知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷

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更新遅れて、申し訳ありません。
遅れた理由は単純で、元々シリアスにする予定だった路線を変えようとしたところ出来栄えが悲惨で、1周まわってプロット通りに落ち着いてしまいました。

…要するに今回は非常に珍しい戦闘シーンで、これまでと比べると代筆を疑われるような雰囲気になっています。


【第27話】対決!力のフレイザードと技の元フレイザード

----レイザーSide----

 

「チョロチョロチョロと…!テメェは地べたを這う虫と同じことしか出来ねぇのか!?」

 

浮遊しながら両手に持った剣とメイスを振り回すキラーマジンガの攻撃を必死に避ける俺に、フレイザードは文句を言う。

 

「お前こそ、その体の基本設計をしたのが誰かわかってんのか!?キラーマジンガの攻撃力で一撃でも喰らったら、俺なんか即お陀仏だぞ!」

 

俺がキラーマジンガの研究を破棄した理由は、キラーマジンガを宙に浮かせ続ける技術がなく、作っても固定砲台になると見込んだためだ。

しかし今のフレイザードは、ポップ達から聞いたバーンの魔力によって浮遊する石と同じ技術を使っているようで、ド●のようにホバー走行で追い掛け回してくる。

 

この状態のキラーマジンガでさえ手一杯なのに、全身から魔炎気を放つなど防御面も強化され、正面からではとても勝てる見込みがない。

実際一度ノコノコ近づいたときは魔炎気を使われて皮膚が焦げ、喉もやられてしまった。

回復呪文を使ってはみたが、この炎も暗黒闘気と同じらしく回復呪文での治療はできない。

 

当然『ハッスルダンス』を踊る隙があるはずもなく、喉や皮膚の火傷はそのままだ。

 

それでも何とか逃げ回れている理由は、俺が密かに特訓していた、複数の特技を連続で使用できるようになったからだ。

 

今も『疾風突き』の動きで移動しながら、『身かわし脚』と気休め程度の『瞑想』で戦線を維持している。

正直この動きは足の筋がちぎれそうなほど痛いので止めたいが、そうでもないとこのフレイザードは俺の相手をやめて、ダイ達の下に向かって行くだろうから止めるわけにはいかない。

 

そんな俺の様子に、フレイザードは苛立ちを募らせる。

 

「情けねぇ…。それでも俺を一度は殺した奴か!それにさっきまでの勢いはどうした!?あとお前、口動かさずにどうやって喋っているんだ!?」

 

「勢いなんて、虚勢に決まってんだろ!それと声は腹話術だ!!」

 

「気持ち悪ぃよ!」

 

『疾風突き』で高速移動する俺に痺れを切らしたのか、フレイザードは目からレーザーを何発も放つ。

 

近距離で放たれたら危なかったが、あからさまに目線をこちらに向けていたため、なんとか無傷でかわす。

 

(まだだ…。俺が相手より優れている点は、圧倒的に実力差があることによる慎重さだけだ…!)

 

まともに戦いができないなら、意表を突く形で一気に決めるしかない。

そのため恥も外聞もかなぐり捨てて逃げ回り、相手の行動パターンと能力を確認していた。

 

その結果、どうやら暗黒闘気にキラーマジンガの武器が耐えられないためだろうが、暗黒闘気と斬撃は同時にしてこない。

またさっきからニフラムを連呼しているが反射している様子はないため、マホカンタの効果は所有していないようだ。

 

だがその体はヒュンケルの魔槍の鎧と同じく呪文が効かないため、接近せずに効きそうな特技は『稲妻』ぐらいしかない。

 

そのため次の手としてラリホーなどの補助呪文を使おうとしたが、バーンあたりが何かしたらしく、コアの位置はわかるがヒム達のように直接呪文をかけることができない。

他の特技では『津波』なら効きそうだが、向こうで戦っているクロコダイン達にも水害が行ってしまいそうなので却下だ。

 

「…覚悟を決めた。そろそろ攻めに転じさせてもらう!」

 

勝てるかもしれない算段をつけ、逃げ回るのを止めてフレイザードと向き合う。

 

「へぇ、面白ぇ…。ほら、やれるもんならやってみろ。特別サービスで、一発だけ抵抗しないで喰らってやるよ」

 

俺の態度に対して、ハッタリだと決め込んでいるのかフレイザードは余裕をかます。

 

お言葉に甘えて、逃げ回りながら込めていた魔力を一気に解放する。

更に媒体として袋から剣を取り出し、地面に作った魔法陣に突き刺して電撃系の特技を放つ。

 

「せっかく地獄から来てくれたんだ。故郷の名産品で歓迎してやるよ!『ジゴスパーク』!!」

 

