知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷

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【第26話】7人の六大軍団長

----ダイSide----

 

破邪の洞窟へ向かったレオナ達は、宣言通りにミナカトールを無事取得して帰還することができた。

 

その知らせを聞いて駆けつけると、何故か現在進行形でレイザーがマァム達に追い掛け回されているが、誰一人大きな怪我もなく戻って来てくれて本当に良かった。

 

「ダイ、よく見ておけ。レイザーはレオナ姫が繰り出している拳を、容易くさばいている。力任せに押し返すことなら以前の私でも出来るが、あのように双方に痛みなく、最小限の力で行うことは不可能だ」

 

父さんが、マァムの猛攻を避けつつ、レオナ姫の攻撃をはじくような動作だけで防いでいるレイザーを解説する。

隣でノヴァが「あれが変態に技術を与えるということか…」と呟いているが、何となく意味が分かるし、真似しないほうが良い気がする。

 

「レイザー様。はんぺんの匂いがします。おでんを作ってくれたのですか?」

 

「ん?まぁな。薄着でダンジョンを探索して体が冷えているだろうと思って、海産物を中心にしたおでん風の鍋物だ。ルーラでこれまで行ったことのある土地を巡って、食材を集めたんだぞ」

 

レイザーが息を切らす様子も見せないことで諦めたのか、マァム達は攻撃を止める。

「ちょうどネタに味が染みてきた」というレイザーに誘導され食堂に案内されると、レイザーが厨房から鍋を幾つも持ってくる。

 

「ところでクーラ。ちゃんとレオナ姫やマァムを手伝ったのか?」

 

ふとレイザーが尋ねるが、そのクーラは質問から逃げるように鍋から手掴みで、はんぺんやタコ足を食べ始める。

 

「…こんなことをするために、一人用のフバーハを覚えさせたはずじゃないんだけどなー」

 

「普段クーラちゃんに、どんな教育してるんですか?」

 

マリンの責めるような口調に、レイザーは反論する。

 

「これでもマシになったほうなんだぞ。クーラに初めて何を食べるかを聞いたとき、野菜や果物をリクエストされたんで用意したら水で洗うだけで、生でかじりついていたんだから」

 

話を聞くと、当初のクーラの食事風景は口に食べかすを付け、果汁を垂らしながら手で食べていた。

美女のそのような姿は見るに絶えなかったため、フレイザードのときから四苦八苦しながら調理をし出したのがきっかけらしい。

そしてきっかけはアレだが、慣れてしまえば実験と似たような感覚で、いつの間にか得意となってしまったとのことだ。

 

「レイザーの料理は俺もロン・ベルクさんのところで食べたからわかるけど、上手だと思うよ」

 

フォローするように、俺はレイザーのことを褒める。

するといつの間にか来たのか、そのロン・ベルクさんがチウ達に案内されて現れる。

 

聞くと俺やヒュンケルの武器の修理に加えて、バダックさんが頭を下げてポップ達の武器も作ってきてくれたとのことだ。

 

武器の解説を記した紙を配りながら、ロン・ベルクさんは思い出したように補足する。

 

「あぁ。ちなみにだがレイザーから材料をもらったが、技術は全て俺のものだから安心しろ。…こいつの案は独創的過ぎて使う場面が特定されてしまうため、余計な機能になりかねん」

 

「さすがに人の命を左右する武具作りに、手を抜くことはしないぞ」

 

「お前のアイディアはさっきも言ったが、限定した場面でしか使えないんだ。袋から幾らでも道具を取り出して、臨機応変に対応するお前を基準にするな」

 

レイザーの反論を一蹴する。

続いてロン・ベルクは、父さんに視線を向ける。

 

「お前が竜騎将バランか。…見たところ大した装備を身に着けていないが、真魔剛竜剣はどうした?出来れば極限まで俺の技術を詰め込んだダイの剣が、目標としている真魔剛竜剣にどこまで近づけたか見たいんだが」

 

「今の私は竜の騎士ではない。またダイも真の竜の騎士と認められていないため、剣は行方知らずだ。…もしくはダイが持っているその剣があるから、自分の役目はないと思っているのかもな」

 

少し残念そうだが、納得した様子でロン・ベルクは引き下がった。

 

何だかんだ言って父さんと気が合った様子のロン・ベルクも手を貸してくれることになり、俺も眠くなるまで父さんと話しながら、最後の決戦に備えることとなった。

 

