知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷
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いつものことながら、遅れて申し訳ありません。

定期的に他作者様との出来の差に恥ずかしくなることがあり、投稿に二の足を踏んでいました。

最近は自分の作品をスクエニのジャンルで例えると、半熟英雄のようなポジションなんだと、強く強く言い聞かせて頑張っております。

【2015/11/10 追記】
破邪の洞窟で習得する呪文と階数を間違えていたため、修正を行いました。

話の展開に変更はございません。


【第25話】神は言っている。そいつは連れてくるなと

----マリンSide----

テランからの古文書調査が終わってまもなく、バーン達に捕らえられたヒュンケルとクロコダインの処刑が魔王軍の呪法によって通告された。

その執行日は明後日ということで、今まで決戦に備えていたメンバーは一斉に動き出す。

兵士達の皆は装備の確認と、レイザーさんとの合同訓練。
ダイ君とノヴァ君、そしてバランさんは剣の特訓。

またレオナ姫やフローラ女王などの女性メンバーは、大魔王の居城へ乗り込むために必要な伝説の呪文を習得するため、破邪の洞窟へ潜っていった。

他にも何をしているか把握していないメンバーもいるが、私はレイザーさんが浮気しないようにとクーラちゃんに頼まれて、エルフ族のナーミラさんに付き添っていた。

「タン、タン、トン、タタントン…♪」

そのナーミラさんはレイザーさんの指導の下、訓練で傷ついた兵士達に機嫌良さそうにステップを踏む。

時々わざとらしく失敗して、チラチラとレイザーさんに怒られたそうにしていることからレイザーさん達と同じくこの子もどこかおかしいが、彼女が踊る『ハッスルダンス』はレイザーさんと同じ踊りとは到底思えないほどに可憐に見えるため、兵士達は彼女から目を離せずにいる。

その一方、彼女の眼球はガラス玉にすり替えたような生気を感じない不気味な目であるためか、傷が治ることと引き換えに皆の生気を奪っている気がする。

いい加減彼女を止めてもらえないかとレイザーさんに視線で訴えていると、私の視線に気づいたらしく、先ほどまで兵士達相手に天変地異を引き起こしていたレイザーさんがこちらを見る。

「どうした?やっぱり、レオナ姫達に付いてくのが助っ人がクーラだけだと不安か?」

違う、そうじゃないんです。

ちなみにクーラちゃんがここにいない理由は、私からレオナ姫たちと破邪の洞窟へ行ってほしいと頼み込んだからだ。

当初クーラちゃんはレイザーさんと離れるのを嫌がったが、何故かレイザーさんがレオナ姫たちに付いていくように説得し、現在に至る。

「あー、そうではなくてですね…。そ、そうです。破邪の洞窟にすごく行きたがってレイザーさんが、どうしてクーラちゃんを説得してまで行かなかったのか、気になったんです」

「そりゃ、不思議のダンジョンみたいな洞窟があると聞いたら行きたかったけど、今回はダイのためにも行くわけにはいかないからだよ」

レイザーさん曰く、ダイ君にとって初めての人間の友達であるレオナ姫は特別な存在らしい。
そんなレオナ姫が破邪の洞窟へ入って呪文を取得し、大魔王に立ち向かうことを納得してもらうために、今回は女性だけのパーティで目的を達成してもらう必要があるとのことだ。

「それだっていうのに俺が行ったら、ダイは心のどこかで納得できないかもしれないだろ。他にも俺は兵士達との交流が少ないから、訓練もかねてお互いの実力を確認し合う必要もあったから、洞窟に行っている場合ではないと判断したんだよ。…そして、なぜ俺の顔をつねる?」

「ごめんなさい。てっきり、モシャスで誰かが化けているのかと…。あと何で頬をつねっているのに、普通に喋れているんですか?」

これまでと違って急にまともなことを言い出したりするレイザーさんを、思わずつねってしまった。
ちなみに普通に話せているのは、マホトーンをかけられた際などの状況でも呪文の詠唱ができるようにと、腹話術を覚えたからとのことだ。

「とにかく俺が付いていかなかったのは、さっき言った通りだ。まぁ、心配しなくても探索に必要な特技をクーラは一通り覚えているから、問題はないはずだよ」


----レオナSide----

大魔王から宣告された捕らえたヒュンケル達の処刑時刻までに間に合わせるため、わずか1日で古文書に記されていた上位の破邪呪文ミナカトールを習得することが必須条件となったことから、私達は現在破邪の洞窟の25階を目指している。

フローラ様達に解読された古文書によると、この破邪の洞窟は人間の神によって作られ、その困難を乗り越えた者に封じられた幾つもの呪文を授ける場所だという。

その呪文は各階毎に異なる呪文を取得できる反面、深い階層になるほど魔物も罠も凶悪になり、どんな屈強なパーティも容易に突破することは不可能と断言されている。

…断言されているのだが、世界で最も困難なはずのダンジョン探索は、クーラによって特技の見本市にされていた。

「またモンスターの群れですか。『輝く息』で一掃しますので、離れてください。…片付きました。レミラーマ。次の階段はこちらのようです。…それとレオナ姫。その開けようとしている宝箱は先ほどインパスをして、ミミックだとわかっていますからやめてください」

彼女が使う特技はどれか一つでも使えれば一流の冒険者としてやっていけそうなものばかりで、それを湯水のごとく使っているため当然と言えば当然だが、私達のダンジョン攻略は山も谷もない平坦な道のりだ。

