そこにある花‐その先へ‐   作:待兼山

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閑話休題-祥子-

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祥子はあれから久しぶりに向日葵の絵を掲げていた。前はひっそりと咲かせていたが、今回は窓からの光りを当たるように調節した。そう、深く考えずに一時の感情に任せて叩いた彼女にもこれからの道を指し示せたらと思って。傲慢だとは祥子も感じている。だが、祥子は澄んでいる瞳を思い出せば思い出す程に、蓉子のような感情の入れようではないかもしれないが、構いたくなる。

柏木や小林が言っていた、福沢の家に生まれていれば..祥子はそう一度は想像してみた。だけど、今でこそ柔軟な人との応対が出来ているが、世間知らずで高飛車とお姉さま方がため息と苦笑いを送ってきた当時の自分ではどうなるのか想像し難かった。

渋い顔をした祥子はもう一度、向日葵の絵を見つめて眉間の皺を解かせた。

お姉さまと祐巳さんが手を繋いで居られる未来を。そう無意識に願い、脇にやっていた仕事を再開し出した。

 

週の大半は自身名義のマンションに帰るが、今日は柏木との約束通りに二人が暮らす為の家に帰りつく。運転手付きになるこの日が祥子にはどうも苦手だった。社会に出てからはなるべく自身の車で、自身の手で運転をしたかった。スケジュールに組み込まれたパーティになるとそうも言ってられないが、蓉子の良き相談相手になりたいが為には驕らない自分で居たい。そうあの時以来に決めた。

柏木が既に帰宅しているのか、居間には少しの会話と人の気配があった。

「やあ、さっちゃん。お帰り、すまない。勝手に小林を上げたよ」

不快を前面に出される前に謝る。柏木は先回りをして、祥子の感情をこなす。お姉さま方が柏木に向けるもの程ではないけれど、少し苦手な部分だ。祥子はそう感じて、笑顔を作る。

「構いませんわ。小林さん、いらっしゃい。何か足りないものはお有りにならなくて?」

小林にやっと顔を向けた祥子は、少し驚いた。顔には疲労と頬がこけてる。その社会特有の目つきも、疲れが滲み充血が凄い。

「いえ、先ほどから先輩に有り余るぐらいに良くして頂いていますんで...」

声には張りがあるが、語尾が弱い。

「さっちゃん、こいつの愛は凄いよ。祐巳ちゃんからのお願いをかなり忠実に守ってるんだ」

柏木は茶化して言ってるが、感心してるのは顔や態度からも窺える。

「その、ようですわね。かなりお疲れのご様子ですが、大丈夫ですの?」

少し戸惑いが先走り、上手く言えたのか分からない。祥子はそう思った。

「ははっ...すいません、お気遣いありがとうございます。最近、寝てないものですから」

小林が普段見せる、やり手サラリーマン風を纏い、祥子に応じる。

「水野さんたちは、祐巳を変えてくれるんでしょうか。そして、あいつが得られなかった温かいものを、やっと、手に出来るんでしょうか」

突然本音を溢し出し、目に涙を一杯にして、手で顔を覆い伏せる。

「俺はね、福沢も祐巳もなんとか救いたかった。大人にもガキにも属さない、あの頃にそう思ったんです。それが、簡単に祐巳は長老の跡目を継ぐ為に、ろくでもない人間に囲まれて嬲りモノにされて生きてきた祐巳にとって俺の想いや存在は、つなぎ目でしかない。そうも思いましたよ。福沢にしても、親父さんがしてきた行為への慰めで仮初めだった。だから、祐巳が生きる場所には成りはしなかった。水野さんに出会って、祐巳は変わりましたよ。微々たるもんですが、その微々たるもんが重要で長老は焦ったようです。早々に実質の座を祐巳に譲ると一部に伝えて裏は大騒ぎ。消えた『闇の女王』を探して今でも、支持派と反支持派に中立でどえらいことになってます。俺の所属してるとこでも真っ二つでね」

言い終わると涙は消えており、普段通りさと弱々しさの半々で瞳には特有のギラギラとした鈍い光を持っていた。

「小林は俺たち側でも動きがないか確認を取りに来たんだ。長老はどんな社会にも通じてるみたいでね」

柏木が天井を見つめ、コニャックを口に含む。

「それで、祐巳さんに...どんな?」

祥子は上手く言葉に出来ない戸惑いと小林の感情の吐露を目の当りにして、拙い事しか聞けなかった。

「かなり祐巳に偏っている方が上手く立ち回ってますが...水野さんらの周りでも何か事が動き兼ねないので。少し張り巡らせて頂きたいんです。」

言外に小林は警護の必要性をしろと丁寧に、しかし、強制していた。

「しかしね、小林。水野女史に鳥居女史、それに佐藤女史は納得すると思うかい?」

祥子は柏木がこうして茶化す、女史の使いが気に障る。それに眉間がどうしても寄ってしまい、柏木が困った笑みを見せ詫びを入れた。

「ええ、分かってます。俺が話すとアレなんで、こうしてお伺いに参りました。どうか、小笠原さん伝いにお話しをして頂けませんでしょうか」

言い終わるやいなや土下座をしてくる。

「お止めください。祐巳さんやお姉さま方、令や由乃ちゃんや志摩子を思っての気持ちは分かりましたから。でも、まだ何かしらのアクションはないんでしょう」

だったら気になさらない方がと言いかけたが、小林の顔は雄弁に語っていた。

聞かされた内容は、祐巳が誘拐紛いをされた事。

そして、その人間は祐巳を慕っていたがバックがかなり強硬派でいずれは舞台に上げられる事は必須になりつつある事。

祐巳に偏っている人間はそれを抑える為に上げたがっている事などだった。

「さっちゃん、考えてみてくれないかな。こいつはこいつなりに考えての行動で、邪魔立てをしたいわけではないんだよ。」

祥子にも伝わっている事を言ってくる柏木に目を向けずに、頷きながら頭痛がきそうな気配を感じた。

 

この家での自身の部屋で用事を片付けると柏木に言い、祥子は思案する。

(小林は大まかに私たちの過去を知っているみたいだ。柏木は察するともしないとも、何かが私たちの付き合いをより強固なものにしたと感じている。だが、何処かで呑気に浮気のような、禁断クラブ的なものだろうと思って探らずにいる。どうなるかわからない...祐巳さんの存在が怖いんではない、ましてや世間が怖いんでもない。私たちの絆が綻んでしまうではないかと思っている自身が...)

そう考えていると蓉子からメールが入った。

祐巳に持たせたらしい携帯の連絡先だった。

蓉子に返事を返しつつ、祐巳にも祥子は連絡を送っていた。

 

 

 




箸休めに思うままに、浮かんでメモした内容を繋ぎ合わせて出来上がりました。
待兼山には、ちっと動かしにくい祥子さまを入れたいと思いまして。
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