唐突に混ざってくる微かなガンパレ要素。
別に知らなくても問題ないです。
「よし、菊月。お前に最初の任務を通達する。海へ出る類のものではないが―――」
「それが命令だと言うのならば従うさ、提督。生憎と練度の低い身だが、叶う限り遂行しよう……」
「良し。では旗艦菊月へ任務を通達する。現時刻よりおよそ一時間後……ヒトヨンマルマルに、この部屋へ鎮守府内の妖精さんとやらを全員集合させろ。分かったか?」
「了解し……た?なに、妖精さんを、か。……むぅ、いや、了解だ」
少し肩を落としながら部屋を出て行く菊月を見送る。いちいち仕草の可愛い奴だな。まあ、肩肘張っていてもあいつも見た目通りの子供なんだろう。
「あ゛ー、それにしても暑っちいな。クソ、憲兵すら見てないんだったら軍服なんか着るかよ」
言い捨てて真っ白な上着を脱ぎ、提督用の椅子へ引っ掛ける。ズボンは履き替えようが無いが、上はタンクトップに着替えてしまう。提督帽も暑苦しいから脱ぎ捨てて机の上に投げ置けば、そこらの力仕事をする者たちと変わりのない服装の男が一人生まれるという訳だ。
「ったく、冷房すらないとはとことん捨て駒にするつもりなんだろうな、大本営サマは。こんなことする為に海軍やってたんじゃ無いんだけどな」
思うことは山ほどあるが、部下の前で言うわけにもいかない。故にこうして一人悪態を吐く。何か無いかと執務室の机を漁れば、何故かマタタビの袋が出てきた。とても、萎える。そうして暫くぐったりとしていると、執務室のドアがノックされた。
「……提督、菊月だ。入室許可を」
「あー、了解だとも。入ってよーし」
背筋を正した後に了承を出せば、菊月とその後に続く『ちっさいの』がわらわらと入ってきた。
「おー、そこそこいるな。ひーふーみ……十二か。よし、菊月はこっちに来い。んで、妖精さん達ぃ!三列縦隊に
号令と同時にパン、と手を叩くと、きゃっきゃと楽しそうにはしゃぎながら整列する。よしよし、掴みはオーケーだ。
「ん?おい、そこの右の。なんだお前、なんで猫を吊るしてんだ。ほれ、その猫さんこっちに寄越せ」
一人の妖精さんが、何故か両腕を掴んで吊るしていた猫を保護する。妖精さんも別段何考えがあって吊るしていたのでは無いようだ、何を考えているのか分からんな。
「よぉしよし、大丈夫そうだな。猫さんはそこの机に座っといてくれ」
「なぁーご」
猫を提督の執務机に置き、改めて十二の妖精さんに向き直る。それぞれ小さな菊月より更に小さいが、馬鹿にしてはならない技術を持っている奴らだ。
「……ん?どうした、妖精さん」
ちょいちょい、と引っ張られる裾を見れば、今ちょうど猫を取り上げた妖精さんがこっちを見てくる。ジェスチャーからして、しゃがんで手を差し出せと言っているようだ。
「なんだ、まあ構わんが」
要望通り差し出すと、妖精さんはポケットから取り出したペンで何やら複雑な模様を俺の手のひらに書き出す。書き終われば、懐から出した紙に文字を書いて見せてくれた。
「『幸運の模様』?『模様ありき』……?分からんが、幸運をくれるというならもらっておこう。ありがとうな」
そう言って、その妖精さんを撫でる。―――おっと、予想外に時間を取った。ごほんと咳払いをして妖精さん達へ向き直る。
「よぉーし、妖精さんとは初の顔合わせだな。言わんでも良いとは思うが、ここの提督として着任した。不慣れな身だが、どうか宜しく」
わっ、と盛り上がり拍手を返してくれる妖精さん達。ええ子や、涙が出てきそうである。
「よし、それではこれより、任務を伝える。まず、三列縦隊の一列ずつ、俺から見て左から『妖精さんイ隊』『ロ隊』『ハ隊』とする。ここまでは良いな?」
指差しながら確認すれば、一斉に頷く妖精さん達。
「それで、『イ隊』。君達には、『エアコン』を四台作成してもらう。勿論室外機込み、地面に直接置く代わりにやたら冷たい温度の出る古いので良い。出来るか?」
俺の問いに、バッと手を上げて応える妖精さんイ隊。なかなか素直で宜しい。エアコンが無いとやってられないからな。
「うむ。資材はあるものを勝手に使って良いぞ。次に『ロ隊』。君達は、この部屋の真横の部屋に洗面所と風呂を作ってもらう。勿論、この部屋には湿気が入らないようにしてくれたまえ。部屋を一つ、丸々使って良いぞ。あと、水道を共有してこの部屋に簡単なキッチンを頼む。質問は無いな?」
妖精さんロ隊も、イ隊と同じように手を上げてオーケーを示してくる。単なる部屋を水場に改装しろなんて無茶を言ったと思ったが、妖精さんの科学力は凄いな。
「ロ隊も、資材は好きにして良し。最後に『ハ隊』だが―――君達は、俺と菊月について来てくれ。使ってない部屋を綺麗に片付けて閉鎖する。要らんものは片して資材にするからな」
やー、と手を挙げる妖精さんハ隊。妖精さん達の言葉は分からんが、顔にはありありと『頑張るぞー!』と書いてある。癒される。
「よぉーし、目安は……そうだな、フタマルマルマルまでだ。その段階で終わってれば良し、終わってなくても帰って来なさい。その後は、適当に俺が料理でも振舞ってやろうじゃないか」
男の一人暮らし飯だから雑だが。それでも沸き立つ妖精さん達は本当にこの鎮守府の良心だ。あと、横でそわそわしてる菊月も。なんだ、お前も楽しみなのか。
「エアコンが出来てれば快適だぁ、キッチンが出来てれば美味いものが食える!そんで、働いたらその分メシが美味い!以上、各員任務に励め!解散!!」
パン、ともう一度手を叩けば、イ隊ロ隊はぱたぱたと部屋を出て行く。菊月とハ隊は、俺の指示を待っているようだ。菊月後から連れて行く、ハ隊は先行して行動開始せよと指示を済ませて部屋を出ようとした―――その時、机の猫さんと目が合った。
「あー、猫さんも連れてくか。ほれ、マタタビ。要るか?」
そう言って、マタタビを差し出す。何故か執務室の机にあっただけ、あげても問題あるまい。
「なぁーご」
「おうおう、気に入ったか。……あ?なんだ、首輪か。お前もこれをくれるってのか?」
まるで言葉がわかるとでも言うように頷く猫さん。わらしべ長者になる気は無いが、貰っておこう。
「……なんか、急に腹が減ったな。まあいい、仕事だ仕事ぉ〜っと」
「煩いぞ、提督。早く私にも指示を出してくれ」
「あー?あ、済まんな。待たせてたか。よし、妖精さんハ隊の監督へ向かう。付いて来い、菊月」
「了解……」
菊月を供に執務室を出る。猫さんを連れてくるのを忘れたことに気がついたのは、暫く作業をしてからだった。
猫さんから首輪をもらうと、ステータスが上がるのです。
そしてガンパレ要素はこれ以後ほとんど出てきません。