そこにある花‐その先へ‐   作:待兼山

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今日は連投です。
すみません...


第11話

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「ごめんなさいね、急に押しかけて」

私は祐巳にそう声を掛けた。祐巳は髪をタオルで水分を切っていた。

「いえ、大丈夫です。」

祐巳は無機質に、でも、向日葵の咲いた顔を私たちに向けた。

「水も滴る祐巳ちゃん。いいね~」

聖がセクハラおやじ満開で言う。横に居る志摩子は苦笑いを浮かべている。

「聖さま、その顔だから許されてもいつか足下を掬われますよ?」

怖い島津秘書主任で由乃ちゃんは言う。

「相変わらず佐藤さんはこてんぱんですね。」

祐巳が聖に苦笑い気味に言う。少し、面白くなく感じて私は祐巳と再会した時に入った家とは違う、家の内装を見るともなく眺める。

「こっちは祐巳ちゃんがお世話になっている方のお家?」

江利子が祐巳が淹れてくたお茶を飲みながら聞く。

「ええ、ばあさんと子どもたちが暮らしてます。」

祐巳は答えた後、入り口に居たらしい子どもたちに声を掛けて手を広げる。わらわらが相応しいように子どもたちは祐巳に群がる。

祐巳が優しい、私たちには余り見せない顔つきでそれぞれに声を掛ける。

「祐巳さん、子どもに好かれてるのね。」

志摩子が祐巳に向けて言う。

「そうよ、私たちにはしない顔してるもの」

由乃ちゃんは詰まんなさそうに言うが、私は由乃ちゃんのそんな態度に苦笑いと共感を覚える。

「あら、由乃ちゃん。蓉子と一緒でやきもち?」

江利子が面白そうに笑いながら言う。

「なっ...!江利子さまっ。なんですか、やきもちって」

由乃ちゃんは江利子を喜ばす態度を出す。だから、からかいはいつでも起こるのよ由乃ちゃん。

そう考えていると、女の子たちが私たちに何かを持って来た。

「一緒に食べたいそうです。いもけんぴ、みたいなお菓子です。」

祐巳が言うと、木の皿を出してきて広げる。

「ありがとう、頂きます」

志摩子がにっこり笑い、私たちも声を掛けて手を伸ばす。祐巳は女の子たちの頭を撫でて、一人の子どもを膝に座らす。

「その子...」

聖が何かに気が付き声にする。私たちも視線を向ける。

「親に、物乞いの為にやられたみたいです。育てきれなくなって路上に放置されてたそうです。この国では女の子はこうして物乞いの道具に、年齢が上がれば街娼や顔が良ければ観光客向けの売春宿に。」

私たちの空気が変わったのを察した子どもたちは、手を止めて見てくる。祐巳が子どもたちに何か言う。

「国が違ってたら、私もこの子らと同じでした。この子らのが逞しく生きてますが」

膝の子どもにお菓子を与えながら、祐巳は自身を重ねて言った。

「同情、しないでくださいね。何も見出さない行為ですから、それは。あなた方がこの国にやって来る、そしてこの国は循環する。同情するとこの国は、観光でしか成り立たない国はお終いです」

祐巳は厳しい顔で上辺を否定する。

「祐巳ちゃんは厳しいのね。私たちは何かの力にもなれないのかしら?」

江利子が苦笑い気味に紡ぐ。

「そうですね、この子らとこうしてお菓子を食べてくれるだけで良い思い出になります。優しいあの時の日本の綺麗な女の人たち、って」

厳しい雰囲気を解き、おどけて祐巳は言う。子どもたちはそれに安堵したかのようにおしゃべりをし出す。

「水野さん、皆を見てて頂けますか?この子がトイレに行きたいみたいなので」

祐巳が私に言うが、志摩子にも顔を向けている。祐巳はどちらかと言うと子ども慣れてそうな志摩子に向けたのだろうが、私を優先したようだ。それに少し嬉しく感じる。

「ええ、子どもだらけですもんね」

笑顔で言うと聖と由乃ちゃんが声を荒げる。子どもたちはくすくす笑って何か言っている。

 