ただ就寝前に部屋に戻ろうとした際、襟首を掴まれたレイザーがクーラに引きずられていて、父さん達は「子供が気にすることではない」と言っていたのが気になった。

 

 

----クロコダインSide----

 

「全く…!ヒュンケル、お前の行動は心臓に悪すぎるぞ!!」

 

宣告された処刑の当日、処刑場にてミストバーンより差し出された暗黒闘気を飲み干し、傷の回復と光の闘気を増幅させるという荒療治をしたヒュンケルを怒鳴る。

 

そしてヒュンケルの行動を引き金に、処刑場周囲に潜んでいた数十もの人間達が一斉に魔王軍に突撃する。

 

「皆、一気に行くぞぉぉぉ!」

 

ブォォォー!ブォォォー!

 

「うおおぉぉぉっ!」

 

ブゥゥゥゥブォォォォォ…!

 

「わああぁぁぁ…!」

 

ブォォォ~!ブゥゥゥオオオォォォー!

 

「さっきから変な楽器鳴らしているのは誰だぁ!?」

 

雄叫びに紛れて聞こえる音に、先ほどヒュンケルに顔面を殴りつけられて怒りをあらわにしているミストバーンがぶち切れる。

確認するまでもなく、名乗り出た犯人はレイザーだった。

 

「貝殻帽子から作った、特性のほら貝だ。皆の士気を高めようと思って自作したんだ」

 

隣にいたポップがその貝殻を奪い取り、これ以上使われないようにレイザーの袋の中へ押し込める。

 

「またお前は無駄に敵を挑発して…!士気を高めてるんじゃなくて、自分の死期を早めているだけだろ!…ちょっと待て。まさかそれも以前使った『戦いのドラム』のように、何かしらの効果があるアイテムなのか?」

 

「は?ただの楽器だけど?何で楽器に特殊効果があると思ってるんだ?」

 

怒りの限界を超えた様子のミストバーンがレイザーに斬りかかるが、ロン・ベルクが横からそれを遮る。

何か因縁があるのか標的をロン・ベルクに変えるが、レイザーは懲りずにミストバーンの後頭部へ『石つぶて』をするという挑発行為をしているため、ミストバーンがこちらを気に掛ける余裕は微塵もなさそうだ。

 

レオナ姫も「殴りたい…!このくそ魔族を殴りたい…!!」と不気味な呟きをしていると、そのレオナ姫を見覚えのない女性が諭す。

 

「しっかりするのです。レイザーはああすることで囮役となり、魔王軍幹部を引き付けているのですよ。今のうちに、ミナカトールを唱える準備をしなさい」

 

「フローラ様。結果としてはその通りですが、絶対フローラ様が言っている意図ではないと思います」

 

納得したとは到底思えない表情をしているが、ダイ達は俺とヒュンケルにミナカトールを唱える作戦を伝えてくる。

そのため俺はヒュンケルを始めとする、アバンのしるしを持つ者たちの護衛に動こうとすると、またもや見覚えのないエルフが近寄って来た。

 

「あの…初めまして。私はレイザー君から『ハッスルダンス』を教わったエルフです。ひとまず、あなたの怪我は私が回復しますね」

 

自己紹介をしたエルフの目は、ザボエラ辺りがモシャスをしたのではと疑いたくなるような汚れたものだった。

だがダイ達は信頼している様子に加え、実際踊り始めると回復しているので、チウから俺用に作ったという斧を受け取りながら治療を受ける。

 

「キィ~ッヒッヒッヒッ…。ミストバーン様。魔軍司令補佐、このザボエラが例の準備を全て完了したことをご報告に参りましたぞ」

 

聞きなれた耳障りな笑いをしながら現れたザボエラを警戒したのか、レイザーはとっさに挑発する相手をザボエラに変える。

 

「まぁまぁ、じいさん。そう慌てんな。元も入れて、久しぶりの六大軍団長が揃ったんだし、ゆっくりしようや。…もっとも、数だけなら4対2でこっちが多いがな」

 

「お前は自分がしてきたことを、胸に手を当てて考えてみるんじゃな。バーン様からは『貴様だけは自分の前に来させるな』と厳命され、キルバーンもお前の相手は嫌だと言い、ミストバーン様も疾うの昔に堪忍袋の緒が切れておる。…貴様の相手は、貴様自身ですることじゃ」