俺ごときが使うには惜しい技だが、今のキラーマジンガに効果がありそうな技は少ないので、選り好みしていられない。

プライドを捨ててまで使った甲斐あって、空中にいるキラーマジンガは悲鳴を上げ、体からは煙を出しながら動きを鈍らせる。

 

ようやくキラーマジンガに近づけるようになったため、フバーハを掛け直しつつ、袋から武器を取り出しながら一気に突っ込む。

 

「その体の基本設計をしたのは俺だって言ったよな!?強度が足りないところも、覚えているさ!」

 

ギミックが多いおもちゃは壊れやすいというが、俺が設計したキラーマジンガは特に上半身と下半身の付け根が弱い。

そこを狙いながら『気合ため』を行い、『剣の舞』を魔人の金槌でたたき込む。

 

「て、テメェ!どう考えても、その武器でその動きはおかしいだろ!?」

 

『剣の舞』による連続攻撃で胴体を叩き割られたフレイザードが何か言ってるが、こっちも色々物理法則を無視しているせいか腕が痛いため相手にしない。

 

「ほら!これはおまけだ!」

 

上半身だけになったキラーマジンガの目に向かって、デーモンスピアを投げつけて相手を地面に貼り付ける。

 

「がぁ…!貴様、いつまで攻撃するつもりだ!?」

 

「次で終わりだよ!少し準備が必要な他人様の呪文だが、確実に仕留められる呪文だ」

 

俺が使える技で数少ない決めてになる呪文メドローアを唱えるため、キラーマジンガの上空に飛ぶ。

だがその準備のため両手に魔力を込めた途端、フレイザードが笑い出す。

 

「クカカカ…。詰めが甘ぇんだよっ!」

 

キラーマジンガが持っていた剣を投げつけ、その投げた剣は俺の右肩に突き刺さる。

切断されることはなかったが腕が上がらなくなり、これではメドローアを始めとする両手を使う極大呪文を撃てない。

 

しかも投げた剣に魔炎気を込めていたのか、傷の治療をしようにも回復呪文の効果がない。

 

「くそ…!暗黒闘気と同時に武器を振れないんじゃないのか!」

 

「ウヒャヒャヒャ!俺様の名演技にかかったな!テメェみたいな奴が精霊に作った生半可な武器が暗黒闘気に耐えれて、バーン様よりいただいた俺様の武器が耐えられないわけないだろが!!…それに、こんな槍一本で俺様の動きを封じれたと思ってんのか!?」

 

こちらを小馬鹿にしながらキラーマジンガの装甲がはじけ飛び、その鎧の破片が剣を刺され激痛に悶える俺に容赦なく激突する。

 

「俺様の手札はまだまだあるぜ?この技は『弾岩爆花散』の応用だ。このまま死ぬまでなぶってやるから、簡単に死ぬんじゃねぇぞ!?」

 

はじけ飛んだキラーマジンガの機体は鉄板となり、俺の周囲を浮遊しつつ、隙あらば全方位から幾度となく叩き付けられるが、必死に他の攻撃手段を考える。

その表情がフレイザードにはおかしいらしく、狂った笑い声を更に高ぶらせる。

 

「いいぜ、いいぜ…!俺様は勝つのも好きだが、自慢げに逆転できると思っていた奴の顔が苦痛に変わる今の表情も好物だぜ!」

 

「悪いが俺は女好きなんだ。そういうのは他を当たれ…!」

 

頼みの綱であるメドローアが使えない今、もう一つの切り札を使うための呪文を唱える。

これは『津波』ほど周囲の被害が酷くないとはいえまともに使える技ではないが、もうどうしようもないため、俺が片手で撃てる最強の技を唱える。

 

「どうした?どうしたっ!どうした!?諦めたのなら、這いつくばって命乞いでもしな!そうすればさっさとトドメをさして、バーン様への土産話にしてやるよ!」

 

(言われなくても、最後の抵抗をさせてもらうさ…!)

 

特技を使うための魔力を貯めつつ、覚悟を決める。

そしてキラーマジンガの破片とコアを全て巻き込める位置まで近づいたのを確認して、一気に特技を放つ。

 

「これが俺の切り札だ!…ルルスボ・サケム!!」

 

特技を放った瞬間、俺を中心に大爆発が起こる。

 

先ほど使ったのはただの「ビックバン」だが、俺が使うと自分自身も大爆発に飲まれてしまうため、自虐としてこう呼んでいる。

そのかわり呪文の威力は俺の使える特技ではトップクラスで、初めて使ったときはクーラを巻き込んでクレーターができたほどだが、自爆技として自粛していた技だ。

 

