俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか?   作:エノコノトラバサミ

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※お兄さんの性格の悪さが暴走します。


拳符『腹部圧迫掌』

 それは、俺がいつもの様に仕事しようとした時だった。

 

 俺がイケメンなのは皆承知してると思う。この幻想郷の中で、少なくとも俺を容姿で嫌っている奴はまずいないだろう。自分でこう言うと普通は『ナルシストかテメェは』ってなるけど、俺は本気でもっと普通の顔に生まれたかった。

 となると勿論、あのストーカー野郎や半分幽霊や半分獣みたいな奴等と同じように、人里で俺の事を好きになる奴等もいる。だが、そいつらは大抵あのストーカー野郎の見た目の可愛さと俺への執念で諦めるのだとか。……アイツ迷惑この上ないな。

 だが、だからと言っても完全には諦めてられない様で、どうやら仲間内で文通し合い、その手紙を俺が直接彼女等に手渡す事で、欲求を満たしているだとか。仕事が増える増えるでたまったもんじゃない。まあ、今ではそれも日常化してしまったけれど。

 

 そう、皆さんお察しだろう。

 彼女等がほぼ毎日送ってくる手紙が、今日は一通も無かったのだ。

 その日は偶然何かがあるだけだと思っていたのだが、次の日も、その次の日も手紙は入っていなかった。

 

 ……何だろう、この胸に沸く不安感は。

 

 

 

 この日の仕事終わりに、俺はある家を訪れた。単に文通集団の一人の家だ。答えを知るには、もう直接聞くしかない。

 

「すみません」

「はい……ひ、飛脚様!?」

 

 なんで様付けなんだよ。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 なんで謝りながら扉閉めるんだよ……

 今の会話で確信した。今、俺の回りに何か起きている……

 そして、更に俺は気がついた。あのストーカー野郎が、三日前から居ない事に……

 

 

 

「お邪魔するぞ、アリス!」

「はひゃ!? 何よ突然!?」

 

 あ、こいつ今何か背中に隠しやがった!

 

「最近どいつもこいつも様子がおかしいと思ったら、何かしてやがるな!」

「違う、私じゃないわよ!」

「なら見せろ! その背中にある物を!!」

「嫌ッ!」

「なら力づくだ!!」

「あ、やめて、そんな事したら……あぁ、らめぇ!!」

「黙れ」

「ぐふッ……」

 

 アリスに腹パンした後、隠していた物を取り上げる。

 それは、驚くべき物だった。

 

「……何だよ……これ……」

「あ……本気で、吐き……オ×××××」

「汚ねぇよ」

「ひ……酷い、わ……」

 

 

 

 妖怪の山。幻想郷にそびえ立つそれなりにでっかい山。

 ここでは我が物顔で周辺を彷徨く天狗達と、山を手中に入れようとすべく侵略する神様達が約二千年に渡り永き死闘を繰り広げて……え? 適当な事言うなって? いいだろう、んなもん。どうせ皆知ってるんだから。

 

 俺はその山に住む、ある一人の天狗に用があって来た。そいつと顔を会わせたら、問答無用で一発殴る予定だ。

 しばらく山を登り、やっとそいつの家に着いた。右手に握り拳を作り、左手でドアをノックする。

 

「はぁい、今行きますよ」

 

 ……よし、覚悟は出来た。

 

「どちらさ──」

「──うぉらあァァッ!!」

「うゥッ!?!?」

 

 これが俺のスペルカード、拳符『腹部圧迫掌』だ。

 

「……て、あれ? あのブン屋じゃない」

 

 俺が狙っていたのはブン屋である射命丸文だ。だが、今殴ってしまったのは見たことない白髪の犬みたいな奴。

 ……ま、いっか。

 

「ぐッ…………う、オ×××××」

 

 あ、また吐いちゃった。

 

「椛~、どうかし……あやァ!?」

「あ、テメェ! 拳符『腹部圧迫掌』!!」

「グアぁッ!? …………んグ、オ×××××」

 

 あ~、気持ちいいッ!

 

 

 

「お前らだろ。勝手に俺の写真集出したのは」

「……はい、スミマセン」

 

 俺の向かい側に座るブン屋と白い犬コロ。二人とも揃って青い顔をしてる。原因俺だけどな!

 

「どうしてくれんだアァン? もう里に出回ってんだよテメェ」

「がっぽり稼がせて貰いました」

「もう一度腹ン中ぶちまけてやろうか?」

「誠に申し訳ありません深く謝罪申し上げます」

 

 土下座するブン屋。プライドの欠片も無いな……

 

「あの……」

 

 白い犬コロが手を上げる。

 

「私……あまり関係ないのですが……帰っても宜しいでしょうか?」

「もう一発逝くか?」

「ふぇえ……う、オ×××××」

 

 何もしてないのに思い出しただけで吐かないでくれ。

 メンタル弱すぎだろ。

 

「とりあえず、売り上げ金は全部没収させて貰おうか……」

「あの……その事なんですが……」

「ん?」

「その……仲間内で飲み会したり……新しい取材道具とか買ってたら……その……」

「ほうほう……つまり、手元にもう無い訳か」

「す、スミマセン……」

 

 困ったな、どうするか……

 

「となると、私に出来るのはこれしかありません……優しくして下さいね……♥」

「脱ぐな」

「わ、私も○されるんですか!? そんな……私、処○だけは好きな人に捧げたかったのに……グスッ」

「んな事一言も言ってねぇだろ、泣くなよ……」

 

 あぁもう、どうしてこうなるんだよ……

 

 

 翌日、新入りの飛脚が二人増えました。


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