知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷

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今回は一部、日記のような表記があります。
【2015/03/14】
あまりに誤字脱字が多いため、ごっそり修正。
内容に変更はありません。

【2020/7/31 追記】
今回の話で、1名から誤字脱字のご指摘をいただきました。

いつもありがとうございます。


【第12話】レイザーの借り暮らしのアトリエ

----レイザーSide----

 

ランカークス村で宿を確保し、朝一で地図を頼りに進んだところ、ようやく目的地と思われる小屋に着いた。

 

「たのもー!」

 

中に人の気配がすることを確認して、扉を叩く。

すると覗き窓がわずかに開いた。

 

「…誰だ?魔族が何の用だ?」

 

不快そうな声だ。

こういうときは、自分の立場を示すに限る。

 

「初めまして。俺ははぐれ魔族のレイザーで、こっちは同じくはぐれ精霊のクーラだ」

 

自己紹介をした後、自分達は勇者との約束で修業の旅に出ていること。

そして装備を整えたいが、自分達の身なりがあるため、ここで自作させてほしいことを伝える。

 

「…俺のことを知ってここに来たんじゃないのか?」

 

「え?もしかして有名な方?」

 

俺の質問に答えず覗き窓が閉められると、ドアが開く。

そこにいたのは顔に傷のある、魔族だった。

 

「まずは入れ。幾つか確認させてもらったら、お前達の要望を考えてやる」

 

そう言って家に入れてくれる。

名前はロン・ベルクさんというらしい。

 

…なんか魔王軍時代に聞いたことがあるような気がするが、思い出せないなら問題ないだろう。

 

とりあえず挨拶代わりに、一言断ってからロン・ベルクが持っていた酒瓶を『凍りつく息』で冷やす。

 

「…随分と器用だ。酒瓶を割らず、中身を凍らせず、酒を冷やすことだけを行うとはな」

 

「炎と氷の扱いには自信があるんで」

 

掴みは上々のようだ。

 

「…さっき武器を自作したいと言ったな?これまでどういった物を作ってきたんだ?」

 

百聞は一見にしかず。

クーラに頼んで炎の剣と吹雪の剣を取り出し、渡す。

 

「…」

 

てっきり陶芸家の如く、即座に床に叩きつけられると思ったが、思いの外じっくりと炎の剣を眺めている。

 

「気持ち悪い剣だ。武器としては研ぎが雑のなまくら。…ただこの剣に宿っている炎の力は、俺が魔界で見た物と比べても段違いだ」

 

渡した剣をこちらに差し出す。

 

「これと同じものを作って見せろ。製造途中は、ここをどう使おうが文句は言わない。その結果次第で、引き続きここを貸してやろう」

 

テストということだろう。

クーラに目配せして、手伝ってくれることを頼む。

 

「お任せください。今まで通りやればよいのです。何も問題はありません」

 

クーラの頼もしい言葉に押されて炉の前に座ると、クーラは黙って袋からフレイザードの体を構成していた石を差し出してくれる。

 

「ありがとう。そんじゃ、まずはフバーハだな」

 

フレイザード時代は腕自体が炎を吸収できたが、今はこうしないと厳しいだろう。

 

そして鉄の剣とフレイザードだったときの石を合わせて、前回作ったときと同じようにまず『灼熱の息』で剣を熱する。

 

その光景を見た途端、ロン・ベルクが激しくせき込む。

酒が気管に入ったんだろう。

 

よくあることだ。

 

「待て待て待て!お前は一体何をしてるんだ!?」

 

先ほど文句は言わないと発言したのに、早速作業を止めてくる。

 

「見ての通り、剣を熱してる。いつも通りの手順ですけど?」

 

「大道芸じゃないんだぞ!何のために炉があると思ってるんだ!?」

 

「…微調整用?」

 

「レイザー様、念のためベホマをしておきます。やはり鍛冶は傷が絶えませんね」

 

「火傷とかはするだろうが、そんな火傷するのはお前ぐらいだ!」

 

何か作り方を間違っているだろうか。

念のためクーラに尋ねるが、何も問題ないと返事がくる。

 

「駄目だ、このバカップル…」

 

ロン・ベルクが何か呟いている。

 

「ちなみに吹雪の剣はどうやって作った?」

 

「『輝く息』と『火の息』のアンサンブル」

 

「わかった。お前に聞いた俺が馬鹿だった」

 

頭を抱える。

顔色も悪いし、二日酔いだろうか?

