そこにある花‐その先へ‐   作:待兼山

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時代背景柄、賛否両論の場所はかなりぼかしてます。
なので、滅茶苦茶な感じです。



閑話休題-ばあさんと長老-

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あの男が珍しく子どもを拾ったと伝え聞いた。

本性からしてそんな事は出来ない、周りに断言させてしまう人間だったから驚くよりも、その拾われた子どもの末路を心配しつつも忘れようと判断した。

あの男も私も、何処でどう間違ったかなんて決まっている。

所詮は時代に踊らされ、弄ばれた只の大馬鹿野郎だったのだ。

手にしていた全ては、立って居た舞台は与えられたもの。それは神か悪魔か。どっちにしろ、私もあの男もぐつぐつ茹だった、地獄の釜に放り込まれるだろう。

 

 

『だから、こんな事は止めて?姉さんが私を育てる為といえ、あの人も姉さんも後ろを警戒するような生活の仕方は間違っているわ。』

良く似た姉妹だと、歳の離れた姉妹だとは思えない。そんな評価を貰いつつも、姉以上に妹は化けるぞ。生まれ持っての舞妓ではないか、いやいや、あれは高級娼婦としての性が滲み出ている。そんな卑しい声すら聞こえたものだ。何物にも代え難い、たった二人きりの家族だとしても私達にはどうすることも出来なかった。

 

生まれのせい、そんな時代に生まれ落ちたせい。

責任転嫁を心に刻みつけて踏ん張るんだよ、そう優しく頭を撫でられた。

俺がお前ら姉妹を幸せにしてやる。いずれ、この時代は鳴りを潜める、そしたら今より少しでも生きやすくなる。強く見えたあの背中。

 

そんな思い出一纏めにして、業火の粉にして一瞬で失せるだろう。

畑仕事の合間の休憩中に、もの思いの耽っていると市場に出ていた年長の子らが、砂利道を思い思いにして歩いて帰ってくる。

私に声を掛けて、はにかむ子らを見てふと思う。

あの男もこんな眩しくもあり、穏やかな日々を生きてみたいのかもしれない。

それも一瞬で消え失せる。

私が普段しない表情でもしていたせいか、子どもらが何事かと心細げにしてくる。

「ああ、暑気あたりさ。それで変な夢を見てね。」

間違いでも本当の事でもない。

だけど、子どもらにはなんの関係もない遠い国の男と女の話。

夢と言うキーワードを聞いて、子どもらは其々が将来だの寝ている時だのと会話を散らせていく。

 

 

 

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日に日に栄養をどうやって摂っていくのか、むしろ食と呼べるものを口に出来るのか。そんな心配が加わったしまったある日に、妹の恋人が戸を叩いた。

お天道様がかんかんと照らし、私は世間から遠ざかる生活の為に寝具に横たわったまま。

妹と言えば、口に出来るものを探しに出ており、もう少ししたら帰って来るだろうから私は熟睡しているふりでやり過ごそうとした。だけれど、再度戸は強く叩かれ、声で存在を主張された。

なんだい、面倒な男だね。そうごちりながら、解れ髪を手櫛で直しながら羽織を着、玄関とは言い難い出口に足を向けた。

「ちょっと、五月蠅いよ。まだ、あの娘は帰ってないよ。もう少ししたら帰って来るだろうけど。」

疲れから妹にすら構いを見せたくない所に、この男と来た。今日は街に繰り出すのを止めようか、そんな考えが浮かんだ。

「いいから聞いてくれ。あんたにしか頼めない、いや頼みたくない。」

心許ない閂を外すと強く開けられた。矢継ぎ早に、まくし立てる切羽詰まったこの男。

「ちょいと、何を言ってんのかさっぱり...」

疑問符が浮かぶから、聞きながら男を見れば唖然とさせられた。

「俺は、俺は...出兵しなければならない。こんな俺でも、お国の役に立てと、誰もが口を揃える。だから、だから...あんたにあいつを、任せたい。」

ぐちゃぐちゃと泣きながら、誰に聞かれても憲兵を呼ばれないようにした会話をしてくる。生きるか死ぬか、その割合の中で〝死〟に傾いている。この男は妹を溺愛している。私が適度にちゃちゃを入れないと、お互いしか見えないのではないか。そんな気もするが、私にはないものを持つ二人が愛おしかった。

