俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか? 作:エノコノトラバサミ
「おはよう、ア・ナ・タ♥」
「……んぁ、おは……うわッ!?」
「昨日は盛んだったわね」
「適当な事言うなよ出てけよ!」
「キャア♥」
朝から酷い目に合った。気を取り直して、本日の依頼を確かめる。
……十六夜咲夜宛て。うわぁ、紅魔館かよ。めんどくさッ!
そんな訳で今俺は、湖のほとりを走っている。
紅魔館とは……説明いらねぇな。紅魔館知らねぇ奴いたら逆に凄いよ。アンタ東方projectの何を知ってるんだってなるよ。
という訳で紅魔館の門の前に到着。門番に頼んで門を開けてもらう筈なんだが、既に開いてる上に誰もいない。サボってるのか?
中に入ると、それはすぐに分かった。単純に庭の手入れをしていただけだった。
「十六夜咲夜さん宛てにお便りです」
「あ、お疲れ様です。中へどうぞ」
門番の中国人っぽい人と挨拶を交わして門へと向かう。これだけ見ればまあ日常の風景だろう。
片手で逆立ちして腕立てしながら水やってる門番の姿以外はな。まあ凄いと思うよ、うんうん。自分を鍛えるのは良いことだ。そのせいかなんか北斗○拳の使い手みたいな筋肉付いてるけど気にしない気にしない。それで巨乳なんだから違和感半端ないんだよなぁ。筋肉×巨乳ってどう? 俺はちょっと無いかなぁ。どちらかと言えば俺はスレンダーで尚且つ巨乳の女性……何関係ない話してんだよ俺。
「失礼します、十六夜咲夜さん宛てにお便りです」
入口には妖精のメイドが数十人……列になって敬礼してるんだが。スゲー違和感。全員帯刀してるし。なんか萌えねぇし。
「「「「咲夜様は三階のお嬢様の部屋へおります!!」」」」
いや知ってるしそんな堂々と言われてもビビるわ……咲夜様!?
「私が案内致します! こちらへ!!」
お前ら何処の軍隊だよ……
「お嬢様! 咲夜様! お客様をお連れしました!」
「入りなさい」
「はっ!」
ただの飛脚なんだけどなぁ。
「失礼します……咲夜さんにお便りです」
「ご苦労」
俺にも上から目線かよ。ていうかお嬢様の部屋なのにお嬢様いねぇし。
「それよりも、いかがです?」
「……何がですか?」
「私が育て上げたこのメイド部隊! 優秀でしょう!! お嬢様に仕える身であれば、その身が朽ち果てようともお嬢様を魔の手から御守りしなくてはいけないのです! 私が選びに選び抜いた妖精達を存分に鍛え抜いて得た彼女達の力は、一人につきおおよそ妖精千匹分の強さを誇る!! そんな彼女等が三十人!! つまりこの館は、妖精三万匹の警護が付いていると言っても過言では無いのです!! 更に言えば門番の美鈴の力は人間に換算するとおそよ──」
長げぇ……
「──とうとう出来たわ!! あら、お客さん?」
「お嬢様! おめでとうございます!」
壁からお嬢様出てきたぞ!? 軽くビビったわ!
「ちょうど良いわ! そこの貴方、見ていかない?」
「え、その、遠慮し──」
「──お嬢様のお誘いを断ると言うのですか?」
いつの間にか背後にいるし首元にナイフ突き付けんなよ脅迫じゃねぇか。
「……喜んで」
「付いてきなさい」
そうして連れてこられたのは恐らく隠し部屋なのだろう。じゃなければ壁に入口なんか作らねぇ。ていうか隠し部屋なのに俺入れて良いのかよ?
「さあ、これを見なさい!!」
「おお! 素敵ですお嬢様!!」
「これって……アンタの妹?」
「そうよ! 等身大1¦1フランドール・スカーレットオリジナルフィギュア!! 私の生涯最高傑作!!」
アンタ生い先短くねぇだろ。
「更に、背中のボタンを押すと……」
「お姉さま大好き♥ お姉さま大好き♥」
「キャァァァフラン最高!!! 我が生涯に一片の悔い無ぁぁぁしッ!!!」
もう死ねよ。
「あの……そろそろ別の仕事が」
「貴様、お嬢様の誘いを受けて足早に帰ると言うのか?」
あぁもう、帰りてぇ……
結局、俺が紅魔館から出られたのはそれからおよそ三時間後。それまで延々とお嬢様を褒め称える言葉を言わされ続けました。
……あんな姉を持って、妹の奴可哀想だな。
やっと家に帰ると、居間にリボンでぐるぐる巻きにされた大きな箱が……燃やそう。
「……なん……あ……ぁつ……たす……」
なんか聞こえるけど気にしない気にしない。世の中面倒な事は気にせず忘れるのが一番だ。
「あっつぅぅぅぅぅッ!?!?」
あ、自力で脱出しやがった。
「酷いじゃない! 燃やすなんて!」
「なら服を着やがれ」
「仕方ないじゃない、貴方へのプレゼントなんだから。ありのままの私を受け取って♥」
「うちは生ゴミは焼却処分してるんだよ」
「熱ッ!! ちょ、火消して!! 熱い!!」