だがこの場での選択は正しかったらしく、うかつに近づいたキラーマジンガの破片はほとんど消滅し、残っていても精々砂粒程度だ。

 

「テメェ…何の、呪文を唱えやがった…!」

 

俺と同じく爆破の直撃を受け、コアがむき出しになりながらもフレイザードは怒気をぶつけてくる。

 

「元々は街一つを消し飛ばす呪文だ。…俺が使ったら、この程度の威力だけどな」

 

「ふざけんな…!ふざけんなっ!」

 

フレイザードは暴れようとするが、もはや砂鉄と化したキラーマジンガでは声を出すので精一杯なようだ。

 

「こんなはずじゃねぇ!俺様は楽勝でテメェを殺し、そしてチビの勇者共を片付け、魔王軍幹部として、バーン様の右腕として…!」

 

「夢を語っているところ悪いが俺だってお前と同じように、他人に技を教えることで生まれた証を作ろうと必死なんだ」

 

体を引きずりながらキラーマジンガだった灰をどかし、コアを手に取る。

 

「だからお前の立場を奪ったことは申し訳ないとは思うが、それはそれ。…これで俺の勝ちだ」

 

掴んだフレイザードのコアを、なけなしの力で握り潰す。

コアから魔力が途絶えたのを確認し、周囲に敵意がないことを確認してようやく地べたに寝込む。

 

「まったく…!俺みたいな奴に、本気になってどうすんの…!!」

 

肩に刺さった剣を抜きながら、今の状況をぼやく。

 

そしてダイ達がいた方向を見ると、光の柱が出ているためミナカトールは成功したのだろう。

しかし戦闘中と思われる叫びや武器がぶつかる音がするため、クロコダインあたりが頑張っているはずだ。

 

すぐに助けに行ってもいいが、片手が使えない瀕死の状態では邪魔にしかならないため、今は回復に専念しよう。

 

「とりあえず…『寝る』か」

 

これを特技と言っていいか怪しいが、この『寝る』は回復力なら『瞑想』以上の特技だ。

ただ原作と違って、『寝る』を使った後に動き回れないのが欠点だが。

 

「…介錯が必要か?」

 

頭上からかけられた声に、意識を手放そうとしていたのをザメハでつなぎとめる。

目を見開くと、先ほどフレイザードに投げつけたデーモンスピアを俺に突きつける魔族がいた。

 

正直もう虫の息だが、なんとか勝機を探る。

 

「ふ、ふふふ…。残念だったな。俺が弱ったところに現れたつもりのようだが、むしろやっと体が温まったところだ」

 

「四つん這いの状態で言っても説得力ないぞ」

 

「これは獣の姿勢を取り入れた戦闘スタイルだ」

 

「足が生まれたてのシカのように震えているが?」

 

「武者震いだ!…嘘、ごめん。無理」

 

多少言葉を交わしただけで体力が尽き、もう四つん這いになることすらできず、地べたにうつ伏せに倒れる。

 

「くそ…!だが俺は大魔王と戦ったメンバーの中では最弱。そして俺自身はともかく、俺にはまだ第2、第3のお助けモンスターがゴホッゴホッゲホッ」

 

破れかぶれで『召喚』をしようとしたが、まともに魔力を練れないほど体は衰弱しているらしい。

無理をすれば発動させることはできそうだが、以前魔力をケチってやったときはウゴカザルが出たので、今回も同レベルのモンスターが出そうだ。

 

だが目の前の魔族は、そんな俺の様子を呆れるように眺めているだけだった。

 

「何を言いたいのかわからんが、血反吐を吐くぐらいなら黙っていろ。…それにお前と一戦交えるつもりで声をかけたんじゃない。ただ勇者ディーノ様のお役に立つため、この槍をくれないかと言いに来たのだ」




【追記1】
約2か月ぶりの更新となり、申し訳ありませんでした。
今回は本当に作るのが難しく、3回ぐらい白紙にして書き直しました。

最終的に昔の中二病だった頃を思い出し、震えながら無理にテンションを上げました。

【追記2(というよりおまけ)】
レイザーの決めてとして考えてましたが、結局没ネタとなった物です。
作者の迷走ぶりの参考として晒しときます。

■『輝く息』と『魔人斬り』を組み合わせて、疑似魔法剣『マヒャド斬り』。
 →レイザーのくせに格好いいのでボツ。

■トベルーラで頭上を飛んで、『吹雪の剣』と『雷鳴の剣』を袋から落下させる『ゲート・オブ・バビ■ンごっこ』。
 →タイトルに反してアイテム頼りな上、いじめっぽいので却下。

■トベルーラで頭上を飛んで、袋から色々な液体をぶちまける。
 →ド○えもんのパクリな上、完全にいじめなのでなかったことに。

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