 

どういうことだと尋ねるレイザーを黙らせるように、ミストバーンがザボエラを急かす。

 

「ザボエラよ。これ以上、この精神的人外のこいつを相手にしていられん。バーン様にもお力添えをいただいた、奴をさっさと出せ!!」

 

「了解しました、ミストバーン様。…ヒッヒッヒッ。レイザー、貴様は先ほど4対2と言ったのぅ?…違うな、正しくは4対『3』じゃ!」

 

ザボエラが懐から魔法の筒を取り出し、「デルパ」と叫ぶ。

 

出てきたのはキラーマシンに似ているが、見た目の色や下半身の形状が全く違うモンスターだった。

レイザーはそのモンスターに、見覚えがあるようだ。

 

「『キラーマジンガ』か。破棄した研究を形にしたのは褒めてやるが、また人の褌で相撲を取るつもりか?」

 

期待外れのような視線をそのキラーマジンガとやらに向けるが、そのモンスターは動き出すと同時に笑い声をあげる。

 

「クカカカ…!感謝するぜぇ、ミストバーン!!あの憎たらしい奴を殺せる機会をくださってよぉ!!」

 

突然響いたキラーマジンガからの声に、クーラが呟く。

 

「…え?この声、フレイザード様?」

 

「ヒャーハッハッハッ!そうともさぁ!この俺様こそ正真正銘、氷炎将軍フレイザード様よ!!」

 

驚くクーラ達を小馬鹿にするように、自称フレイザードに続いてザボエラが話し出す。

 

「キーヒッヒッヒッヒッ…!バルジ塔でミストバーン様が、お前を蹴り飛ばしていたのを忘れたのか?あの時に核の断片を回収し、その知識を絞り出すために甦らしたのじゃ。もっとも復活させた人格は、貴様と違ってまともだったがのぅ」

 

「そうですか…よ!」

 

高らかに笑うキラーマジンガに向かってレイザーが氷のブレスを吐き出し、周囲のさまよう鎧達と合わせてフレイザードを氷の塊にする。

 

「…見掛け倒しか?」

 

為すすべもなく氷塊となったフレイザードにそう呟いた途端、氷は一瞬にして蒸発する。

それどころか周囲の土や鎧兵士達をマグマのように溶解させながら、フレイザードは平然と現れる。

 

「ウヒャヒャヒャ!俺はバーン様による魔力で、強力無比な魔炎気を自在に操れるようになったんだよ!!今の俺なら、ハドラーの野郎よりも強ぇはずさ!!」

 

自慢げに語りながらフレイザードは周囲に目を向けていたが、クーラを見ると持っていた剣を突き付けて命令をする。

 

「おい、クーラとか言ったな。俺がテメェの本当のご主人様だ。こいつらを殺すのを手伝…」

 

最後まで言い切る前に、クーラは袋から取り出した吹雪の剣をフレイザードの顔面に投げつけた。

 

「黙りなさい。私は初めて会った時から、ずっとフレイザード様を見てきたのです。それだというのにあなたは声こそフレイザード様と同じですが、声のトーンや挙動など品がなく、どれも似ても似つきません。…誰が何と言おうとも、あなたは私のフレイザード様ではありません」

 

「上等だ、クソ精霊…!貴様の大事なレイザー様の腸をぶち撒けた後、戦場では性別も種族も関係ねぇってことを教えてやんよ…!!」

 

状況がわからないヒュンケルが、レイザーにどういうことか尋ねる。

レイザーは珍しく呆然とした様子だったが、こちらの質問には答えた。

 

「…あいつが誕生当時の、本当のフレイザードだよ。俺は鬼岩城でバーンからメダルをもらおうとした際に、奴を上書きして誕生した謎の人格さ」

 

「確かにあの喧しさと不快感は、見覚えがあるな。メダルを取った際にバーンに悪態をついたときは何事かと思ったが、そういうことだったのだな」

 

バランもそのことを思い出したようで、合点がいったような表情を浮かべている。

 

そしてフレイザードは俺達がレイザーと呼んだ人物に気づいたらしく、今度はレイザーに剣を向ける。

 

「よう。随分と俺様の体を使って、好き放題してくれたそうじゃねぇか。お前は俺の知識を吸収したようだが、今度は俺様が貴様の知識を使わせてもらうぜ…!」

 