 

「…どうせ暇つぶしでしか炉は使っていない。好きにしろ。ただしこんな作り方でどうやったら武器が出来るか、この目で確認させてもらうぞ!」

 

 

【製作1:奇跡の剣】

まずはリハビリも兼ねて、慣れている剣を作成することにした。

 

命の石でやってみたが、思ったよりすんなり完成し、クーラ用として渡す。

 

「プロボーズの指輪代わりですね。大切にします」

 

「違いますから」

 

もしそうだとしたら、多くのドラクエでメダル王からプロポーズされていることになってしまいます。

 

「…なんでこんな方法で剣になるんだ?」

 

ロン・ベルクが作った剣を眺め、納得いかないといった表情をしていた。

 

 

【製作2:炎の爪】

ランカークス村の武器屋で買った鉄の爪を参考に、フレイザードの炎の石で作業をする。

 

『灼熱の息』以外にも『激しい炎』なども合わせて調節しているが、思うような形状にならない。

 

もうすぐ日が暮れる。

今日はここまでのようだ。

 

 

翌日、炉を使おうとするとロン・ベルクに止められる。

 

「お前らの手際の悪さを見ていると、俺まで腕が落ちそうだ。少し家財道具を作るから、そこで見ておけ」

 

作業を開始すると瞬く間に、鉄の塊が見事な鉄の爪に姿を変える。

 

どうやら家の中に炉があるのは、伊達や酔狂ではないようだ。

しかし…

 

「あの、家財道具を作るのでは?」

 

クーラがごもっともな指摘をする。

だいぶ悩んだ後、ロン・ベルクは断言した。

 

「これは…鍋つかみだ」

 

うん、そうだね。鍋つかみだね。

 

「ええい!ほほえましい目で見るな!」

 

ロン・ベルクが作成した爪を参考に、炎の爪も無事作成できた。

 

 

【製作3:悪魔の爪】

最後に作るのは、相手に毒を与える悪魔の爪だ。

 

作り方は簡単。

『猛毒の霧』に包まれながら打つべし、打つべし。

 

ふとロン・ベルクが静かだと思って見てみると、床に倒れていた。

どうやら毒にやられたらしい。

 

キアリーをすれば、助かるのに…。

 

「俺は呪文を使えないんだ!そもそも換気ぐらいしろ!…というか踊るな!」

 

解毒とハッスルダンスをして回復すると、怒鳴って注意された。

 

「世界樹の毒じゃないんだから、これぐらい我慢我慢」

 

「意味がわからんぞ!?」

 

 

----ロン・ベルクSide----

 

あの変な奴らが来てから数日経った。

 

製作過程はともかく満足のいく武器が出来たらしく、モンスターが多い場所で試してくるらしい。

トベルーラを使っていたので、この周囲ではないだろう。

 

その去っていく姿を見ながら、俺はふと考えた。

自分があんな楽しそうに武器を作るために切磋琢磨したのは、いつ以来だろうか。

 

武器の使い手がいないと腐っていたが、それは自分の理想が実現できない未熟さを誤魔化す、逃げの言い訳だったのではないか。

 

「…久々にアレを引っ張り出すか」

 

あいつらの打ち方は参考にならないが、酒を冷やす係とベホマ係ぐらいにはなる。

ここまで付き合ってやったんだ。それぐらい手伝ってもらおう。

 

そう考えながら家に帰ると、最近知り合った人間のジャンクと見たことがない人間達がいた。




週末忙しいため、慌てて作成。

次回更新は来週の予定です。

【2015/03/14 追記】
今まで読み専だったため、評価コメントが見れるということに今日気づきました…。
思った通り賛否両論で正反対の意見もありますが、他の方とかぶらない話を目標に続けていきたいと思います。

またいただいた評価にコメントを返せないようですが、こんな作者の話にコメントしていただき、ありがとうございます。

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