/

祐巳が童謡と共に、子どもを連れて戻ってくる。一人、他の子より少し年かさの男の子が増えている。祐巳が子どもたちに何かを言い、子どもたちは少し離れがたそうにして部屋を後にした。

「ばいば~い、またね~」

聖が童心に戻ったかのように手を振ってる。

「聖、幼稚舎をやり直せるわね。」

江利子も手を振りながら皮肉を聖に。

「ほう、ここに来てまで言うのかね?江利子くん」

少し前までお気に入りだった口調で聖が江利子に。

「鳥居さんと佐藤さんは仲良しですね」

私が制止の声を出す前に祐巳が向日葵のような笑顔で二人をからかう。江利子も聖もそれにつられて未消化でも、不満がなさそうで。

「祐巳ちゃん、苗字はやめない?祐巳ちゃんだと名前がいい~」

気の抜けた聖の声に、怒る気にもならない。

「そうね、祐巳ちゃんに鳥居さんって言われると余所余所しいわね」

江利子も同意をしているが、本当は私も水野さんと呼ばれるのは距離が感じていた。

「そうよ、島津なんて会社だけでしか言って欲しくないわ」

由乃ちゃんは祐巳と接し出して、パワーアップした気がする。志摩子も有無を感じさせない笑顔で居る。的にされた祐巳を見やると、助け舟が必要であれば出そうと、何とも言えない顔で私たちを見ていた。

「祐巳、ゆっくりでいいからね?」

思わず声を掛ける。

「あだ名、考えておきますね」

祐巳の発言に皆が笑う。私も笑いながら、祐巳は天然なのかと認識を深める。

 

「まさか祐巳ちゃんが天然だなんて。日本に居る小姑が世話を焼こうとするか目くじらを立てるか、江利子、どっちだと思う?」

聖が家から出ながら、江利子と嬉しそうに会話をする。

「祥子は甘えん坊だから目くじらを立てそうね」

クスクス笑いながら江利子は私に視線を送ってくる。

「あんまりからかわないで頂戴。」

素っ気なく私は視線をやり過ごす。

「小姑って誰の事ですか?むしろ...」

祐巳がそう言うなか、志摩子と由乃ちゃんが苦笑いを溢す。

「いい?祐巳さん。蓉子さまの姉妹制度で妹だった、祥子さま。蓉子さまを今でも慕ってらっしゃるの、恋愛感情はないと思うけど」

由乃ちゃんがもっともらしく言うけれど、少しからかいが含まれている。

「恋愛感情がないからこそ、ひたむきで祐巳さんに目くじらを立てるわ、由乃さん」

志摩子が幸先悪いことを言う。ため息を吐いて、祥子が祐巳を叩いた日を思い出す。

「ああ、だから叩かれたんですかね」

祐巳の発言に皆は吃驚する。

「え?まじで?」

聖が目を丸くしてる。

「祥子も蓉子も言わないから。もしかして店で?」

江利子が好奇心丸出しで聞く。

「ええ、長老ご登場の前に。小笠原さんが化粧室に行きたいと仰った時に」

祐巳は何でもないように答える。その時、祐巳が畑で作業をする人に声を掛ける。

「ちょっと待っててください。あそこにある、車で」

祐巳はそう指を差し、畑に向かう。

「蓉子さま、本当なんですか?」

由乃ちゃんが真偽を問う。

「事実よ。祥子が祐巳がからかったと思い込んでしまって」

ため息交じりに言えば、聖が

「なら、帰ったら謝りをしないと小姑は発揮できないね、祥子」

そう笑う。

「そうですわね、祥子さまだけでなく瞳子ちゃんも小姑かもしれませんが」

志摩子が不穏当なことを言い出して、頭が痛くなる。

だけど、こうして未来を想うと明るく感じる。

正位置に収まる、とでも言うかのように。

誰もが陰りを帯びないで笑える。

無かったことには記憶は出来なくとも、前に進める。覚束なくても、一歩すら出せなくても、前へと思う気持ちが大事だと思わせてくれる。

私は深呼吸をし、祐巳がこちらにやって来るのを見る。

祐巳が向日葵の笑顔を私たちに向けて、鍵を聖に投げる。慌ててる聖に、皆笑っていた。

 

 

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