「...あんた、帰ってきなよ...」

呟くように、帰ってくる妹に視線を向けて言う。

男泣きを見せるには、妹は弱すぎる。

私が今まで、抱え込み過ぎたせいだろうか。

妹は他人の機微に敏感で、繊細過ぎた。

 

『姉さんは、無頓着すぎるわ。私以外にも、もう少し気を回してやってよ。姉さん自身にも、ね?』

いつか妹が私に言った。その声に重なるように、妹と男が会話をしていた。

「必ず、帰って来るからな。待ってろよ、姉さんを支えろよ?」

男が泣いた痕跡を見せずに、妹の頭を撫でて安心させている。妹は目尻を濡らしながらも、首を上下に振りながら切れ切れに声を出していた。

「さあ、二人とも。今夜はお祝いだよッ。家にある、飲み物も食べ物もだそうじゃないか。」

空気を変える為に私は、立ち上がりながら言う。

この男なら、本当に帰ってくる。

砂を噛み、泥水と共に辛酸を舐めて生きてきたこの男なら。

私達姉妹が生きてきた、苦しみを理解して抱きしめてくれたこの男だからこそ。

履き間違えた強さは、時に正位置にしてしまう程の情念を持っているのだから。

 

 

 

/

気が付けば、あの男が私に影を与えて立って居た。

再現されたかのような、良く似たいつかを思い出す。

「なんだい。道に迷ったのかい?この砂利道を引き返せばメインストリートだよ、近くに大きなホテルが建ったからそこで聞いてみな。」

あくまで他人を装い、牽制する。

「いや、あんたに用だ。そうでなきゃ、馬鹿面を引っさげているあぶく銭を落とす人間がうろうろする所までは来ないさ。」

穿った見方で世間を評価する変わらないこの男に、その声に懐かしさが湧き出る。

お互いに歳を重ねても、お互いだからこその変わらぬ言い方。

「そうかい。出がらし茶でも振る舞うよ、聞こうじゃないか。」

用具をまとめて抱え、先に進む。

客人だとしても、用具の泥落としを済ませてから屋内に入る。

「道具の扱いは、昔と一緒だな。変わらない」

男が、ポツリと溢した。それには応えずに、茶の準備をする。

「好きかどうかは分かれるけど、身体にもいいから一口飲みな。」

男の前に出しながら、用を促す。言外に含ませもしなかったが、この男だからこそ分かるだろう。

「あんたも知っているだろう。私が、子どもを拾ったと。面倒を見ているが、いずれは私の後継者にする。確約だ、契約だ。それで、だ。」

一旦区切り、茶を口にする。目を細め、懐かしそうにした。

「その子に世界を見せる。世界の裏側をな。最後、あんたに会わせる。いいか?」

言葉が足りない所は昔と一緒。

何故、だとか、それによってだとかは一切伝えてこない。

昔と違う所は言葉の裏を見せてきた所。

私が嗅げるようになったせいかもしれない。

変わってしまいながらも、嫌だ否だ厭だと首を振りながら見える世界は勝手に視点を切り替えてしまった。

失くしてしまった、もう一辺をこの男は、その子どもで補いたかったのだろうか。

それだけは、分からないし分かりたくもない。

「いいわよ、どうせ拒もうがあんたは好き勝手にしてくるんだから。」

ため息交じりに言う私の口調が、昔のもう一辺に似ていた。

男も気が付いたようで、想い出に馳せていた。

 

 

 




違う話を書いてる途中で、書きたくなりまして...メモを引っ張り出しました。
ばあさんと長老の話は、待兼山としては近親者や小学校の担任の親御さんの話、それに体験者の方々の話から枠組みをしました。
まだまだ、ニュアンス的な話感が否めませんが、愛着湧く話です。
時代背景から、愛着湧く、そんな表現を使ってもいいのかわかりませんが...

閑話休題としてスロー投稿はしていきます。メモがまだまだありますし、待兼山としても“完”はないだろう。と思いまして...

では、ごきげんよう
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