1階ごとに攻略の難易度が上がり続けているとはいえ、わずか7時間で21階まで来てしまったため、このまま何の苦労もなく目的の階まで行けそうな気がしてしまう。

「…私、来た意味あるのでしょうか?」

クーラの様子を見て、メルルが呟く。

ドラゴンのようにブレス攻撃が出来たり、迷った時はレミラーマで道案内できたり、飛べたりと、何でもありの光景を見せられているので気持ちはわかる。

ただ先ほどから特技を披露するたびにフローラ様から褒められているクーラだが、その表情は晴れない。

「私の特技は全てレイザー様の二番煎じで、レイザー様の技に比べると魔力や体力の消費が大きいため、あまり過信しないでください。それにこの洞窟自体、ルーラやリレミトなどの呪文を封じるだけでなく、人間以外の能力を抑える力があるようで、暗黒闘気もうまく使えません」

「暗黒闘気を使いこなす精霊のほうが、おかしいと思うのですけど…。そういえば、クーラさんは着替えなくてよかったのですか?」

私達は邪気を払う効果がある特殊な法衣を着ているのだが、クーラだけはそれに袖を通そうともせずに、持参の武具を身に着けている。

「私が身に着けている物は、頭から足の先まで全てレイザー様が私のために作ってくれた物です。私にとってこれが三界一の装備ですから、他の装備はいりません」

「クーラさんは、本当にレイザーさんが好きなのですね。そこまで人前ではっきり言えるほど人を好きになれるなんて、羨ましいです…」

クーラが自慢げに断言する姿を、メルルは尊敬のまなざしで見ている。
時間に多少余裕があるためか、フローラ様も微笑みながらそれを特に咎める様子はない。

「本当に、レイザーと同レベルの特技を使えるあなたがいて助かるわ。このペースなら25階で呪文を習得して、脱出する時間も確保できそうね」

「…もっと急ぐ必要があるなら、レイザー様に『できれば使うな』と言われた奥の手がありますが」

「そういった不吉なことは言わないで。ちなみに、もしいざという時になったらどうするつもり?」

嫌な予感がしつつも、ちょっとした好奇心からクーラに尋ねてしまった。
この子の思考は、割とレイザー以外どうでもいいと思っていることを忘れていたのだ。

「こういうつもりです。…『地割れ』!」

突然クーラが地面を殴り、洞窟の床を崩壊させる。
私達は為す術もなくその崩落に巻き込まれ、一気に落下していく。

そのまま地面に叩き付けられ、何とか皆ケガなどしていないことを確認すると、マァムは自分だけ飛んで落下を免れたクーラを睨みつける。

「なにか、言いたいことは、ないかしら…!」

「これでショートカット出来ました。ただ思ったより床はもろいらしく、一気に23階まで行けたようです。得しましたね」

クーラの相手を煽っていくスタイルに、マァムは怒りを爆発させる。

「あなた、このダンジョンを作ったと言われている人間の神に『最初からやり直せ』と言われても仕方ないことをしてるわよ!?」

「大魔王によって地上が消滅させられそうになっているのに、薬草一つ寄こさない神なんかどうでもいいです」

「私達、その神が残した力を借りに行っている途中なの!それとお願いだから、自分の種族を考えて発言して!!」

マァムがクーラに怒鳴る中、同じく崩落に巻き込まれたフローラ様は皆と違って、優しくクーラを咎めるに留めていた。

「フローラ様。もう少しクーラに怒ってもいいんですよ?」

私の発言を、フローラ様は微笑みながら断る。

「彼女の行動は、好きな人に早く会いたいと思っての行動よ。これまでも歩きながら自分にベホマをしたり、魔力回復のためと思われる薬を飲んだりと、出来るだけ休むことなく進行出来ているのもそのためよ。ちょっと短絡的とは思うけど、可愛らしい気持ちのほうが強いわ」

私が勝手に憧れている女性なだけあり、まるで聖母のような方だ。

更に優しさだけでなく、常に周囲の警戒を緩めない気持ちも忘れていないようだ。

「皆。色々言いたい気持ちはわかるけど、そんな場合でもないわ」

フローラ様の言葉に慌てて周りを見ると、崩落の音が引き金となったらしく、ゴーレムやシルバーデビルなど地上では上級に当たるモンスター達があちこちから集まってきている。

クーラが火柱を放ってその集団を攻撃するが、さすがにこの階層まで来ると一撃では全滅させることはできない。

「鬱陶しいですね。先ほど2階進めましたし、もう一回すればちょうど良いですので…」

面倒くさそうなクーラが暴挙に出そうなので、私が慌てて制止する。

「危ないから、もう床は壊さないで!それに目的の破邪魔法を使えば、この洞窟によって封じられているリレミトを使えるようになるはずだから、帰還する時間を考えなくて済むわ」

併せて敵を全滅させる必要はないので、クーラは進行方向の敵だけを倒すように指示し、クーラの手が回らない相手はマァムに相手してもらうよう頼む。

「あの、進むべき方向は私が教えます!ですからクーラさん達は戦闘に専念してください!!」

私の発言に、手伝えることを見つけたメルルも協力を申し出てくれる。

ようやく私達の心が合ってきたことを感じながら、一つのことを心に誓う。

「マァム!帰ったら八つ当たりでレイザーの奴をぶん殴るから、早く帰るわよ!!」



プロットは出来ているのですが、ラストが近いこともあってシリアスな場面が多くなってしまい、話は出来ているのにネタ的に納得いかないからと書き直しまくっている今日この頃です。