚か者たちは絶命したということだ。これは非常にまずい話でもある。前に君にも説明したように私たち久良家にはそういった人の命に関わる仕事もしている。だがそれはあくまで分家の話だ。本家の跡取り息子がやったとなればそれはまずい。だから、この事はあくまで事故ということで済ませようと思う。これに関しては私たちが手を打とう。」
自分のチカラで彼らを殺したということが分かってから彼は事故とはいえ自分が犯してしまった罪の大きさを確認した。
自分が直接手を下すことはないと高を括って考えないようとしていたことだ。
まさかこんな事になるなんて思ってもいなかった。
意識した途端汗が止まらなくなってくる。手も震えてきた。息も荒い。
彼は一種のパニック状態に陥ってしまったがメイド達の適切な処置のおかげでゆっくりと落ち着きを取り戻した。
「ふむ、落ち着いたか。では三つ目だ。これが一番私たちにとって重大な事だ。それはさっきも言ったがどうやって彼らを絶命に追いやったか。つまりどういったチカラを持っているのかだ。不思議なことに彼らを見つけたときはどこにも外傷も内傷も一切無かった。一切が謎なんだ。」
どういうことだろうか。外傷が無いだけでは無く内傷も無かったらしい。
例えばどこかで有りそうな電気を操るチカラだったとしよう。彼らに電気を送ると死ぬほどの感電となれば皮膚が焼けててもいいはずだ。
では他のことではどうなのだろうか、そう思い考えても空気を奪って窒息してというのも空気を操れればとか水を操れればとかいうのなら出来そうな話ではあるが、まずそんなチカラがこの世にあるはずがないんだ。
ではなぜ?
考えれば考えるほど分からなくなってくる。
僕は一体どれ程のチカラを持っているのだろう。
どんなチカラを持っていて彼らを絶命に…。
どんどん底の無い沼地に入っているような感覚だった。
「良いかい零斗。まだお前自身でも理解できないだろうがまずあの学校から転校させる。これは決定事項だ。いいな。」
「わ、わかりました…。」
そうして彼は色々腑に落ちぬままこの地を後にした。
だが、天はまるで彼を拒むかのように地獄に突き落としたのである。
彼が転校して数か月したある日、彼は新しくできた友人と共に近くに出来た久良家系列のショッピングモールへと出かけたのである。名家の跡取り息子という事や前の出来事の影響で彼の周りには必ず執事かメイドが付き添うようになっていた。
勿論その日もとある執事が彼に同行し友人と共に遊んで遊んでいた。
まるで狙いすましたかのようにその日またもや事件は起きた。
爆破テロだった。
轟音と共に地面は揺らぎ立っていることも困難なぐらいだった。
後にこの事件はマスコミや新聞に大きく取り上げられること全国的に広まった。
零斗には彼の執事が身を挺してまで守ってくれたおかげでなんとか無事だったが彼の周りには友人の姿が見えなかった。
普通ならばパニックになるところではあるがさすが名家の跡取り息子、幾度となく訓練してきた成果によりいざこの様な状態に陥っても最小限の動揺に止めたのである。
落ち着きを取り戻し周りを見渡しても瓦礫の山だった。
彼は友人の名を読んでみたが返事はない。
所々他の客のうめき声や誰かを呼ぶ声はするものの友人の声は無い。
ふとなぜかあの時の忌々しい醜いウサギの死体が思い浮かんでしまった。
そんな事がある訳ないじゃないか。
そんな事あってたまるか。
やっと出来た友人だぞ…そんなわけ…。
するとどうやら彼の願いが通じたのか近くから友人のうめき声がした。
彼は希望を感じその方向にある瓦礫を執事に除けるように命じた。
段々と彼の声は近くなる。
あと少し、もう少しだ。
そうして見えてきたのは…
またしても醜い肉塊。
頭や手足は潰れ折れ曲がり内臓も見えていた。
彼は絶句しその場で悟った。
(あぁ…自分は幸せにはなれない運命なんだ…)
と。
そして彼の中で何かが壊れ欠けていったのを感じた所で彼は意識を失った。
彼が目を覚ましたのはいつもの家の一室ではなく病院だった。
医師によると軽いかすり傷程度で済んだが、友人たちは無残な姿で見つかったそうだ。
それを聞いたとき昔より冷静に物事を理解できた。
だが、彼は普段とは何か違うものを感じていた。
自分の中で何かが無くなっていた。何か大きなものが。
彼は両親が心配してくれたことに関して感謝したが
それ以上言葉が出てこなかった。
そうして彼はまたショックをどこか拭いきれないまま違う土地へと移って行ったのだった。
ちょっとシリアスなことが多く続いていますがこれも最初の方だけです。
そして文がおかしくなっていたりするかもしれませんが大目に見ていただけると嬉しいです。
本当はチカラのみのせいで話を進めたかったんですけどいまいち話が出来なかったので不運が重なって起きた出来事にしました。