そこにある花‐その先へ‐   作:待兼山

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前作、そこにある花の続きです。
これだけでは少し『ん?』がでるかと思います。
待兼山の自己満足ですが、よろしければお付き合いくださいませ。



第一章
プロローグ


 

 

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祐巳ちゃんが居なくなって蓉子をずっと見てきた。

まるで、高校時代に蓉子が私を見守ってくれてたように。

蓉子は平気な振りを重ねていた。私と違う蓉子のやり過ごし方。

私も江利子も見てられなくて、何度も喧嘩した。

 

『蓉子、あなたね。そうやってやり過ごそうとするのは止めなさいよ!』

江利子が、あの江利子が蓉子にキレていた。

『なんのことかしら?』

暖簾に腕押し、のような蓉子に私がキレてしまう番だった。

『蓉子っ!皆、蓉子を心配してんだよっ。私たちにだけでも、吐いてよ?いつでも、蓉子に寄りかかってるけど、仲間なんだから...』

最後は泣いてたと思う。

その後、蓉子はただ、ごめんなさい。と弱々しく言っただけだと思う。

考えれば、蓉子と祐巳ちゃんは何も積み重ねないままで夢を見ていたかのような時間だったのだろう。

だから、蓉子は感情を出せないのかもしれない。

 

 

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蓉子が祐巳ちゃんを失ってから、私は蓉子の態度が気に食わなかった。

日常に馴染む振りなんてしちゃって。

聖みたいに殻に籠るでもなく、水野蓉子はただ、足場の悪い場所で必死に踊っているようだった。

腹が立って、腹が立って。

この私が声を上げて怒ってしまった。

聖ですら、怒りながら泣くなんて器用な真似してた。

私たちはそれくらい、蓉子を大切に想い、恩返ししたかったのだ。

 

 

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お姉さまが祐巳さんをあの場所で、嬉しそうに少女のようにはにかみながら。出会った場所を話されたその場所で失くしてしまってからは私は、どうにも出来ないもどかしさを感じてた。

 

衝撃に衝撃を、上塗りされるような経験を一気にさせられたあの日。

たった、数時間でも祐巳さんは私たちの、何かを刺激していった。

見落としがちな小さくも、芯を持った野辺に咲く花は、温室で丹精した花々よりも綺麗で。優しく、心を和ます。

お姉さまはそんな祐巳さんに惹かれたのだと思う。

昔から、皆のお姉さまで、いつも率先されてきたから。

 

いつも通りなんてしないで欲しかった。そんなに私は、頼りないのでしょうか。と、らしくもなくさめざめ泣いてしまった。

困ったように微笑みながら、

『馬鹿ね。祥子が頼りないなんて。大丈夫よ、私は』

その言葉に、また泣いた。

 

 

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蓉子さまが祐巳さんと歩んでいきたいと願ったのに、壊れた。

幸福からの降下の気持ちは分かるなんて安易に言えない。

リリアンの頃、手術と共依存のような関係を改めたくて、令ちゃんにロザリオを返したけど、手紙にきっちりと理由を書き連ねた。

明日がある、それとは訳が違う。

心にしこりが出来るような、祐巳さんとの最後の時間。

無機質な祐巳さんの顔、店が爆発する前の祐巳さんの顔。

出会う場所が違ってたら、蓉子さまと祐巳さんの関係も違ってたのかな。

私たちも、ううん。私も、あんなこと、咄嗟とはいえ、正当防衛とはいえ、しなかったのかな。

 

 

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青空を見上げると、何故か祐巳さんを思い出してしまう。

今までは、お姉さまや乃梨子だったのに。

お互いが鏡のような、お姉さまの心が軋んでいないか。私にはない、心の有り様を持ち合わせている乃梨子が、無理をしてないか。

今では、蓉子さまに声を掛けられ集まった店にいた、祐巳さんの向日葵のような笑顔。過去を語る、無機質な何もない顔を思い出してしまう。

あの時以来、表立って言えなくなった信仰に縋りたくなる。

 

どうか、主よ。蓉子さまの笑顔を、祐巳さんが安寧の眠りを、お許しください。

 

 

/

店が爆発して警察が、消防署や救急隊がやってきたとき、私は宣伝広報担当とはいえ率先して、代表を務めた。

蓉子さまも、毅然とだけど、現実から背けるように加わってた。

それでも、手の震えや顔つきは誤魔化せない。

私も、由乃やお姉さまが目の前でそうなったら、いや、蓉子さまのようにはなれないだろう。

だから、警察内部で上手く動いた。

当事者だから知りたい、そんな気持ちや周囲の目を利用して。

あの時のことも調べた、疑うわけではないけれど。でも、何も、『長老』や『闇の女王』も一切出て来ない。

あの時は確か、薬物中毒者が行方不明で...なんで?

祐巳ちゃんが隠滅したって全てを?

ほっと、しなかったと言えば嘘になる。私を含めて、七人は記録としての証拠に怯えなくていいから。

なんで、祐巳ちゃんはそれだけ蓉子さまに心が向いてたのに、幕閉じをしなければいけなかったのか?

 

 

 

 

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