俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか? 作:エノコノトラバサミ
変態とは。
動物の正常な生育過程において形態を変え……違う、性的行動や性欲のありようにおいて、正常と見なされない嗜好を指す、らしい。辞書で調べた。
という訳で、今から俺はこいしの性欲を異常に変える。この物語の為だ。読者の皆さん、こいし好きの皆さん、許して下さい。
実を言えば、どうやって彼女を変態に変えるか、俺には分からない。あんなにすっぱり言い切ったのにカッコ悪いな。
だか、悩んでいても仕方がない。変態の事なら、そう、変態に聞け!
「アリス、居るか?」
魔法の森、アリスの家にこいしを連れてきた。アイツの家を訪れるのは一話以来だな。
「……何かしら、お届け物?」
「ちょっと入るぞ!」
「え!?」
「あ、お兄さん!?」
こいしを外に置いたまま俺は勝手にアリスの家に入り、アリスを奥の部屋へと無理矢理引っ張った。
「な、何よ!?」
「聞いてくれ! 俺は今からアイツを変態にしたい!」
「はぁ、どういう事!?」
「お前変態だろ! アイツに無理矢理変態の極意でも叩き込んでくれ!」
「ちょっと、いきなり意味分かんないわよ!」
「頼む、この通り! 俺はアイツとは恋人未満で居たいんだよ!」
何かを察した様な表情を見せ、考え始めるアリス。
「……分かった、良いわ」
「ありがとう、助かる!」
真面目な時のアリスは頼りになるぜ!
見たの初めてだけどな。
「あ、お兄さん」
「よし、こいし。中に入れ。俺は外で待ってる」
「え? どういう事……うわッ!」
「いい、こいしちゃん。変態の基本は体よ。自分の体、または相手の体、それかその両方があってこそ変態は成り立つの。さあ、まずはありのままの自分を解放して、お姉ちゃんと語り合いましょう!」
「え、ちょ、イヤ、助けてお兄さん! たす──」
……元気でな、こいし。
数分後、二人は家から出てきた。案外早いな。
「お兄さん、怖かったよぉ~」
「オーソウカソウカ」
……変態になってない。アリス、どうしたんだ?
「……フフ、フフフフ」
「アリス?」
「ごめんなさい。私、用事出来ちゃった」
「アリス? どういう事だアリス!?」
結局、アイツは玄関の鍵を閉めてしまった。一体どうしたってんだよ……
次の策として、俺は二人で白玉楼へ訪れた。目的は幽々子。妖夢が変態化したエロ本でも読ませれば、きっとこいしも変態化する筈だ!
「もう捨てたわよ」
幽々子さん答えるの早いっすよもう少し尺稼いで下さいよ。
「ところで妖夢は?」
「妖夢なら昨日から、死んだ様な眼をしながらずっと素振りしてるわよ」
……アイツは放っといていいや。その方がアイツの人生明るそうだ。
第三の策として訪れたのは永遠亭。そう、ここには生粋のドSがいる。苦肉の策だが、彼女に調教して貰うしかない! こいしごめんよ! 後で飴玉あげるから!
「鈴仙、いるか!」
「はぁい」
「よかった、頼みたい事があるんだ。ちと中に入るぞ」
「え、何ですかいきなり?」
またもや鈴仙を奥の部屋へと無理矢理連れて行く。
「玄関にいるあの子、お前の元で飼って欲しいんだが……」
「いいですよ」
軽ッ!
「お前なら、飼い慣らすまでどれぐらい時間掛かるんだ?」
「とりあえず服従させる程度ならものの数分で十分です」
すげぇ、流石プロだな。
「よし、準備が出来次第頼む!」
「分っかりましたぁ!」
テンション高ぇ。生粋のドSは格が違うぜ。
鈴仙に連れられ、一旦居間へ。そこでお茶とお菓子が差し出される。無論、薬入りだ。永遠亭特製睡眠薬。すぐに眼を覚ますよう、量は少なめ。
そうして眠りについたこいしを、俺は鈴仙に預けた。
……元気でな、こいし。
それからおよそ数十分。まだ調教は始まっていない様だ。ドSの事だから、始まったら恐らく永遠亭にこいしの悲鳴が響き渡るだろう。あんまり聞きたくないなぁ……
そんな事を考えている内に、今こいしがどうなっているか気になり始めた。鈴仙には「別に見ても見なくてもいいですよ」って言われて(別に見たくねぇよ)と思い返したのだが、やはり気になってきた。
我慢出来ず、俺は襖から覗き込む。
……裸で空中に鼈甲縛り、エゲツネェ……
しかも部屋の隅には鞭とか三角木馬とかあるし、ハンガーにボンテージ掛かってるし、型に填まった様なドSだな……
しかし鼈甲縛りで吊り下げられて、痛そうだ──!?
そう、俺はこの時、見てはいけない物を見てしまった。
それは、一気に俺の人生を変える事となった。
衝撃。身体中に駆け巡る稲妻の様な衝撃。思考の想像だにしない驚愕の発見。
「ごめん鈴仙、やっぱり止めてくれ」
「えぇ!? 急にどうしたんですか!?」
「ごめんな、後日お詫びする。とりあえず今日はこいつを連れてもう帰るよ」
「ちょっと、説明してくださぁい!!」
それから俺は、こいしが姉と仲直り出来るまで、こいしを家に泊める事にした。
こいしはすぐにこの生活に馴染んだ。よく俺の仕事の手伝いもしてくれた。そんなこいしの好意を、俺は素直に受け止めた。
数日経っても帰る素振りがないのを見ると、もしかしたら本気で家に住み始めてしまうかもしれない。けれど、別に構わない。普通に二人で食事も摂るし、平気で二人で風呂にも入る。もう、俺とこいしは家族同然なんだから。
「お兄さん、一緒に寝よう……」
「ああ、いいよ」
「ありがと……」
アリスはこの事を知っているが、他の奴等はまだ知らないだろう。今度紹介しなければ。
俺に『弟』が出来ました。
※こいし、祝レギュラー化。