バルジ島での本気だったフレイザードとの戦闘を思い出し、冷や汗が出る。

だがレイザーはため息をつきながら、フレイザードの言葉に反論する。

 

「下手なハッタリだな。お前、俺だった頃の記憶はないだろ?まずクーラのことを、人伝てに聞いたようなことを言っていた。そしてもし俺の記憶がお前にあるなら、以前戦った際にバーンが俺の特技について尋ねるはずがない」

 

興ざめしたように一つずつ指摘をしていき、そして最後に断言をした。

 

「なによりも俺の記憶があるならば、今この場でお前が踊らないはずがない!」

 

「テメェの記憶が十全でも、それだけはあり得ねぇよっ!」

 

キレたフレイザードが、剣を振り下ろす。

その一撃を半身を反らすことだけでかわしつつ、レイザーはフレイザードに宣戦布告する。

 

「せっかくのご指名だ。お前は俺がこの世界に生まれて最初に殺した相手なんだから、特別待遇のおふざけなしで、全力で殺し直してやる」

 

クーラもいつものように付き添うことを懇願するが、レイザーはそれを強く拒絶した。

 

「やめてくれ。…俺は最初から誰かを殺していたにも関わらず、『殺しはしたくない』って甘いことを言ってきたんだ。その結果がコレなんだから、俺がきちんとけじめを取る」

 

バルジ島で俺達と戦った以来の覇気に満ちた表情を浮かべ、レイザーはそう断言した。

そして目にも止まらぬスピードでキラーマジンガの弓矢となっている尾を掴むと、ハンマー投げの要領でコロシアム状となっている処刑場の外へと放り投げる。

 

「どうせなら、もっと広いところで遊ぼうぜ!…俺はあっちでケリをつけてくるから、ダイ達を任せた!!」

 

一方的にそう言うと、レイザーは場外に放り投げたフレイザードをルーラで追って姿を消す。

 

その光景を、ミストバーンは満足そうに眺めていた。

 

「計画通り、これであの歩くパルプンテは遠ざけた。…次は貴様らだ。奴の研究を元にして作ったのは、これだけではないぞ!」

 

ザボエラとミストバーンの号令と共に、魔法の玉から魔界のモンスターや、以前見た鋼の竜。そしてキラーマシンに似たモンスターが何十体も出る。

 

「『メタルハンター』ですね。キラーマシンの劣化版ですが、さまよう鎧やキラーアーマーよりかは遥かに上位でしょう」

 

これらもレイザーの研究らしく、知っていたクーラが呟くが、その声は怒りに震えていた。

 

「貴様らが用意したおもちゃのせいで、レイザー様に拒絶されて今の私はすこぶる機嫌が悪いんです。…先ほどミストバーンは『暗黒の力に限界はない』と言ってましたが、それは私にも言えるということを証明してやります」

 

暗黒闘気を揺らめかせながら、クーラはギョロリと視線を獲物に定めた。




【追記1】
色々言われたいことがあるとは思われますが、今回の「キラーマジンガ in フレイザード」は当初からどうしてもやりたかった展開でした。

個人的トラウマなキラーマジンガを出したいと思っていたのですが「さまよう鎧」のような物言わぬ機械では物足りず、また原作では竜の紋章を出さずにやられてしまったフレイザードの強いシーンを書きたいとも思っていたので、組み合わせることにしました。
第8話のバルジ島でミストバーンからの鎧をオリ主が受け取らなかったのも、この場面が二番煎じにならないようにするためでもありました。

そして「戦いたくない、殺したくない」などと言ってるキャラの前に、実は以前殺しそこねた人間やその関係者が復讐に来るという展開も好きなため、これも合体させました。
…投稿前から書いていた展開なため、詰め込み過ぎな気もしましたが。

また次回以降、表記上ややこしいですが「フレイザード = キラーマジンガ」という認識で読んでいただけますよう、お願いいたします。

【追記2】
最近になって気付いたのですが、どうやら私、軽度の「ネタを挟まないと死んじゃう病」にかかっているようです。

そのせいか投稿前にノリノリで書いていたはずの最近の展開や今後のガチバトルシーンを見ると、物足りないどころかむしろ苦痛で、「心の赴くままに、ゼロから書き直すのです」という悪魔に何度も囁かれています。

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